22 歴史
結局、あの後、2限目はもう半分ぐらい終わっていたから、3限目からの授業となった。
ちなみに、勝敗は引き分けらしい。
時間の勝ちではない。単純に、引き分け。
私たちも、先生も、ほぼ同時に倒れたらしいから。
相討ち、というわけだ。
そして、3時限目は社会の歴史だ。
ぶっ飛ばされた次は歴史?
眠くなるね。
そう思わない?
だって、歴史って、眠くなる教科でトップに入らない?
思うよね。そうだよね。
授業開始を告げる鐘がなると、号令がかかり、挨拶をする。
「とにかく、歴史は膨大な量があるので、どんどん進めていきます」
だって、この国、何万年もの歴史があるもんね。
ほんと、よくこんなに続いたよ、って思う。
「まず、時代の流れです。建国時代、魔術時代、魔法時代、現代と続きます」
そうですか。
ちなみに、魔術時代と魔法時代があるが、魔術と魔法は大きく違う。
魔術は、魔法の元になったものだ。魔法より強力で、広範囲に影響が与えることができて、たくさんの魔力を使うという、まさに本家の様な感じだ。
魔法は魔術の劣化版、だろうか。魔術より威力や範囲は劣るが、魔力の消費量が少なくて済む。
だけど、魔術は現代では失われている。
「次に、建国時代から魔術時代、魔法時代初期のキーワードは、魔術師です」
この魔術師というのが、魔術を扱っていたのだ。
魔術師はかなり魔力が高く、魔法能力も抜群だったらしい。
「また、魔術時代と魔法時代の区切りとなる、魔術師狩りでもよく出てきます。しっかり覚えておいてください」
魔術師狩り、ねぇ。『マジョガリ』か、と思う。
魔術師は、一体何をしてしまい、反感を買ってしまったのだろうか。
「ステッラ・ポラーレ王国が建国されたのは約5万年前。当時、この大陸は数えきれないほどの国があり、争っていたと言われています。その戦いに終止符を打った方こそ、スッテラ・ポラーレ・レオーネ初代王です」
現在、この大陸にある国はステッラ・ポラーレ王国も含め5つ。
王国が2つ、帝国が1つ、共和国が1つ、連邦が1つという構成だ。
「かの方は有力者と話し合い、戦いを止めさせました。そして、その功績により、ステッラ・ポラーレ王国が建国。他国は何度も国や王などが変わったりしましたが、この国は今日この日まで王国は平和を保ち、存続してきました」
本当にこんなことがあったのかなぁ。
ないはずなんだけど。
だって、普通に考えて5万年前から続いているのって、かなりヤバくない?
トップが優秀になれば優秀になるほど、国民は向上を求めて、常にトップにケチをつけるんだよ?
だって、一つの一族が治めていたら大体、百年から二百年ぐらいで新しい王朝ができるもん。
それがよくわかるのは、『コダイエジプト』だ。第十何王朝~とか、ね。
「そして、建国から2万年。魔術師が王に嘆願してきました。自分たちを庇護してほしい、と」
え……。
そんな……。
「魔術師とは、魔術を扱う者のこと。いずれ、自分達が危険に冒されることを恐れていたのでしょう」
「王は嘆願を聞き入れ、魔術を人々に教えることで庇護を約束しました。魔術時代の始まりです。しかし、1万年前。」
かなり飛んだ。
その間の1万年はどうなったの?
「魔術師が増長し、人々を脅かしたのです。そこで人々は、暴走する魔術師を狩りました。これが、魔術師の乱、です」
それはそれでどういうことだろう?
「魔術師の乱について、詳細な情報はあまり残されていません。ただ」
ただ?
「魔術師は致命傷を受けない限り、永遠の時を生きる存在でした。だからこそ、危険です。なので、魔術師を見つけたら、すぐに報告するように」
……そんな。
ろくな理由も述べられていないのに、狩られないといけないほどだなんて。
「この魔術師の乱の後は魔術時代から、魔法時代へと移り変わります」
なんか、色々ツッコミどころ満載の話だなぁ。
私は『王国正史』と書かれたデジタル教科書を見る。
名前からして、ウソっぽいんだよね。本当に本当のことなら、『正史』なんて、入れないと思う。
そう、『王国史』とかになると思うのに。
というか、授業1時間でメチャクチャ時代が進むよね。
現段階で4万年分、進んだよ?
まぁ、現代に近づくにつれ、記録は増えるし、まぁ、しょうがないと思うけど……。
「……魔術師の乱。ここまでが、今日の授業です。しっかりと復讐をしておくように」
あ、終わりか。
そのあと、国語とか数学とかの授業が終わり、放課後になる。
私は研究者先生の研究室に行った。
「稜華さんは何について研究するんですか?」
研究室では基本的に自由だ。
時々、研究者先生の手伝いをお願いされることもあるけど、基本的には自分で何かを研究する。
私は魔法の多重展開について研究しようと思っている。
今日、流星群の魔法をたくさん使ったけど、結構魔力消費が多かったし。
1万の魔法を展開しただけで魔力がほぼ底をついた。
Dランク魔法なのに。
できれば、何万個でも展開できるようになりたいんだけど。
そのためには、魔力消費についてだ。
たとえ適性魔法じゃなくても。
魔力消費を減らせれば、便利なはずだ。
「……魔力消費の効率化、についてでしょうか」
「なるほど。いいですね」
研究者先生はそう言うと、手元に集中する。
そこには、希少素材がずらりと並んでいる。
いいなぁ。
私もたくさん素材が欲しい。
そうすれば、魔法式まで完成している詳細君も再現できるはずなのに。
「この素材はダメです。希少素材ですから。それに……先輩からの対価です」
あ~、そういえばそんなことも言っていたね。
希少素材10個で手を打つって。
そんな便利な供給源があるだなんて羨ましい。
「素材って、どこでとれるんですか?私、学園に来てまで研究するつもりはなかったので、全て冷凍保存してしまったんですよね」
家に帰るのは長期休みだけだ。
だから、素材の質が少しでも低下しないように冷凍保存したのだ。
「冷凍保存、ですか。聞いたことないです。詳細、伺ってもいいですか?」
え?
もしかして、冷凍保存は非常識だったのかな?
「素材って、常温で放置すると少しだけ傷んで、質が下がっちゃうじゃないですか」
「そうですね。それは魔法具の質の低下にもつながります。ですから早く使わないといけないのでは?」
へぇ。
魔法具の質の低下は初めて聞いた。
「でも、素材って、そう簡単に手に入らないし、手に入る時はドカッと手に入ることが多いですよね?」
「はい。なので毎日の研究は欠かせません。そうすれば、素材が手に入ったときに一気に作れます」
凄い考え方だな。
その理論で言うと今日からは研究ぶっ続けなのかな?
「……とにかく、保存しておきたいんです。だから、冷凍するんです」
「なんでいきなり冷凍が出てきたんですか?」
なんで、と言われても。
『レイトウショクヒン』とかは、よくあったし、『レイトウゴハン』っていうやつもあったから、使えるんじゃないかなーっと思っただけなんだけど。
……さて。
どうやって説明しようかな?
「……生物を冷凍すると、細胞が冷えて新鮮な状態が維持できるんです」
「稜華さん、生物と食べ物が混じってません?」
「……混じっていないと思います」
「そうですか」
「はい。……というわけで、試しにやってみませんか?」
私に希少素材を触らせてください。
お願いします。
だって、希少素材なんて、そんなやすやすと手に入るモノじゃないんだよ?
1季節に1回、出回ればいいほうで、酷い時は2年間、全く出回らないこともある。
そう考えると、トランクイリタ先生はどこで入手してきたんだろう。
メチャクチャ気になる。
「……希少素材は、ダメです。希少ですから」
「希少素材だからこそ、じゃないですか?」
「でも、失敗したときには……」
「失敗なんかしません。魔法で凍らせるだけですから」
私、この魔法は初回から成功しているんだよね。
Dランク魔法だし。
「ポイントは、急速冷凍とムラをなくすこと、保存中は空気に触れさせないことです」
「なるほど。……氷系の魔法なら、なんでもいいんですか?」
「凍らせることができれば」
私はいつも、氷像の魔法で作っているけど。
「……ギャッチャーレ」
凍れ、の魔法と共に、希少素材は見る見るうちに氷に包まれる。
5秒ほどで、厚さ3センチほどの氷に包まれた。
「これで完成です。あとは、この氷が解けないところにおいておけば、かなり長期間、に保存できます」
「かなり長期間って……どれくらいですか?」
「私の知っている限りだと、100年程は余裕みたいです」
素材の保存の仕方は冷凍ご飯と一緒です♪
稜華が言っていた、100年程保存している素材は今も保存中。




