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Save-4:蒼い女性 (後編)

「何をしている、早く行け!」

「あ…うん!」


 怒ってる!もたついている僕に、目茶目茶怒ってる!

 こくこくと頷き、僕は隣で呆然と立っている女性の腕を引いて、少し離れた物陰に隠れた。

 本当なら、もっと遠くに逃げた方が良いのかもしれないけど…女の子に無理をさせるのは、僕の「男の矜持」に反する。


「悪いが、さっさと終わらせてもらうぞ。」


 え。ちょっともしもし!?なんか今日ちょっとトドメ早くない!?

 僕の心のツッコミを無視し、槍が構えた剣からは陽炎のように揺らめく「闇」。それが徐々に彼の剣に吸い込まれるように収束して…


「ダークネススラッシュ!」


 普段なら、僕の「ライトニングアタック」と共に放つことで、必殺技「トワイライトクロス」を発動させる技だが、単体でも充分な効果がある。

 槍の呼ぶ闇は、その切り口から敵の体を侵食し、やがて虚無へと還す技らしい。大抵の敵は、そうなる前に塵になるんだけど。

 今回も、そのパターン。鰐顔の刺客は、目的も告げぬまま緑色の塵になって、完全に消滅した。

 それを見届けると、槍はちらりとこちらを見て…そのまま、どこかへと立ち去っていく。


「良かった…何とか助かったみたいだ」


 槍の魔の手から。

 心の中でそんな風に呟きつつ、僕は隣にいた女の子に向かって笑いかける。

 それに応える様に、彼女も鮮やかな笑みを浮かべると、ぺこりと頭を下げて…


「…助けて下さって、ありがとうございました」

「いや…僕は何もしていないよ。実際にあの化物を倒したのは、セイバーダークネスだし」


 僕の言葉に、彼女は困ったような笑みを浮かべた。

 何となく、泣きそうな…そんな印象の笑みを。


「あ…えーっと、君の名前は?」

「……は?」

「あ、いや、その…今度、君が来た時のために良い花をリザーブしておこうかと思って。あ、俺は光矢。南風光矢」


 いきなり何を言ってるんだ僕は!普通に考えて、変質者じゃないか!

 いや、別にやましい気持ちは無いよ?本当に、ただ、彼女は花を捜してるみたいだったし…もっとお近付きになりたいと思わなくも無いけど……


「えっと…ヒメ」


 へ?姫?


「蒼野氷女です。『氷の女』と書いて、氷女(ひめ)


 そう言うと、氷女と名乗った彼女は穏やかな笑顔を浮かべる。

 「氷の女」と言う表現とは真逆の、暖かい印象を受ける。

 凛とした所のある美人にも見えるし、穏やかな印象の可愛い女の子と言う印象も受ける。

 「美人」と「可愛い」は同居しないと言うけれど、それは嘘だ。目の前の子は…蒼野さんは、間違いなく可愛くて美人だ。


「…今日はもう、帰りますね。…ちょっと、気分が優れなくて」

「そりゃ、あんなのに襲われたらね。…送ろうか?」

「いえ、結構です。そんな……お気遣い無く」


 もしかしたら、警戒されてるのかもしれない。

 いや、そりゃそうか。僕は男だし。さっきの会話からすると、この子の家って何となく遠そうだし。

 ちょっと…いや、かなりがっかりしつつ、僕はくるりと踵を返した彼女…蒼野さんの背中を見送…ろうと、思った。だけど。

 彼女はくるりとこちらを振り向くと、凄くにこやかな笑みを浮かべて……


「それから…守って下さって、ありがとうございます、光矢さん。また、お会いしましょうね」


 ……あ、まずい。何か良く分からないけど、胸がこう…ぎゅうっと締め付けられるようなこの切ない感覚は一体…?


「…光」

「うわっ!槍、いつの間に……」

「ずっとここにいたんだがな。…ああ言った、清楚系の女性が好みとは知らなかった」

「んなっ……なななななな、何、言ってるんだよ!?」

「お前は分かりやすいからな」


 と。なかなか帰って来ない僕への苛立ちをからかうことでぶつけて来る槍に、ものすご~く苛められながら。

 僕達は店へと帰って行きました…



「あれ?」


 その日の夜。ダークネスの記録した映像を見ながら、トゥランが僅かに首を傾げたのを、コーヒーを飲んでいた僕は見た。

 その視線の先には、今日現れた刺客と…僕と一緒にいた、蒼野さんの姿。


「どうかした、トゥラン?」

「その…この刺客、随分とこの女性に執着してるなぁって…」

「ああ、何か青い髪の女ってだけで狙われたみたいだよ?」


 そう言うと、トゥランは僅かに驚いたように目を見開いた。

 …あれ?そう言えば、何で連中はそんな人を狙ったんだろう?

 「青い髪の女」なんて、早々いないのに…


「ひょっとして、プラチナスは……」

「ん?トゥラン、何か言った?」

「あ…いいえ。何も」


 困ったように笑うトゥランを見て、問いただしたい気持ちになるが…やめた。

 何か気付いたら、きっと彼は言ってくれる。僕はトゥランを信じてる。


「すみません。多分、気のせいです」

「そう?あんまり夜更かししないで寝るんだよ?」

「はい」

「これ、ちょうど持ってたんだ。良ければどうぞ」


 ホットミルクを差し出し、僕は一足先に自分の寝室に向かうべく歩き出す。

 部屋を出て行く直前、僕の背中に…小さく、トゥランの声が聞こえた様な気がした。

 ……姉さん、と……

次回、SAVER KNIGHTS ―SIDE Knights―


「き…きのこぉっ!?」

「冗談だろう?あんな巨大胞子、毒にやられる前に窒息する!」

「どんなことをしたら、あんな風になるんですか…」


次回、Save-5:ある意味最強の敵

正義と平和の名の下に、セイバーナイツ、参上!!

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