第五話 よくアフロの落ちてる街、王都
はぁ、、、。
アシュクは、廃屋から出て何度目かになるため息をつく。あいも変わらず貧民街は人がいない。アシュクは王都に来て長いが、貧民街に入ったことは数えるほどしか無い。
王城にも貧民街にも近寄らない一般市民。もちろん、法律違反など以ての外。それがアシュクだったのだ。
「本当に行くのか?」
「おいおい、怖気づいたのか相棒!世界を救う!まさにヒーローじゃないか。」
「そんなものに興味ない。ああ、抜け出そうとなんてするんじゃなかった。」
「ごちゃごちゃ煩い。はやく着いて来い。」
前を歩いているメテルが叱責する。さらにその前を歩いているネルはまるでピクニックに行くかのように浮かれてスキップしている。
やたらO脚でたらたら歩く骨、スキップする幼女、それについていく毒美女、一般人。まさに世界を救うにふさわしいパーティーじゃないか。アシュクは自虐げに思った。
上を見ると、王都は未だ雲に覆われていてその色は黒さを増しているように見える。王城の方はすでに光を通さないほどの漆黒の闇が包んでいる。まだ、昼間だと言うのに。
ジャックは、俺歩かなくても一回退場してもう一回召喚してもらえばいいんじゃね?と思っていた。だが、メテルは美人だし、ネルはまだ幼い、相棒のアシュクは頼りない。となればおそらく最年長の俺が、支えていかなけりゃならんのかなあ。ま、なんとかなるだろ。ジャックは楽観的に考えた。
「止まれ!」
貧民街から市街へ出ようとしたと途端、鎧の衛兵たちに止められた。
「なんだ貴様ら、無礼だぞ。」
メテルが当然のように食ってかかる。ネルは鎧に見とれている。アシュクはオロオロし顔は真っ青になっている。だが、衛兵はそれに気づかず。
「かっこいい、よろい。」
「おーそうかい。ありがとよ嬢ちゃん。」
相好を崩し声を和らげる衛兵。
「とおっていい?」
わかっているのかわかっていないのか、上目遣いで衛兵に懇願するネルに衛兵は心を奪われた。
「いいとも!あ、ひとつだけ聞かせてもらっていいかな?骸骨を召喚できる青年が貧民街に逃げ込んだんだけど、みてないよね?」
「え、みたよ。」
素直に答えるネル。アシュクは、顔を更に青くする。血の気が引きすぎて一人だけモノクロだ。
「アシュクとジャック!」
ネルは得意満面に答える。
((なんで言っちゃうんだよ!))
男二人は、息のあった動きで落ちていた、アフロヘアーをかぶる。
「チ、チガイマース、ワタシアシュクナンテナマエジャアーリマセーン。」
アシュクはとっさに他人のふりをする。
「ソ、ソウデース。ワタシガイコツジャア-リマセーン。アイアムアフロマーン」
ジャックもそれに習う。二人は汗だくだ。
「いや、普通に無理でしょう。」
メテルの目は、冷ややかを通り越して極寒だ。
「違うのか。だが、うーむ、怪しい。」
衛兵は迷っている。行ける!アシュクとジャックは自分たちの演技のセンスに脱帽した。もし世が世なら自分たちは銀幕の大スターになっていただろう。
「まあ、捕まえておくか。ものども!であえー。」
男二人は絶望した。
「素人には伝わらないレベルの演技力の高さが仇になった。」
「バカ言ってないで、倒しなさい。」
「たたかえ!アシュク!」
こうなった元凶のネル様ノリノリである。
「クソ!アシュクやるしかない!」
ジャックは手に光を集める。
「ホーリースラッシュ!」
一閃。ジャックがその光を放出すると、どやどやと集まりかけていた衛兵たちが吹き飛ばされ動けなくなる。衛兵たちは舐めていた。ただの一般市民と骸骨だと。しかし、仲間がやられたことで空気がピンと張り詰める。
「こいつら、なかなかやるぞ!」
応対していた衛兵は指揮官なのか、他の衛兵たちに檄を飛ばす。衛兵は、近寄らず遠巻きに四人を包囲し始める。背中にネルとメテルを置き、構える男二人。
「おい、俺、武器持ってないぞ。」
アシュクは素手だった。
「大丈夫!死なないから!」
ネルは心からアシュクを応援してくれている。
「うん、、、切られたら痛いんだけどそれは、、、」
「死ぬ気で働きなさい、借金男。」
「メテル!お前は戦えないのかよ。」
「戦えないわよ。疲れるから。」
「理由!」
「いいから行きなさい!」
メテルはアシュクのケツを容赦なくキックする。前に躍り出るアシュク。ネルとの距離はゆうに1m以上ある。
「しぬしぬしぬ!」
へっぴり腰のアシュクに一人の衛兵が切ってかかる。今度は油断なき一撃だ。反対を警戒していたジャックは間に合わない。アシュクはとっさに右手を出す。衛兵の剣はアシュクの右手を縦に切り裂き、肘の辺りで止まる。刹那の間にアシュクの右手は何事もなかったかのように元のとおりになる。剣は刺さったままだ。
「いっっっってええええええ。」
遅れてアシュクに激痛が走る。アシュクが衛兵たちに背を向けると、後ろにはネルがいた。
「死なないから。だいじょうぶ!」
ネルはアシュクにサムズアップしながら言った。
「クソ!」
なぜ後ろを向いたか、アシュクが一番わかっていた。本能的に逃げようとしたのだ。
「おりゃあ!、いってえええ。」
アシュクは右手に刺さった剣を引き抜く。
「剣ゲットだぜえ。」
剣を抜いたあとの右手の穴は即座に塞がる。まったく化け物だ。だが、それでもいいか。アシュクははじめて心からネルを助けたいと思っていた。




