57 予選
「貴女がわたくしの最初の対戦相手?……弱そうだわ」
……何?なんなの、この人。
信じられないんだけど。初対面で侮辱してくるとか。
「この人は1年生の生徒会候補生らしいですが……今年、生徒会に入られたクトリーナ様なら、大丈夫ですよ!こんな平民分際に負けるわけありませんわ!」
そうよそうよ、と周囲の取り巻きさんたちがまくしたてる。
そのクツリーナとやらはフンっと鼻を鳴らして言った。
「当り前ですわ。わたくしが負けるなど、あるわけないじゃないの」
はあぁ??
飛華、というか、風華とか美華にも負けたから生徒会第3位にもなれてないんでしょ?
何を偉そうに。
「こんな1年生がわたくしに勝てるはずありませんもの」
「そうですわ!クトリーナ様は現在、4年生。つまり、最大限に実力が発揮できるときです!」
……意味わかんない。
別に4年生じゃなくても実力は実力でしょ。最大限かは自分のさじ具合。
というか、このとりっこ1号さん。
私を平民分際って言いましたね?
「クモリーナさん、あなた達って、元貴族ですか?」
「……貴女、何て言いました?」
え?
そんなに耳が悪かったんだ。知らなかったです。では、もう1度言わせていただきます。
「クツリーナさん、あなた達って、元貴族ですか?」
「元とは何です、元とは!」
「貴族、なくなったんですよ?わからないんですか?」
だから、ある階級は王族と平民だよ?
まぁ、平民の中でもいろいろな階級っぽいのはあるけど。
「それに、なんなんです!?そのクモだのクツだのと言うのは!わたくしはクトリーナですわっ!それに、貴女より年上ですのよっ!」
へぇ~、そうなんですか。
「それはそれは大変失礼しました。クナンリーナ、先輩?」
「きぃ~~~!!」
わぁお。
リアルハンカチ噛みだ。
ホントにやるんだね、凄い凄い。
「……あの、お話はもういいですか?」
控えめに審判役の生徒が声をかけてくる。
「あ、すみません。私はいつでも大丈夫です」
「そ、そうですか」
え?
なんでそこで引いたような顔をするの?
「えっと……では、4年生、カトリーナさん……」
「クトリーナですわっ!」
間髪入れずに怒鳴り返されていました。
頑張ってください、先輩。
「し、失礼しましたっ!」
ぺこぺことお辞儀する先輩。
大変ですね。
いや、私のせいか。
馬鹿にされてイラついたから喧嘩を売って、それがうつっちゃったんだね。
頑張ってください。
「そっ、それでは、第5ブロック、第1試合。4年生、カトリーナさんと、1年生、紫月稜華さんの試合を始めさせていただきます」
いよいよですね。
ワクワクします。
このトリリーナさんがどんな魔法を使ってくるのか。
「……それでは、始めっ!」
「ファイヤー!」
先手必勝的に魔法を放ってきますね。
かなり高威力の魔法です。
炎を何の加工もせず、ただ飛ばすまさに1発目、と言う魔法。
「これで貴女も終わりですわっ!」
そのセリフから聞くに、かなり自信があるんだろうね。
となると、私が燃えたほうが面白いかなぁ。
「耐熱シールド。耐火シールド」
私だって、防御魔法が使えないわけじゃないんだよね。
もちろん、陽華より劣るんだけど。
炎の塊が直撃し、私の周囲は火に包まれる。
だけど、全然熱くないし、燃えないよね。
さて、そろそろ行きますか。
「情報分解」
その一言で、私の周りを包んでいた炎が消える。
シールドを解除すると私は顔を上げた。
少し遠くには、驚愕しているトンリーナさんがいる。
……それでは、私の番ですね?
別に、順番があるわけじゃなんだけど。
「情報操作」
情報を、飛ばす。
宿題の時と同じだ。『情報』を、飛ばす。コートの外に。
「勝者、1年、紫月稜華!」
「そんなの、間違っていますわっ!」
いや、間違ってないでしょ。
喚くトチリーナさんを横目に、私はコートを降りる。
……よし。とりあえず、一回戦突破。
周囲は、シンとしたままだ。
そりゃそうかもね。
最速で試合を終えただけでなく、炎に包まれていたのにいきなりその炎が消えて、無傷で私は出てきたんだもん。
そればかりか、いつの間にかコートの外に飛ばされているんだから。
しかも、私は全く動いていない。魔法詠唱で動いた、口以外。
とりあえず、勝った。それ以上でも、それ以下でもない。
私は寮の部屋に転移し、涼む。
だって、外って暑いんだもん。
引きこもりの私には不利だよね。
それに、2回戦まではまだまだ時間があるし、ゆっくりしよう。
会場の映像を反対側の壁に映し出し、わたしはベッドに寝っ転がった。
そして2回戦。
そんなに時間が経たずに始まる。もっと時間がかかると思っていたんだけど。
まぁ、早く終わる分には問題ないか。
その分、休みが増えてくれないかなー。
地味に日光が辛いし。
コートに立ったのはすごく筋肉質な人だ。
「君が1年の生徒会候補生か。よろしく頼む」
なぜか急に握手を求められる。
え。怖いんだけど。
だって、向こうは見上げるほど背が高いんだよ?
手だって、めちゃくちゃ大きいわけで。
握手した途端に折れそう。私の手が。
「はい、余計なことはしない。それでは、始めま〜す。始めッ!」
え!?
なんかすごく急なんだけど!?
そして相手は開始と同時に猛スピードで突っ込んでくる!
嘘!?
そんなのアリ!?
怖いよ!
「っ、情報加速」
少し、というかかなり横に移動する。私の最高速度で。
その横を、対戦相手は通り過ぎる。
「場外に出たことにより、勝者、1年紫月!あ、3つ子の真ん中の方ね!」
わー、すごくテキトー。
大丈夫ですかー。
とにかく、2回戦突破です。
選任祭に出る生徒は40人×4クラスが4学年で640人ほど。
その中で12ブロックに分かれるから、1ブロックあたり、53人ほどのはず。54人のところもあるだろうけど。で、選手、というか、参加する生徒は1回戦ごとに半減していく、はず。
となると、全部で5回戦か6回戦勝ち抜けばいいはずだ。
幸いにも(?)同じブロックに姉妹はいないし。
というか、姉妹がブロックになったらかなりきついよね。
「第3回戦〜、3年生、ジュリーナさんとと1年、紫月稜華さんの試合を始めます〜。両者〜、準備はいいですか〜?」
は〜いって、そんなに呑気にしていられないよっ!
「ごめんなさい、ごめんなさい……私なんかが3回戦に出てしまってごめんなさい……」
ブツブツと呟くジュリーナ?さん。
相当気が弱いのか、引っ込み思案なのか、自己肯定感が低いのか。はたまた、そういう自分に惚れているのか。果たしてどちらでしょうか。
まぁ、私の知ったことじゃないですけどね。
「では〜、初め〜」
それにしても穏やかっていうか……気の抜けた審判の方ですね。
「さっさと、いなくなればいいのよっ!」
わ、怖。
さすが3回戦まで出てきた人、というべきだろうか。だけど、雑さが目立つ。
威力はすごいある。だけど、それだけ。
例えるならば、素人が扱う刃物、だろうか。
まぁ、私には大したことではありませんけどね。
「情報分解」
ただその一言で終わるので。
相当な魔法でない限り。問題は、どうやってコート外に出すか、だ。
1回戦の……えっと、なんとかリーナさん?そんな感じの名前の人みたいに情報として飛ばしてもいいんだけど、抵抗された時が怖いんだよね。
だからと言って、2回戦の人みたいに、突っ込んでくるわけでもないし。
どうしよっかな〜。
転移させて、加速させたから……今度は減速させてみる?いや、後退、かな。
上手くできるかわからないけど、やってみましょう。
ダメそうならリスクは承知で転移させよう。
うん、そうしよう。
「情報後退」
ズリズリズリ……とサンリーナさんが後退していく。
うん、うまく行ったみたい。よかった。
そして、3リーナさんがコートの外に出た。
「勝者は〜、1年、紫月稜華さんです〜。おめでとうございま〜す〜」
あ、はい。ありがとうございます。
……とまぁ、こんな感じで勝ち抜いていき。
他のブロックも、次々と試合が進んでいく。
「第5ブロックからは、1年生の紫月稜華さんが生徒会に入ることになりました!」
他のブロックとすり合わせをした結果、いい感じに学年がバラけていたみたいだ。
だから、生徒会入りが確定する。
「本戦、通称総当たり戦は、明日、開始します!」
そう告げられ、今日の生徒会選任祭予選は終わった。
すごいね。400人以上の生徒を2日で12人にまで絞るなんて。その手腕に驚嘆しますよ、私。
私は部屋に帰り、全員に配布された生徒会メンバー(仮)の紙を見る。
第1ブロックより、3年 紫月飛華。
第2ブロックより、4年 ニア・ミニア。
第3ブロックより、1年 紫月夢華。
第4ブロックより、2年 紫月風華。
第5ブロックより、私、1年 紫月稜華。
第6ブロックより、4年 ティリ・ヴェラルド。
第7ブロックより、2年 ブリツィオ・バスキ。
第8ブロックより、1年 紫月陽華。
第9ブロックより、2年 紫月美華。
第10ブロックより、4年 風瀬真。
第11ブロックより、1年 津城つむぎ。
第12ブロックより、3年 仙水麗羅。
以上が生徒会メンバー。
……そして、私と戦う人達。
予選終了。
次回からは本戦です!




