54 生徒会選任祭、です
「おはよ~」
久しぶりの教室。
みんな、笑顔で手を振って話していたりする。
すごいね。夏休み明けなのに。
『クガツビョウ』とか、ないのかなぁ。
怠惰な生活から抜け出さなきゃいけないんだよ?
授業が始まるんだよ?
なのに、みんななぜか、テンション高めだ。
「おはようございます、陽華さん、稜華さん、夢華さん」
「おはよ〜、つむぎちゃん」
「久しぶりだね」
あ、津城さんですね。
お久しぶりです。
実際、あんまり時間は経っていないけど、夏休み、いろいろありすぎて濃かったし。
そして宿題の量も半端なかったです。
旅行から帰った後は地獄のようだったね。
みんな、ヒィヒィ言いながらやっていた。
飛華は涼しい顔をして3日もせずに終わらせているし。
風華と美華は天才的な頭脳で3日で終わらせたし。
私達3つ子は旅行から帰ってきて1週間は宿題週間だったよ、うん。
陽華は半泣きだったね。休みたい〜って。
まぁ、気持ちはわかるよ。私もそうだったもん。
何度、研究室に逃げようとしたか……。ただ、宿題が終わって監督していた飛華によって逃亡は阻止された。そして机にずっと向かうことに……飛華はスパルタだよね。
「よっしゃ~!祭りだっ!」
祭り?
どういうことだろ?
「楽しみだな!」
なんで?
授業じゃないの?
「生徒会選任祭、だよ、稜華ちゃん。」
生徒会、選任、祭?
なんじゃそりゃ。
いや、聞いたことある気がする。
「少なくとも、私は言ったと思うよ〜?」
そうです。
思い出しました。陽華が夏休みの時にその単語を言っていましたよね、確か。
でも、生徒会を選ぶのに、お祭りなの?
「というか、生徒会ってなんだっけ……?」
我ながらこの無知さを呪いたいです。
「生徒会は学園の実力者の集まりです。来年学園にいない現5年生は運営側に回るらしいんですけど……。それはともかく、私達が出る選任祭はトーナメント式で行われるんですけど、そこで勝ちぬいた人だけが入れるんです。……まぁ、たまに運がいいのか悪いのか、あまり強くないのに上のほうまで来ちゃう人がいるらしいんですけど」
へぇ~。
さすが津城さん。物知りですね。
そして今思い出しました。春ぐらいに、飛華から聞いた覚えがあります。
定員は12人。
トーナメントで勝ち抜いた上位者が入る。
しかし、各学年最低1人はいることを条件とする、だったかな。
私は、そのシステムがいいのかはよく分からない。
確かに、偏りがあるとその世代が卒業したとき、崩壊、なんてこともあるから、引継ぎ目的もあるんだろうけど……。実力があるのに、各学年1人いないから、と言う理由で落とされちゃうのはつらいかな。
「というか、つむぎちゃん、敬語、使わなくていいんだよ~?あと、さんづけも〜」
「いえ、そういうわけには……」
「逆になんでダメなのか、知りたいなぁ」
私、思うんだよね。夢華の口撃って、時々心をえぐるよねって。
「だって……」
「私達に気をつかう必要はない。そうでしょ?陽華ちゃん、稜華ちゃん」
「そうだよ〜」
「……うん」
夢華から、とんでもない圧が……。
ホント、この子時々恐ろしいよ。
「……分かりました。誠心誠意、努力します!」
「言っている側から敬語〜。しかも、なんかすごく硬いよ〜リラックス、リラックス〜」
「は、はい……」
3人はわちゃわちゃと戯れている。
平和、ですね〜。
あの宿題地獄が嘘のようです。
「……ところで、なんでお祭りなの?」
「……さぁ?なんででしょう?」
「つむぎちゃん、リラックス!」
「は、はい……」
「はいじゃなくて?」
「うん……」
夢華、君は一体何をしているのか?
「トーナメントって、どういうふうに決まるの〜?」
「えっと、クジです。なんでも、完全予測不能のクジらしくて……学年関係なく、クジの結果だけが残るそうです」
「それってどういう……?」
津城さんはにっこり笑って言った。
「私も分かりません」
そ、そうでござるか。
それにしても、4年生と1年生が当たったりしたら結構つらくない?技能的にも。
しかも実力順だから、ものすごいことだ。戦闘狂ばかり集まったらどうするつもりなのだろうか?
『ニッポン』では『センキョ』だから、ある意味バランスはいい。ただ、学園は実力者を入れたい。そうなると、しょうがないのかな。
「知ってる?3年の飛華先輩!1年の時、どんどん勝ち抜いたらしいよ。で、会長戦で当時4年の先輩と当たったんだけど、見事に勝ったんだって!」
「それは2年の風華先輩もでしょ?去年は飛華先輩と姉妹対決!したらしいよ」
「同じく2年の美華先輩も忘れちゃダメでしょ!双子対決、したらしいし!」
「生徒会に入っている人は2つ名、持っているよねっ!」
「生徒会選任祭で決まることが多いんだって!」
クラス中、選任祭で浮き足立っております。
それにしても、知らないことだらけだ。
というか、魔法学園ってお祭り率が高いよね。基礎魔法力検査の時もお祭り騒ぎっぽいし。
「別に生徒会に入らなくても、燃えるよなっ!」
「というか、学園で最強って、どれくらいの強さなんだよ!」
知るか。いや、知っていますけど。
というか、うるさすぎる。ホントヤダ。
逃げ出したいです。
ホント、甘く見てた。夏休み明けだし、気が緩んでいたのか、恐怖を忘れかけていたのか。どちらにせよ、こんなに早くから教室にいたのは間違えだったのかもしれない。
「……ゴメン」
私、研究室に行くね。授業の時には戻ってくるから──。
そういう言おうとしたとき、ヘリコニア先生が来た。
……タイミング、悪っ!
すると教室は水を打ったように静かに。
……どんだけ切り替え能力が優れてんねん!
そこは魔法学園に入学するだけある、と言えるか。関係ないかもしれないけど。
「さて、明日から生徒会選任祭が始まりますが、怪我をしないように気をつけること。あと、今日は始業式だけなので、騒ぎ過ぎないように」
授業さえないんかい。
というか、話の順序はあっているのか?
「では、実技場に移動してください」
それだけ言うと、ヘリコニア先生は教室から出ていく。
……相変わらずのマイペースさだ。
それにしても、明日からって急過ぎでしょ。
「稜華~、生徒会選任祭があるのは4月から決まっていたわよ~」
そんなこと、知りませんっ!
ちなみに『ニッポン』と同じく、春、4月から新年度が始まります。
暦は『チキュウ』と同じ。うん、分かりやすくていいね。
実技場に移動し、整列。
整列と言っても決まった順番があるわけではないけど。
「これから、魔法学園始業式を始めます。初めに……」
相変わらずの式だ。
なんの捻りもないね。
「続いて、生徒会長の話。三年桜組、紫月飛華さん」
飛華だっ!
始業式に参加した唯一の理由は飛華がしゃべるから。それ以上でもそれ以下でもない。
生徒会長は学園最強、つまり生徒会序列1位の者に贈られる称号で、学園の生徒トップの証だ。
入学式で飛華が在校生代表の言葉を言ったのも、飛華が生徒会長だからだ。
つまり、飛華は学園最強なのである!
さすひか!
ちなみに今日も内巻きハーフアップだ。
飛華は一礼し、話し始めた。
「今日から二学期が始まりますが、最初のイベントは生徒会選任祭です。毎年……」
というか、そんなに重要なのかな?生徒会選任祭。めっちゃ実力主義観が漂っているけど。
私は別に生徒会に入らなくていいから、トップテンには入りたいなぁ。
津城さんはトーナメントって、言っていたっけ。
そしたら、当然姉妹と当たる可能性もある。というより、誰かひとりとは絶対に当たるだろう。
私達姉妹にとって、姉妹が弱点だ。
お互い、適性魔法が違うから、消耗戦、体力戦に持ち込まれてしまうから。
そして私は、『情報』として、全てを見ないといけないから……1番の難関だ。
特に飛華を情報としてみるとか、嫌だ。でも、勝ちたいから。あの手を、使わないといけないことがあるかもしれない。
考えている間に、飛華は話を終え、ほとんどのプログラムが終わっていたみたいだ。
……飛華の話、聞きそびれちゃったなぁ。
でも、いいや。皆に向けられる言葉より、私だけに向けられる言葉のほうが、好きだから。
第4章、生徒会選任祭編、始まりです!
どうぞ、よろしくお願いします。




