1LDKの貴賓②
「へいどーぞ」
「お邪魔しまーす」
寮に戻って来た。
自分の部屋に女性を招き入れるなんて随分と久方ぶりだ。
……………………まぁ女性として見てるのかって言われたらそうでもないってのが実情だけども。
カギは開けとこう。ここで後ろ手にカチャリ……なんてやったらちょっといけない雰囲気が醸し出される気がする。
エニーが居るから2人っきりではないけれども。
そんな無用の気遣いなどどこ吹く風とアカリが遠慮無しに部屋に入る。
「……………っわ………狭………え? 改装してないんだ?」
「今んとこ不必要なもんで。風呂・就寝・食事くらいにしか使ってないからなぁ。家具も最低限揃ってるし洗濯物干すスペースもあるし問題ないんだわ。まさかこんな早く誰かを招く事になるとも思ってなかったしな」
「ふ〜〜ん。こんな狭いとなんか新鮮だね」
「『だね』って言われてもな…………アカリの部屋も最初は狭かっただろ?」
狭い狭いと連呼して自室を貶されてる筈なんだけど特段嫌な気持ちにはならなかった。俺自身今は頓着が無いからなのか、それともアカリの言動からは嫌味や皮肉を感じないからなのか。
……………後者だな。買い物途中から挑発じゃなく普通の冗談の軽口だと解る事が多くなった。先週からのアレは何だったのやら……………
部屋が狭いだのなんだのも、嫌味を言っているというよりもただのありのままの感想だ。
「あ〜〜…………私のは…………まぁ、ね?」
「あっ! お前まさか御貴族様のご両親から金貰って最初っから部屋広くしてたな!? はっ!? もしや上流階級特権で貴族は最初から部屋が広いとか!?」
「や、 それは邪推です!! どっちかって言ったら前者ですかね!? ってかそもそも後者は有り得ないでしょ! 学園としても平等を謳ってるんだから」
「まぁそらそうだ」
前者か。良いなぁそういうの。妬みが無いかって言われたらそうでもないけど、それよりも親がちゃんと娘を大事にしてるっていうのが見て取れるってるのが良い。甘やかしてるって言っちゃったらそれまでだけど。でもそん位なら甘やかしでも良いよな。良いなぁ。
「ぅぅ…………自分でやるからいいからって言ったんだけど2人とも聞いてくれなくって…………」
……………?
あぁ、一丁前に親にして貰った事を恥ずかしがってんのかコイツ。前言撤回だ。嫌味ったらしいなオイ。生意気だ。
「何を恥に思ってるのか察したけど、良いんじゃないか? 親が元気な内にちゃんと甘えとけよ。お前がまだ若い今の内だろ。恥に思うなんて生意気だなぁ」
ピタリと動きを止めるアカリ。大きく目を見開いた後、視線を泳がせてアタフタし出す。
………………?
なんかマズい事…………あっ
「ご、ごめんなさいっ」
「いや、俺の方だな。ごめん、冗談だから気にしないでくれ。別に『俺が親を知らないのにコイツは』 って意味じゃないから。寧ろ人生経験豊富なオジサンからの軽口混じりの格言程度だぞ?」
失敗したな…………本当にそこは大して気にして無いんだけど、この場合問題はアカリの方か。親の事は学園長の拷問の後に零してしまっていたからアカリもその事は知っている。配慮が足らなかった。
「…………プッ! オジサンって」
あ、良かった。この方向で何とか気を紛らわそう。
「いやオジサンよアタシ。精神的な実年齢は31なのよ?」
「あそっか! 身体遡行か! すっかり忘れてたよ。何かそういう風に見えないし」
おいおいおい。そりゃどういう意味でだ? 迸る大人の雰囲気が止まる事を知らない感じですかね?
「普段は精神年齢低めだよね」
「あやっぱそっちですかぁ」
放っとけよ。自覚あるんだから。
「精神年齢低いってそりゃそうだろ。まだボク1ちゃいなんでちゅから」
「………は? いやでも31って………」
「1歳だよ。1歳と360ヶ月だ」
「さんびゃくろくじゅっ………〜〜〜っややこしい!! 生後間もない数え方をするなっ!!」
事実ですけど?
「そういう所だよ幼いって言うのは…………でもそっか………道理でねぇ………」
「…………? どした?」
「ううん、何でもな〜い」
「そう? まぁそれなら良いんだけど。ご飯もうちょい待ってくんないか? エニーの餌用意してからにするわ。その間お茶でも飲んでてくれ。紅茶でいいか?」
「わかったー。茶葉は?」
「申し訳ありませんお嬢様。本日はアールグレイしかございません」
「あ!私もアールグレイ派! レディグレイが良いなぁ〜」
「ああ悪い。ベルガモットだったか?無いわ。オレンジピールとレモンピールは有るからそれで我慢して」
「充分っ♪」
紅茶がお好きと。これで椅子に座ってエニーを撫でながら足プラプラしてなけりゃお嬢様っぽいんだけどな。
沸かしていたお湯で手早く紅茶を淹れて渡す。
「ありがとー♪」
エニーと戯れてニマニマしていたアカリがふと一口付けたカップをマジマジと見詰める。
「おやおやおや、ヨツバさんや。大分大味ですなぁ」
あ゛っっ!!
「わっるい!! 自室だから緊張感皆無だったわ。自分で飲む感じで淹れてた。食後も飲むか? そっちは真面目に淹れる」
「うむ!苦しゅうない!」
ケラケラと愉しそうに笑いながら言うアカリを見てホッとするが、こりゃいかん。大失態だ。
しゃーねぇ。食事で挽回と行こう。ちょっと本気で作るか。
狭く見窄らしい部屋で何ともチグハグな事だが、客の位が高い。ミスリとの約束もある。
謂わば貴賓だ。1LDKの貴賓。
気負う相手という程では無いが、出来る限り丁重に持て成すとしよう。
・
・
・
ちょっとした悪戯心からお茶の淹れ方を揶揄った辺りから雰囲気が変わった。
確かにお嬢様として生きてきた分はお茶に煩い所はある。けど別にこんな時のお茶くらいテキトーでも良いと思うんだけどね………
まぁでも本気で持て成そうとしてくれてるのは伝わるしそれは純粋に嬉しい。
「う〜ん♪ 美味しい! これオレンジとレモンのピールはもしかして自家製?」
「ああ。暇な時にな、調味料とかそういう系はちょっとした趣味程度に作ったりしてんだわ」
「へぇ〜。エニーも美味しいってさ♪」
「エニーのは一口サイズに切っただけの肉だろ」
「テキトーだろうと作ってくれた物は全部美味しいもんねーエニー?」
手際良く調理する合間にチラッと此方を向いた際目が合ってしまった。
息が漏れるような音と共に横顔から覗いた彼の目尻が少し下がる。
「お気遣いどうも。まぁそれが無くとも本気出してたと思うぞ? まぁお嬢様が普段口にする様な一流シェフが作ったみたいなの期待されても困るけども」
しまった、さり気無いフォローのつもりだったんだけどバレてしまった。
開き直るか。
「旅人なんてやってたら任務中の食事なんてどっかの世界の冒険者みたいな物しか食べなかったりするんだよ? もうそんな肥えた舌は何処かに落として来ちゃったよ」
「なんだ。缶飯で出て来そうな非常糧食みたいなの想像してんのか? それと比べられるのはちょっと遺憾だなぁ。もう暫し待たれよ」
あれ? フォローの筈がどんどんベクトルがひん曲がって行く。そういう事言いたい訳じゃ………
「もう落として来たって事はなんだ? もう越界任務に行ってんのか」
「私は1学年の時から行ってたよ」
「ん!? 越界任務は2学年からだろ?」
ジュウワァ…………コンコンッ
油を引いたフライパンにベーコンと鱒が投入されてお腹の怪物を刺激する音が狭い部屋に響き渡る。ほのかに漂って来るのはキノコとバジルが混じった香り。
嗚呼…………鎮まれ怪物よ………そう鳴き喚くでない。
さっきは『可愛い』だなんて言われたけど、そう何度も聞かれたい物でも無いのだよ。乙女の羞恥を理解したまへ。
………か、可愛いってなんだよぉ………うぅ……
「私は優秀ですので。特別許可が降りましたの」
「うわ、腹立つなそれ。後ろ見なくてもドヤ顔してんの判るわ。優秀なアカリさんは異世界から迷い込んできた唸りを上げるその怪物を早く討伐して下さいね」
っあ゛ 聞かれてた!! っっっもう!!
……………エニーさん? なぁに?その呆れた顔。貴方のご飯はもう無くってよ?
「この封じられし怪物は私には討伐できないの。これを討伐出来るのはただ一人! そう! 今こそその左手に封じられし力を解き放つのです勇者よ!」
「封じられてねーよ。俺の左手に宿るはお茶碗を持ちし力だぞ。そんなもん解き放ってどうする。そもそも右利きだ。あと勇者って何だ」
あれ。厨二病みたいだからそれっぽく言ったんだけど。それらしく言えたと思ったんだけどなぁ。
ん? この香りは………あそっか。ホワイトソース煮詰めてるんだ。集中してるから返事がお座なり、でも律儀に一個一個ツッコミはしてくれるんだねぇ。ふぅん? 結構ボケたりボケに便乗したりするけど素はツッコミ属性なのかな?
「勇者でしょ? 選ばれし勇者様」
「おいやめて! 聖剣〝ヘラ〟を持つ手元が狂ってソースが焦げる」
それ聖剣だったの? その木製のヘラが?
…………まぁこれくらいにしておいてあげよう。焦げたホワイトソース程苦い物を私は知らない。
あっ 嘘でした。ミスリちゃんの淹れてくれたコーヒーが世界一苦いです。
コトコトとスープが煮立つ音をBGMに、エニーを撫でてあげていると、ふと気持ち良さそうに目を閉じていたエニーがキッチンの方を向いて一声鳴いた。
「うん。そうだねぇエニーは賢いねぇ」
料理が、完成した。
「ほい。お待ちどーさん。ちょっと品数少なくて質素だけど我慢してくれ」
「わぁ〜♪美味しそ あわあ「クゥ〜…」ああああ〜〜!! 美味しそうっ!!」
「相殺しきれてねーよ。近所迷惑だから叫ぶんじゃないの」
もうヤダッ!! 私もう帰るっ!! これ食べたら帰るっ! …………これ食べて食後の紅茶を頂いたら帰るっ!!
簡素なテーブルの上に置かれたのは二つの深皿。どちらも湯気と良い香りを立ち昇らせる。
あ゛ぁ〜〜これ美味しいヤツですわ。匂いがもう美味しいもの。お腹ペコペコなのもある。
「え〜っと……」
「これか?」
「あっありがとう!」
キョロキョロと見渡してるとスプーンを差し出してくれた。ヨツバは…………え? お箸? リゾットとスープだよね? お箸で食べるの!?
「いただきまーす」
「ん!? あっ え? えっと……こう? いただきまーす?」
私の知らない作法だ。慌てて見様見真似で両掌を合わせて少しお辞儀をする。
「ふふ。別にいいんだぞ? 俺の故郷の作法なんだから無理して真似せんでも。そもそも今日は悪いがマナーについては不問で頼む。俺なんてコレだから。済まんけどスープもお椀持ち上げて啜って飲むからな」
えっ、よく見たらヨツバの分が盛られているのはお茶碗とお味噌汁のお椀だ。
「来客を想定してないから食器の数がだね………」
あぁ〜成る程。私の方に回してくれたんだ。
「ねぇ、さっきのどういう意味があるの? 『いただきまーす』ってどういう意味?」
「ん? 『頂きます』をお座なりに言っただけだ。毎食やってると気持ちはともあれ形式的な方はどうもな………」
「『頂きます』………。……? 何を?」
「………〝命を〟かな。最近では専ら〝料理を作ってくれた人に対して〟とか〝この食材を作ってくれた人に〟とかに置き換わって来てるみたいだけど、本来は違う。 肉も野菜も穀物も。全てに生命が在る。その生命を〝頂きます〟と、感謝を込めて食事を摂るんだ。 ま、感謝って時点で置き換わって来た今の方でも俺はそんな問題無いと思うけどな。 大事なのは感謝の気持ちだと思う。普段何気なく行われる食事って行為だけど、その有り難みを忘れちゃいけない」
食事という何気ない事に対しても感謝の念を…………か。
……………姿勢を正す。
目を閉じて、祈りに近い気持ちで両手を合わせて、感謝を込めて唱える。
「頂きます」
マナーは不問って言われたけどそれはヨツバの方の話だ。ここまで持て成そうとしてくれているのだから私の方は出来る限りちゃんとしたい。
目を開けると、じっと此方を見詰めるヨツバと目が合った。
いつになく優しい顔になんだか少し照れてしまう。ミナモが言いかけてヒサネが誤魔化したあの言葉がブワッと記憶に蘇った。
「さ、召し上がれ。早く食べないと冷めちゃうぞ」
「うん? どっか行くの?」
「ああ。隣の部屋シュトラだからな。どうせダウンしてんだろうし飯持ってってやるわ」
……………本当によく気が付くこと。
お盆に載せた料理を手に部屋を出て行く彼を見送った後、湯気が立つ艶やかな白い塊をスプーンで掬い上げ、少し息を吹き掛けて冷まして一口頬張る。
「〜〜〜〜っ!? うんっっまっ!!」
お、美味しい!! 凄い!
えっこれただのクリームリゾットだよね!? 旨みが凄いっ! お米の硬さが丁度いい。ピリッと胡椒が効いてる。何かもうパクパク行けちゃう。病みつきだ。これは病みつきになる美味しさ。
…………………危ない薬とか入ってないよねこれ?
不意に、先程八百屋さんのお婆ちゃんが言った一言が脳裏に過った。
『胃袋掴んじゃいな』
………………どうしよう。胃袋掴まれそうなんですけど。ミナモの一言がより一層大きくなって心のしこりとなる。
思考を振り払おうと、パクッ ともう一口。
あ゛〜〜美味しいよぅ。
しかし心に残ったあの一言がどうしようもなく首を擡げて来る。
「ねぇエニー………これはどういう感情なんだろう。私は 恋をしているんだろうか」
いつもは心が読めてるんじゃないだろうかと疑う程のリアクションを返してくれるエニー。どうせ『考え過ぎだよ』と、一声鳴いて指を甘噛みしてくれて終わりだろうと思ってたのに………
じっ………と目を合わせて暫し。フィッ と。 視線を外して毛繕いに集中し始めてしまった。
………………………ねぇちょっと?
それはどういう反応なの? どっち!?
下らない事聞くなって事?
それとも否定出来ないって事?
「ねぇどっちなのォォ!?」
エニーが綺麗に毛繕いした箇所を嫌がらせの様にワシャワシャ撫で回していると、ヨツバが帰って来た。
顔が 赤くなるのを感じた。
・
・
・
シュトラは案の定具合が悪そうだった。むっすりした顔で元気が無くて……………それはいつもか。
仕方ない、暫く飯持ってってやるかな……いや責任感じてる訳じゃ無いんだけどさ………
自室に戻るとワシャワシャと乱暴に撫でるアカリの手から逃げる様にエニーが肩まで飛んで来た。
「お前デカいんだから部屋の中でそう縦横無尽に飛び回るなよ」
そんなに嫌だったのか、暴漢に乱暴された人みたいな雰囲気で毛羽立った箇所をいそいそと直している。ちょっと被害者面が過ぎるな。あんなに懐いて自分から擦り寄ってただろうに。都合のいいヤツだよお前はまったく。
「何かあったのか?」
「べべべ別に何も無いけど?」
そんな事はねぇだろ。図書室でお腹鳴らした時と同じ顔してんぞ。そんなに目泳がしてたら視界ブレブレだろ酔うぞ?
「さてはお前餌足りなくてアカリの分摘んだな? ダメだろ今日は大事なお客さんなんだから。俺の分けてやるから我慢しろ。アカリもおかわりあるからそんなにムキになって怒るなよ」
「いやその勘違いはそれはそれでちょっと恥ずかしいんだけど。私食いしん坊みたいじゃん」
違うのか。てっきりムキになって怒ってた所見られて恥ずかしがってんのかと思った。
「で、早く食べなって。冷めちゃう」
「あっもう頂いております」
「そか。どうだ?」
「メッッッッッチャ美味しい!!」
「お、おお。そりゃ良かった」
やっぱ良いなぁ。作った物を美味しいって言って食べてくれるのは嬉しい。
「これ旨みの深さが凄いんだけどどうやって作ったの? 教えて教えて!」
……………露骨に話題を逸らしにかかってないか?
………………まぁいいか触れないでおいてやろう。親睦を深めろって御達しだ。一緒に飯食いながら少しずつゆっくり聞き出していけばいい。
「旨みなぁ。買った鱒がちょっと活きが悪くてさ。臭みがな………その分旨みも強かったんだけど臭いを抑えるのにバジルと胡椒が強めなんだよ」
「鱒の旨みなんだ?でもそれだけじゃ無いでしょう?」
「ソースに出汁を足してるな。昆布茶とオニオンスープの素を少々」
「あ〜それで! …………キノコの香りも良いけどこれただのマッシュルームだよね?」
「へー凄いな、やっぱ舌肥えてるだろ。流石っつーべきなのかな? お嬢様にお出しするって考えたから香りも拘ろうかと思って。だけどトリュフなんて物使った試しが無い。当然そんな高級食材を持ち合わせてる訳もない。いっそ椎茸でもぶち込んでやろうかと思ったけど絶対合わないだろ。んで、マッシュルームのオリーブオイル漬けを先週作ったのを思い出してな」
「それが有るのも特殊だと思うんだけど」
「まぁそこはな、ふとした思い付きが役に立つ事ってあるだろ。鱒とベーコンに香ばしさを足したくて先に炒めたんだけどそのマッシュルームを漬けてたオリーブオイルを使ったんだよ。ソースにも少し足した。キノコの香りが出てるのはそのお陰だろうな」
説明しながらアカリの対面の席に着いて一口摘む。
「ん。中々良い感じだ」
「……え、今? 味見とかは?」
「こまめに味見してたらだんだん解んなくなんない? 今回も結構気使ってたからこまめに味見し過ぎてさ、途中からちょっと舌麻痺して訳わからんくなって。こちとらシェフでもソムリエでもないんだわ。素人なもんで」
「う〜ん…………流石にシェフレベルとまでは言わないけど……………それでも素人って言うにはレベル高い事やってると思うけどなぁ。個人経営のお店出せるくらいには美味しいと思うよ?」
おいおい、煽てても何も出ないぞ? おかわり食うか? 紅茶はとびきり張り切って淹れてやろうじゃないか。
「言うてそんな人気のない居酒屋程度にしかならんだろうけどな」
「良いじゃん居酒屋! 先生達が言ってたよ?『商業科の学生達で飲食店は出してるけど居酒屋とかバーが無い』ってぼやいてた」
「ほ〜〜ん………そうか良い事聞いたな」
「ん? ひょっとしてそういう事考えてた?」
「まぁ………ちょっと考えてる事があってな」
まだまだ構想段階で全然目処が立ってないけどちょっとした計画はある。
一口頬張る度に『ん〜〜♪』なんて嬉しそうな顔で反応されると照れ臭い以上にやっぱり嬉しい物がある。…………本格的に考えてみるかな。
「ホレ、エニーも近う寄れ。鱒とベーコンだけ寄り分けてやるから。あっ! そういやアカリ! お前エニーに何した?」
今日帰って来た時にアカリも居る事に気付いたエニーが飛んで来た。その際また寮の辺りに屯してたカラスと揉めたんだけど、すんげー風魔導で1発で撃退しやがった。ちょっと見ない間にどんだけ強くなってんだよと。
「いくつか風魔導教えてあげたの。属性偏向が風だしさ。ミスリちゃんも言ってたでしょ? 人に教えるとより深く自分の中で定着するものだよ」
「人に教えるとでしょ?人じゃないんですがそれは…………てか魔改造が過ぎませんかね」
「エニーは覚えが良いよ。すっごい頭良いでしょ? 多分魔獣って言うより突然変異の魔物に近いと思うんだけど。絶対言葉理解してるしさ。センスも良いから急激に強くなったのはそのせいだろうね」
さらっと言い放ったけどそんな事あって良いの? 良いんだろうなぁこの世界では結構普通の事なんだろうなぁ、何の気無しにサラッと言ったし。
頭良いのも事実だ。言葉通じてんのも絶対とまで言い切るのも解る。俺としても同じ気持ちだ。
コイツ結局何なんだろうな。どういう存在なんだろうか。
そんな事を考えながら見つめていると、鱒とベーコンをハミハミしていたエニーが『まぁ気にしなさんな』とでも言わんばかりに頬っぺたを甘噛みして来た。
ホラな? そういう反応が何か引っ掛かるんだよ。 ……………ちょっ………生臭い!やめて!
「教えるって言えば…………その…………」
言い出しづらそうにスプーンの先端でリゾットをイジイジするアカリ。行儀が悪ぅござんすねぇ。…………………まぁ、これも俺が悪いよな。
「悪かったよ。正直に言うけどミスリの言う通り先週から返事も態度もテキトーで冷たくあしらってた」
「…………え」
まぁぶっちゃけアカリの所為とも言えるんだが、他人の所為にするのは良くない。無意識にとはいえ、実際にそういう態度を取ったのは俺の方だ。
「聞きたいのはフィスタ先生からの紹介で師事する相手の事だろ? 別に隠す事でも無かったのに、あの返事はちょっと意地悪だったよな」
「……………」
食事の手を完全に止めてしまうアカリ。
「随分と………その………正直に言うんだね?」
「……………そうだな。それが誠意だと思ったんだけど。今日こうして招くって決まってから…………いや、最初に会ったあの日からそうだった。アカリは何かと俺の事を聞いて知ろうとしてくれていた。それは好奇心よりも歩み寄ろうとする気持ちからだろう。そこに一線を引いて入ってこられない様にしていたのは俺だ。下らない理由で、人を知り仲良くしようという優しい心を拒絶したんだ。理由はどうあれ、それをしたのは事実。ミスリの言う通り、もう少し心を開くのがアカリに対しての誠意じゃないのかって思ってな。だからもういっそ腹を割って話をしようかと」
「………………そっか。……………私も謝らなくちゃ」
「………アカリは別に謝る事はないだろう?」
「ううん、あるよ。いつでも喧嘩腰に憎まれ口を叩いてた。怒ることもせずに、ちゃんと相手してくれるヨツバの優しさに甘えてた。それなのに相手をしてくれなかったってだけで拗ねて余計に暴言を吐いて。ちょっと情けなかったよ」
穏やかな顔でリゾットを口に運びながらそう告げるアカリ。
「「 ……ぷっ! あはははは!」」
どちらとも無く。おかしな空気に堪え切れずに吹き出し、笑い合う。エニーが呆れた様な仕草を見せるが気にもならない。
「はは、お互い変に意固地になってたな」
「ふふ、そうだね。お互いなんか面倒臭い事になってた。これはミスリちゃんに呆れられても仕方ないね」
「間違いない。いっその事これまでどう考えてこんな事になったのかカミングアウト大会にするか」
「いいね。曝け出しちゃおうか」
美味しい食事に絆されて。
肩肘を張っていた恥ずかしい自分を肯定して。
そうして話しながら摂る食事は、先程よりも美味しく感じた。
・
・
・
「それでね!? いきなりミナモが口走り掛けたんだよ! 途中でヒサネも混ざって誤魔化されたけど絶対に『好き』って言おうとしてたよあれは」
「あっははは!! そうかそれで変に意識してって感じか。もう半分はさっき言ってたやつか?」
「う………ん。まぁ拗ねてましたね」
「そうか悪い悪い。言い訳にしかならんけどあの日はちょっと疲れてたからな。俺はてっきり居なくなった後に俺がリーダーって事で納得いかなくて一悶着あったんだと思ってたよ」
「それについては何の文句も無いよ? それよりも、その………『好き』に対して何か無いの?」
「ん? いや、違うんだろ?」
それは…………………う〜ん……違う…………と思うんだけどさぁ。う〜〜〜む………
「…………アカリはさ、感受性が豊かなんだと思うんだ」
「うん?」
「ミスリの話をした時………あー………『そんな事って言い方はするな』って話をした時だな。あの時アカリは自分がどんな顔をしていたか、自分で解ってるか?」
「あぁ、あの反省した時かぁ。配慮が足りなかったなぁって反省した顔?」
「いいや、その前だ。事情をより深く考えて、ミスリがどう感じるだろうって考えた時、アカリはまるで自分の事の様に辛い顔をしていた」
そう………だったかな? でもそれは普通の事じゃないのかな。誰だってそれに気付けばそういう気持ちになるんじゃないだろうか。
「あの時アカリは〝人の気持ちになって考える〟って事を全然出来てないんだって言ってたけどそれは違うと思う。あんな顔を出来る人間が人の気持ちを理解出来ない人間な訳がないんだ。アカリは感受性が充分高いよ」
これは褒められてる。さっきからお互いに素直に感情を踏まえて話をしている分、お世辞じゃないと解ってるからちょっと照れ臭い。
でもこの感情が好きなのかどうなのかって話じゃなかったっけ?
「あの時だってそのミスリの感情の機微に俺が気付けてアカリが気付かなかったのはアカリが人の事を考えるって事が出来てなかった訳じゃ無いと思うんだ。それは〝人生経験の差〟だと思うぞ」
人生経験の差…………あ〜。
「生きてる長さは倍近く離れてんだ。その分俺の方が深く考えれていただけじゃないかな? なんたってオッサンなんだからその位の差はあって然るべきだろ?」
「むぅ…………普段は精神年齢低いくせに」
「あ゛ん!? 言うねぇ、食後の紅茶は要らないんだな?」
あっちょっと…………それは卑怯です。そう言いつつもいそいそとポットを湯煎して温めてくれていて、紅茶を淹れてくれる気満々なのも卑怯です。
「ま、好きかどうかもそこら辺の勘違いだと思うんだけどな」
……………? どういう事?
「アカリは人を好きになった事はあるか? 誰かに恋をした事は?」
「そりゃあるよ!」
乙女ですよ!? そのくらいあるともさ! なんだと思ってんだ! 暴力女は恋もしないってか!?
「じゃあその時の〝好意〟を比べてみればいい。俺に対して持った感情は本当にその時と同じ好意だったか」
同じ………………では無いと思う。いつだったか恋をした時はもっと胸が躍る様な気持ちだった。初恋をしたのは確か基礎学生の低学年の時。まだまだ他の世界を知らない、貴族のお嬢様として生きていた時だ。相手に幻想を抱き、物語の王子様の様に見えてドキドキしていた。
その時とは明らかに違う。それは解る。
「勘違いだ。よくある話だよ。思春期の女の子が少し大人びた印象の歳上の男性に一種の憧れを持ってそれを恋心に感じてしまう」
揶揄う感じでは無い。〝勘違い〟なんて物は時に馬鹿にされ、笑われる物だ。それでも、その歳上の彼は笑う事は無く、それもまた肯定してくれる様に優しい笑顔で紅茶を一口飲みながら語る。
「憧れ………か。そっか、尊敬してたんだ。ヨツバのその気遣いとか心配りとか優しさに、そういう心の広さに、そういう感情を持ってたのか………」
「……………え? そこまで言う? 何か小っ恥ずかしいわ照れるからもうやめない?」
「大人の器の大きさ見せて受け止めてよそれは」
「!? ま、まぁな? 何を隠そう職場の後輩からも〝世界一器の大きい男〟と呼ばれたかった男だからな俺は」
「それただの願望じゃない!?」
うるせぇ言うな! と。照れ隠しにそっぽを向く彼を見て少し微笑ましい気持ちで考える。
でもそっか。そういう事か。
偶に見せるその何処か大人びた器の広さに憧れて。ミナモの言葉でそれを過剰に意識して。恋心とより一層勘違いしてしまったんだ。
納得のいく話だ。
…………………………あれ?
でも待って? 確かに初恋の時とは違う気持ちだ。それは間違いない。でも恋っていうのは全て同じとは限らないのでは?
勘違いって言ってもそれは恋心という面での話であって尊敬したというのは事実として残っているのでは!?
歳上への憧れからの勘違いだとしてもそこから始まる恋だってあるのでは!?
もっと言ってしまえばそれは間違いなく歳上の大人な男性への恋心であって、そもそも勘違いでは無いって可能性すら有るのでは!?
えっ!!??
じゃあ何!? 結局私のこの感情はなんなの!?
ってかそもそもこういう時ばっかり普通に『女の子』ってさ! 何なのもう! 普段はお嬢様扱いとか暴力女とか言うくせにさぁ!!
「どうした? まだ納得いかないか?」
「…………ううん、勘違いだったんだね」
「と思うぞ? な?感受性高いだろ? だからミナモの余計な一言に過敏に反応したんだろう」
やっぱりどう聞いてもその『感受性が豊か』というのは呆れて馬鹿にしている風ではなく、私の長所として褒めてくれている感じだ。だからその勘違いも別に笑うつもりはない と。言外にそう伝えるような優しい笑顔を向けられる。
……………こそばゆい。
赤くなった顔を隠す様に暖かいカップを両手で持ち上げ、その視線から逃れる様に何か話題の種を探して視線を部屋に巡らせる。
目に入ったのはヨツバが上着を脱いで畳んで置いた物のその上にちょこんと置かれた銀色の金属塊。
「これなぁに? ライターってやつ?」
「───っ! ダメだっ触んな!」
バサッ!
「…………ホォー………」
ヨツバの切羽詰まった声に、伸ばしかけた手が止まる。その手とライターの間にエニーが降り立って此方をじっと見つめながら静かに鳴いた。
恐る恐る。ヨツバの方を見ると、彼は手で顔を覆っていた。
沈黙。
軽率な行動だったのかもしれない。
後悔と、申し訳ないという気持ちが湧き上がって来た頃、彼がゆっくりと顔から手を離した。
その表情を見て、まるで親に怒られた後、許して貰えた子供の様に、心からホッとした。
「……………済まん。怒って怒鳴った訳じゃないんだ。ただちょっと焦って………それは触んない方が良い。俺にとっても、アカリにとってもだ。特にアカリは………」
……………………私にとっても触らない方が良い。
………………ちょっと解らないけど………あの焦り様は嘘では無い。誰かの為に一生懸命になれる人だという事も知っている。
「そっか。ごめんね?エニーも有難う」
ファサッ と。
軽く飛び上がり伸ばした腕に乗って『気にしないで』と指を甘く噛むその姿を見て、一瞬冷えた空気が癒される。
「ハァ………エニーにはご褒美が必要だな」
「ふふ、そうだね〜流石は我が子」
「いや違うから」
頑固だなぁ〜。いっそ2人で面倒見ようよ。親権を私にも寄越せ。
「あ〜………師事する相手の事話して無かったよな」
…………ふふ。ヨツバもこんな風に話の摺り替えに苦労する事もあるんだ。
「そうだね。どんな人なの?」
「あんまり詳しく聞いてないんだけどな。ジークって名前の4学年の大剣使いだ」
「あんまり詳しく知らないって………それ大丈夫なの?」
「ん〜…………まぁ土日……じゃないや、紫藍に早速訓練付けて貰ったんだけど悪い人では無かったかな……『それ以上の情報は訓練に必要無いだろう?』ってさ。話したがらない感じだったし俺も深く追求する意味も無いしな」
「ふぅん………」
4学年で大剣使いでジーク…………あれ?
ジークグラオ? ………………いゃまさかね。
ジークリントって人も大剣使いだった筈だし………いやでもあの人は5学年だったっけ?
あれ?
「歩法に通じてるって訳では無かったんだけど仲間に得意な人が居るらしくてさ。知識は豊富だし教えるのも上手いから何とかなりそうだ」
「そっか。なら良かったね」
「……えぇ? 聞いてきたのにその反応?」
「えっ!? ウソ!? そんなつもりじゃないんだけど!? 『あっそう』っていう言い方じゃ無かったよね!?」
「解ってる(笑)そんな焦んなって」
「っもう!!」
そんな風に笑いながら
丁寧に淹れてくれた紅茶を手に
暫く他愛もない内容で談笑していた。
「───っと。結構話し込んだな」
ヨツバがふと時計に目を向ける。部屋の備え付けではないだろうそれには白黒の海洋生物が描かれている。センスがちょっと可愛い。
時刻は21時をまわった辺り。
「ありゃりゃ。ごめんねこんな遅くまで」
「いいや? 有意義だったんじゃないか? 宿題は果たせたろ。まぁ正直後半はあんまりそこ意識してた訳ではないけれども」
確かに。ただ単に会話を愉しんでいた。
「教訓は〝距離感〟」
「………締めくくり方そんなんでいいのか?」
「…………普通に親睦を深められましたって事で」
「良し」
その事務的なのもどうかと思うんですけど………
「ふぁ〜ぁあ。今日も朝から疲れたしもう寝るかー」
そう言って伸びをしながら自然に立ち上がり上着を羽織る彼からは言葉とは裏腹に、『送って行く』というのが当たり前に既に決まっているという様子が伺えて。
先日の事から考えて、疲れた時に少し素が出る人だというのは解ってる。今も欠伸を噛み殺す事もしないその姿からは疲れが見える。
いちいち『送って行こうか?』なんて聞いてくる表面上の優しさとは違う、リードされている感覚にまた少し〝大人の男性〟を感じてしまう自分が居て。
「ほら、エニー帰るよ」
そういう所には甘えておくのが彼との丁度いい距離感なのだと学んだ私は素直に席から立ち上がった。
「いゃあの………もう帰ってるんだわ本来ならコイツは既に。ここがこの子のマイホームなの。お解り?」
……………なんか言ってらぁ。
「『何言ってんだコイツ』みたいに首傾げんじゃねーよ腹立つなお前! エニーも当然の様にアカリの肩に留まるのをやめろ」
今までの様に真顔ではなく、苦笑いをしながら呟く彼の背を追いかけて、少し狭いけどそんな風には感じない彼の部屋を後にした。
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……………失敗だったかもしれない。
お節介、大きなお世話だったかもしれない。
怒らせてしまっただろうか…………
少し強引だったのは自覚している。
今日は……………ひょっとしたら来てくれないのでは…………
そんな事を考えながら、図書室の管理作業を終わらせていた。
「よーっす」
「やっほー。ミスリちゃん今日もお邪魔しまー」
そんな私の心配をよそに。
いつもの呑気で優しい声が聞こえて来た。
……………………良かった。
でも珍しい。今日は2人一緒に来たんだろうか。
ホッとした気持ちが出ていたのだろう。2人揃ってキョトンとした顔で呆けた後、後ろを向いてコソコソ相談し出した。
「ほら! だから言ったろ! 2人で一緒に来たら何かあざとくねーかって」
「だからってすぐそこで会ったのにわざわざ時間ずらして入るのもおかしいでしょう!?」
「そりゃそうなんだけどさぁ!」
「小っさいわぁ! そんな事チマチマ気にするとか小っさいわぁ!」
「おまっ……仲良しアピールっぽいって自覚あるからお前も今後ろ向いてんじゃねーのか!大体に於いて昨日心の広さが云々言ってたろ!」
「あれ訂正させて下さい」
「テメェ!」
あの…………ここ図書室なんで…………凄い静かだからお二人の声丸聞こえなんですけど…………
そんなに誤解される様な顔していたんだろうか。
「あの………」
ビクッ!! として此方に振り返るお二人は目を合わせてくれない。
………………これはやっぱり失敗だったのだろうか。意を決して聞いてみる。
「宿題はどうなりましたか?」
「あっ宿題ね!? うん、バッチリバッチリ!! ところでヨツバ今日の晩御飯の献立は何?」
「え? お前今日も食いに来るつもりなの?」
「迷惑と申すかっ!!」
「いやそこまで言ってねぇ。まだ」
「言うつもりだったんでしょそれ!?」
「いや、良いんだけどさ別に。食材が……」
「なに………? じゃあ今日は私も出すよ」
「いゃお金の問題じゃなくて。また買い出しからだぞって。てかなんでそんな偉そう?」
「偉いんで」
「あーはいはい。御令嬢様ですもの偉ぁござんすわよね。庶民にとってはお食事をお摂りにならせられる為にわざわざお越しになられる貴賓ですものね」
「凄いっ!言い方に棘しか無いっ!! 敬語ってそんな攻撃的な物だった!?」
嗚呼…………これは駄目だったんだろう。昨日より言い合いが苛烈だ。遠慮の欠片すら無い。
やっぱり失敗だった。お二人にとっては良い迷惑だったんだ…………
そう思いながら2人の会話を聴いていると違和感に気が付いた。
本当に、遠慮が無い。
あ………そうか。お互いに冗談だと解ってるから………
その証拠に2人とも昨日みたいに険悪な感じはしない。どころか自然な笑顔で笑い合っている。
これは…………?
不思議に思っていると、いつの間にか言い争い(?)を止めて2人とも私の顔を真っ直ぐ見つめていた。
「……え?」
なんですか?
そんな疑問を口にする間も無く。
屈託の無い笑顔でニヘッと笑う顔に挟まれて。
「ふふ。有難うなミスリ」
「んへへ〜ありがとうね〜」
ギュッとアカリさんに抱き締められた。
そっか。
杞憂だったんだ、全部。
今、こうして笑顔で、私のした事は無駄じゃなかったって、そう教えてくれてるんだ。
………………全くもぅ………この人達は。
あとどれくらい私に2人の事を好きにさせれば気が済むのだろうか。
やっぱりこの大切な2人の友人には仲良くしていて欲しい。こんな勝手な願望すらも叶えてくれる2人の事が本当に大好きだ。
勇気を出して良かった。無駄じゃなかった。
そう、改めて思った。