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83 王都に繰り出せ!

「……以上で、第2回合同文化祭運営委員会を終了します」


翌日、お昼前。

早くも打ち合わせが終わった。

桜川さんはあの可愛い口調になることもなく。……うん、安心したけど残念だね。


「稜華さん」

「……本当に行くんですか?」

「ええ。もちろんですわ」


え〜。

マジですか。


「稜華、どこかに行くの?」

「あ……うん、引きずり出されるって言う方が正しいかな」

「人聞の悪いことを言わないでくださいまし!」


だって事実なんだもん。

ねぇ、飛華〜、私を救い出して〜……なんてね。


「と言うわけで、稜華さんはわたくしが借りますわ。……よろしくて?紫月会長」

「……私は、構いません。よろしくお願いします、フラウト会長」


なんなの、これ!

なんか、お泊まりに出される子供みたいなんですけど!?


「と言うわけで行きますわよ、伊緒さん、稜華さん」


……私は王都に連れ出された。


「……それでセレーナさん、どこに行くのかしら?」

「伊緒さん?」


なぜかセレーナさんが謎の圧をかけています。


「……あの口調のこと?」

「そうですわ」

「絶対外では話さないわよ。誘拐の可能性もあるんだから」


……あ。

ソ、ソソ、ソウデスネー。

確か、あの可愛い口調は桜川さんの一族だけだっけ? だから個人情報が丸わかり、と言うわけか。


「それと、しっかり口調を崩しなさい」

「分かりました」


なんか、お嬢様感が隠しきれていないです。言葉の恥からお嬢様感が滲み出るっていうか……。


「稜華さんも良い?」

「分かりましたけど」


私は普段と変わらないと思うんですよね。

だって、山の中に住んでいましたから。


「いえ、ここは王都らしく稜華ちゃん、でしょうか」

「セレーナ先輩、何者ですか!?」

「え?先輩です」


違う!そう言うことを聞きたかったわけじゃない!


「まぁ、細かいことは良いから。行くわよ、セレーナ、稜華」


……なんだろう、このピッタリ感というか……。

私達は並んで闘技場を出てお店が並んでいる地区に行く。


「ところでセレーナ、今日の目的は何なの?」

「ありません」


え?ないんですか。

ないのに私、連れ出されたんですか?


「先輩、私、帰っていいですか?」

「ダメです!」

「だって、目的がないのに街に来るとか、意味ないですって」

「貴女、それで全世界的に回しましたよ」

「セレーナ、言い過ぎよ」


そうだそうだー!

全世界はないね。例えば、ミアとかヘリコニア先生とか。絶対に目的が無かったら来ないよ。目的があってもこなさそうだけどね。


「じゃあ、稜華ちゃんのオシャレに付き合いましょう」

「なんでそうなるんですか!? 意味不明です!」

「王都校、冬休み前にダンジョン(地下迷宮)攻略がありますよね?」


なにそれ。


「そうなんですか?」


桜川さんとセレーナさんは絶句する。


「ねぇ、セレーナ。この子、大丈夫かしら」

「ま、まぁ、学園は実力主義だし、時々性格がひん曲がっているヤツが生徒会に入ることもあり、ます……」


私のこと、遠回しに貶しています?


「稜華ちゃん、その、ですね。ダンジョン攻略っていうのは──」


まとめると、冬休み前のビックイベントらしい。

そこで6人パーティーを作り、学園の敷地内にあるダンジョンを攻略するのだとか。そのダンジョン攻略で重要なのは、魔法具の作成と情報の共有、らしい。


「だから、情報共有の魔法具のためにその下地となるアクセサリーを買ったら良いかな、と。それに、普段使いのものにもなりますし……」


いやいや……。魔法具を普段使いにするとか、どれだけですか。贅沢極まりないですよ。


「気に入ったモノがあれば言ってくれる? 私が買うから」

「ヒュ〜! 伊緒先輩、太っ腹〜!」

「絶対太ってなんかないわ!」


私も太ってはないと思います。ただ、太っ腹の意味合いが……。


「……というか、今更ですけど、制服を着ている時点でかなりの身バレはしていません?」

「「あ……」」


今更すぎるけど、ねぇ……。


「い、行きますわよ、伊緒さん、稜華さん!」

「ちょ、どこに……」

「アパレルショップですわ!」


はぁ、そうですか。

口調が戻っていますけど、この際、どうでもいいんでしょうね。


「アパレルショップ……ってなんですか、セレーナさん」

「アパレルショップはアパレルショップですわ。服を売っているところです」

「服を売っている……あぁ、呉服屋のことですね」


わぁ、育ちの良さが丸わかりです。


「……先輩、街に溶け込みたいんですよね?」

「そうですわよ、稜華さん」

「今まで、どうしていました?」

「……え?私服で」


……マジですか。

嫌な予感しかしないんですけど。


「ちなみに、私服って……」

「普通のドレスですけれど」

「着物よ」

「……古着屋、行きましょう」


これ、絶対今まで悪目立ちしていたよ。

だって、こんなになんかお嬢様なんだもん。きっと、街で浮くような服を着て出歩いていたんでしょう。よく誘拐、されなかったね。王都校って結構なエリート校だし、そう言う危険が伴うと思うんだけど。


「古着屋?って何ですの?」

「庶民の服屋です」


ええ、ええ、そうです。庶民の服屋に行くんです!

服とかの身なりって、人の貧富を明らかに示すものだ。だから、見た目のに付かないことをすると、怪しまれる。2人はお嬢様だし、お小遣いは私達の生活費ぐらいあるのだろう。

だから、多少はセーブしてもらって中流家庭ぐらいの服がいいかな。それ以上はちょっと目立つもんね。


「稜華さん? どこまで行くのです?」

「そこそこのお店まで。……ああ、ここでちょうどいいですね」


私はお店に入り、ちょうどいい感じの服を買う。……2人のも。

服選びは絶対に任せてはいけない。私だって胸をはれるほど上手くはないけど、多少は陽華と夢華に仕込まれているから何とかなる、はず。


「はい、着替えてください。制服は私が寮に送るんで」


テキトーに部屋に転移させておけば問題ないだろう。


「……伊緒さん」

「セレーナさん」

「稜華さんが……」

「そうね。稜華が」


「「スマートですっ!」」


はぁ?


「早くしてくれます?」


私、早く終わらせたいんだよね。帰りたいもん。

2人が着替え終わり、私も来ていた制服を転移させたことでやっとこさ町を出歩く。

そう、やっとだよっ!


「えっと、魔法に耐えられる物が売っているのはこっちのお店ですわ」

「なんでそれは把握しているのよ」

「わたくし、行く先々は入念にチェックする派ですの!」


へぇ~。

その過程の前に目立ったらどうしようもないけどね。

特にセレーナさん? 口調が戻っておりますよ。


「着きましたわ! このお店、評判が良いのです」


評判が。

評判で決めるんですか。これだからお金持ちは……。


「こじんまりした個人店で知名度は低いものも上質なものが手に入るということらしいですわ」


確かにここは王都の通りから少し外れた、奥まったところにある。少し寂れた感じもするけど、作りはしっかりしているお店だ。

セレーナさんはドアを引き、店に入る。カランカラン、と軽い音が鳴った。


「いらっしゃい」


店の中は雑貨屋みたいだ。

本やアクセサリー、観葉植物。服や帽子、ぬいぐるみなんかもある。とにかく雑多に色々なものがあるようなイメージだ。

通路は狭く、ただ、通れないほどでもない。


「ほら、伊緒さんも稜華さんも気に入ったものを探してみてくださいね。わたくしもお金、出しますので」

「いや、普通に自分で買うんで大丈夫です」


おごられるのは嬉しいけど、悲しい?です。


「ええ、ウチも。自分で買うからいいわよ。お金は大事にしなさい」


そうですそうです。

いくらセレーナさんが宮廷音楽家として稼いでいたとしても、貯金はしておいたほうが良いです。特に、いつ失職するか分からないのであれば、なおさらに。


「……分かりましたわ。今回は」


今回はって言うところが凄く心配なんですけど。

私はお店の中を歩き、物色する。……だけど、まぁ、普通のお店だね。

これと言ってほしいものはない。高級素材もないし……。


「稜華さん、決まった?」

「買うのは絶対なんですか?」

「違うけれど……ないの?ほしいもの」

「ないです」


だって私、あんまりこだわりはないし。物が増えると、整理するのが大変だし……。


「そんなことはないはずよ」

「あるんですよ」

「……お店。見てごらん?」


私は桜川さんに肩をつかまれ、店を眺める。


「素敵だなって思う物。綺麗だなって思う物。欲しいなって思う物……なにか、あるんじゃないかしら? だって、これだけ品数があるんだもの」


素敵。綺麗。欲しい……。


「広いところから全体を見たり、近くに行ってみたり。きっと、今までに見えなかったものが見えてくるわよ」


全体と、近く……。

視界の端に、キラリ、と何かが反射した。






「……これ……」

イケイケな2人のお嬢様は箱入りでした。

ちなみに今まで2人が街へ出る時、こっそり桜川家の護衛とフラウト家の護衛がついていました。(もちろん2人はそんなことを知らず、護衛は毎度毎度ヒヤヒヤして寿命が縮みかけていた)

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