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37 宿

その後、大量の高級素材を回収し、宿に帰った。

姉妹達は既に帰っているらしく、部屋からは賑やかな話し声がする。


「ただいま~」

「おかえり~。飛華ちゃんと稜華ちゃん、遅かったね」

「どこまで行っていたの~?」

「ん~、森の中、かな」


陽華の問いに飛華が答える。


「出発は朝の5時!そうでしょ、美華」

「そうだよ、美華。みんなも、ちゃんと間に合うように起きてね」


げえぇ。

朝5時とか、早すぎでしょ。


「あの、もう少し遅くすることは……」

「諦めな、稜華。この計画は美華が立てたんだ。この子、かなりハードな計画を立てるんだよね」

「風華、人聞きの悪いこと、言わないでもらえる?それに、遅くしたら、家に帰るのが1日、遅くなるよ」


えぇ。


「それでもいいんなら……」

「考えなくもないけど……」

「……そのままの計画でお願いします」


私、早いところかえって部屋にこもりたい。

そもそも、私は外に出るのはあまり好きじゃないのだ。

姉妹旅行だから、出かけているだけで。


「そう?ならいいけど」

「皆もわかった?」


双子の問いにそれぞれ了解の返事を送る。


「じゃあ、ちゃんと睡眠だけはとってよね。ね、風華」

「美華の言う通り。明日は移動が大半を占めるから」


うげぇ。

船、あんまり乗りたくないのに……。

ルートからして、海を渡るよね、絶対。

そうなったら、魚がたくさんいるわけで。

海鮮類の店が多いわけで。


……海鮮、ヤダなぁ。

そんな気持ちが大きくなり、胃がムカムカというか、キリキリする。

胃痛か、これは……。

そしてあまり寝れなかった。


翌朝、日も上がって、間もないころ。

私達は宿を出る。ちゃんとお金も払ったよ?

そしてひたすら海に向かって歩く。


この王国は大陸の南。

西と南は、海に面している。

そのため、海鮮類がよく取れる。

……私は全然うれしくないけど。

話は戻って、国の南の方は半島があり、王都はその半島と他の海岸線から作られる湾に面している。

今は王都の南東で接している都市、サウス・イーストにいるから、そこから海沿いへ行って、海を渡って半島に行く、と言うわけだ。

トゥリズモ・テッレーノはその半島の真ん中にちょこんとある都市だしね。


意外にもサウス・イーストは海と近い。

だから、数時間で海沿いに着いた。

午前の明るい光が少し先の海に反射している。

キラキラしていて、とても綺麗だ。

海の向こうにかすかに見える半島もまたいい。


今、いるのは海沿いにも小さな港町。主に漁業によって成り立っている。

港町だから、船が定期的に出ているそうだ。

その船はトゥリズモ・アッズーノ地域と結ばれていて、その船に乗れば行ける、と言うことらしい。


「船の出航はお昼!」

「それまでは観光を……」


2人とも、観光が好きだね。

私はこの炎天下にいるだけでやる気が失せるよ。

やっぱり、私には涼しい室内が適しているね。


「風華ちゃん、美華ちゃん。でも、お昼まで、あと1時間ぐらいじゃない?」


確かに。

私は涼しい室内にいるほうが良いなぁ。

あ、でも『くーらー』なんてものはないし、私も温度調節の魔法、発表していないから大して変わらないかな。

早急にやることは温度調節の魔法具を作ること、かな。

でも、私、魔法具の作り方、知らないんだよね。

今まで基本的に使ってこなかったし。


魔法で何とかしよう、とは思ってきたけど、わざわざ魔法具を作ろうとは思わなかった。

魔法具って、魔法を固定化するものらしいんだよね。

私は私個人が便利ならいっか、って思ったし……。

とにかく、今まで作る必要性がなかった。


だけど、普及させたいなら、魔法具を作って売るのが1番手っ取り早い。

……どうしよう。

発表しようかなぁ。提出しようかなぁ。

本来なら王都にある、魔法本部への報告・提出義務があるけど、私は全くと言っていいほどしていないし。最低限の魔法しか提出していない。

私の場合、逆に怪しまれちゃうんだよね。

どれだけの報告をしていないのか、とか、本当に私が考え出したのか、とか。

ありもしない誤解を受けることになる。

それに懲りたんだよね。


「……稜華はどうしたい?」

「へ?」


ゴメン、風華。

全く話を聞いていなかった。


「あの、最初から説明を願いたいのですが……」

「出航までどうするかって話」


ああ、なるほど。

ありがとうございます、美華。


「私は涼しいところでのんびりとしていたいなぁ、と……」

「涼しいところなんてないでしょ。ね、風華」

「でも、美華。海沿いだから、家のほうよりはまだマシじゃない?」


たしかに。

潮風が気持ちいいし。

流石海辺、だろうか。

濡れた足で砂浜を歩くと砂がついて嫌だけど。

あと、靴の中に砂が入ってくるのも嫌だな。

海は、遠くから。

そう、遠くから見る分には、いいのだ。

近くで見るのは、なぁ。

実際はかなり濁っていたりするし……。


「風華、美華~」

「あの、とてもいいにくいんだけど……」


あれ?陽華と夢華、どうしたのかな?


「船、もうすぐ出るんじゃ……」

「1時間ぐらい、間違っていたんじゃないかな~」


港のほうを見ると、大きな客船がブオォ~っと汽笛?を立てている。

それすなわち、あと少しで出航しますよ。


「そ、そうだっけ?美華」

「そうだったかもしれないよ、風華」


動揺が走る双子。

私達にも緊張感が走った。


「とりあえず、行こう!走るよ!」


飛華がバッと走り出し、皆が後に続く。

え。

私、ついていける気がしないんだけど。


「情報強化!」


体力と運動神経、筋力!

それがあればなんとかなるはずだよ!

自分の身体を強化し、姉妹の後についていく。

走って走って、港のほうまで行って、船と港を繋ぐ橋の前までくる。


「切符拝見しま~す」

「はい、これ!」


美華が6枚の切符を手渡し、係の人がハンコを押すと奪うように取った。

そして橋を走り渡る。

……って、橋が上がってきているんだけど!?

なんとか走り抜けた時。

バタン、と扉が閉まった。


「……セーフ?」


夢華が呟いた。

私達は疲労困憊だ。飛華以外。

飛華は運動神経抜群だからね。

多少のことでは疲労困憊になんてならない。

ただ、魔法で無理矢理動いた私なんかはもうメチャクチャ疲れている。

ホント、運動神経がいい人はうらやましい。


「稜華、酔わないようにしないと」


あ、そうだ。

それを忘れていた。

海で酔うとかホントにヤダ。

飛行魔法を発動させ、数センチだけ宙に浮く。

これで大丈夫、のはずだ。

デッキに出てみると、風が一層強く吹いていた。


進行方向とは逆を見てみると、王都が見えた。

海辺にそびえたつ王城が見える。

その近くには、小さく魔法学園も見えた。

……あんなに大きかったんだ。

遠くから見ると、その大きさがよくわかる。


進行方向を見てみると、半島が見えた。

砂浜の先に、緑が広がっている。

明るい色の森もあり、いかにも観光地、と言う感じだ。


「どのあたりが目的地なの~?」



トゥリズモ・テッレーノは王都側のほうが有名だ。だって、王都に近いから。

行き来がしやすい、と言うことも人気の一つだ。


「ん~、海側?」

「サンゴ礁が見えるよ~」


反対に、王都側じゃない方は行き来がしにくく、王都側に比べ、人気ではない。

だけど、サンゴ礁が綺麗だし、穴場スポットとして、一部では名を馳せている。


「やっぱり、お金がものを言うのかな」

「それだけじゃないと思うわよ。ほら、王都側は元貴族が独占していたじゃない」


なるほど。

そんなことも関係するのか。

いまだに財力がある元貴族や金持ちさんが別荘とかを持っているのかな。


「到着予定は夕方。今日は宿に行って一休み、だよ」

「そ。明日からは思いっきり遊びまくるよ!みんな、何したい?」


……部屋にこもりたいです。

うん、これは言うべきではないね。

折角来たから、外に行かないと意味がないかな。


「海、行こうよ!」


それがやっぱり最初に来るよね。


「ダイビングなんてどう~?」


夢華も陽華も遊び慣れている感じがします。

やることがパッと出てくるあたりで。


「肝試しとか?美華、好きそうだよね?」

「はぁ?そんなわけないでしょ。何言ってんの?」


肝試し、か。

夏っぽいね。

他に夏っぽいのって、何かあるかなぁ。


「スイカ割とか、いいかもね」


ホントに何も思いつかん。

思いついたとたん、姉妹に言われていくという……。


「稜華は何かある?」

「というか、もうほとんど出きっているよ、美華」


そう、風華の言う通りなんだよね。

夏らしいこと。夏らしいこと。

夏っていえば夜だよね。

夜空がいい。


「……花火!」

ただ、日本の夏は暑い……。

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