33 もうすぐ夏休み!
もうすぐ夏休み……という、2週間前。
再び、テストがあった。
告知はその1週間前だったけどね。
前日じゃないだけまだマシだ。
結果は総合497点、同点1位だった。
もちろん、同点だったのは陽華と夢華で。
すごく、すご〜く気が合うんだなぁ、と思った。
間違っている問題は全部違うけど。
ちなみに4位は前回と変わらず、津城さんだ。
総合490点だった。
彼女、かなり凄いよね。
テストが終わったら、何があるか。そんなもの、決まっている。
夏休み!
今日が1学期の終業式で、明日から、夏休み!
休みの期間はおよそ1ヶ月。
そう、1ヶ月丸々休みだよ!
やったね!
この学園に『ツウチヒョウ』などない。
つまり、目の前に待ち構えているのは、天国だっ!
夏休みの予定はもう決まっている。
姉妹で旅行、だ。
しかも夏休みのほとんどを。
行き先はトゥリズモ・テッレーノ地域だ。
この地域は国で1番狭いけど、観光地、そしてリゾート地として有名だ。
「浮かれすぎですよ、稜華さん」
「……すみません」
ヘリコニア先生に注意され、私は謝る。
現在、朝6時。
既に外は明るくなっていて、暑そうだ。
昨日の夕方から研究のお手伝いをしている私は寝ていない。
だって、研究しているヘリコニア先生が寝ないのに、手伝っている私が寝れたもんじゃないでしょ。
「姉妹で旅行、ですか。いいですね」
「ですよね!?」
「やっぱり、浮かれ過ぎています」
……冷静に言われるとちょっと傷つくなぁ。
「それで?どこに行かれるのですか?」
「海辺だそうです」
海辺っていいよね。
砂が足につかなければもっといいけど。
それにしても、トゥリズモ・テッレーノ地域の海は珊瑚礁が綺麗らしい。
『だいびんぐ』できるかなぁ。
海の中、きっと綺麗だよね。
「海水浴でもするんですか?暑そうですね」
「そんな残念なこと言わないでください。先生はどうされるのですか?」
「研究に決まっているでしょう?こんなにも長い時間、誰にも邪魔されずに研究できるのは夏だけです。今年は稜華さんの協力で温度調節の魔法ができましたから、快適です」
それはそれは、よかったですね。
温度調節の魔法自体は何年も前から作っていたけど、他の人には言ってこなかった。
というか、言う人なんていないもんね。
姉妹には私が快適に過ごすために言ったけど。
温度調節の魔法を家族以外で使ったのは、ヘリコニア先生が初めてだ。
「それだけですか?」
「それだけ、とは?」
「トランクイリタ先生とですよ」
「告白、したんですか〜?」
わ、陽華と夢華だ。
いつの間に。
「な、なな、何を言っているんですか……っ」
先生の顔が真っ赤に染まる。
「冗談です」
「先生達の恋愛事情を探ろうとは思っていませんから〜」
「いい加減、稜華ちゃんを返してくださ〜いって、言いにきたんですけど」
「面白そうな会話をしているので〜」
それで入ってきたってワケか。
「それより、出席確認まで後、10分だけど、大丈夫なの?稜華ちゃん」
「大丈夫!遅刻はゼロだから!」
そう!
私は今まで遅刻ゼロなのだ。
どんな時も、魔法を使って無理やり間に合わせた。
「それ、自慢できることじゃないでしょ~?」
「……はい」
「じゃあ、稜華ちゃん、早めに教室に来るようにしてね。いつも駆け込みなんだから」
夢華にも念押しされ、2人は教室へ帰っていった。
「先生」
「もうキリがついたので大丈夫ですよ」
「はい。ありがとうございます」
実験器具やら資料やらを片付けると、白衣を脱ぎ、寮の部屋に転移する。
制服に着替ええ、軽く髪をとかすと、教室に転移した。
ここまでに3分。
うん、だいぶ早くなったよね。
しばらくし、出席確認を告げる鐘がなる。
「おはようございます」
ヘリコニア先生が教室に入ってきた。
欠席者や遅刻者がいないことを確認すると、朝のSHRが始まる。
何事もなく、スーッと進んでいく。
うん、いいね。スムーズって。
「明日からは夏休みですが、まずは1学期の終業式があるので、気を抜き過ぎないようにしてくださいね」
先生の話の後、終業式のため、実技場に移動、だ。
入学式と同じように、学園長先生の話とかで終わる。
ただ、飛華の話はなかった。
「くれぐれも、羽目を外し過ぎないようにしてくださいね。行方不明などにならないように。それでは、ベーネ・ヴァカンツァ」
「ベーネ・ヴァカンツァ!」
ベーネ・ヴァカンツァは……なんというか、よい休暇を、みたいな意味だ。
長期休暇の前によく言われる言葉だ。
私は家に帰るための荷造りをしないといけない。
……本当は前日までにやっておくべきなんだろうけど、研究で行き詰ってそんな暇はなかった。
寮の部屋に帰ると、せっせとカバンに生活必需品を詰めこむ。
制服はいらないし、服も家にあるからいいよね。
そうすると結構荷物は少なくなる。
「稜華、準備はできたの?」
「……うん。大丈夫だと思う」
忘れ物をしても、転移魔法で持って帰ればいいし。
でも、なぜか家に帰る時は転移魔法で帰るのに、旅行に行くときは船で行くんだよね。
双子曰く、雰囲気が重要らしい。
双子は長期休みのたびに色々なところに旅行に行っているから、かなり穴場スポットを知っているらしい。冬休みの予定まで決まっていて、冬休みは国内一周旅行をするらしい。
「飛華ちゃん、私達も大丈夫だよ」
「お姉ちゃん、私達も大丈夫だよ」
夢華と美華が部屋に来る。
「こっちも大丈夫。じゃあ、帰宅でいい?」
「了解!陽華ちゃんを呼んでくるね!」
「私も風華、呼んでくるから」
帰るための転移魔法は私が起動して、夢華が補助、美華が支援をしてくれることになっている。
荷物を先に送って、その後に私達、だ。
4人が荷物を持って、部屋に戻ってきた。
「部屋の鍵、閉めてきた?」
「大丈夫だよ~」
「私達も」
「じゃあ、稜華、お願いできる?」
「うん」
先に荷物を転移させた。
みんな、たくさんの荷物がある。
……ホント、転移魔法を考えだした人ってすごいね。
「行くよ」
次は、私達の番だ。
「……、自宅に、転移」
「魔法支援」
「魔法補助」
そこはもう、家だ。
……だけど。
「メチャクチャ埃っぽくない?美華」
「そりゃそうだよ、風華。数ヵ月も掃除してないもん」
2人の言う通り、メチャクチャ埃が積もっている。
床が真っ白だ。
「だから、風華が魔法でどうにかしてよ」
「その場合、美華も支援、してくれるんだよね?」
「……多分?」
魔法でどうにかしようとするのか……。
「夢華、補助、お願いできる?」
「大丈夫だけど?」
「飛華ぁ~私達の役割は?」
「私達には、こんな時の出番はないのよ……」
飛華と陽華は妙な慰めあいをしている。
「稜華、情報とみなして、どうにかすることはできる?」
「ん~、どうするかによるかな」
掃除なら……情報浄化、とかだろうか。
「なら、転移魔法と同じく、稜華が魔法を発動して、美華が支援、夢華が補助でいいんじゃない?」
なるほど。
「じゃあ、情報浄化を使うね」
「分かった」
「は~い!」
元気いいなぁ。
「……情報浄化」
「魔法支援」
「魔法補助」
……はい、家の中はピカピカになりました~。
これ、もう掃除をしなくていいよね。
魔法で掃除すればいいんだもん。
便利だねぇ。
「じゃあ、出発は明日!行程はもう言ってあるよね?ちゃんと、時刻だけは守りこと!」
「だけど、無理だけはし過ぎないでね!」
旅行は大体、風華と美華が中心となって企画している。
だから、トゥリズモ・テッレーノ地域の、海沿いということ以外、私達は何も知らない。
翌朝、夢華の手料理を食べて、いよいよ出発、だ。
ちなみに荷物は収納魔法という、これまた便利な魔法で異空間の中だ。
だから、手に持っている荷物はお金とかの貴重品ばかりだ。
「それでは〜」
「しゅっぱぁ〜つ!」
姉妹旅行に出発、です。




