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45 つまりっ!

ここは異世界です。地球ではありません。日本ではありません。

現実的なことはツッコまず、お読みください。

もう1度言います。


ここは異世界です!

「今の稜華、いつもの稜華じゃないの」


いやいや。

私は私ですよ。











「……稜華も、コーヒーを飲んじゃったのよっ!」


……は?

いやいや。

そんな訳ないでしょ。

私、酔っていないでしょ?


「確かに、表面上、変哲ないわ。だけど、私から見れば、おかしいの」


私を1番見て、過ごしているのは飛華だもんね。


「いつもより口調が軽いし、よくしゃべるし……」


いや、いつもこんな感じですよ。

……心の中では。


「なるほど。コイツには薬物耐性をつけているから効きにくかったからこの状態になるまで飲んだのだろう」

「え?稜華、薬物耐性なんてあるの?」

「あるよ。お酒はほとんど飲まなかったけど、他のはかなりつけてきた。自然から、人工的に作られたものまで〜」


あれ?

私、何を口走っているんだろう?

あ、これ、ヤバい……。






**






「これを機に秘密主義の稜華さんを質問攻めします~?」

「はっ!?ヘリコニア先生、自分で何を言っているか、分かっていますかっ!?」


今にも食って掛かろうとする飛華。

肝心な稜華はかなり酔っているようで、うつらうつらしていた。


「落ち着け、紫月飛華。ヘリコニアは今、コーヒーで酔っている。正気じゃないのは分かり切っているだろう?」

「……というか、トランクイリタ先生って素はそんな口調だったんですね」

「……今は全く関係ない」


漫才をしているようにしか見えない。風華と美華みたいだ。

真っ先にコーヒーで酔ったことが分かった陽華は既に寝息を立てている。

騒ぐだけ騒いで、爆弾投下して、自分が巻き込まれそうになったら寝る。かなり図太い精神の持ち主か?ただ、酒を飲んでしまったのは不慮の事故だし、仕方がない部分も多いと思うが……。


「というか、稜華ちゃん、これ、かなり飲んでいるんじゃないの?ほら、タンクが空っぽだし」

「うわ、信じられないな、コイツ。この年で平均の何倍飲むつもりなんだよ」


ちなみに稜華が空けたタンク、つまりデッカい水筒みたいなの。その量、1リットルほどである。

ヘリコニアや陽華が飲んだとはいえ、その多くを1人で飲んだことが分かる。

普通、コップ一杯が限度であることから尋常ではない。

うつらうつらしている現在の状況が異常的である。


「とにかく、稜華は確かに秘密主義なので、稜華の秘密は気になりますっ!」


おいおい、飛華。

君はどっちなんだ?

いや、稜華の秘密を知りたい派か。


「ゴメン、私達、先にコテージに戻っているね」

「陽華は連れて帰るから。後はよろしく!」


ここで双子と陽華が退場。

残っている姉妹は飛華と稜華、夢華だ。

双子が寝ている陽華を連れて帰って、酔っている稜華を連れて帰らないところになんとなく悪意を感じる……気がする。

夢華がいるのはもちろん、稜華の秘密が気になるからである。


「それじゃあ、始めます?」

「どうぞどうぞ~!飛華さん、どんどんお願いします~」


酔っているヘリコニアが事態を余計に悪化させている……そもそもヘリコニアがこの混乱の原因なのだが……。



「なんで、魔術師を、どう思う?って……聞いたの?」


飛華のその質問に、その場にいた、稜華を除く、全員が息をのんだ。

なぜなら、ここにいるのは、ヘリコニア、飛華、トランクイリタ、夢華……。

皆、過去にこの質問をされたからだ。

稜華の意識的・無意識に関わらず。


「それはねぇ~、私は魔術師のことをもっと、もっともっと知りたいから~」


ほわほわとした口調のまま、稜華が答える。

頬が緩んでいて、いつもの無表情からは考えられないほどだ。


「なんで、魔術師のことをもっと知りたいの?」

「ん~、秘密~」


酔っていても本当に秘密にしないといけない部分は秘密にできるようである。


「……魔術師と思われる人物の足跡を辿っている理由は?」

「秘密~」


やはり、このことも秘密にした。


「なんで秘密を秘密にするの?」

「秘密だから~」


変わらぬ答えである。

しかも、先程から秘密としか言っていない。

つくづく秘密の多い人である。


「……なんで秘密を1人で抱え込むの?」


悲しそうに、飛華が聞く。


「えっとね~、みんなが知ると、私みたいに悩んで悩んで、自分が何なのかが分からなくなって~、生きにくくなるから~」


凄く口調が軽いが、言っていることはかなり重いことだ。

辺りの空気が重くなる。


「……生きにくくなるのって、なんで……?」

「秘密~」


やはり、肝心なことは秘密にされた。


「……飛華ちゃん、次、私がいい?」

「いいわよ。……もう、特に思いつかないし」


ここで質問者をバトンタッチ。飛華から夢華になった。


「じゃあ、稜華ちゃんって、大体無関心とかなのに、飛華ちゃんのことになると結構関心を持つのはなんで……?」

「可愛いから!」

「は、はぁ!?」


飛華が赤くなり、絶句する。飛華は美女だが、高嶺の花なので面と向かってこんなことを言われたことはほとんどないのだ。

つまり、褒められ慣れていない。

飛華が赤くなっても仕方がなかった。


「魔法の使い方がえげつない時と、優しい時があるのはなんで?」

「気分の問題~」


理不尽な現実である。

稜華の機嫌がよければ優しくなるし、機嫌が悪ければ厳しくなるのだろう。


「魔法で物を動かすこともできて、尚且つ魔法を悟らせないのには、自信がある理由は?」

「普通のことだよ~。常識~」


こんなものは常識ではない。

普通、魔法発動には時間がかかり、発動兆候はかなりわかるものである。


「……私も、もう大丈夫です」


夢華、質問ターンを終了。


「私は大丈夫です~」


稜華だけでなく、ヘリコニアも酔っていたことを忘れかけていた3人だった。


「じゃあ……」

「いえ、ありました~、稜華さんへの質問~」


自分の質問ターンを遮られたトランクイリタ。

若干ムッとしたが、酔っていることを思い出してなんとか踏みとどまった。


「稜華さん、どこで研究に会ったんですか~?」

「山の中です~。研究所に迷い込んでしまって~」

「そうなんですね~。まさに運命です~」


2人の会話は正直、なんで繋がっているのかと、不思議なぐらいだ。


「稜華さんは魔法能力が高くて羨ましいです~。なんで魔法能力を持っているんですか~?」

「生まれつき、としか言いようがないですね~」


そりゃ、当然ですね。


「私からは以上です~。オンブラ、どうぞ~」

「……ああ。わかったから、お前は早く帰れ。いいな?」

「え~?なんでですか~」

「……紫月、悪い。この酔いつぶれを送ってもらえないか?泊っているのはお前たちが止まっているコテージ群の1つだ」


なんと。

6姉妹と泊っている場所まで同じような場所だった。

6姉妹が止まっているのは多くのコテージが集まるコテージ群の1つだ。

その1つに泊まっているのだろう。


「……だけど、稜華は……」

「悪いが、もう1度戻ってきて来てくれると嬉しい」


飛華と夢華はヘリコニアを連れ、その場を離れた。


「……さて、紫月稜華」

「なんですか~?」

「今日はずいぶんと口が軽いみたいだな。そして散々、前回は誤魔化してくれたみたいだな?」

「なんのことですか~?」


なんのことですか、ではなかった。

そう、今まで飛華や夢華、ヘリコニアが質問してきた内容は、あの日、稜華が元貴族くんの屋敷に魔法を仕掛けた夜。トランクイリタに質問されたものに似たような、もしくは同じようなものが多かった。


「とりあえず、アイツらが帰ってくる前に終わらせる。……自分が何者か。分からないのか?」

「私は人間ですが、人間じゃありません~」


先に帰ったヘリコニアだが、コテージの鍵は1つしかなく、トランクイリタが持っている。

誰にも聞かれないように。ただ、それだけのためにヘリコニアを遅らせた。ただ、鍵がないから戻ってくるだろう。帰ってくるにはそれなりの時間も必要。これは、トランクイリタが計算した結果だった。


「親、もしくは親族に会ったことはある、もしくは知っているか?」

「会ったことないです~」

「……変わらずだな。じゃあ、支援者について知っていることは?」

「秘密です~」


笑顔で答えた稜華にトランクイリタがチッと舌打ちをする。


「……その支援者は、複数か?」

「1人です~」

「……そうか」


ここで、トランクイリタの質問は途切れた。

そこから、しばらく沈黙が漂う。


「……さっき、先生は私を何者かって聞きましたが、私、少しだけなら分かりました」


少しだけ、稜華の口調がしっかりとした。


「……私は、私達は、線香花火です」

コーヒーで酔って、口を滑らす稜華……


コーヒーで酔うことは(おそらく)ないと思うので安心してください。ただ、現実世界とは少し違う、どこか不思議な世界にいる姉妹やヘリコニアにコーヒー耐性があまりないだけです。

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