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31 お前は、何者だ?

「紫月稜華。お前は、何者だ?」


何者。

何者だ?

お前は何者だ?

お前は、何者だ?

私は、何者だ?

私は何者?



……私は、何者?



「……分かりません」


喉が、異様に乾いている。

カラカラしすぎて、痛い。


「自分が何者か。分からないのか?」

「……分かりません」

「本当にか?」

「……はい」

「俺の目を見て言え。本当にか?」

「……はい」


ずっと俯いていたが、顔を上げて答える。

私が何者か。

そんなの、分からない。

私は私で、私じゃない。

よく分からない。


「……ったく、タチが悪い……」


ねぇ、私は何者なの?


「もう少し聞こう。お前は、闇世界の住人か?」


闇……世界?


「闇世界って、なんですか?」

「知らなくていい。はいか、いいえで答えろ。お前は闇世界の住人か?」

「いいえ」

「こっちは、はっきりわかるのかよ……」


一体、何のことだろう。


「では、なぜお前は、お前達はそんな魔法能力を持っている?」

「……分かりません」


「それはそうだろうな。では、紫月稜華。お前は、どこで研究に出会った?」

「山の中です」


「はぁ?意味不明だな。親、もしくは親族に会ったことはある、もしくは知っているか?」

「……会ったことないですし、知りません」


「これはこれで問題だろ。じゃあ、支援者について知っていることは?」

「……ありません」


「嘘だな」


一瞬、反応してしまいそうになった。


「……なんのことですか?」


出来るだけ、嘲笑うような笑みを浮かべて。


「私は、支援者について、何も知りません」

「それが嘘だと言っている」

「具体的に?」


「具体的にも何も、支援者について知っているんだろ、お前」

「知りません」

「いい加減、意地を張らないで言え。こっちもこっちで仕事なんだよ。ったく、夜中まで働かせる、人使いの悪い奴が上司なもんで」


この緊迫とした空気をぶち壊すような、明るい声。

……これは、演技だ。


「で?支援者について。言ってもらえるか?」

「……嫌、です」

「何か言えない理由でも?」

「契約で、相手か気づくまで、私から言うことはできません。書くこともできません。態度で示すこともできません」


驚いている、ようだった。


「ですので、私は相手の方が気づくまで、伝えることはできません」

「契約魔法か?」

「似たようなものです」


私に、情報を勝手に出して良い権利はない。情報を勝手に出したら、自身の、姉妹の破滅へと繋がってしまう。


「……その支援者は、複数か?」

「……」

「1人か。親や親族にあったことがないんだよな?そうしたら、山の中、か?」

「……疑問にはお答えすることができません。断定で、お願いします」


半分本当で、半分嘘。

真実と嘘をうまい具合に混ぜ合わせて。

そうして、誤魔化して。

それが、私の、役割だから。


「面倒な契約魔法を結ばされたものだな」


このまま、この話は終わりにしてもらえないだろうか。

今まで勢いに乗って答えてきたけど、実際は私の、私達の情報を出しているだけだ。


「フェア、じゃないです」

「ああ?」

「私は、これだけ先生の質問に答えました。……先生、対価をくれるんですよね?私は、け……ヘリコニア先生のように、希少素材を10個も要求しないので、安心してください。情報で、どうですか?」


危うく研究者先生というところだった。


「……答えられる範囲なら」

「では、8個の回答をしたので、8つの質問をさせて頂きます。闇世界とは、なんですか?10秒以内にどうぞ。答えられないのでしたら、質問を2つ増やさせて頂きます」

「タチが悪いな、マジで……ああ、答えてやるよ。闇世界は裏の人間の集まりだ。明確な社会はないが、暗殺やらなんやらを任務として受け取り、遂行する。達成できたら報酬が得られるという、正に闇のことだ」


予想以上に真っ黒だった。


「先生は闇世界について知っていた。でしたら、先生は闇世界の住人、もしくはその関係者ですか?先ほどの質問と同じように、10秒以内に。答えられないのでしたら、質問2つを増やさせていただきます。ああ、これはこの先の質問にも適用されます」

「お前、マジで抜け目がないな。……俺は闇世界の住人だった。が、13の時に追放されたから今は違う」


追放……そんなことがあるんだ。

13の時に追放って……まだ学生時代なのに。

それよりも前からやっていた、ということか。


「闇世界の拠点は?」

「……とある酒屋だったり、様々だ。色々な所にある」


「現在のステッラ・ポラーレ王国の首脳陣を教えてください」

「国王と宰相、大臣に筆頭魔法師だろう?」


どこまでもスタンダードな答えだ。

役職を言うだけで、名前は言わなかった。


「先生の上司を教えてください。あ、夜中まで人を働かせる、私たちに探りを入れている方です」


トランクイリタ先生の今までの言動からして、恐らく、教師以外の顔もあるはずだ。

そうなると、教師としては表向きで、実際は別の顔があるはず。潜入任務、ということになる?


「……王城にいるヤツ。それまでだな。俺は表に出れないもんで」


これはしょうがない。

だけど、濁すということは、相当上位の人物だと考えられる。

そうなると、首脳陣、になるかな。


「魔術師を、どう思いますか?」

「どうも何も、悪者って教科書に書いてあるだろ」


先生の顔には、何当たり前のことを聞いているんだ?と書いてある。


「……今夜の質問のことを他言しない契約を結びますか?」

「ああ。結ばせてもらおう」


今夜の、この質問について、他言しない契約魔法を結ぶ。


「それにしてもいいのか?あと1問、残っているぞ?」

「構いません。これは、他言したいですから」


さて。

デザートは、1番最後に、だよね。






「ヘリコニア先生に、好意を抱いている、もしくは恋をしていますか?」

「はあぁ!?」

「声が大きいです」


忘れかけているかもしれないけど、今は元貴族君の屋敷の屋根にいるのだ。あまりうるさいと怪しまれて、バレてしまう。


「……答えない」

「でしたら、質問は2つ、追加させていただきます」

「ちょ、待て!」

「あ、先生がヘリコニア先生のことを好きという前提で進ませてもらいますね。1つ、いつ、好意を自覚しましたか?2つ、ヘリコニア先生と両思いになりたいですか?」

「ふざけんな……」


実際、今はおそらく両片思い、という所だろう。

しばらく悩んだあと、先生は言う。


「最初の質問に答えさせてもらう。答えは……はい、だ」


おー、認めた。

これはこれは。

是非ともヘリコニア先生に報告しないとね。

でも、流石にあの2つは答えてくれなかったか。

残念残念。


「ホント、お前って奴は恐ろしい……」


別に、恐ろしくても構いませんよ。


「私は、最強最恐の紫月姉妹の5女ですから」


だから。


「ヘリコニア先生に、その言葉、言ってあげてくださいね」


きっと、あの先生は喜ぶから。

だって、あの時。

あんなにも、耳が赤かったんだから。

私より先に、先生を起こしていたから。


「きっと……いえ、その先の言葉は、ヘリコニア先生から聞いてください」


楽しみだなぁ。


「それでは、私は帰るので」


そういい、私は寮に転移する。

うん、転移魔法、便利だね。

まだ残っている魔法は、1時間に1回ぐらいのペースで発動させるか。

そうすれば、寝れなくなるもんね。

そうすれば週明けには寝不足になっているだろう。

週明けに噂を流せば、完璧だよね。



**



「稜華っ!」


え?

なんで飛華が?

って、飛華と相部屋だから、当たり前なんだけど。


「陽華と夢華のこと!教えて!どう言うことなの!?」


へ?


「3人とも、最近、私達を避けているみたいだったし……。それに、なんか今日はいきなり席を立って、部屋に戻ってたし……」


あ、3人とも食堂にいたんだ。


「部屋に戻っても、稜華はいない。2人の部屋に行くと、2人とも苦しげに寝ていた。風華の見立てによると、毒物を摂取したような感じって……」


もしかして、風華、原因まで突き止められるようになったの?

それは凄いけど、今は使わないで欲しかったな……。


「説明。してくれるわよね?」

「……はい」


飛華に説明しろって言われたら説明するしか、なくなる。


「その……元貴族の反感を買っちゃって……それで、実行犯になる所だった子が、密告してくれたので……あえて罠に嵌って……」

「嵌ってどうしたの?」


飛華は私を否定するわけでもなく、聞いてくれている。

どうしよう。

これ、言っちゃっていいかなぁ。


「えっと……仕返しを……しに、行っていました……」


飛華に嫌われたら、嫌だなぁ。

反応を見るのが怖くて、俯いてしまう。


「……そう。頑張ったんだね」

稜華、お疲れ様です。

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