第一話 え?わたしだけ?
アシュク=テナーはフラフラになりながら歩き続ける。
草を踏む音に驚いては猫であったり、足ががくんと来て前のめりに倒れ膝小僧をすりむいたり。
そもそも、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
アシュク=テナーはフソン村の商家の三男坊として生まれた。フソン村は王都にも近く、農業よりは交通の要所、宿場町として栄えており、商売繁盛。両親は野心も少なく、テナー家は村の名家であった。アシュクが王都へ来たのは15の頃。取引のあった王都の商家に下男として遣わされたのだった。下男とは言っても、取引先の息子ということで丁重に扱われたアシュクは努力もせず、都会で怠惰に過ごしていた。
ところが一年前、王都を流行り風邪が襲った。症状は軽いものがほとんどだったが、時の第三王子が罹患し、命を落とした。事態を重く受け止めた国王は、非常事態を宣言。王都への立ち入りを制限してしまった。その結果、フソン村は宿場町としての機能を失い廃村し近隣の村と合併することになった。テナー家も潰れ、アシュクの兄アダムが残った資産でなんとか土地を買い農家として暮らすことになった。一方、王都にいたアシュクの働いていた商家もあえなく倒産。アシュクは家賃を払えず、家を追い出され、路頭を迷いながら実家に戻ろうと決心し、王都を脱しようとしたところで見つかり、追われていたというわけだ。
家はない、金もない、実家にも帰れない。ないない尽くしの中でアシュクはフラフラと路地をさまよい続けているのだ。
「『ジャック』」
アシュクがぽつんと呪文を唱えると、黒い魔法陣が現れその中から先程の人間大の骸骨が出てくる。
「ハーイ。呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。ジャックだよ。」
「肩かしてくれないか。」
「アシュク。ボロボロじゃないか。そのうちオレとおんなじスタイルになりそうだね。」
「それだけは勘弁さ。」
「しかあし。オレを呼び出しても平気なのかい?目立つだろう。」
ジャックが見渡すが、人っ子一人いない。王都は今どこに行ってもあまり人混みに会うことはないが、これは異常だ。
「あの狭い路地からこっちは貧民街だからな。」
「貧民街だからって、昔はスリにあうくらいの人気はあったぜ。」
「風邪が蝕むのは王城だけじゃないってことさ。」
貧民街では、もともと衛生が良くなかったこともあり爆発的に風邪が広がった。医者もほとんどいないため風邪にかかった人たちが軽症のまま死んでいった。
「なるほどな、だがこれからどうする?風邪にかかって死ぬのをまつか?」
「ごめんだな。だが、手がない。」
夜になる前に、とりあえず休める場所をと歩いていると
「そこのお方、お待ちなさい。」
と、声が聞こえた。辺りは夜が近づくにつれ一層薄暗さを増している。アシュクたちは見渡すが声の主が見つからない。
「ここです。ここ。」
近い!二人は息を潜める。背中合わせの体勢となり360度を警戒する。
「だから、ここです!」
声の主は、言葉とともに蹴りを放つ。
「いってぇ」
アシュクは右膝を抱える。ちょうど膝小僧の擦りむいたところに蹴りが当たったのだ。
「大丈夫か。」
「だ、大丈夫ですか?」
ジャックと声の主は同時に言う。
「お、、、お前、どこに隠れて。」
「隠れても何も、声をかけて普通に歩いて側まできたんです。」
「小さくて、、、見えな、、、かった、、、。」
「アシュクーーーーー。」
アシュクはおそらく限界だったのだろう。意識を飛ばす。アシュクの意識が飛んだと同時にジャックは消え始める。
「アシュクのことは、任せたぞ。」
そう声の主に伝えると、ジャックも光となって消える。サムズアップしながら。
残されたのは、右膝を抱えながら眠るアシュクとオロオロする声の主。
「どうしよう。」
そうつぶやく声の主は、どうしようもなく幼女であった。
続きました。
あらすじまでが遠い・・・




