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第六話 くう~決まったぜ!

4人は王城にいた。

更に正確に言うと、4人は王城の地下牢にいた。地下牢はひどく暗く冷えていて、座るとお尻が凍るように痛い。ぼうっと数本松明があるだけの部屋で、時間の感覚が全くわからない。アシュクはもう半日経っているのか、まだ数十分しか経っていないのかの判別さえできなかった。

「まだ、入れられて30分くらいですよ。」

メテルが言う。

「なんでわかるんだよ。」

「ネル様の従者だからです。」

メテルは、膝の上でねているネルの頭を優しく撫でる。メテルの美しさもあいまり、まるで聖母のようだ、とアシュクはおもった。喋らなければ。

そもそも、どうしてこんな事になったのか。

ジャックは衛兵たちと互角以上に渡り合っていた。光の剣の威力はすさまじく、まさにちぎっては投げ、ちぎっては投げの様相であった。アシュクも精神的にはとても頑張った。切られては再生し、切られては再生し、もはや人間外の再生能力で衛兵たちと渡り合った。だが、力の差は如何ともし難く、切らずに取り押さえればいいんだ。と衛兵が気がついてからは早かった。鎧の男にタックルされ、よろけたところを上から乗られ、アシュクは意識を失ってしまった。

「よく寝る男だな。」

メテルたちは結果数の差に圧倒され、神妙にお縄についたというわけである。

そして、たまたま空いていた王城の地下牢に繋がれている。

「結果オーライじゃねえか。」

ジャックは気楽に言う。

「オーライじゃねえよ!どうするんだよ!」

「騒ぐなよ~」

そう言いながら見張りの兵士が入ってくる。よくみると先程の応対したロリコンおじさん衛兵だ。

「お前らの処遇が決まったぞ。お嬢ちゃんらは無罪釈放。骸骨はバラバラにして処分。人間は打首。」

「なんでだよ!」

アシュクはたまらず叫ぶ。

「ほういくらなんでも、頭とばしゃあ死ぬのか?」

「し、、、死なないかなあ。」

アシュクは嘘をつく。

「ならいいじゃねえか。」

「よくねえよ!死ぬよ!」

「えーアシュクはしなないよー。」

いつの間にか起きていたネルが目をこすりながら、無責任な事を言う。

「まーよくわからんが、そういうことでよろしく。」

おじさん衛兵は覇気無くそういうと、とっとと去っていってしまった。

終わった、、、。アシュクは父と母に心のなかで謝罪した。ごめんなさいお父さんお母さん、俺は親不孝です。先立つ不幸をお許しください。

「なにやってるんだ、出るぞ。」

ジャックに話しかけられ、アシュクが見ると3人は既に檻の外にいた。

「どうやって!?」

慌てるアシュクにジャックは仕方ないなあというふうに実践してみせる。自由に出せる光の剣で鎖を切って檻を割いたのだ。

「できるなら最初からやれよ!」

「できねえと思うじゃん。魔封じの鎖的な感じでさ。」

よくよく考えれば、魔法を封じる仕掛けをされていた時点でジャックは消えているのである。

「行かないなら、おいてくぞアシュク。」

たくさん寝て、ネルは元気いっぱいだ。

「行くって、どこへ?」

「いちばん黒いところ!」

詳しいことをネルに聞くのを諦めて、メテルの方を見る。

「怪しいのは、玉座でしょうね。王城の中心でしょうから。」

「玉座は無理だろう。護衛の兵士だって街の衛兵とは比べ物にならないぞ!」

アシュクはこの期に及んでまだ肝のすわらない事を言う。

「ところが、そうでもないみたいですよ。」

そう言うと、メテルはさっさと行ってしまう。

「待て!」

アシュクが声を荒げるが、周りには誰もいない。ネルはうきうきと先にいってしまったのだ。ジャックもそれについている。

「待ってくれよ。」

アシュクは這々の体で檻を抜け、3人に続いた。

まさに、拍子抜けである。案内板があるわけではないので、玉座がどこにあるのかはわからないが、視界が少しづつ黒くなっていくのがアシュクにもわかる。それほど中心に近づいているのにも関わらず、全く兵士に会わないのだ。ネルなどは鼻歌交じりに歩いている。

「ネル!静かに歩け!」

そのなかで、ビビリにビビっているのはアシュクだけだ。アシュクに怒られて少し涙目になるネル。

「ネル様に指図するな。チキン野郎。」

メテルはネルをかばうようにしてアシュクに言う。ジャックはネルに高い高いをしてあげている。ネルはキャッキャと喜んでいる。アシュクは気に入らない。ネルに甘すぎだ。王城で脱獄したんだぞ?それとも俺がおかしいのか?なにが正しいのかもうアシュクはわからなくなってきた。

「あ、ここみぎー」

一同は基本的にネルの行ったとおりに進む。右に曲がった途端、今まで感じたことがないような悪寒がアシュクを襲った。急に海中に放り込まれたような気がして、アシュクは身震いする。息もしづらい。

「疾病の悪魔だな。間違いない。」

メテルがこれまでになく真面目につぶやく。

「悪魔?」

「人間の負の感情を食べ、大きくなる黒い存在を悪魔とよぶのだ。」

たしかに悪魔でもいそうな雰囲気だ。アシュクがそう感じたとき。

「止まれ。」

アシュクの首筋に後ろからすらりと剣が当てられた。アシュクはその冷たさを感じるやいなや静止。ほか3人も何事かと振り返った。

「この先は玉座だ。ここでなにをしている?」

凛と空間を制圧するようなその声は、黒髪黒目のその出で立ちは、アスレイ=バーグその人だった。

「アスレイ。」

ジャックがつぶやく。アシュクも遅れて気がつく。ジャックにとってはしてやったとはいえ、一刀で切り伏せられた因縁の相手だ。

「ここは、俺が相手する。3人は先へ。」

「ジャック。」

「誰一人行かせないよ。」

アスレイはアシュクの首に剣を置いたままだ。ジャック、メテル、ネルの目線がアシュクに集まる。

「クソ!」

アシュクは強引に前に一歩踏み出す。

「な!」

アスレイは驚く。同時にアシュクの首から血が吹き出す。剣は正しくアシュクの首をなで斬りにした。アシュクは遠のく意識を気合でつなぎとめる。一瞬、アスレイは反応が遅れ、アシュクの傷は瞬く間になかったかのようになっていた。アシュクはそのまま駆け出す。

「任せた!ジャック!」

今度は罠ではなく、本当の意味で一騎打ちだ。

「行かせない!」

追いすがるアスレイに今度はジャックがホーリーソードで牽制する。

「行くなら、俺を倒してからにしな。」

決まったぜ。ジャックは悦にいった。

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