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999話 エンディング 双送式

 テーマ:ベートーヴェン交響曲第9番第4楽章(参照 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU )

 


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=0m0s 

 そして、双送式が開始した。

 ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の演奏によって、双送式は怒涛の開幕となった。総勢数十人程度のオーケストラが会場で多彩な楽器を演奏している。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=0m12s

 本来ならばもっと人数を確保することも出来たのだが、これは双送式の主役である二人の要望だったのだ。

 時和奏と空和葵の言葉によって、双送式の規模は小さめになった。本来なら時和大学、いいや、時和町全体を招待して双送式を開催するのが良いだろう、という考えもあったのだが、二人は既にみんなから忘れられているだろうと、遠慮したのだ。年老いた二人が、みんなに迷惑を掛けたくなかったのだ。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=2m00s 

 まず入場してきたのは、時和奏の家族であった。

 息子である時和琉生、そして孫である時和零の姿があった。彼ら二人は護衛の役割を担っている。もしも黒代家が襲撃を仕掛けてきたら、二人の双送の権利を死守するのだ。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=2m29s

 そして交響曲が初めて、歓喜に寄せて、のメロディーを奏で始めると、時和奏と空和葵が入場を開始した。二人は手を繋ぎながら、息子と孫から護衛を受けて会場へと歩んでいく。服装は和服である。腰には武器類は着用されていない。



 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=3m9s

 二人が会場を進んでいく。その途中で様々な観客から握手などを交わしていく。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=4m52s

 二人が会場の中央部分にまで到着すると、観客たちお祝いの言葉を放った。

 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=5m30s 

 二人は別れの言葉を交わし合うと、双送を完了させるために、天上の階段の一段目まで移動を続けていく。

 



 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=5m58s

 そして交響曲はさら進んでいく。歓喜に寄せてのテーマが何度か繰り返されていき、交響曲が大きく盛り上がりを見せようとした時、双送式は否定された。



 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=6m09s

 おお友よ、このような旋律ではない!

 もっと心地よいものを歌おうではないか

 もっと喜びに満ち溢れるものを


 天上の階段に向かっていく途中、丁度会場の中央部分で、二人の行く手を阻む集団が登場した。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=6m20s

「時和奏、残念ながら双送式は、この黒代紫苑が中止させてもらう!」

 黒代家が登場した。

 黒代家将軍である紫苑が筆頭になって、ぞろぞろと漆黒の着物を纏った人間達が、式会場に乱入していくのだ。腰には刀を携えている。

 

 そのまま時和奏を連行されてはたまらないので、息子の琉生と孫の零は二人の権利を守るために、黒代家と対峙ししていった。

 


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=6m58s

 そして激烈なる剣戟が開始した。

 交響曲第九の旋律とともに、日本刀と日本刀とが交差する怜悧な音色も、双送式場に響き渡る。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=9m35s

 だがしかしながら、最終的に勝利したのは、双送首肯派の時和家であった。

 激戦に負けてしまった黒代一家は、潔く負を認めて、それまでの態度を翻していった。特に将軍である黒代紫苑は時和家に向かって、

 

「なーに、俺たちはお前らの意思を確かめていただけさ」

 紫苑はケロッとした口調でそんな事を言うので、思わず苦笑してしまう。

「……」




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=10m16s

 剣戟が無事に終了すると、観念した黒代家も二人の双送式に混じっていった。

「奏、葵、本当に行くんだよな……」

「ああ」

「ええ」

 紫苑の問に、二人は迷いのない表情で、答えを告げた。

 黒代家と別れの挨拶を交わしながら、二人は再び、天上の階段まで移動していく。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=10m50s

 天上の階段を上っていく二人を会場にいるみんなが眺める。

 


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=11m9s

 そして時和奏と空和葵が天上の階段の中間部分、8段目まで上ると、爆音とともに、背中に刀が掠めた感触が走った。

「危ない!!!」



「ぐおおおん!!!」

 謎の雄叫びが、時和町に轟いていった。



「!?」

 二人は同時に振り返った。

 そこには衝撃的な光景が広がっていた。

 先程まで式場は完璧な状態の建物だったのに、今では半壊の状態になっていたのだ。まるで巨大な刀で建物を一刀両断されたかのような、そんな峻烈な傷跡があったのだ。


「……まさか」

 呆然としながらも、ポツリと奏は呟いた。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=11m26s

 天上の階段の8段目から、会場の傷跡を通して、建物の外に視線を照射してみる。

 すると遠くに夜闇に同調した巨大な物体が屹立していた。黒城よりも身長が高く、全身の色は漆黒に包まれており、戦慄させる雰囲気を発露している。


 黒夜叉。

 奴はまだ生きていたのだ。前にあれを損壊させたはずだと思っていたのに。それも今ではさらに強化されているらしいく、握られた刀は強靭であり、フォルムも同様である。

 黒夜叉が双送式を妨害するために、巨大な日本刀で式場を斬りつけてきたのだ。結果として、式場は一瞬にして半壊状態に追いやられてしまう。



「やばいぞ!どうするんだ!」

 双送式の観客たちも動揺を見せた。

 もしこのまま双送式が続いていけば、時和大学もとい、時和町は全壊してしまうだけではなく、人々までもが多く傷つけられてしまう。



「戦うしかない……」

 とは言ってみたものの、現在の会場にいる者だけが集まって倒せるような相手ではない。もしかしたら、このまま時和町は壊されてしまうのではないか。 




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m00s 

 脅威はさらに高まる。

 敵は黒夜叉だけではないらしい。それ以外にも、人間と同じくらいの規模を持った黒い敵が横並びで立っている。彼らも同様に脅威的な相手である。

 


「このままじゃ、私達……」

「……」

 だがそれでも戦わねばならぬ。

 時和家の三人と空和葵は双送式を一旦中断することにした。時和町が壊されていくのを、黙って見過ごすことは絶対に出来ないのだ。 

 会場の全員は移動することにした。大きく抉られた傷跡を通って、会場にいた全員が双送式場を退出すると、時和町の中で大勢の声が聞こえてきた。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m28s

「時和町みんなで、双送の権利を守るぞ!」

 時和町の住民が勇敢にそう宣言した。



「みんな!!!」

 時和家の三人は、時和町のみんなが双送の権利を守るために外で護衛をしていた、という事に気づいたのだ。

 年老いた時和奏達は忘れられてはいなかったのだ。彼らは時和町の全員の自送の権利を守り愛され、そしてその恩返しとして、彼らの双送の権利を死守しようとしていたのだ。


「じいちゃん」

「父さん」

「ああ……」

 時和家の三人は言葉の多くを交わさずにも、その意味を悟った。




「「「一緒に戦おう」」」




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m40s 

 まずは、時和町のみんなが一歩、敵の前に歩みを進める。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m48s 

 次に、敵の全員が一歩、時和町のみんなの前に歩みを進める。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m53s 

 そして最後に、時和町のみんなが進み始めた。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=12m55s 

 苦悩を突き抜けて歓喜にいたるように、時和町のみんなが一致団結して、敵に向かって疾走していく。双送反対派の黒代家とともに、賛成派の時和家、そして時和町に住む住人達も、一緒になって双送の権利を死守するのだ。


 時和家の三人を始めとして、時和町のみんなが、初めて力を合わせた瞬間だった。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=13m41s 

 そして黒夜叉にまで到着すると、時和家の三人は最後の戦闘を開始した。一人目は零、二人目は琉生、三人目は奏だった。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=13m47s  

 時和家三人による連続技は、黒夜叉に唸りを迸らせた。


 だがしかしながら、黒夜叉は未だに倒れるはずはなく、そのまま反撃を試みる。何とか空中で猛撃を躱すと、時和家の三人はさらなる連撃を切れ込んでいく。

 その間後方で戦闘をしている時和町のみんなは健闘している。



 ここで問題になっているのは時和家三人はこれまで戦闘経験を一緒に積んだことがないことだった。なのでお互いのスタイルと上手く交わらずに、最大の敵に理想的な攻撃を与えることが出来ないのだ。

 


https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=16m35s 

 闇が深まっていく。双送式当日の夜は元々闇が深かったが、さらに今では夜雲が密集していき、月明かりの光すら見ることが出来ない。

 だがしかし何とか黒夜叉との死闘を続けていく、お互いの精神の波長を合わせることが出来てきた。そして三人が息を揃える



 三人は必殺技を繰り出した。そして究極的な攻撃は、黒夜叉に直撃した。 

 そして遂に、夜が明けてくる。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=17m17s 

 時和家と黒代家、そして時和町の力を合わせ、遂に勝負は決した。

 暗雲から一筋の光が差し込んでいき、黒夜叉を貫いていく。


 巨大な黒夜叉のフォルムが瓦解していく。漆黒の身体が剥がれていくと、光を放射していくのだ。握っていた巨大な日本刀も手から零れ落ちる。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=18m53s 

 黒夜叉が遂に地面に倒れていった。瞬間、周囲に砂埃が発生して、全員の視界を奪っていく。砂埃が霧散していき、視界が開けていくと、そこには時和町のみんなの姿があった。


 最大で最後の脅威が消え去ると、時和町のみんなと久しぶりの挨拶を交わした。そして奏は子供二人と初めて一緒に戦闘した事により、和解が生まれた。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=19m40s 

「じいちゃん、僕……」

「父さん、俺……」

 奏の息子と孫である二人は、奏の為に、これまでずっと涙をこらえていたのだが、今になって決壊してしまった。全てが終わってこれから本当に双送式が行われるんだ、と二人が改めて事実を悟ると、ボロボロと涙が零れてきた。

 

「そんなに泣かれると、私だって、泣きたくなるだろ……」

 三人はお互いの肩を支えながら感情を発露させた。双送式では絶対に泣かないで送り出そうという三人の決意は決壊してしまったのだ。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=20m15s

 そんな時和家と空和家の感情的な空間は、時和町によっても共有されていく。

 時和家の奏は、町の英雄である。彼はこれまでずっと時和町のみんなの自送の権利を守ってきたのだ。だからその恩返しとして、彼らの為に命を張ったのだ。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=21m06s 

 時和町のみんなと一緒に、双送式場に戻っていくのだった。


 時刻は早朝になっていた。今では暗雲は全て霧散して晴れ渡り、朝日が地平線の彼方から姿を現した。美しい自然はその生命を踊らせている。




 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=21m52s

 時和町のみんなが加わって、再び、双送式が執り行われた。時和家、空和家、黒代家、時和町の住民たち。誰も欠ける人間はいない。




「「さようなら」」

 琉生と零は父親に別れを告げる。続いて、時和町のみんなも別れを述べる。

「ああ、これからも自送の権利を守ってくれ」

 そう言い添えると、二人は満面の笑みで返した。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=23m00s 

 二人は天上の階段を上っていく。


 ボロボロになった和服を着ながら、二人は笑顔で手を繋ぎ、16段まで上り切る。そこから天上の道を歩み進み、遂に天上の扉の前に到着した。

 天上の扉を開く前に、二人はお互いの顔を見合わせた。顔には先程の戦闘での傷がいっぱい刻まれていた。しかしながら、彼らの表情には後悔のない笑顔があった。


 https://youtu.be/ljGMhDSSGFU&t=23m20s 

 二人は一緒に天上の扉を開いた。

 二人の身体が天上の光によって包まれた。


 時は奏で、空は葵い。

 そして、双送式が完了した。

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