第2話 僕らと鬼ごっこ☆
やっと第2話だ……。
「春だぁー!!」
次の日の昼休み、また佐藤は何か叫んでいた。
「うん、そだね。そんな当たり前のこと大声で言わなくていいよ」
「いやっほーーう!春だぁー!!」
「うっさい!」
「It is spring now!」
「Shut up!」
「何なんだよ。さっきからよ!」
「いや、それこっちのセリフ…」
「まぁいいや。ほら見ろよ遊、コスモスが咲いてるぞ。春を感じるなぁ」
「いや、コスモスは秋の花だよ。…てか何で咲いた?コスモスが咲く季節を間違える程気候変動は深刻なのか!?」
「あ、間違えた。桜だった」
「桜とコスモス間違えんな!」
ダメだこいつ……早くなんとかしないと…!
「ところで遊、暇だから何かして遊ぼうぜ!」
「それもそうだね。何して遊ぼうか」
「そうだな…鬼ごっこでもしようぜ」
「鬼ごっこて…まぁいいや。でも2人だけじゃあ面白くないから誰か呼ぼうよ」
「そうだな」
「って言っても教室には、ほとんど誰もいないね。じゃあ4人でやるとして、僕と佐藤で1人ずつ捕まえてこようか」
「めんどくせーが、まぁそうするか」
「じゃあ捕まえてきたら教室に集合ね」
「おう」
「じゃあ……ミッションスタート!!」←言ってみたかった。
「とは言ったものの…」
廊下を歩きながら呟く。
「高校生にもなって鬼ごっこ…ねぇ」
誘うの少し気が引けるなぁ…。
誰を誘おうか……。
「あぶないよぉ」
廊下の曲がり角に差し掛かったとき、すごい勢いで野球ボール(しかも硬式)が飛んできた。
「ん?」
ドカッ!
「ぐふぅ!」
なぜ野球ボールが……。
み、みぞおちに入った……。
「あ、遊!大丈夫?…………w」
「な、なんとか……」
本当は死にそうなんだけど…。てか、今笑わなかった?
「あはは!ごめんね!!何本逝った?」
何か楽しそうだ!!
「いや…骨は折れてないから大丈夫…」
「……チッ…」
「!!?」
この態度のあまりよろしくない子は田宮みちる。栗色のショートヘアーが特徴で、背も小さく、顔もかわいらしいことから、みんなからみちるちゃんと呼ばれている。
だけど、性格が……。
「…折れればよかったのに…ボソッ」
ドS過ぎる……。
「それよりみちるちゃん、鬼ごっこやらない?」
一応誘ってはみる。
「鬼ごっこ?やらないよ」
やっぱり…。
「…ん?…待って……」
「どうしたの?」
「…そぉうだ。やっぱりやるよ。鬼ごっこ……ニヤリ」
今、みちるという名のドS嬢が不適に笑っていたような……。気のせいだよね。多分。
「何でいきなりやることにしたの?」
「殺りたいから、殺るんだよ?……ニヤリ」
「字が違う!!てか、誰を殺りたいの!?僕がターゲットだったら、鬼ごっこなんか止めて全力で逃げることに専念するよ!!」
それこそ本当の鬼ごっこだ!リアル鬼ごっこだ!
「大丈夫だよぉ。遊は殺らないってぇ…………ニヤリ」
最後の『ニヤリ』がすごく気になるんですが……。
「と、とりあえず教室に集合だから付いて来て」
「早く殺りたぁい!」
「学校で殺人事件は起こさないようにね。みちるちゃん」
この子なら、本当にやりかねないから恐い。僕も何度殺されかけたことか……。
「あれ?佐藤はまだか…」
集合場所である教室に、佐藤の姿はまだなかった。
「ところでみちるちゃん」
「なぁに?」
「さっきのあれ、何やってたの?」
「さっきのって?」
「野球ボール僕に直撃した時の」
「ああ、あれ?あれは、本当は遊に当てるつもりはなかったんだよ。本当は教頭を殺……何でもない」
「教頭逃げてぇぇ!」
それにしても何で、みちるちゃんの殺害リストに教頭が!?
「それにしても、あれでは人は死なないのか……。うん、勉強になった!ありがと!遊!」
「感謝されてるようだけど、全然全くこれっぽっちも嬉しくないんですが」
それから待つこと5分、佐藤が来た。
「やぁ佐藤、結構遅かったね。誰連れてきた?」
「おう。わりーな、遅くなって。こいつ連れてくるのに手間取っちまってよ」
佐藤は手を引いて、無理やり連れてきたようだった。
「ふーん………………って何連れてきてんのぉ!?」
「何だよ?誰連れてきたっていいだろー?」
「いや、せめて人間を連れてきてぇ!!」
佐藤に連れてこられたそいつは頭髪がなく、目が異常に巨大で、顎に触角のようなものが付いている……。
はっきり言って人間ではない。
「…………………」
どっから連れてきたんだ……?
「えー…と、佐藤あのさ…」
「ん?何だ?」
「それ…その人(?)の名前何ていうの?」
「マイケルだよ。な!マイケル!」
「ΦεεενμυψεΧΨδμλκσΦΧΧΩ」
「ほら!」
「ほら!…って何が!?
僕には異星の人の言葉にしか聞こえなかったけど!?翻訳してよ!!」
「マイケルってハーフなんだよな。名字何だったっけ?」
無視かい。
「κλλνεΦηοχφμνξοψωΩαζε」
「須藤っていうのか」
「言ってない!そんなこと一言も言ってない!!
少なくとも僕には聞こえなかった!
てか、ハーフはない!純血だよ!確実に純血だよ!!純血の異星人だよ!!」
「そういや、マイケルって帰国子女なんたってな。どこの国にいたんだ?」
「ηζεμλωπ」
「ヤードラット?知らない国だな」
「いやそれ星の名前だと思うよ!?悟〇が瞬間移動学んだ所だよ!てか、本当にあったんだ!?ヤードラット星!」
もうめんどくさいから、マイケルはヤードラット星人ってことでいいや。
「じゃあ4人集まったことだし、始めるか!鬼ごっこ!」
「わーい!…………ニヤリ」
「κλλμδβαθηψωο!!」
まぁいいか。危害を加える様子はないようだし。てか、須藤マイケルさんよりみちるちゃんの方が危害加えてきそう……。
「てか、どこでやんのさ。鬼ごっこ」
「そうだな……じゃあ校舎内全体ってのはどうだ?校舎内だけでサバイバルだ!」
「……いいね。サバイバルか…。おもしろくなってきた!!」
「わーい!サバイバルだぁ!」
「じゃあ、じゃんけんで鬼を決めようか」
「おう」
「うん」
「ωθψθηο」
「最初はグー!じゃんけん……」
「ポン!」
じゃんけんの結果。
僕はグー。
佐藤もグー。
みちるちゃんもグー。
で、マイケル須藤は
チョキ。
「………………」
なっちゃったー。
「マイケル、お前が鬼だぞ!」
「あはは!マイケルくんが鬼かぁ。………チッ」
「……ねぇ佐藤…」
「ん?何だ?」
「マイケルくんは、鬼ごっこのルール知ってるの?」
「さぁ、知ってんじゃねぇの」
「聞いてみて」
「何で俺が?自分で聞けばいいのに…。まぁいいけどよ」
だって、ヤードラット語分かんないんだもの。
てか、何で佐藤はヤードラット語分かるんだ?
実は、佐藤もヤードラット星人……って、んなわけないか。
「鬼ごっこのルール分かるか?」
僕が変なこと考えてる内に、佐藤はマイケルにさっきのことを聞いていたようだった。
「οωο」
「そうか。遊、分かるってさ」
「そう。てか、返事が顔文字みたいになってる」
「は?何のことだ?」
「いや、何でもない……」
「じゃあマイケル、そこで10秒数えてろよ」
「わーいわーい!逃げろー」
「ヤードラット星人の戦闘力ってどれぐらいだったっけ?……ん?何か致命的なことを忘れているような……。ま、いいか」
僕らは一斉に走り出す。
「…1、2、3」
マイケルも10秒を数えだす。あ、数字表記は人間と変わらないようだ。
「4、5、6、7」
何だろう?何か引っかかることが……。
「8、9」
あ、そうだった!
「みんな気を付けろ!マイケルは瞬間移動を使えるぞ!」
「10!」
しまった!もう数え終わったか!
そんなことを考えていると、次の瞬間にはマイケルが目の前にいた。
「ΦДΦ」
「怖っ!」
てか、また声が顔文字みたいだ!
あわてて僕は逃げ出す。
「あれ?」
追いかけてこないな……。
後ろを振り返ると、短い脚でがんばって走っているマイケルの姿があった。
「脚短っ!そして遅っ!」
よく見たら脚、体長の4分の1くらいしかない……。
「マイケルくん……がんばれ」
そう言い残し、僕はマイケルに背を向け走り出した。
『ブルルル…』
結構走ったところで、佐藤から電話がかかってきた。
「もしもし」
「遊……。た、助けてくれぇ……」
「もしもし!?佐藤!?どうしたの!?」
「た、田宮のやつが……武装蜂起した……」
武装蜂起!?
そんな武力持ってたっけ、みちるちゃん!?
「どういうこと、佐藤……!?」
「やぁ、遊………ニヤリ」
「……………み、みちるちゃん?」
「佐藤の命は預かった!佐藤の命が惜しければ、ムチとロープとライターとろうそく持ってくるんだ!!」
「それで何する気だよ!?」
ムチとロープとライターとろうそくといえば、SMプレイの定番のアイテムだ!てか、僕たち鬼ごっこしてたんじゃなかったっけ!?
「あと、0.2秒で持ってくるんだ!」
「物理的に無理だよ!」
「さっきの物に加え、超電磁砲も持ってくるんだ!!」
「科学力的に無理だよ!」
「じゃあ、レールガンを持ってくるんだ!!」
「同じだよ!」
「さっさと持ってきてよ」
「そんなドSグッズ一式、学校にあるわけないじゃないか!」
「佐藤、死亡決定………ニヤリ」
「やめてぇ!!」
「あ、佐藤死んだ」
「いやぁぁあぁあぁ!!」
「嘘だよぉ」
「嘘かいっ!」
「死んだって言うのは嘘だけど、さっき金属バットで頭をすこーしだけ強く叩いたら、動かなくなっちゃったんだよねぇ。何でかなぁ?………ニヤリ」
「佐藤おぉぉぉぉぉぉおぉ!!」
「あれ?脈がない」
「!!!!?」
「いや、あるは」
「おいっ!」
まだ佐藤は生きてるにせよ、いつか絶対殺される!
みちるちゃんなら、やりかねない!
僕がみちるちゃんの危険度を再確認していると、電話越しにマイケルの声が聞こえてきた。
「πηοεγ」
「……………なぁに?マイケルくん?」
どうやら異変を察知した(?)マイケルが、みちるちゃんと佐藤のもとに向かったようだった。
「μνεζηοοπ!!」
あ、何か怒ってるみたい……。
「ΩдΩ……」
「…………何泣いてるのよ……」
ズタボロにされた佐藤を見て、マイケルは泣いているようだった。
てか、言葉が顔文字みたいで分かりやすいなぁ。
「…さ……と…う……」
「!!?」
マイケルが……日本語を……喋っ…た……?
「ちょっと!どこ連れてく気なの……!?………あ」
ビュンと、電話越しにもマイケルの瞬間移動する音が聞こえた。
どうやら佐藤と共に、どこかへ行ったみたいだ。
でも、いったいどこに……?
場所は変わり、惑星フ〇ーザNo.79。
「………ん?……あ!マイケル様が戻られたぞ!」
遠くにいるマイケルの姿を見つけ、異星人1は言った。
「何!?ホイケル様と御一緒か!?」
と、異星人2が続けて言った。
「……いや、御一人のようだ。……ん?誰かを背負っておられるぞ!」
異星人1と2は、マイケルの方へ歩み寄っていった。
「おかえりなさいませ!マイケル様!」
「ΩωΩ」
「……何言ってるかさっぱり分からんけど、言いたいことはなんとなく分かります。はい。……で?その方は……?」
「ΩДΩ」
「…………と、とりあえずマイケル様が背負われてる方を、回復カプセルまでお連れしなければ!」
ゴポゴポッ……。
マイケルに連れてこられた佐藤は、裸にされ、回復カプセルなる特殊な回復液の入った機械の中に入れられた。そして、完全回復する時をじっと待っていた……。
数十分後
ゴポゴポゴポゴポッ……。
一気に回復液が抜けていく。
「もう目を開けてもよろしいですよ」
医療範の者だろうか。しわだらけの年老いた異星人が言った。
その声に反応し、佐藤は目覚めた。
「ここは……?」
佐藤は状況の把握ができていないようだ。
「ここは惑星フ〇ーザNo.79。フ〇ーザ様の統括する数多くある星の1つです」
佐藤は老異星人の説明など、聞いている様子もなく言った。
「戻らなければ……」
佐藤はそう告げると、カプセルの中から這い出し、歩き出した。
「ど、どこに向かわれるのですか?」
佐藤は振り返り、応えた。
「戦場さ」
「あ、だったらその前に……」
「止めるんじゃねぇよ」
「いや…そうじゃなく……」
「世話になったな。じゃあな!」
「………あ……行ってしまわれた……」
老異星人は棚に置いてある服を見つめて呟いた。
「服、着忘れてるのに……」
佐藤は真っ裸のまま去っていった。
佐藤は、休憩所で休むマイケルを見つけた。
「マイケル。俺はもう大丈夫だ。だから、帰ろうぜ!地球に」
「………………」
少し間を置き、コクっとマイケルは頷いた。
場所は変わりまして、地球。
「うーん……」
授業中、僕はマイケルと共に消えた佐藤について考えていた。
佐藤とマイケルどこ行っちゃったんだろう……。
もう授業も始まってるっていうのに……。
佐藤がマイケルと共にどこかに行ってしまったため、鬼ごっこは中止となった。てか、そもそもみちるちゃんが佐藤を人質にとった時点で、もはや鬼ごっこじゃなくなってたんだけど……。
「遊!田宮!」
「!!」
教室のドアの向こう側から、佐藤が叫んでいた。
「やっと帰ってきたかぁ………ニヤリ」
みちるちゃんが佐藤の帰還に反応した。
君は何を企んでいるんだよ……。
「今、会いに行きます」
いいから早く入っておいでよ……。
「行くぜ!」
ガラガラッ!
と、音をたて佐藤がドアを開けた。
そして
「待たせたな!」
と、某コードネームに蛇と付く男の決め台詞を言い放った。
教室は静まり返った。
なぜなら
「お前、公勢わいせつで捕まるぞ」
担任の岡崎が、ぶっちゃけた。
「………へ?」
何で、何で裸なんだ。
「………………」←一同
翌日の新聞で、こんな記事があった。
『珍事件!少年S、真っ裸で大騒ぎ!計画的な犯行か!?』
佐藤は一躍、時の人となりましたとさ。
マイケルは、ヤードラット星人唯一のフ〇ーザ軍兵士です(多分)。