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98 初心者のための魔法具使い方講座

「研究室に、転移」


魔法具となったイヤリングの入った6つの箱を手に、寮の部屋に戻る。

ちょうど、全員が揃ったところみたいだ。


「えっと……情報共有の魔法具が完成しました!」

「いえ〜い!」

「え、美華、そこって、いえ〜いなの?」


そんなこと知ったこっちゃないです。

とりあえず中身を確認し、それぞれの前に置いていく。


「情報共有の魔法具。これに距離と情報量の制限はない、はず。消費魔力を極限まで少なくして、発動スピードと正確性も上げて、位置情報もわかって、魔法補助の機能もあって、物理と魔法衝撃の耐性も……」


自分で言っていて、分かんなくなってきた……。

みんなの反応が気になり、恐る恐る顔を上げる。


「……とりあえず、箱、開けてみていい?」

「あ、どうぞ」


そうでした。

機能云々の前に実物は見ないで箱しか見てないだなんて……そりゃあないわ。


「わ、かわいい〜」


1番最初に声を上げたのは陽華。

どうやらデザインが気に入ってくれたみたいだ。


「すごいわね〜、これ」

「よくこんな小さいのがたくさんの魔法に耐えられたね、稜華ちゃん」


……良かった。

姉妹からは好評のようだ。


「これ、いくらで売れるかなぁ」

「美華、バッカじゃない? 妹が一生懸命作ったものを売るなんて」

「冗談に決まってるじゃない、風華。まだ稜華は1年生なのに……」

「そうだね。魔法具は2年の範囲だもんね」


あはは。

作り方を聞いたら謎の信頼で作り方を教えてくれました。

……できれば売らないでほしいです。世の中の常識が狂っちゃうから。


「おそろなのね。姉妹っていう感じ」


デザイン、注文の時にこだわったもん。

全部、それぞれを表しているから。一つでもぐちゃぐちゃになったら、ダメだから。


「あ、この魔法具のことはできるだけ、というか絶対他の人には言わないでほしい、です。値がつけられないし、量産できるものでもないし……」


というか、良からぬことに使われるのは絶対に避けたい。

スパイ同士のやり取りとか……。既に誰かがもう考えだしているかもしれないけど。

国内の機密情報が漏れたら製造者が叩かれるんだよ。ひどくない? 悪いのはそういう使い方をした人たちなのに。


「これ、どうやって使うの〜?」


あ、はい。そうですよね。なので。


「初心者のための魔法具使い方講座を始めます!」


この魔法具、機能が多いから使い方が複雑なんです。



「まず、この魔法具の原理について説明します」


ホワイトボードをゴロゴロと引きずってきて姉妹達の前に置くと、使用した魔法式とイヤリングの図を書いた。


「情報の共有方法は音声と打ち込み。できるだけ余計な情報を省けるように、思考型は無くして……」

「稜華ちゃん、簡単にお願いします」


……ハイ。


「イヤリングの右側、つまり花の形をした方が情報の受信。左側が情報の出力になっています。また、過去に共有されたけど、見逃しちゃった情報も履歴から確認できるようになっています」


ホワイトボードに機能を次々と書き込んでいく。……うぅ、インク臭い……。


「まぁ、実践が大事だろうから、とりあえずつけてみて?」


私自身、使いこなせているわけではないんですけどね。

みんながイヤリングをつけたのを確認して、説明を再開させる。


「まず、視覚的な情報共有から説明するね。こんな風に……画面を出してみて」


シュッと手をスライドさせると、目の前には半透明の画面が出現する。


「あ、言い忘れてたけど、情報共有できるのは6人全員だけじゃなくて、個人間もできるから」


そう、6人の姉妹グループ、個人同士も。

個人的なやり取りもできるってわけだ。


「とりあえず初回だから、全員に送るね」


情報を打ち込み、送信する。

するとピロン、と同時に着信音がなった。


「あ、何かきてる〜」

「それが共有した情報。内容はわかる?」

「大丈夫だよ〜」


良かったです。


「だけどこの方法は余裕がある時にしかできないから……近くにいない時に情報共有しておきたいっていう場合が主な使い方かな。これで履歴も確認できるし」


記録してますからね〜。

ただ、たくさんの情報が溜まりすぎると重くなっちゃうから1日の終わりにそれぞれのデジタルくん……じゃなかった、改名タブレットにデータを送り、魔法具内のデータは消去するようにしている。


「これって、打ち込みしかできないの?」

「打ち込みじゃなくて、音声でも大丈夫。そこの音声入力とところに触れると、音声を聞き取って共有してくれるよ」


……ただ、文字化するとかなり出力が悪いんですよね〜。

だから、この方法は主に視覚的な情報共有じゃない時に使うのがいいと思う。


「次に、主にダンジョン攻略中の使い方についてだけど……ダンジョン攻略中にこうやってのんびりと情報を出力している暇はないよね?」


普通に考えて。

ダンジョンにどんな危険があるかは分かりません。


「だからダンジョン攻略中は音声入力みたいに音を情報にするんじゃなくて、音そのものを共有しようと思います!」


これなら音声出力がいくら悪くても問題はない、はず!

魔法具が判別できなくても、人同士だったらできるもんね。


「その方法は、ここに触れると……」


みんなもモードを切り替えたらしく、姉妹の驚きの声がイヤリングを通じて聞こえる。……うん、直接でも聞こえるんだけどね。


「これ、普通に日常生活でも使えそうだね」

「うん。だけど、これに頼りきりになると、リアルな会話が減るっていう問題点があるので……」


私、飛華と喋らない生活なんて嫌だよ。飛華とはちゃんとリアルで話したいです。


「ちゃんと、節度を持って使いましょうね……?」


これ重要。


「まぁ、慣れるまで使ってみよう」


同じことを繰り返しやって、使い方を覚えてもらって。

後は細々とした機能の使い方を一通り説明した。


「まあ、全部デジタルくんを通して、っていう形になるから……」


流石にイヤリングだけで全てが機能する、という形は取れなかったから。この世界に改名タブレットがあって助かりました。

魔法があって、魔法が便利だから魔法中心の生活の中、よくこの機械? ができたよ。これほど改名タブレットに感謝したことはないね。


「……はい。というわけで、初心者のための魔法具使い方講座は終了です……」


ふぅ。とっても疲れました。

こんなに喋ることなんてなかなかないもんね。


「じゃあね。おやすみ」

「うん、おやすみ〜」


双子と陽華と夢華が部屋へ帰って行き。

私はホワイトボードに書き込んだものを綺麗に消す。消しても後が残ってバレないように、丁寧に。


「飛華、私、これを片付けてくるね」

「ん。いってらっしゃい」


これ、研究室から拝借してきたんですよね。あ、もちろん先生からは許可を取って。

流石に夜なのでゴロゴロ転がした音が響いたら迷惑だろう。消音魔法をかけ、廊下を進む。寮を出たら研究棟の植物園を突っ切り、最短ルートで研究室に行き、片付ければおしまいだ。

それにしても今日は新月なんだね。いつもより暗いからただでさえ鬱蒼とした植物園が恐ろしい。早く帰ろ。


「ここにいたのか」


その響いた声に振り返ると。


「えっと……?」


どちら様、でしたっけ……?


「ワタシだ。キロマンテ・レノア。朝に言った、礼をしにきた」


あ、絡まれていた方ですね。思い出しました。


「今日はちょうど新月。良かったな。占いでは新月は2番目に良いとされる日だ」


そ、そうなんですか。


「あの、ここはヘリコニア先生の研究室なんですけど……」

「ヘリコニア先生は知っているぞ? 偏屈研究者として有名なヘリコニア・プシッタコルム。属性、適性魔法共に不明。今まで、研究室生を取ることはなかったものも、今年度、教師人生初と考えられる研究室生をとった」


え?

そうなんですか?

今まで、研究室生を取ったことが、ない……。


「貴族の出ではないものも、高い魔法力を持ち、しかし貴族制度廃止まで本来の実力を発揮できていなかったと考えられる。その証拠に、貴族制度廃止後は次々と画期的な研究を発表している。が、表には出ずに学園に引きこもっている」


そ、そそ、そうなんですか。

ものすごい情報ですね。


「ワタシにかかれば、これくらい、どうとしたことない」


なるほど?

いや、全然納得できませんけど。


「礼の話だったな。……紫月稜華。汝は我に何を望む?」

そう言ったキロマンテ・レノアの意図とは……?

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