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「私は、魔術師は正しかったと思う。いや、正しかった。何1つ、悪いことをしていない。そう断言するよ」


自信に満ちた答えだ。

自身に、に誇りを持ち、自信を持っている。

これは格好いい、と思う。

そして、青緑の魔術師は、再び眠りに落ちた。


「……帰る?」

「でも、どうやって帰るの?飛華ちゃん」


確かに。

転移の魔法陣、すごいことになってましたもんね。

消費魔力が、特に。


「そこの後ろに魔法陣があるよ、美華」

「脱出用魔法陣、じゃないかな、風華」


じゃあ、そこから帰ればいいよね。

と、その前に。

私は部屋の隅に行き、とあるものを仕掛ける。


「稜華、それは〜?」

「……秘密」

「え〜?」


秘密は秘密だから、秘密なんですよ?


「ねぇ、教えてよ、稜華ちゃん」

「ダメ」

「お願い」

「ダ〜メ〜」


夢華にしては珍しく引き下がらない。

……なんでだろ?


「ほんの少しでいいから」


……そこまでならいいかな。


「魔法陣、だよ」

「へぇ……そっか」


そうなんです。

ただの魔法陣なんです。

だから、そんなに気にする必要はないです。


「2人とも、もういい?帰るんだけど」


あ、はい。

そうですね。

帰りましょう。


「陽華、この魔法陣は私達で起動できそう?」

「できるよ〜。というか、Bランク魔法ぐらいの魔力で起動できるかな〜」


なら大丈夫そうですね。

よかったです。


「……なら、私が起動するけどいい?みんな、たくさん魔力使って、疲れているでしょ?」


まぁ、疲れてはいるんですが……。

飛華も飛華でかなりの魔力を使っているとは思うんだよね。

特に原始の魔法陣なんてすごく魔力を使ったし。

それに比べたら私なんてほとんど使っていないも同然だし。

というか、魔法を使った記憶がほとんどないんだよね。


「でも、飛華もかなり疲れている……よね、美華」

「うん。結構負担かけちゃっているよね、風華」


そうです。

双子のいう通りです。


「でも、みんなだってそうでしょ?」


風華は浮遊魔法。

美華は多量の水。

陽華は防御魔法。

稜華は解錠の魔法陣の起動。

夢華は全体のフォロー。

それに加え、全員、原始の魔法陣の起動……。

と読み上げられる。


「それを言うなら、飛華だって〜」


そうだよね。

飛華、かなりの負担があるはずだもん。

全体の指示系統とか……。

飛華がいなければかなり時間がかかっていたはずだ。


「だけど、魔力は1番使っていないはずよ。だって、原始の魔法陣ぐらいしか……」


……そうだっけ?

そんなこと言うなら、私も魔力を使った記憶など、微塵にありませんが。


「あ〜もう!みんな、気を使いすぎ。……私が魔法陣を起動する。それでいい!?」


は、はい……。

夢華の勢いに飲まれて思わず頷いてしまう。


「うん、それでいい」


いや、いいのか?

飛華は考え直せって言っているし……。


「私がこの肝試しの話を持ってきたんだから、後始末は私がやるべきなの」


……そうなのですか。

夢華はもうこれ以上、譲りそうにないので私は任せることにした。

というわけで、無事、コテージまで帰ってこれた……んだけど。

なんと、1日が経過していた上に、問題まで発生して。


「これ、ありのままを告げるのは良くないよね〜?」


そう。

報酬が出るんだけど……真実を伝えたら、世の中から睨まれている魔術師の存在を告げることとなってしまう。

そうなると、青緑の魔術師の身が危ない。

さらには、私の損にもなるから、なんとしても避けたいところだ。




「いや、待って、陽華ちゃん。()()()()()()()()を証明できたら報酬が出るんだよ!」


あ。

なるほど。そういうことでしたか。


「魔術師がいただけだよね、美華」

「うん。幽霊はいなかったよ、風華」


はい、解決しました〜。

報酬もゲットです!

やったね。

6分割したら、いくらが残るかなぁ。

そのお金、研究資金に当てたいんだよね。

欲しい実験器具はたくさんあるんだけど、私、金欠だし……。

そもそも、稼ぎ口をほぼ持っていないもんね。

金欠になって当たり前だ。


「とにかく、管理人さんのところに行こっか」


そうですね。

飛華の言う通りです!

早くお金をっ!我らの手に!



「あ?報酬?ああ、祠のか。で、証拠は?」


……うわっ。

感じ悪っ。このオジサン。

私達、命懸けで祠攻略、したのになぁ。


「証拠って……」

「証拠がないならダメだね。帰った帰った」


証拠……証拠かぁ。

……捏造でもいいかな?

つまりさ、幽霊がいないって言うことがわかればいいんでしょ?

いや、ダメだ。『シャシン』というものがないからなぁ。

これほど『シャシン』を望んだことは前にも後にもないだろうなぁ。


「証拠って、具体的に何を出せばいいのかな、美華」

「そのままの状態を焼き付ける機械なんてないもんね、風華」


だから悩んでいるんですよっ!


「つまり、証拠なんて出せっこないよ、美華」

「そもそも報酬はエサで出す気はなかったんじゃないかな、風華」


……そう言うことでしたか。

となると納得がいくね。

証拠、出せないもんね。『シャシン』もないし。

うん、残念残念。


「ち、違う……っ」

「どこが違うんですか?」

「あの祠はっ!呪われているんだ!何人も帰ってきていない!」

「そうですね。()()()()()()()()()()()、と言う面では」


つまり、呪われてはいない、と言うニュアンスを飛華は載せる。


「で、結局のところ、なんなんですか?客集めですか?それとも、本当に怪談なんですか?……報酬、出るんですか?」


おおぅ。

先ほどまでお化けが恐いと言っていた飛華とはまるで違うね。

気迫があるよ。


「そ、それは……」


オジサン、可哀想に。

だけど、私達を敵に回した時点できっと負けることは決まっていたと思うよ。

潔く、負けを認めた方が今後の身のためだと思います。






**






「……以上が報告だ。が、もうこれ以上、こんなにも容易に情報が手に入ることはないだろうな」


ステッラ・ポラーレ王国の王城。夏休みも中盤に差しかかった頃。

深夜、王の私室に、1人の訪問者がいた。


「それにしても、よくこんなに上手く行ったな」

「それは紫月稜華がコーヒーに酔ったからだ」

「コーヒーで……。それは傑作だ。それは故意?偶然?」

「……一応、打算的なところもあった」


国王の影の側近、トランクイリタ・オンブラである。紫月姉妹のことがわかったから報告に来たわけだが。

ちなみに、姉妹が肝試しをしている頃にはトランクイリタ達の自称・職員旅行は終わり、王都に戻ってきている。報告が遅れたのは教師としての仕事が立て込んでいたからだ。

ひと段落ついた頃には、夏休みは半分を過ぎようとしていて、慌てて来たわけだ。


「ったく、思わぬ収穫だった」

「まさか、あのコーヒーを空けてしまうなんてな」


実は稜華が飲んだコーヒーは最高品質のコーヒー豆から抽出したコーヒーだ。

一応、王家御用達でもある。


『これは先行投資です。貴方に与えられた任務をこなすための。……わかっていますよね?』


という文面をそれはそれは丁寧に、そして恐ろしく言った。

そのおかげもあり(?)無事、トランクイリタは最高級のコーヒーを手に入れ、更にはおこぼれも頂いた訳だ。

トランクイリタの内心は複雑だ。

美味しいコーヒーを飲めてラッキーという気持ちと。


「思わぬトラブルも多かったのだが。どうにかしてくれ」

「自業自得、だ」


……そのためにかなりの精神的ダメージを負っているが。

トランクイリタの中ではコーヒーで酔った陽華の質問攻撃、そしてそれに答えてしまった酔ったヘリコニアにより、かなり精神的なダメージを負っていた。


「まぁ、とにかくわかったことが多くて良かった。……知れば知るほど、謎が深まるな。この姉妹」

「ああ。魔術師について。1人で何かを抱え込もうとする。親、および親族にはあったことはないものも、1人の支援者についておそらくは何かしら知っている」

「そして最後のセンコウハナビ、の意味だ」


センコウハナビ。

その意味は一体、どういうことなのだろうか。


「とにかく、引き続き任務に当たってくれ」

「かしこまりました」


王の私室での会話は今宵もまた、闇に包まれた。

お読みくださり、ありがとうございました。

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