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80 こいつらの驚く顔が見たいんだもの

「ああ、ちなみにあんたが敬愛していた〈赤の魔術師〉殿は魔術師狩りで真っ向から王に直談判して、真っ先に処刑されかけた。一回は逃げたようだが、また捕まり、処刑されたのだとか」


マジですか。

意外とあっけないものだ。永遠の時を生き、栄華を誇ったと言われたのに。


「あの暑苦しい〈赤の魔術師〉殿らしい死に様だ」


ちょ、それ以上は言わない方が……。

ミアの沸点が心配なんですけど……。


「〈赤の魔術師〉様を……エレノア様を、侮辱するなっ!!」


わぁ、ミアがブチギレしちゃった。


「エレノア様は……誰よりも強くて、高潔で、明るく、美しい方なの!」


ミアもかなりの美人なんだけどなぁ。

そんなミアが言う美しい方を私は見てみたいです。


「エレノア様は、憧れの女性なの!」


え?

え、エレノア様……憧れの女性?

エレノア様=〈赤の魔術師〉……。

えーーー!?

〈赤の魔術師〉って、女性だったんですか!?

今までの話のイメージから180度回転しましたよ!?


「いいからさっさと落ち着け」

「そ、そそ、そうですね、ミア。と、とりあえず落ち着きましょう」

「そういう稜華が一番混乱している!」


そんなわけ……あるかもしれないですね。


「というかあんた、他の魔術師が生きていないとか言っておきながらわたくしにあんなことを言ったの!?」


ああ、あの守れますかって話か。


「……何か問題でも?試したかっただけ。貴女が、どれだけの力を持っているのかを」


うわっ。

性格悪っ!


「それに、私と貴女しかもう魔術師はいないし、仮定の話だ」

「いるわよ」


え?

ミア?


「いるわよ。魔術師」

「は?」


〈青の魔術師〉と青龍希翠もビックリですよ?


「ついこの間、夏に姉妹が見つけてきたのよ。ねぇ、稜華?」

「そうですけど……言っていいんですか?」

「いいわ」


そう言うミアはドヤ顔だ。

なぜにドヤ顔?


「だって、こいつらの驚く顔が見たいんだもの」

「というか、お前はさっきから上司のことをお前だのこいつだの言うな!」

「何のことですか?もう、魔術師は私とあんた以外いない、滅亡されたとされるもの。上下関係も一緒に滅びているのでは?」

「お前なぁ……」


……あー、うん、そうだね。

ミア、〈青の魔術師〉のこと、嫌味を言うだの何だの言っていたよね。


「稜華。さっさと説明してあげなさいっ!」

「……いいですけど、そのハイテンションをどうにかした方がいいと思います」

「……そうね」


ですよね〜。


「えっと、私、というか私達が接触した魔術師は三次色〈青緑の魔術師〉ブレッザ・プリマヴェリーレ、です」

「青緑!?」


〈青の魔術師〉は驚いたような声をあげる。

ミアはその様子を見てご満悦のようだ。


「アイツ……真っ先に行方不明になったよな……よく生きていたな」

「生きている、と言うか、寝ていましたね」


コールドスリープマシーンで。


「は?寝る?」

「はい。とある地域の祠で、ずっと冬眠していたみたいです。魔術師狩りから私達が行くまで、おそらく誰とも接触していない様子ですね」


一応、どこにあるかは伏せておこう。

これからの交渉材料にもなる。


「それ、自分から起きれるのか?」

「多分無理です」

「……アイツ、馬鹿じゃね?」


……。

ノーコメで。


「ま、まぁ、また寝たんですけどね」

「……アイツ、馬鹿すぎないか?」


コメントしようもないことを言わんでください。


「自分で起きれないのだから、下手したらずっと孤独に仮死状態の可能性もありましたね。やはり、あんたのところの魔術師、ダメダメね」

「はぁ?それを言うならお前のところのオリアナ?だったか?お前の弟子。アイツ、真っ先に見せしめにされていたぞ?警戒心なさすぎだろ」

「それはしょうがないです。誰も……あんなことになるとは、思いませんでした」


オリアナ。

ミアの、弟子。


──  、行ってきます!

──師匠、行ってきます!


──  、ちゃんと、休養は取ってください!

──師匠、ちゃんと、休養は取ってください!


───師匠!ミア様!


そう。そうだ。知ってる。()()から。

ある日、出かけて帰ってこなかった、魔術師狩りの一番最初の、犠牲。

『私』……ミアの、5歳年下で、聖女みたいな、子。


「で?アイツはどこにいる?」


……もしかして、時々見えるあの場面は、ミアの記憶?

そうだった場合……私は、ミアの記憶を知っているの?


「……紫月稜華?」

「ハイっ!?」

「〈青緑の魔術師〉はどこにいる?」

「あ……はい、その件ですね。居場所は、言いません」

「はぁ!?」


だって、当たり前じゃない。


「私達、タダでこの情報を話しているんです。……その意味、分かります?」

「……何を要求している」

「もちろん、敵対しないという契約を」


敵には、なってほしくない。めんどくさいから。

内側からの裏切りが一番厄介で面倒なのだ。


「敵対などしないつもりだが?」

「それはあくまでつもり。先ほども言ったように、絶対なんてありませんわ」


そう。ミアの言う通りだよ。

絶対なんてない!


「……それは、一理ある。その契約、受けさせてもらおう」

「ありがとございま〜す!」

「裏切ったらその分報復する」

「それはこっちのセリフ。わたくしは……わたくし達は、やられたら倍返しするので」


さっきからも思ってたけど、話せば話すほどミアのお嬢様キャラが崩壊していく……。

いや、元々お嬢様キャラじゃないのか?

と言うか、私から話題を振っておいて、だけど。いつまで続くのかなぁ。

私、夕ご飯食べてないんだよね。研究室に置きっぱなしだし。

それに、明日も打ち合わせがあるんだよ?朝から!

やってやれないです。さっさと契約しちゃいましょう。


「えーっと、一つ、互いを害さない。一つ、敵対行動になることを行わない。一つ、魔術師のことは秘する。一つ、過度な干渉はしない」


うん、こんな感じかな。

あ、あと一つあったね。


「一つ、青龍希翠は紫月稜華に関わらない」


うん、おっけー。


「異常が契約の内容になります。承認される場合は……」

「「ちょっと待て」」

「続けていいわ」

「では、続け……」

「「だから待てって言っているんだよ!!」」


え〜?

青組さん、文句ばっかり〜。


「理不尽だ。なぜ俺が……」

「あと、何で【研究成果】が仕切っている?」


あ、そう。

そうですか。


「じゃあ、勝手にしてくださいよ。私、正直どうでもいいんですよ。ミアの……私達の邪魔にならなければ」

「そうね。じゃあ、これでどう?」


ミアは不敵な笑みを浮かべた。


「一つ、互いを害さない。一つ、敵対行動になることを行わない。一つ、魔術師のことは秘する。一つ、過度な干渉はしない。一つ、一方が危機的状況、または困難な状況にある場合は、もう一方が一方に助力する」


おおー。

流石ミア。さすミア。

すごく簡潔で利益ばっかりです!


「どうでしょう?」

「それで構わない。希翠もいいか?」

「大丈夫です」


うんうん、よかったよかった。

無事解決になりそうだね〜。


「では、こちらに署名を」


ミアが軽く手を振るとどこからもなく紙が現れる。

……すっごい高級そうですね〜。

チラッと見えた感じ、先ほどミアが言った内容が書かれているようだった。

ミアもサラサラと署名をすると、紙を宙に投げた。


「おい、下がれ」


青龍希翠に引っ張られ、数歩後退する。


「何でですか」

「いいから下がれ。契約魔術に巻き込まれるぞ」


あ、はい、そう言うことですか。理解しました。


「記載した内容を、二次色〈紫の魔術師〉レッダ・ミアは契約します」

「同様の内容をを原色〈青の魔術師〉チェーロ・アッズーロは契約する」


2人の魔術師は空気に魔力を乗せ、魔法陣を描く。

……わああぁぁ……!

リアル・生!魔法陣!

ちゃんと目に焼き付けないと!

せっかくの魔法陣だし、ちゃんと法則性の検証をしたい。


それにしても、綺麗だ。

あの祠の魔法陣より、何倍、何十倍……何千倍も、綺麗だ。

均一で、対称で……綺麗だ。


紫と青が、絡み合う。

そして、強く、輝いて。

強く、強く、輝いて。

幻想的な、美しい風景を醸し出す。

その美しい景色に、惚れ惚れする。

一瞬たりとも、目を離せない。

離すのが、とても惜しい。

言葉では表しきれないような美しさ。

言葉以外、何で表すんだって話になるかもしれないけど。


そして、一層強く輝いて。











夜の闇に霧散した。

お読みくださり、ありがとうございました。

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