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14 現在では、実力主義なのですよ。

授業が始まって早々、私達は実技場にいる。


「毎年、調子に乗って事故を起こす馬鹿がいるんですよ。だから、早めにそのプライドをへし折らないと、とても大変でメンドクサイことになるんですよね」


そう語るのは魔法学担当のトランクイリタ・オンブラ先生。先に来るのが名字で、後に来るのが名前だ。

濃紺の髪と灰色の目をしていて、年齢は20代後半ぐらいの男性だ。


「なので、とにかく片っ端から潰すことにします。」


笑顔で恐ろしいことを言われる。

表情と言っていることが釣り合っていなくて怖い。

怒っている時の飛華みたいだ。


「安心して大丈夫ですよ?ちゃんと手加減をします。……そうですね、私はAランク魔法以上の魔法は使用できない。これでどうですか?分かると思いますけど、Sランク魔法は全員、使用禁止ですよ?」


Sランク魔法。それは、別名危険ランクA魔法とも言われ、1撃で即死するよう魔法だ。

基本的にどんな時でも使用は禁じられている。

ただ、決闘とかで、両者の合意上だったり、危機的状況だった場合は使用が認められる。

だけど。


「B以下でやるとか、ナメてんのかっ!?」


まぁ、それは思うんだよね。

魔法にはランク付けがされている。

Sランクは超高威力。超危険。使用禁止。

Aランクは高威力の魔法。

Bランクは中威力の魔法。

Cランクは低威力の魔法。

Dランクは日常レベルの魔法。

こんな感じだ。威力は1発の魔法に使う魔力、必要とされる魔法力を基に判断される。

だから、新しい魔法を作った場合は魔法本部への報告が義務付けられている。

……まぁ、全然報告なんてしてないけど。

新しい魔法を開発したことなんて、見ただけじゃわからないし、私だって分別がついている。

大体、これくらいのレベルだなー、ぐらいはわかるのだ。

それに、全部報告したら手の内を自ら明かしているようなものじゃない、と思うのも私だけではないはず、だ。


「別にナメてはいません。現在の皆さんの実力と私の実力を考慮した結果です」

「それがナメているってんだよっ!」


うわぁ、1番関わりたくないようなやつだ。


「俺ら貴族を舐めているに等しいんだぞ!」


コクコクと多くの人が頷く。

え?貴族割合って、そんなに多いんだ。

いや、実際はもっと多いんだと思うけど。


「生憎ですが、貴族という階級は数年前に無くなりました」

「はあぁ?」


めっちゃ喧嘩腰じゃん。

めっちゃ関わりたくないんだけど。

このステッラ・ポラーレ王国はお分かりのとおり、王国だ。

つまりは、王様がいて、王族がいて、家柄が高いとされる貴族がいる。

私たちは平民という部類()()()


ところが、数年前。

正確には4年ぐらい前だったかな?

王様が、貴族という階級を無くした。

随分と革新するんだな、という感じだ。

王国は5万年もの歴史があるらしい。

つまり、5万年前から王族は居て、貴族がいたとされている。

そんな長らく続いた貴族という、名門・名家をなくし、王族以外は皆等しいとしたのだ。

突然のことで、王国は混乱。

特に貴族は長い間手にしていた栄光と地位を突然無くした。

そりゃあ、貴族達は怒るよね。王城に怒鳴り込んで、殴り込んできた貴族もいたらしいし。

それを王様は力でねじ伏せ、黙らせたらしい。


貴族達はふんぞり帰って、自分の好きなように国を動かそうとしていれば国民の税金という収入が入ったけど、あ〜ら大変。

貴族達の給金源も無くなってしまいました。

いや、国から、少しだけ補償金も出たんだよ?

城下町で1年暮らせるぐらいの大金が。

だけど、元貴族達からしてみれば端金にすぎないみたいで。すぐに使い切ってしまった元貴族が大半だったという。そんな中、無事に収入源を得たのは大して政治に関わってこなかった地方貴族だ。

呑気に領地で暮らしていたら貴族じゃなくなった。じゃあ、狩りでもしようかな、農作業でもしようかな、そんなノリで乗り切った図太い元貴族もいたらしい。領地の人との距離も近かったみたいだし、それが成功の理由だろう。

で、貴族に渡していた大量の税金も、必要なくなって、借金はなくなり、国庫は潤い。

今まで手が回らなかったところにまで、手が回るようになって、自然災害への補償金とかも出るようになった。結果として、プラスだった、ということだ。


で、うまく波に乗り切れなかった政治をしていた元貴族様。

その人達は何もできず、先祖代々のものを売ったりして、なんとか生活しているらしい。

プライドが高くて、市井に馴染めないのかもね。あとは、自分はそんなことをする立場ではない、と言っている元貴族もいるらしい。

そんな家柄に囚われなくなった王国は実力主義となり、お城のお仕事も、実力があればできるようになった。

魔法学園も貴族がいた時は生徒会も貴族だけで構成されていたけど、現在ではご存知の通り、実力主義だ。

切り替わる時はかなりトラブったらしい。

まぁ、貴族の人たちからしてみればよかったんじゃないかな。

貴族の自分達よりも実力があって、しかも美人の飛華にプライドがへし折られなくて。

飛華が入学したのは改革があった翌年だからね。


「現在では実力主義なのですよ。……生徒会や、紫月姉妹をみればわかるでしょう?」


え?私達ってそんなに目立っているのかなぁ。

いや、違う。飛華と双子が目立っているだけだ。きっとそうだ。


「波に乗り切れなかったのは残念ですね。ですが、波に乗ろうと努力しようとしなかったのも悪いのではないですか?もう、金とコネだけの時代は終わりましたよ」


金とコネ……。

つまり、知り合いのお偉いさんにお金とか貢いでたってことだよね。

多分、影響力を強めたり、箔をつけたりするために。

10歳の時に受ける魔法力検査の結果が悪くても、国内最高峰と謳われる魔法学園に入学するために大金貢いで無理やり入れてもらったりとか、したのかなぁ……。


「それならっ!親達は大金を王家に貢いだんだぞ!それは全て俺たちに使われるはずだった!」


あ〜、自分から不正したよ発言している。

こりゃあ、どうなるのかなぁ。


「そんなことは知りませんね。あなた達貴族の勝手で、優秀な人材が失われた。本来、もらえるはずだったものがもらえなくなった。そういう人を、私はたくさん知っています」


話している内容からするとトランクイリタ先生は貴族じゃないっぽいね。いや、元貴族、じゃない、か。

でも、先生の言っている通り、かもしれない。

大体、滅びる前は最盛期の時が多い。その最盛期こそ、犠牲となった人が多くて、悲しんでいる人と喜んでいる人の差が大きくて。


「ちょうど、私達の世代ですから。この学園の教師にもそういう人がいますよ?今年、このクラスに入れるはずの実力者が、Dクラスに入れられるか、もしくは魔法学校に行くほどでしたから」


切実すぎる。

Dクラスとは、この学年で言う李組のことだ。

桜梅桃李、の順にA、B、C、Dと割振られる、とわけだ。

……ヘリコニア先生も、多分この世代、だよね。

20代っぽいし。研究に没頭しすぎて不健康になって年齢不詳となりかけているけど。


「あなた達がどうなったのかは知りませんが、実力主義となって変わったことは目に見えているはずです。箔付としてしか役割を果たせなかった魔法学園は変わりました。今は正に、エリート集団です」


それ以上、元貴族の人たちは、何も言わなかった。



「……さて、話は逸れましたが、もう1つ。紫月陽華さん、稜華さん、夢華さん」



はい?

何か問題でもあったでしょうか。

何もやっていないし、何も言っていないけど。


「貴女達もAランク以上の魔法の使用は禁止です」


え、何それ。

それないそれない。


「なんでですか〜」

「危険だからです」


陽華の疑問に、即座に返される。


「貴女達の魔法技能はレベルが違います。……私が本気で行ったところで、勝てるかどうか、でしょう。まぁ、私も負ける気もありませんし、貴女達も分別はしっかりついているようですから、へし折らなくても特に問題はなさそうですが」


トランクイリタ先生、かなりの実力者なのでは?

それも、今はAクラスに入れるほどの。自信、あるっぽいし。

さっきも、かなり悔しそうに話してたし。

私達の実力基準は大きくズレているっぽい。それでも、上から数えた方が成績もいい方だ。

無制限の場合、飛華と私達の実力差もあまりないはず。

飛華は、かなりの実力者。

つまり、かなり私達は実力が上の方のはずだ。

そんな私達に、匹敵するなんて。


「万が一の時のための魔法制限です。……わかりますね?」


ん〜、多分?

納得は、できていないけど。


「ルールは簡単です。1年桜組の40人vs.私です。……至ってシンプルでしょう?」


いやいや、それはそれでどうなのか?

シンプルどころじゃないですよね。


「一気にかかってきても構いません。作戦を立てていただいても構いません。1人1人かかってきも構いません。制限時間は、授業が終わるまでです」


なんか、すごく自信ありげ、だよね。

大丈夫なのだろうか。

このままだと、大乱闘で血泥まみれのことになりそうなんだけど。

学園として、大丈夫なのかが心配になる。




「それでは、戦闘(コンバッティメント・)開始(イニーツィオ)、です」


先生がニヤリと笑った。

さて、国の実情がでてきました。

次回、みんながボコボコにされます。

プライドへし折られます。

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