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2 国立魔法学園王都校

部屋を出たら、姉妹が待っていた。

瓜2つの顔と、瓜3つの顔。

瓜3つという表現が正しいのかはわからないけど。


「稜華ちゃんも来たことだし、行こーよ」


妹の夢華(むか)に引っ張られ、一階のリビングに行く。

後からぞろぞろと4人ついてくるから、なんだか異様な光景だ。多分。

1階へ降りる階段は狭いから、どうしても1列になるしかない。

だからこそ、危険なことがある。

というか、今まで何回もあった。


「わっ!」


すぐ上の姉、陽華(ようか)だ。

コケたらしく、バランスを崩す。そのまま落下、だ。

私のすぐ後ろにいたから、巻き込まれる。夢華も。まるで、ドミノ倒し。

おかげで3人そろって階段から落ちた。


「相変わらず陽華はドジだね」


3番目の姉、美華(みか)が呆れたように言う。

まぁ、美華の言うことは否定できないよね。だって、同じことが今まで5回起きたもん。

出来るだけ一列になって降りるのは避けていたけど、久しぶりすぎて忘れかけていた。


「治癒」


次姉、風華(ふうか)のおかげで、一瞬にて痛みがなくなる。

これがなければもうかなりツラい。風華には感謝、だ。

いや、魔法に感謝、かな。

この世界に魔法がなかったらかなりヤバい。


「大丈夫?やっぱり、階段を降りるときは少しずつ間隔をあけたほうが……」


長姉の飛華が真面目に心配している。

だけど、考えても考えても、同じことは繰り返されるんだよね。



長女の飛華。

次女の風華。

3女の美華。

4女の陽華。

5女の私、稜華。

6女の夢華。

このうち、風華と美華が双子で、陽華、夢華、私が3つ子。

私の、姉妹だ。



そして、姉妹に囲まれ、学校へ向かう。

私がこれから通うのは通称、魔法学園だ。正式名称はステッラ・ポラーレ王国国立魔法学園王都校。

この国の学園のトップに位置する。実は家の近くにも魔法学園があるけど、私達は王都校に行くんだよね。

当然だけど、学園ごとに少しだけレベルが違う。だから、だ。

学園への道を歩いていると、徐々に同じ制服を着た人たちが増える。

双子でさえ目立つ。

なのに、加えて3つ子がいたらどうなるか。

簡単である。

メチャクチャ目立つ。

学校へ近づくにつれ、生徒が増えていくのは当たり前。

それと比例して、興味の視線を向けられるのも増えるのだ。

私にはレベルが高すぎる。

陽華や夢華を盾にして、コソコソ進む。


「稜華~、むしろ目立っているかも~」


マジですか。

それは避けたい。

……うん、普通に進むしかないね、しょうがない。


「この感じ、1年ぶりね」

「やっぱ、そうだよね、飛華。風華、私達、目立ってんじゃない?」

「あたりまでしょ。バッカじゃないの、風華。去年だって美人で強くて優しい飛華に双子の妹がいるって話題になったんだから」

「そして今年はその3人と一緒に登校している3つ子~」

「3姉妹じゃなくて、実は6姉妹だったんじゃない?っていう噂が駆け巡っているんじゃないかな。稜華ちゃん、どう?」


夢華に問いかけられ、私は意識を傾ける。

情報の網を、上に、下に、左に、右に、広げていく。


「……一応、まだあんまり広がっていない、かな……。一部の生徒がせっせと噂をばらまきまくっている……。入学式が終わる頃には、多分、全校に広がっているんじゃ、ないかな……」


それにしても、飛華の話題も多い。むしろ、飛華の話題だからこそ、広がっているという面がある。

飛華は、生徒会長を務めている。それ即ち、実力者ということ。しかも飛華はかなりの美人だ。

すれ違ったらみんなが振り向きそうなほど。

華美と言うか、歪とかじゃなくて、ナチュラルな美人なのだ。

違和感がない、と言えばいいのだろうか。

まぁ、そんな感じだ。

でも、私の、飛華なのに……。


「稜華、落ち着いて」


美華がどこからか落ち着くような香りを出す。

いやいや、元々落ち着いてましたけどね。ええ。

美華の勘違いというやつです。


「明らかに物騒な雰囲気だったよ〜」

「自称している時は大丈夫な場合と大丈夫じゃない場合があるんだよ、稜華ちゃん」


……陽華さん?そんなわけ、ないに決まっているじゃないですか。

私を危険物みたいに言わないでほしい。

夢華さんもですよ?失礼な。


「それより美華、また腕を上げたんじゃない?レパートリーも増えているし」

「はぁ?当たり前でしょ、風華。私だって成長するのよ」


皆、成長している。

なのに、私は全く変わっていない。


「皆、上手になったね。私達が組めば最高最強なんじゃない?」


この世界には、魔法がある。


規模に大小差があれど、誰もが使える。

生まれながらにして持っている属性と、生き方によって変化する適性魔法。


飛華は火属性、攻撃系魔法。

風華は風属性、回復系魔法。

美華は水属性、支援系魔法。

陽華は土属性、防御系魔法。

私は無属性、()()()情報系魔法。

夢華は複合属性、補助系魔法。


これが、それぞれの属性と適性魔法だ。

見事に属性や適性魔法が分かれている。

だからこそ、飛華は最高最強だというのだ。

属性の火風水土は基本属性と言われ、一般的だ。

むしろ、99パーセント以上、100パーセント未満の人はこの四属性を持っている。

残りの1パーセント以下はというと、無属性、複合属性などの、とても珍しい属性。

私と夢華は、その1パーセント以下に属しているのだ。

適性魔法もそうだ。

皆、違うから、バランスがいい。

弱点らしい弱点があまり見当たらない。

それが、私達姉妹だ。

私は情報収集系魔法を得意としている。私の集められる情報の範囲は広大だ。

この世界から、異世界まで。


例えば、『チキュウ』という世界の、『ニッポン』という国では、6歳から12歳、13歳から15歳……と分けられ、学校に通っている。

私達が使うような魔法はないが、別の魔法がある。『カガク』や『ブツリ』というもので、仕組みを解明して、活用する魔法だ。

どうやって、魔法の強弱を見分けているのか。それは簡単だ。


この世界は、10歳になると魔法適性検査が行われる。

そこで魔法力、つまり1発の魔法でどれだけの規模になるか、というのが分かる。

当然、規模が大きいほど魔法力は強い、または高いなどと言われる。

そして、12歳になると10歳の時に調べた魔法力に合った魔法学園や魔法学校に5年間、通うことが多い。ただ、どうしても遠すぎて、という場合は近くの学園に行く場合もあるけど。

魔法学園では魔法の使用法から注意点、応用技なんかも教えられ、魔法力が高い卒業生は比較的給料の高い仕事につけたりする。また、魔法力がそこそこあれば、冒険者とかになることも可能だ。

『チキュウ』の『ニッポン』は、とても平和で、いきなり狼なんかが襲ってこないが、この世界は町を出たらあちこちに獣やら魔物やらなんやらがいて、ダンジョン、つまり地下迷宮もあるのだ。


「ほわ~!」

「すごっ……」


陽華と夢華が呆気にとれた声を出す。

意識を向けてみると、目の前には立派な校舎があった。

汚れ一つ見当たらない校舎がどどーんと建ちそびえている。


「正面が中央校舎ね。教室なんかがあるわよ」


教室の他に職員室や学園長室、研修室や図書室もあるらしい。

魔法学園では国語や数学、社会などの基本的な座学と、魔法実技などの魔法学がある。

ただ、『ニッポン』の学校と違って、『カテイカ』や『ギジュツ』などの教科はない。

体育や音楽の時間はあるらしいけど、かなり授業数が少ないらしいし。


「右が実技塔だよ」


実技塔は魔法実技で使う教室や器具なんかがある。

どれだけ大きな魔法を放っても破壊されないように、強力な結界があるらしい。

そのおかげで今まで1度も校舎がぶっ壊れたことはないと聞いた。

飛華も結界が壊せないか、最大火力の魔法を放ったけど。

その結界は壊せなかった。

後で結界を壊そうとして魔法を放ったことがバレて怒られたみたいだけど。

実は学園内にダンジョンもあって、その入り口も実技塔にあるのだ。


「左が研究棟」


研究棟は魔法研究で使われる器具がそろっている。

国内でも最大級の研究所ともなっているから、魔法研究者がよく出入りしている。


「言われなくても知っているから……」

「聞いたもんね~」

「飛華ちゃんの時と、風華ちゃん、美華ちゃんで、2回」


私達、とりわけ3つ子は姉が多いから、誰のことかわからなくなる、ということで、みんな呼び捨てだ。

だけど、風華と美華は飛華のことを姉さんとかお姉ちゃんとか呼んでいる。お互いは呼び捨てだけど。

校舎に入り、飛華と双子は昇降口で別れる。

飛華も双子も、生徒会に入っているから、入学式の準備とかがあるのだろう。

そうでなくても、わざわざ私達の登校時間に合わせてくれていて、遅刻ギリギリの時間に一緒に来たわけだし。


「稜華ちゃんは教室、行かないの?」

「うん……図書室、行きたいから……」


双子はいつもセットだし、陽華と夢華も大体セットだ。

飛華は私とセット……兼通訳だけど、学校では流石にマズイ。

飛華は。


「学園最強で、美少女~。成績優秀、頭の回転も速い、理想のお姉様~」


……陽華の言う通り、私の飛華は人気者なのだ。

ついでに言うと、私達が通う国立魔法学園は国内トップレベルで、国中から魔法力の高い生徒が集まる。そのため、飛華は国内でもトップレベルに入ると言って、過言ではない。


「稜華ちゃん、ボソボソ言ってて怖いよ。あと、飛華ちゃんは、稜華ちゃんのじゃないからね?私達の、だからね?」


笑顔で念押ししてくる。

夢華は姉妹にはちゃんづけだ。なぜかは知らないけど。


「夢華、その辺にしときなよ~、だから貴女は引かれるの~」


陽華は相変わらずほわほわしている。語尾はいつも伸ばし気味だ。

陽華も夢華は、仲がいい。


「じゃあ……ね」


口げんかしている二人を置いて、図書室に向かう。

図書室は、研究棟の2階だ。研究棟の最上階は7階。実技塔もだ。

関係ないけど、中央校舎は5階まである。

風属性でなくとも、多少は風属性の魔法が使えるから、飛行魔法で移動するのがメジャーだ。

そのため、『ニッポン』の学校のように階段があるのではなく、吹き抜けになっている。そして、申し訳程度にほっそーい階段が端っこについている。


なにはともあれ、図書室は静かだ。

真っ暗なままだが、私はそのまま図書室の奥へと進む。

そして、近いところにあった本を1冊取り、読み始めた。

教室集合時間の5分前。

私は、本を閉じた。


「はぁ……」


ため息が漏れる。

行きたくない。本当は、家にいたい。だけど、今日の出席は絶対なのだ。体調不良などを除き。

学園でそう決められているのと同時に、授業に出てと言われているから。


稜華には秘密があるのです。皆、秘密ぐらいありますけど。

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