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なんでもアリの異世界エトセトラ  作者: 大福満代
第二章
182/247

第八話 というわけで、アイスとプリンの会開催 2

「いやー。大変だったっすねぇ!!!!」

 上機嫌のミヤが、満面の笑みで鼻歌を歌っている。キンキンに冷え切った鍋を、手袋をはめた手で持ち上げ、鼻と頬を真っ赤にして笑っている姿は、微笑ましいを通り越して、うらやましい。こんな風に無邪気に何かを心から楽しめることが。

 そう。この、氷点下の、しかも降りしきる雪の中であっても。

 さっっっっっっっむ!!

「いやもう、大変だったって言うけど、一番は寒かった、だろ」

 店と外の往復プラス雪遊びで、完全に体温調整能力がおかしくなった体で、とんでもなくドデカい雪だるまに圧倒されつつ、つっこむ。この雪だるまは、はしゃいでいるミヤとカシメルを喜ばせようと、バリスとマミルが作り上げた。なんつうの。バリスの狼男の力と、マミルの大きくなる魔力を合わせると、こんなにバカデカい雪だるまができるんだな……。これ、怒られないかな。

 城壁の高さよりは低いけれど、一般人が作ったにしてはスケールのデカすぎる雪だるまを、抱えた鍋ごと見上げる。今は、鍋を回収しに来ただけなので、俺たち二人きりだ。

 アイスを作るには、数時間かかった。バニラアイスは固まり始めてからはちょくちょくかき混ぜ、シャーベットは様子を見て、時々かき混ぜる。

 最初は液体状だったのでかき混ぜるのも簡単だったけれど、固まってくると段々重くなっていく。鍋にたっぷり作ってあったので、最後の方は二人一組でかき混ぜた。

 あまりにも時間がかかるものだから、途中で店に戻り、薪ストーブで温まってからかき混ぜに戻る、そしてまた雪遊びをする、と繰り返して数時間。戻るたびに雪だるま状態になっているミヤに、アスカさんが呆れ顔でたくさん手拭いを用意してくれた。

「寒いっすけど、動いてるとあったかいっすもん。それより、ちゃんとできて、よかったっす!」

 城門へ歩きつつ、ミヤが歌うように言った。巨大雪だるまは放置していくらしい。まあ、城壁の外側だし、悪さするようなモンでもないしな。

 ミヤの言う通り、アイスは時間もかかったし大変だったけど、ちゃんとできた。やっぱり、こまめにかき混ぜるのがポイントなんだろうな。それから、この氷点下の気温。と塩。

「この世界の乳製品美味いから、このアイスも美味いんだろうな」

「うっす!!絶対美味しいっす!!」

 嬉しそうなミヤを眺めつつ、ふと一昨年のバンガローでの出来事を思い出す。雪だるまでなんか引っかかるなーって思ってたら、アレだ。俺を助けてくれた雪だるま。あれ、なんで動いたんだろうな。

「そういえばさ、遊技場での雪だるまって、なんで動いたんだろうな?」

 理由が分かってなかった。今日作った巨大雪だるまが動いたら、完全に特撮の世界だ。

「あ、アレって、リウの力だったみたいっすよ」

「え?!」

「町歩きの時、青龍さんが言ってたっす。リウは、バンガローをこっそり出ていくイールに気付いてたらしいっすよ。ただ、自分ではどうにもできないから、代わりに雪だるまをボディガードとしてつけたみたいっす」

「そうだったのか」

 リウ、そんなことできたんだなぁ。知らなかったけど、眷属としての力は、当時も多少は使えたんだな。

 普段、メンテナンスの時も寡黙な眷属を思い出す。眷属とは、四神がきちんと復活する前の方が交流があった気がする。

「眷属って、お土産一緒に食べてんのかな」

「うっす。一緒に食べてるどころか、一緒に話し聞いて、盛り上がってるらしいっすよ」

 そっか。メンテナンスって、眷属にしてみれば仕事だもんな。寡黙にもなるよな、考えてみると。普段は、もっと自然に過ごしてるんだな。

「それはいいな。眷属も、それぞれの土地にいたんだもんな」

「そうっすよね」

 神には神の決まり事があるだろう。けれど、せめて、思い出話くらいは、したっていいよな。みんなで。

「着いたっす!!みんなで食べるっす!!」

 カランコロン。

 ご機嫌のミヤが扉を開けると、明らかに俺たちが出る前よりも薪ストーブの火が強くなっている。

「なんですか?!どうしてこんなに部屋が暖かいんですか?」

 ちょっと薪、焚きすぎじゃない?!

「なんでって、冬にコタツに入って食べるアイスって、最高じゃない?この世界にコタツないから」

 アスカさんが鍋を受け取りつつ言う。コタツないけど、火鉢みたいのはあるでしょ!!ミニストーブみたいな役割する。いやでも、そんなんよりも、やっぱり薪ストーブガンガンに焚いた方が暖まるのか。やり過ぎると危険だけど。

「最高のシチュエーションっすね!!アスカさん、ありがとうございますっす!」

「でっしょ。アイス、上手にできたわねぇ。とりあえず食べる分を取り分けるから、残った分は溶けないように表の雪に鍋、突っ込んできなさいな」

「うっす!!」

「俺が突っ込んでくるよ。ミヤはアイスの準備しなよ」

 防寒具を脱いだり着たりする手間もあるし、ここはどう考えても、ミヤがアイスの準備側にいた方がいい。

「お願いしまっす!」

「うん」

 二人がアイスを取り分けるのを待ってる間、奥に視線をやると、なんだかものすごく盛り上がっている。近づいてみると、クズセバマケヨをやっていた。

「うう……ここ、抜きたいのよね」

「そこ、危なくない?」

「うん。狙うとこ間違えてる」

「いいの、ここ、いけるとおもっ……ああああああ!」

 木のタワーが無残に崩れ、ティルが声を上げる。周りでみんなが笑う。

「だから言ったのに」

「いいのっ!!」

「ティル、結構、無謀なとこに挑戦するよね」

「だって、いけると思うんだもの。いけそうじゃない?!今のとこ」

「いや無理」

「ええー!!」

 みんなでワイワイと盛り上がっている姿を見ていると、なんだか不思議な気持ちになる。社会人になってから、こういう遊びってしたことなかったなぁ。みんなで集まって雪遊びとか、ゲームとか。アイスを作るのだって、ある意味、遊びみたいなもんだよなぁ。実験っぽくもあるけど。

 あれ。クズセバマケヨで盛り上がっている更に奥で、バリスとマミルが話し込んでる。いつもなら一緒にはしゃいでいそうなのに、どうしたんだろう?

 もう一度やろうと、負けたティルが木のタワーを組み直している横を通り過ぎて、声をかける。

「二人とも、一緒にやらないのか?」

「ああ、カツミさん。おかえりなさい」

「ただいま……マミル。それ、誰が着せたの?」

 近寄ってよくよく見てみると、マミルはなぜかショッキングピンクのエプロンをしていた。

「アスカさんです!!」

 満面の笑みで言うな。

 アスカさん……例の生地屋か?カンナか?!いや、そんなことは今はどうでもいいか。どっちにせよ、出どころはそこだ。聞かなくても分かる。

 知らず眉間に皺が寄ったらしい。マミルがちょっとしょんぼり気味でエプロンをつまんだ。

「似合わないですか?」

 そういう問題じゃない。そこじゃない。

「いや、似合う、似合うよ。……ところで、どうしたの?二人とも。隅っこで」

「あ、ええ。ちょっと気になることがありまして」

「気になること?」

「はい。実はですね。今度の集会の時に、村でも確認して来ようと思っていたんですが、狼男の満月時のパワーが、以前よりも強くなっている気がしまして」

「そうなのか?」

「はい。そんな話をしましたら、マミルさんも同じようなことを感じていたということで」

「マミル、魔力強くなったのか?」

「強くなった、というほど明確じゃないんですけど。前よりは強くなってる気がするんです」

 そんなことがあるのか。いや、あるというよりも、世界が修正された影響なのかも。

「それって、良くないことなのか?」

「初めてのことなので、判断はつかないです。しかも、そこまで明確に強力になった、というわけではないですし」

 マミルも隣で頷いている。

「ただ、口に出すほどでもないかな、と思う程度のことだったのですが、マミルさんも感じているということだったので。種族は違いますが、個人的なものではなさそうなので、調べてみようかと」

「俺も、家族や友達に聞いてみます」

「また、この件でお話しましょう、マミルさん」

「はい」

「カツミさーん、お願いしますっす!」

 二人が頷き合ったとき、カマド部屋から呼ばれた。アイスを受け取って外へ出て、蓋をした鍋を雪に埋め込む。扉の横の雪山に埋めたので、通行人の邪魔になることもないだろう。

 防寒具の雪を丁寧に払いのけ、急いで店に入る。

「お待たせしましたっす!!」

 ちょうど、ミヤがアスカさんと共にカマド部屋から出て来たところだった。二人とも、大きなお盆を抱えている。

 わぁ、と華やかな歓声が女性陣から上がり、ゲームをしていたテーブルから、予めセッティングしておいたテーブルへ集まってくる。

「カツミ。保冷庫に色々入ってるから、持って来て」

「はい」

 保冷庫を開けると、生クリームと何種類かのジャムが、それぞれ器に入れて準備されていた。カウンターの内側には、チョコレートソースやハチミツも置いてある。

 準備されていたそれを、スプーンと一緒にテーブルへ運ぶ。

 プリンは蒸した容器ごと、アイスは皿に二種類、盛り合わせてある。

「早く早く。溶けちゃうわっ」

「いただきますっす!!トッピングは、好きなものを乗せてくださいっす!」

「そのまま食べてもいいし、プリンは生クリームをのせてもいいわ。バニラアイスは、チョコもハチミツも、果物のジャムも合うわね。ヨーグルトシャーベットは、そのままか、ジャムを乗せてもいいかも」

 アスカさんの説明を聞きつつ、みんながまずはトッピングなしで、それぞれの品にスプーンを入れる。

 一口食べて、笑顔が広がる。視線を合わせ、頷きながらみんなが次の一口を食べる。

「ど、どうっすかね?」

「美味しいわ……!」

 珍しくエンが真っ先に答えた。片手で頬を押さえて、感動しているようだ。

 エンの感想を皮切りに、次々に感想が上がる。それは手放しの称賛だった。そして、みんな、思い思いにトッピングをしていく。

「バニラアイス、なめらかに出来たわねぇ。よくできてるわ。シャーベットも、イイ感じだし」

「うっす。プリンも、完璧な蒸し加減っすね!!」

「フフフ。まぁね!」

 軽く顎を上げて、アスカさんが嬉しそうにスプーンを運ぶ。

「暑い季節だと、いろんなフルーツが手に入るから、フルーツと生クリームたっぷりで、プリンアラモードなんて豪勢でいいわよねぇ」

 そういえば、今回はケバブ屋のメニュー候補の試作も兼ねているんだった。並んで座っているケバブ屋の三人に視線を移すと、ジンが据わった目で何かを呟いているし、ティルも真剣な顔で何かを考えつつ食べている。カシメルだけは、のんびりとした表情でプリンとアイスを堪能していた。

「カシメル、どう?」

「うん。初めて食べたけど、とても美味しい。真冬に薪ストーブをこんなに焚いて、冷たい物を食べるなんて、すごく贅沢だな」

 贅沢。考えたことなかったけど、そうかもしれない。

「コウジさんが来られなかったのが残念っすねぇ」

「仕方ないさ。雪が降っちゃうとな。コウジのとこからは遠いから」

「うっす」

「俺は約束通り、食べられたなぁ。確かに美味い。ただ俺、これ、再現できるかな。アイツ、大喜びしそうだから、作ってやりたいけどな」

「レシピ、教えてあげるわよ。ポイントも。一回で上手くいかなくても、何回か作ってるうちに、できるようになってくるわ」

「そうだな。うん。やってみよう」

 ロムはチャナのこと、すごく大事にしてるよなぁ。多くは語らないけど、端々でそう感じる。作り方を覚えてきて、って頼まれたって言ってたけど、この様子だと、作ってあげるんだろうな。

「ロム、チャナと仲いいよな」

「俺、あんまり家にいられないからな。家にいるときくらいはな」

 あ、そうか。職業柄、ロムは家にいることはほとんどないもんな。逆に言うと、ジンとカシメルはいつも一緒なんだな。仕事も住処も一緒だしな。夫婦や家族ったって、いろんな形があるんだよなぁ。

 ……ん?

「今日のこれって、全部、原材料乳製品ですよね」

 テーブルを改めて見て、気付く。もっと別のお菓子も作ればよかっただろうか。いや、俺は作れないけど。

「言われてみると、そうよね」

「おもしろいな。材料は一緒なのに、形も味も違うのって」

「だよねぇ」

「アイスもプリンも、すごく美味しいです。俺も、また食べたいけど、そんなに気軽に作れないですもんね」

 マミルが目を輝かせて言いつつ、しょんぼりしていく。本人よりも、ショッキングピンクが目に痛くて、そっちに視線がもっていかれる。

「アイスやシャーベットのコツは混ぜ方くらいだけど、塩もいるし、何より、氷か雪が絶対に必要よね」

「なら、アレっすよ!!年に一回、みんなで集まって、アイス大会するのはどうっすか?」

 おお、とその場がざわつく。もちろん、いい意味で。

「あ、ジンさんたちが商品にしないのなら、っすけど」

 話しをふられ、ジンが考えつつ頷く。

「うん。アイスもシャーベットも美味しいけど、商品として一定の量を、夏にケバブを作りながら作るのは、現実的じゃない気がする。ティル、どうだい?」

「私もそう思う。夏は雪がないから、ウチで作るとなると、その分の氷が絶対に必要になるし、そもそも気温が高いから、こんな風に固まるかどうか」

 クーラーもハンドミキサーもないしな。

「とてもとても美味しいけど、商品としてはウチでは厳しい。ごめんね。ミヤ君」

「いいんっす!こうして、みんなで食べられただけでも、俺、メッチャ嬉しいっすよ!」

 アハハと、ほんとうに心底嬉しそうにミヤが笑う。イチカもいたらよかったな。

「なら、みんなで年一回のお楽しみってことにしましょうよ。私も、また食べたい。来年は、トッピングも、考えてみるわ」

 鈴の音を転がすような声を弾ませて、エンが張り切って言う。彼女がこんな風に言うのって、珍しいな。大体は、ツッコミ役だからな。毒舌の。アイス、よっぽど気に入ったのかな。

「うっす!!賛成の人!!」

 そこでみんなが手を上げた。

「思うのですが、カツミさんたちがいた世界は、食文化が豊かですね。同じような調味料や材料で、いろんな料理を作るといいますか」

「日本人って、こねくり回すの好きなのよね。いい意味での魔改造っていうか」

 アスカさんが頷きつつ言ったセリフに吹きだす。

「言えてますね!」

「でしょ」

 いい意味での魔改造。うん。食べ物に限らず、日本人って、改造とか改良とか、好きだよな。よりよく、どうやったらいいかなって考えて、作るのが好きなんだよな。

「話しは逸れたけど、プリンはちょっと難しいかもね。蒸し加減が。失敗すると、()が入っちゃうのよね」

「す?酢ですか?すっぱくなるんですか?」

「ううん。なんていうのかしら。ブツブツみたいな。これ、スプーンですくうと、滑らかな断面でしょ?ここがブツブツになっちゃうの」

 食べているうちににじみ出て来たカラメルソースごとプリンをすくう。うん。すごく滑らかだ。カラメルもほろ苦くて、すごくいい。

「俺が一人で作るのは、難しいですよね?」

 同じようにプリンをスプーンですくったマミルがその断面を見つつ、質問する。

「そんなことないわよ。今日だって、手伝ってくれたじゃない。それに、何度も作るうちに火加減が分かってくるし、できると思うわよ。鬆が入っちゃっても、舌触りが変わるだけで、食べるのに支障はないし」

「あの、プリンは商品化してもいい?ウチで」

 アスカさんとマミルの会話に、ジンが優しい口調で入る。

「あら、もちろんよ!」

「アスカさんの言うように、暑い季節になればフルーツもたくさん出回るし、生クリームは常に手に入るし。いいなと思ってね」

 俺、実は、黙ってたけどクレープどうかな、って考えてた。でも、ケバブが主力なんだから、鉄板、肉の匂いついてるよな、と思って言わずにいたんだよな。それに、クレープ焼きつつケバブ焼くってなると、ケバブの邪魔になっちゃうし。うん。黙ってて正解だったな。

 プリンだと、調理器具もケバブとバッティングしないし、デザートにもいい。そのままでも美味しいし、上にトッピングをするなら、豪華にもなる。なによりも、開店前に仕込んでおける。忙しい時間帯でも、注文に対応できるもんな。

「あ、じゃあ俺、食べに行きます!!やったぁ!!」

 マミルが嬉しそうに真っ先に言う。

「よかったな、マミル」

「はい!!楽しみが増えて、嬉しいです」

「私も一族へのお土産にしたいですね」

「私も、家族や友達に宣伝するわ。きっと人気が出るわよ」

「どういう形で売り出すかはもうちょっと考えるけど、みんな、よろしく」

 和やかな空気の中で、みんなが頷き合う。ああー。もうほんと、平和だ。いいなぁ。こういうの。

「あの、ジン君、肉まんっていつから売り出すんですか?」

 前のめりになったマミルがジンの方へ傾く。そういえばマミル、試作品もらってたな。

「来月から売り出そうと思ってるんだ。こちらも、よろしく」

 わぁっと大きな拍手でその場が盛り上がった。ジンのところのプリンも肉まんも、期間限定になるだろうし、この町の季節の風物詩になるといいなぁ。

「肉まんは、俺じゃなくてカシメルとティルが主力でやる予定なんだ。カシメルが、皮を作るのが上手でね。外注じゃなくて、自作でやってみようかと思ってるんだ」

 おおっと声が上がる。照れたようにカシメルがはにかんで下を向いた。よかったなぁ、カシメル。いろんなことができるのに、掃除以外の家事が苦手なの、ずっと気にしてたもんな。何か一つでも自信が持てたら、すごく嬉しいよな。しかも、店のことだし。嬉しさ倍増だな。

 ティルもニコニコと嬉しそうに笑っている。仲いいな。一応、義理の姉妹ってことになるんだろうけど。

 そう思いつつテーブルの上の食べ終わった皿に視線を移すと、カランコロン、と扉の音がした。

 振り向くと、鍋を抱えたミヤが立っている。

「残りのアイスも、みんなで食べちゃいましょうっす!!」

「ならアタシ、コーヒー淹れてくるわっ」

 アスカさんがそう言って立ち上がり、素早くカマド部屋へ消えた。

 大人が集まって、こんなことに真面目に取り組んで楽しいって、なんかもう、ほんと。あの頃は、想像もしなかった。ただただ、ボロボロになりながら働いていた時には。

 こんな日がずっと続いたらいい。穏やかで幸せな毎日が。自然と笑みを作る口元に気付き、心の底から思った。

 そして次の日、はしゃぎ過ぎたミヤは、珍しく高熱を出して寝込んだのだった。

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