64 動物でも龍でもいいんだけど。
「……知り合いで、協力が頼めそうな強い人?とかいる?」
別に、人じゃないといけないわけじゃない。
動物でも、龍でもいいんだけど。
「人じゃないけど……いるよ」
いるんかいっ!
「じゃあ、次の戦いで、よびだすことって、できる?」
「……むずかしいかな。部屋をこわしちゃうとおもう。ここにはよべないから、わたしのほうから、協力、おねがいしよっか?」
「……お願いします」
試合まで、あと数時間。
**
「それではみなさんお待ちかね、前・生徒会長、3年、紫月飛華さんとその妹の1年、紫月稜華さんの試合です!」
目の前には、飛華。
いつもはハーフアップにしている髪をポニーテールにまとめていて、動きやすそうだ。
「本日、最終試合!いやぁ、今日で生徒会選任祭が思ってしまうと思うと、残念ですね」
「そうですね〜。地獄のじゅ……じゃなかった、地獄とは真反対にような楽しい日々でした」
本日、最終試合。
最終日の、1番最後の試合。それが、飛華と私に与えられた時間であり、ステージだ。
それより、実況解説の人、さっき、地獄の授業って言いかけたよね。途中でなんとか(?)言い直したけど。大丈夫か?
「飛華せんぱ~い!」
あちこちからは、飛華を応援する声。
飛華は曖昧な笑みを浮かべ、手を振っている。
……飛華にとって迷惑だからやめてほしいなぁ。こんなこと言ったら怒られるだろうけど。
「この試合は生徒会長決定戦ともなりますね〜」
そう。これまでに飛華が8勝2敗、私も8勝2敗。
だから、これが分かれ目となるのだ。まぁ、私は別に生徒会長にならなくてもいいんだけどね。
ちなみに飛華は陽華と麗羅先輩に負けていた。
「静粛にっ!」
その声で、多少、静かになった。あくまで、多少。
「それでは、始めッ!」
それと共に、一瞬だけ静かになった会場は、また大きく盛り上がる。
だけど、そんなことを気にしている暇はなかった。
「インフォマルマツィオーネ・スクード」
「フィアンマ・ランチャ!」
同時の、魔法発動。私が張った情報の盾によって、飛華の炎の槍は消滅する。
まぁ、これは普通だろう。だけど、固まっているのは愚の骨頂。
「ヴォルペ」
「りょうかいっ!」
ヴォルペは姿を現さないものも、私の一言で何をするか把握する。流石、私のヴォルペ。
「いでよっ!我がしんゆう、フォルテ・エニーチェ!」
あ、友から親友にランクアップしているね。
そして現れたフォルテさんは鳥の姿をしている。……ネラさんより分かりやすいね。あの方は謎の生物でしたから。
フォルテさんはとっても大きいですが、鳥です。長いくちばしに、大きな翼。全身に水をまとっている。火属性の攻撃系魔法をよく使う飛華にとっては難敵だろう。
「ヴォルペ、ありがと」
「うん!えっとね、エニーは物理こうげきが得意なんだよ!」
今回はエニーチェを縮めてエニーですね。分かりました。
それから、力には力で対抗するって事か。
飛華は次々と魔法を発動しているが、ことごとくフォルテさんによって、私に届くのを阻止されている。
……アレ、攻撃を素手で潰しているよね。ある意味すごい。
「情報対象、紫月飛華。移動対象、紫月飛華。移動座標位置、コート外。精霊、アルジェント・ヴォルペの名において、魔法発動」
陽華の時と同じく、あとは魔法発動の言葉を言うだけだ。
飛華はめげず、更に強烈な魔法を放つ。
フォルテさんがいるからまだどうにかなっているけど、いなかったら、と考えると恐ろしい。
フォルテさんは攻撃を砕くだけでなく、時々その巨体で攻撃している。
飛華も器用に避けながら攻撃を続けている。ものすごい体力と集中力だ。
流石飛華、というべきか。
鍛え方が、私と違う。もともとの素質と、努力。
その二つが更に飛華を強くしているということがよくわかる。
「フィアンマ・アルコ、百連!」
百連!?
そんなものを食らったら、ひとたまりもない。
フォルテさんも上手く魔法をつぶしてくれているようだが、さすがにすべての魔法を防ぐことは無理そうだ。攻撃が、飛んでくる。
「アタッコ・フォルテ!」
魔法が、攻撃が。
更に、強く、鋭く、早くなる。
目の前には、無数の攻撃。
「情報強化」
盾を強く、分厚くして攻撃をできるだけ中和できるようにする。
この中和、と言うのが重要なポイントだ。盾の外、というか、盾に入っていないフォルテさんに攻撃が当たる可能性があるから。
「情報分解」
とくに強そうな攻撃は、今の段階で分解させておく。
そしてドドド……と、雨のように攻撃が当たるも、弱いものばかり。
もちろん、私は無傷だ。
そして続く、飛華とフォルテさんの攻防。
いつに立っても、勝負がつきそうにない。
あえて言うのならば、お互いの魔力が枯渇したときだろうか。
『いつかの魔法って、チート能力、だよね。』
突然、ヴォルペの声が蘇った。
そのことを言われたのは、いつだっただろうか。
何年前だっただろうか。
……7年前。5歳の、大雨の日だった。
あの時の私はまだ、魔法の適性がある、普通の子供だ。
少なくとも、今ほど世界が白黒ではなかったと思う。
……白黒になったのは、すぐその後。6歳の時だから。
**
「いつかは、普通じゃないんだよ」
私は、あの日の私は姿の見えない子と、話していた。
……幼い頃の私は、ヴォルペが見えなかった。
何はともあれ、そう言われて傷ついたと思う。
「いつかは、魔法がすごいの。わたし、いつか見たいな人、見たことないもん」
「ありがと!」
褒めてくれたヴォルペに、つい先程まで傷ついていたことを忘れて、私はただ素直に言う。
「ねぇ、ところでちーとのうりょく、ってなに?」
私は、迷い込んでしまった、あるところにいて。
雨が降っていて、しかも大雨だから、家に帰れなかった。
迷い込んだところの人──私はミアと呼んでいた──に、雨が止むまでここにいるように言われたからだ。
ちょうどその日、話せるようになったヴォルペと、話していたのだ。
ミアのおかげで、私は話し相手が増えた……と思っていた。
「チート能力っていうのは、チート、つまり不正かいぞうと思えるほどあっとう的な能力のことだよ」
**
幼い私は、ヴォルペの言っていることの半分もわからなかった。
だけど、今なら、分かる。
情報系魔法は、考え方次第で様々な応用が効く。
召喚系魔法は、様々なモノを呼び出せる。
適性魔法じゃないけど……転移魔法は、自他を好きなところへ飛ばすことができる。
適性魔法が2つある時点で、ヴォルペの言っていたチート、なのか?
それは、今の私の疑問であり、謎……でもあると思う。
「悪いけど、私の辞書に負けるなんて言葉、ないのっ!」
飛華は正攻法で私に勝とうとしている。
……だけど、私は?
ヴォルペにはヴォルペとかの協力もあってこそ私の実力だなんて、言ったけど……。
それは、本当なの?
このまま、勝ちに持っていって、いいの?
これは、ズルいんじゃないの?
頭の中で、問答が起こる。
「いつかっ!」
ヴォルペの、叫び声。
飛華の攻撃が、すぐ目の前に迫っていた。
今までで1番早くて、鋭くて、強くて、綺麗な魔法であり、攻撃。
……魔法、発動させないと。
魔法を、使わないと。
情報を、分解しないと。
じゃないと、あの魔法で。
盾を破られて、身を焼かれて。
魔法、発動させないと。
……それは、本当に正しいことなの?
そう問いかけたのは、私の中の天使と悪魔、どちらだろう。
もしかしたら、幼い私、なのかもしれない。
うまく、こきゅうが、できない。
手が震えて、手汗が増えて、足が震えて、心拍数が増えて。
やっぱり目の前には攻撃が迫っていて。
うまく、できなくて。
迫り来る攻撃を私は、スローモーションで見る。
……私は、やっぱり死ぬんだ。
「っ!はんしゃっ!」
ヴォルペが、魔法を発動した。
一時的に、死を回避する。だけど、私は、負けた。
反射魔法は、Sランク魔法だもの。
お読みくださり、ありがとうございました。




