88 メンツが濃い!
「つきましては、司令室まで同行をお願いします」
こうしてやっていると、警察官みたいだなぁ……。
「それなりのペナルティがあることは覚悟しておいてくださいね」
「……ふざけんなっ!」
そう言ったのは意外にも、王都校の生徒だった。
あれ?協力的だと思ってたけど……違うのかな?
「俺は巻き込まれただけだ!」
「ですが、当事者ですよね?」
現にケンカ?していたし。
「いっつもそうだ!お前は……紫月姉妹は、俺の、俺らの邪魔ばかりしてくる!」
あれ?
もしかして、面識があった系?全く私の記憶にないんだけど。
「正義のツラを被って、善人ぶっている!」
「……馬鹿じゃないですか?」
コイツ、ホントに外側しか見てないな。
「善人? 私が? どの辺りで善人と判断しました?」
笑える。私が、善人だなんて。
「それは……今現在がそうじゃないか!」
「これ、仕事ですから。役職や名誉には、必ず責任とやらなければいけないことが付きまといます」
そうでしょ?役職や名誉が大きくなれば大きくなるほど、使える力は大きくなって、責任も大きくなる。
そして、その責任を、取らなければいけなくなって。
「別に私だって、生徒会になりたかったわけじゃないですよ?」
成績は多少上がるかもしれないけど、そんなことどうでもいいし。そもそも卒業するかどうかもわからないし。
「じゃあ、なんでっ……!」
「姉妹と全力に近いステージで戦ってみたかったからです」
それ以外の理由はない。
「だったら、別の場でも……」
「別の場? 笑えますね」
知ってます?
「Sランク魔法は規制が全ての場でかかっているのですよ」
特例……決闘などの両者の同意がない場以外、ね。だから、だ。例え人がいなくても、使ったことがバレたら大問題。……そうならないように日々努力しているんだけど。
「俺は……!生徒会にならなければいけなかったんだよ!」
「そうですか。ご自由に」
勝手にしろよ、もう。
「じゃ、司令室まで同行、お願いできます?」
危ない危ない。本題を見失うところでした。
「俺は、飛鳥井家を、背負っているんだっ!!」
あすかい……どっかで聞いたことあるような?
気のせいでしょうか。
「忘れたとは言わせないっ!あの時……1学期の中間テスト予告の時、コソコソと姉妹で話しやがって!冷めた目で見やがって!」
テスト予告……。あ!
「あの人ですか!」
元貴族くんね、思い出した!
ぐちぐちぐちぐち文句ばっかり言って、時間の無駄だったあの時ですね。
ヘリコニア先生がクラスで初めて研究といったあの時ですね〜。いや、懐かしいわ。
「忘れてたんじゃないかっ!」
「いや、いちいちクラスメイトなんて覚えたりませんって」
めんどくさいし。
必要性を感じないし。
「じゃ、早く司令室へ……」
「だ〜か〜ら〜!」
何でしょう?
「ふざけんなっ!!」
あらら。キレちゃった。
このまま魔法を使ってほしくはないんだけど……。
「炎舞!」
思った矢先から魔法を使ったよ。それもAランク魔法だし。
マジ?マジだよね。
「情報分解」
だけど、なんか雑。綺麗じゃないし。
明らかにレベルが生徒会の人たちとは違う。主に精度、という面で。
「公共の場でAランク魔法を使っていいと思っているんですか?その場合は常識なさすぎですね」
ホント、大した迷惑だよ。
私が情報分解してなければ被害が甚大。何かしらの罰を受ける可能性、っていうか受けるだろうね。私が魔法を消したところでAランク魔法を使ったという事実は変わらないけど。
「私、その気になれば跳ね返すこともできるんですけど。……使ったということは、やられる覚悟も承知の上でしょうねぇ?」
「っ、反射魔法はっ!Sランク魔法だ!」
「加減をすればCになりますよ」
ホントだもん。
鏡になる部分を粗だらけにしておけば反射される魔法は少なくなる。まだ実験はしてないけど……今、使うならちょうどいい実験台だよね?
「ど、同校のよしみはないのか!」
「同校も何もありますか。むしろ、こんなめんどくさいヤツが同じ学校で同じクラスなんて恥ですよ、恥」
それに。
「同校であろうが、他校であろうが、一生徒には変わりないです。私は仕事をするだけです」
「お前が、悪いんだ!生徒会選任祭でも、生徒会長との決闘でも!今も!今までも!ずっと、俺を馬鹿にしている!」
馬鹿に……しているっちゃしているか。劣等感が大きいのはとってもわかりました。
でも、私はこれが私の『普通』で、当然だから。
「まぁ、人には生まれついてのものがありますから、多少の誤差は仕方ないでしょう」
「何が多少だ!」
いや、多少でしょ。
「世界に目を向けてみてくださいよ。時間に目を向けてください。私たちは何万年、何億年という時間の、ほんの一瞬でしかないんです。その中の違いです。……ほら、多少でしょう?」
逆に、多少じゃなきゃ何なの?
ミアからしたら鼻で笑えるレベルだ。だって何千年も生きてるし。
「その多少が大きいんだよっ!」
「まぁ、そりゃそうでしょう」
「お前、マジ何言ってんの!?」
何って、いい感じに説得する方法でしょ。
「人それぞれ、時間の感じ方が違いますから。1分を短いという人もいれば、長いという人もいる。それと同じです」
要は、感性の違いだね。
「これ以上、抵抗するのならば、実力行使であなた達を司令室に連れて行くのですが……どうします?」
「ハッ!できるもんならやってみろ」
明らかにできないだろうと高を括っているみたいですねぇ。ま、できるんですけど。
「では、遠慮なく。お話が通じないようで……残念です。情報操作」
空気に即効性の睡眠薬を元貴族くんの方へのせる。すると、元貴族くんはすぐにコテンと寝入ってしまい、周囲にいた人も少し眠そうになった。……うん、今度からは範囲指定にするか、小規模の結界を用意してその中でやろう。二次被害が半端ない。
「あ、そっちのベッロ・コスタ校の生徒も同行をお願いできます?」
何せ、重要参考人?ですからね。別に拒否するならすればいい。私に考えがあるし。
簡単簡単。
元貴族くんと同じようにすればいいだけだ。
「わ、わかりました……行き、ます……」
うん、心良い返事がもらえて良かったよ。別に、とって食おうとしているわけじゃないし、そんな怯えてほしくはないんだけどなぁ。
「情報浮遊」
元貴族くんを魔法で浮かせ、移動させる準備をする。
「王都校副会長、紫月稜華です。C-2区での事態は収束しました。只今より、司令室に向かいます。繰り返します──」
よし、これで向こう側の受け入れ準備もできるでしょ。
「それじゃ、移動しましょうか」
ベッロ・コスタ校の生徒は疑問符を浮かべている。何、そんなに難しいことじゃないさ。
私は周りに人がいないことを確認し、魔法を発動した。
「……範囲指定、半径5メートル。司令室へ転移」
あ、転移魔法使うんだったら、情報浮遊、させなくてもよかったね。魔力の無駄遣いだった。
「連れてきました」
司令室で当番をしていた人たちは呆気に取られている。
「あ、今寝ているの……王都校の方は、うるさかったので。多分、10分もしないうちに目を覚ますと思います」
「すまない、遅くなった!」
突然、バン、と勢いよく入り口の扉が開き、1人の男子生徒が司令室に入ってきた。
「ベッロ・コスタ校生徒会長の冴島だ。この度、我が校の生徒がご迷惑をおかけし、申し訳なかった」
ブンっと勢いよく直角に頭を下げられ、困惑する。
「えっと……顔をあげてください。その、迷惑をかけたのはウチも同じなので。ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」
すっごい真面目ですね、この生徒会長。
それにしても、生徒会長、メンツ濃すぎです。最強、和風お嬢様、天才奏者、魔術師の研究成果、生真面目……。
どうなってんですか、ホント。
「それでは、見回りを続けるので失礼するっ!」
そう言い、颯爽と冴島フーガは司令室を出て行った。それと入れ替わりに生徒が入ってくる。
「……紫月稜華」
え?
どこか冷たさを帯びる声に、私は振り返る。
「青龍希翠、会長……」
各学園の生徒会長が出てきました。
冴島フーガは真面目すぎて話を斜め上に捉えてしまいます




