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Save-3:血塗れの鴉 (後編)

「間違いありません、敵は明らかに、お二人に対する戦闘に特化するように作られています」


 帰るなり、僕達はトゥランに今日のことを話すと…返ってきた答えが、これだった。

 ナイトアーマーには、戦闘を記録する小型カメラが付いていて、前回のジキメ、そして今回のロウクのデータを纏めた結果、その答えが出たらしい。

 トゥラン曰く、今までの刺客は、いかに多数の人間を殺すかに特化した刺客だったらしい。だが、前回と今回は違う。「確実に僕達を倒すこと」を目的に作られた、新しいタイプの刺客だと言うのだ。


「道理で、前回のジキメと言い、今回のロウクと言い…やたらと強かった訳だ」


 悔しそうに吐き出す槍に、僕も黙って頷く。

 ジキメはまだ、何とかなった。だけどロウクは……


「何であいつ、僕達を見逃したんだろう?」

「ああ、それは俺も気になった。夕方がどうこう言っていたが…」


 あのまま攻撃が続けば、ひょっとしたら僕達は負けていたかもしれない。それを考えると、ロウクの方が優位に立っていたのに、どうして…?

 そんな疑問が僕達の頭を過ぎる。一方で、トゥランはまるで当たり前のことであるかのようにきょとんとした顔をして…


「え?だって、鴉の刺客だったんですよね?」

「あ、うん」

「だったら、答えは一つだけです」


 年相応の、愛らしい笑顔を浮かべて。トゥランは大真面目な声で、一言。


「多分、鳥目なんですよ、その刺客」


 ………え、いや、ちょっと待って?

 確かにそう考えると、辻褄は合うんだけどね。

 僕、「鳥目の怪人」なんて聞いたこと無いよ?


「鳥目って…そんなことで見逃された僕等って…」

「そうがっかりするな、光。とにかく今は、ロウクへの対策を考える方が先だ」


 そりゃあ、そうだけどね…

 呆れにも似た感情を抱きつつ、僕達はロウク対策を練っていた。

 …だけど結局、何の案も思いつかないまま夜は明けて。徹夜明け故の、独特の倦怠感と戦いながら、お花屋さん稼業もこなしていた、そんな時。

 店の奥でパソコンと睨めっこしていたトゥランが、緊張感溢れる声を上げた。


「光矢さん、槍影さん、出ました、ロウクです!」

「何!?」


 ロウクと言う単語に反応し、槍は着けていたエプロンをかなぐり捨ててトゥランの指示した場所へ向かう。

 …ああ、良かった。お客さんの殆どいない時間帯で。


「トゥラン、毎回のことで悪いんだけど…」

「店番ですね」

「よろしく」


 それだけ言うと、僕もまた、ロウクが出たという場所に向かって、バイクを走らせた。

 …多分、滅多に無いよ?店員が不在がちで、小学生の男の子に店番やらせる花屋なんて……




「現れたな、セイバーナイツ。待っていたぞ」


 くっくと喉の奥で笑いながら、ロウクはすいとその目を細めて言い放つ。

 絶対的な勝利への自信からか、随分と慢心しているように見える。

 まあ…確かにこっちは、何の策も持ってはいないんだけど……それでも、ムカつくって言うか?


「では…今日こそ貴様らの息の根を止めてやる!」


 言うが早いか、ロウクは昨日と同じように、空から放つ羽根の攻撃や、こちらの隙を付いた翼で打つ攻撃を放つ。

 ああもう!馬鹿の一つ覚えみたいに…って言いたいところだけど、その攻撃にすら手も足も出ない僕等にもムカつく!

 思いながら、何とか攻撃をいなす僕の後ろで。

 何かを思いついたらしい槍が、低い声で僕の耳元で囁いてきた。


「おい」

「何?」

「あいつが、もしも本当に鳥目だとしたら…方法はあるかも知れないぞ」

「へえ、どんな?」


 正直、この状況を打破できるんなら何でも良いです。

 と、思った瞬間。槍は剣の柄に宝玉をはめ込んだ。

 ええっ!?いきなり必殺技発動!?


「何をする気だ、セイバーダークネス?」

「貴様、俺の名乗りを忘れたか?」


 キィンと槍の剣が小さな音を立てる。剣自身に、エネルギーが溜まった証拠だ。

 …槍の、名乗り?確か…


「俺は、『妙なる闇を纏いし漆黒』と、言ったな?」


 え、ちょっと槍影君。まさかとは思うんですが……


「俺はセイバーダークネス!その名の通り、闇を呼ぶ戦士だ!」


 ああああああっ!やっぱりですかぁぁぁっ!

 槍の纏うナイトアーマーは、ダークネスの名の通り、闇を呼ぶ。一人で技を発動させれば、この辺り一帯を、僅かな時間ではあるが、夜よりもなお暗い闇に落とすことが出来る。

 逆に僕のアーマーはライトニング…つまり光。逆に、世界を照らす光を呼ぶ鎧だ。

 槍はその特性を活かして、擬似夜間を作る気満々なんだ!って言うか何でそのことに昨日の内に気付かないかな、僕等は!?


「妙なる闇に堕ちろ、ロウク!」


 槍の、その言葉が合図になったように。周囲一帯、夜と見紛う程の闇が覆った。


「が…っカァァァッ!景色が…世界が見えん!」


 …うぅわぁ。本当に鳥目なのかぁ。

 アーマーのお陰ではっきりと見える僕達とは違い、ロウクの方はあからさまに狼狽し、宙から地面へを落ちてくる。

 それを確認すると僕は、見えない恐怖で悶えるロウクに、静かに問いかけた。


「一つ、聞きたい、ロウク」

「くっ…何だ?」

「何故、人を殺した?あんな無惨な方法で」

「理由?そうだな………自分のため、とだけ言っておこうか」


 自分のため、だと?自分の、何のために人を殺すって言うんだ。

 わざわざその亡骸をバラバラにし、別の場所に持っていく。そして、無造作にその亡骸を捨てる。血の匂いに酔っていたとしか、思えない。

 こいつらは……!


「お前達は…遊びで人を殺してるのかぁぁぁぁっ!」

「おい!」


 槍の、静止の声が聞こえた気がした。

 だけど、今の僕には聞こえない。遊びで…遊びで先生が、奥さんが、罪もない人々が殺されたと!?

 冗談じゃない!許せるもんか、そんなこと…絶対に許せるもんか!


「遊びだと?こちらとて、真面目に殺している!」

「それが尚更、性質が悪いって言うんだよ!」


 感情に任せた剣だと、自分でも分かっている。

 こんなに怒っているのに、どこか冷静な自分がいる。

 許せない、認められない、憎い…そんな感情が僕の体を支配し、ロウクを切り刻んでいた。

 …彼が、この世界の人にやったように、バラバラになるまで。

 何度も何度も、剣を振り下ろし、突き刺し、切り裂き……気付いた時には、既にロウクの姿は、赤い塵になっていた。


「……落ち着いたか?」

「…ごめん」


 ああ、と思う。

 結局僕も、プラチナスの連中からすれば、同じなのかも知れないと。

 感情に任せ、「自分のため」に殺す所など、全く同じだ。我ながら情けない。こんなの、「正義の味方」じゃないよ…

 勝ったのに、とても泣きそうな気分になりながら…僕は変身を解き、トゥランの待つ「Licht unt Dunkel」へと帰って行った。

次回、SAVER KNIGHTS ―SIDE Knight―


「早く逃げろ、ここは食い止めてやる!」


蒼野(あおの)氷女です。『氷の女』と書いて、氷女(ひめ)


「これ、ちょうど持ってたんだ。良ければどうぞ」


「ひょっとしたら…プラチナスは……」


次回、Save-4:蒼い女性

正義と平和の名の下に、セイバーナイツ、参上!!

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