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34 旅路

意気揚々と家を出たものも。

……この家、交通機関までが遠すぎる!

もちろん、モルタ・モンテ地域の大山脈、その2番目に高い山の中腹に住んでいるからなんだろうけど。

この国の、交通機関は川と馬車だ。

川までは何とかなると思う。

でも、馬車が問題だ。

馬車は主要街道と呼ばれる、都市と都市を結ぶ街道にしか走らない。

近くに道があるからと言って、馬車が走っているわけではないのがつらい。


「まず、近くの川に出て、そこから船に乗って、主要街に出るよ。そうでしょ?美華」

「当たり前じゃん、風華。その後は海沿いまで出て、船で向かうの。覚えてるよね?」

「もちろん」

「ならいいじゃん」


とにかく物凄い行程なんですね。

それだけは分かりました、ハイ。


大山脈の中で1番北にある山からは清流が流れていて、その川はすごく大きくて長いから、船がよく通るらしい。川を下って行けば王都や、国の西の方にも行くから、かなり重要な川だ。


「ここで、数十分待つよ」

「探索、してくる?」


……なんか、不安がかなりあるんだけど。


「美華、流石に探索はやめておいた方がいいんじゃない?」


そうそう。

飛華の言う通りだよ。

万が一船を乗り過ごしたりなんかしたら大変だし、迷子になるかもしれないし。


「大丈夫!ちゃんと調べてきたから!ね、風華?」

「美華……アンタが言うと不安しかない……」


え?

そんなに無鉄砲な計画なの?


「もし迷子になってもみんながなんとか探してくれるし、いざとなったら転移魔法使えばいいよね、なんて思ってないよね〜」

「陽華ちゃん、あんまり問い詰めるのもよくないよ。旅の中の分断は何よりも怖いんだよ」


2人とも恐ろしいことを言いますね〜。


「船さえ乗れれば大丈夫!」


その船に乗れない可能性を出しちゃっているんでしょ……。

その1つが探索、なんでしょ。


「でも、ほら!ここが船着場だから!ここが終着点で折り返しで王都の方に行けるんだよ!」


なるほど。

それほどにこの辺りは辺境だったか……。


「で、船の到着予定時刻まで、かなりあるの。ずっとボ〜ッと待っているのも嫌でしょ?」


そりゃそうです。


「だから、探索に行こう!?」

「美華、アンタは吹っ飛び過ぎ」

「ほら、稜華。裏の森に、かなり質の良い素材があるって、有名なんだって」


何それ。

欲しい。


「それ、どこにあるの!?」

「稜華ちゃん、ダメだよ」

「でも、素材が、高品質素材が。そうすれば詳細くんを作れるように……」

「素材はお家にたくさんあるでしょ〜」

「家にあるのはほとんど低品質だから。高品質、是非とも欲しい」


行かせて欲しい。

むしろ、行かせて。


「素材が私を待っているはず」

「素材は動かないよっ、稜華ちゃん!」

「夢華の言う通り〜!」


え〜。

せっかく近くに高品質素材があるのに。


「はい、みんなストップ!」


ピタ。

私たちはそのままの状態でストップした。


「船が来るまでは、ここで待つ。それでいい?」

「え〜」

「稜華?」

「……はい」


飛華の笑顔が怖い。


「文句を言うなら、長女権限を行使します」

「ちょ、長女権限!?」

「それはない!」

「飛華、考え直して〜」

「そこまですることかなぁ」

「そんなにも!?」


説明しよう!

長女権限とは、飛華が持っている権限のことである。

……うん、そのままだね。

で、具体的にどう言うことかって言うと。

1つ、飛華は姉妹全員での喧嘩が起きそうになった時、中立でいること。

1つ、中立でいるため両者に命令ができる。

1つ、姉妹の不利益となるような場面を止めることができる。

1つ、できるだけ中立でいること。

1つ、できるだけ姉妹のストッパーとなること。


以上だ。

5年ぐらい前に決まった。

で、1番しっかりしていて、客観的に物事を見ることができて、私利私欲に動かされにくい飛華がこの権限を持つようになったわけだ。

最終的に飛華が権限を持つようになったから、長女権限と呼ばれるようになったとさ、と言うこと。


「姉妹の不利益となる事態となりました。そこで私、紫月飛華は紫月家6姉妹盟約により、姉妹に命令できる権限を行使します」


改まった口調で、飛華が告げる。


「今すぐ、くだらない喧嘩はやめなさい!それから、船が来るまではこの船着場の半径10メートル以内にいること!分かった!?」


実態は妹を叱るお姉ちゃんだったりします。


「は〜い」

「了解……」

「は〜い〜」

「……はい……」

「分かった」


こうして姉妹喧嘩は収まり?ましたとさ。




**




「わぁ〜!凄いよ!みんな見てみて!」


夢華の無邪気な声が響く。


「ホントだ〜!綺麗だね〜!」


陽華も船の外を見て、歓声をあげた。


「ふふん。私にかかればこんなもんよ。ね、風華」

「美華、私に、じゃなくて、私達に、だから」


相変わらず言い争う双子の声。

そして現在、私。






「おえぇ……」


……気持ち悪い。酔った。マジで酔った。


「稜華、大丈夫?」


船酔い、マジで辛い。

口の中が、喉がカラカラしている。

だけど水を飲んだら全て吐く。

なんと言う悪循環だろうか。


「大丈夫じゃない……」

「だよね」


だよねじゃないんだよ。


「最近の船はかなり揺れなくなっていたんだけど……稜華、相当酔いやすいタイプだったのね」


これの何処が揺れにくいんですかっ!

グラングラン揺れてますよっ!

……おかしい。

これで揺れにくいだなんて、おかしいよ!

『チキュウ』の船を見習え……って、そこまで技術が発達していないんだっけ。

それじゃあ、仕方ないかもしれない。


だけど!


これは、流石に揺れ過ぎでしょ!

これで揺れなくなったって、昔はどんだけ揺れていたの!?


「ゴメン、私、部屋に戻っているね……」


とりあえず、寝たい……。

この国の船は長〜い間、乗っていることが多いから客室的なところもある。

かなり終点に近いところまで乗るらしく、双子が客室的なところを取っていたみたいだ。

私はその部屋に入ると、備え付けられていたベッドに横になった。

そこへ、1つの記憶が、私を飲み込む。



()()記憶の、続きだ。

『私』は、ひたすら走り続けていた。

後ろを見ず、横を見ず。ただ、前だけを見て、走り続ける。

呼吸が荒くなっても、喉が渇いても、足が棒のようになっても、魔法……で、どうにかして、走り続ける。

ただ、魔法より随分と効果も使用魔力も多かった。


腕には、しっかりと、『あの子』から渡された木箱を抱えていた。

この箱の中に、何が入っているのかは、もう『私』には分かっているようだった。

だからこそ、いつかのために、大切にしなくちゃいけなくて。

あの子は自分を犠牲にしてまで、『私』にこの箱を託した。

そのことは、十二分、分かっていた。


あれからかなり経ったけど、走り続けないと、いけなくて。

まだまだ近くに、人の気配があって、殺気があって。

あの子が、そんなに簡単にやられるはずないのに、かなり近くまで迫ってきていて。


『私』を探し続けていて。

『私』はまだまだ生きたくて、死にたくて、生きないといけなくて。

だから、ずっとずっと、走り続けて。


森の中にいた。

薄暗い、森。

昼間のはずなのに、あたりは暗くて。

木々は、濃い緑色をしていて、お化けみたいに揺れていて。

不思議な音が、恐怖心を煽る。

グラグラ、グラグラと。

『私』の弱い心の、脆い部分を正確に突いてきていた。


ずっと走り続けていると。

同じところをグルグルと何回も回っているようで。

どこがどこか、ここがどこか、分からなくなって。

頭を使う暇もなくなって。

目が回って、酔ってきた。

猛烈な吐き気と、胃痛。

緊張と……後は、恐怖、だろうか。

そんな負の感情に、どんどん巻き込まれていって、飲まれていく。

回る。

回る回る。

グルグル回る。

グルグル回る回る。

グルグルグルグル回る回る。

グルグルグルグルグルグル、よく分からなくなった時。


気がついたら、近くに、気配はなかった。


いつの間にか、あの森を抜けたらしくて。

あたりは明るくなっていて、眩しかった。

小鳥や小動物が、いて。

ズダズダに切り刻まれていた心は、少しだけ和らいだ。

そして、眠気が『私』を襲う。

きっと、それは危険がなくなったからだろう。

危険が、目に見えていないからだろう。

だけど、周囲を見てみても、人はいないし、気配もない。


そのことで、ようやく、安堵でき、身を隠して、眠りについた……。

船酔いからの悪夢……辛いですね。

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