第24話 冒険者リーダー、オロッカーの絶望
なにが、、、起こっている、、、??
もう、現実だと認めたくない。そうだ、これは夢だ。悪夢なんだ。ははは、そっか、そりゃそうだよな、こんなことあり得ない。こんな、、、。だって、もしこれが現実なら。文字通り、王国はもう終わりなのだから。
2時間前。
俺たちは最後の打ち合わせをしていた。個人的には、そんなもの必要無いと思っていた。だが、ここには他の貴族派閥の冒険者も集まっている。適当にしていると後でバレる。だから仕方なく体裁を保った。
「なんで俺たちがこんなところに来なくちゃならねぇんだ。」
「王様の圧力らしいぜ。重要なミッションだとよ。」
「こんなへんぴな場所に重要もなにもあったもんじゃねぇよ。」
「ほんとね。どうせ自分の権威を示すとか、そういうくだらないことのためでしょ。」
「そんなんで俺たち、このつまらない旅をさせられてんのか。あー、帰りてぇ。」
「報酬は高いんだからよくね?」
「とはいえほぼ強制されたんだぜ俺たちは。」
「ほう、俺は自分から志願したけどな。こんなウメェ話、逃す手はねぇよ。」
「ふぅん。で、何と戦うんだっけ?」
「ゴブリンとかたくさんいるって聞いたけど、よく分からん。」
「はっはっは。ゴブリンなんかのために俺たちか呼ばれたと思うと、呆れて笑うしかねぇな。」
「Bランク以上しかいないよな、俺たち。俺たちをゴブリンと戦わせるとか、、、。ライオンとウサギの勝負じゃねぇか。」
「間違い無いわね。」
これが、俺たちのその時点での感想だった。俺もその雑談に混じって盛大に愚痴を言いたかったが、立場上こらえて、みんなを静かにさせた。
「静粛にお願いします!これより最終確認です。まず、、、。」
そして確認を終え、指定された場所へ向かう。
「リーダー。報告です!巨大な蛇を発見しました!」
「ほう。魔物か?ちょっとは面白い戦いになりそうだな。」
「、、、。」
「どうした?」
「あの〜。見間違いで無いとしたらあれは、ジャイアントスネークです。」
「本当か!!!それはいい!久しぶりの強敵だ。おい、俺のパーティが直々に出る。レッドアイズと蒼天の雷は周囲を警戒。スターダストとフォースシャドーは予定通りの方向へ進行してくれ。」
指示を出し、ワクワクしながら報告のジャイアントスネークの方へ向かう。
最初、俺は違和感を感じた。今までに一度だけ戦ったことがあるが、今相対しているそれは、あまりにも大きかったからだ。
だが、今頃逃げ出すわけにもいかない。先手必勝とばかりに、俺はジャイアントスネークに斬りかかった。
その、1秒後のことである。
な、に、が、お、き、た、!!!???
まったくこちらのことを警戒さえしていなかった相手に、文字通り全力の一撃を叩き込んだのだ。
気配を薄めにしているとはいえ、まったく警戒してこない時点で、コイツは雑魚だな、と俺は決めつけてきた。しかし違ったのだ。目の前の相手にとって、俺は警戒する必要さえないほどの儚い存在だったのだ。
その証拠に、全力の一撃は、硬いウロコに完全に弾かれて、傷1つつけることが出来なかった。
ドバッと出てくる冷や汗。
俺は、とんでもないものに手を出してしまったのではないだろうか。
相手は本当に、ただのジャイアントスネークなのだろうか。
俺は迷わなかった。こいつの近くにいたらそれだけで、死ぬ。殺される。
突然だが、空中に漂う鬱陶しい虫をハタキ落とした経験はあるだろうか。正に相手にとって、俺はその虫ケラ程度の存在なのだ。
プライドも意地も全て捨て去って、俺は全力でその場を離れた。
ぜぇ、ぜぇ。肩で息をしている。
滝のように汗が流れている。生命の危機とは、こんなにも体力と精神をエグるものだったのか。
徐々に冷えてくる頭でおれは、[最善]について思考する。
俺は、高い報酬に釣られてここまでやってきた。だから、強い敵にエンカウントしてそのまま何もせずに帰ったとあっては、報酬がもらえないばかりか、名声と信用は地の底。もう冒険者としてやっていけないレベルの出来事だ。
ただでさえ俺は、出発前に勢いよく啖呵を切ってきてしまった。それなりの成果は残さないとまずい。
つまり俺のすべきこととは。
倒せる相手を全力で倒し、その上で、敵わない相手は注意深く観察して詳細な報告を行い、情報を提供する。
そうすれば、最低限の努力はしたうえで、次に繋げるべく強敵の情報を持ち帰ったとして、それなりの功績にはなるだろう。
報酬はもちろん減らされるだろうが、信用を落とすほどのことでは無い。そして帰ったら、もうここには一切手を出さない。
あんなやつと戦うなど正気の沙汰では無いからだ。
さてと、ほかのパーティの報告によれば、北に向かうとゴブリンのパーティがいるらしい。
パーティを組んでる時点で、そこそこ知能の高いゴブリンだと思われるが、それでもゴブリンはどこまでいってもただのゴブリンだ。
勝てないはずもない。先ほどの鬱憤、はらさせてもらおうか。
こうして俺は、報告にあったゴブリンたちの方へ向かうのだった。
向かった先が、ある意味あのジャイアントスネーク(本当はアークジャイアントキリングスネーク)よりも厄介な相手とも知らずに、、、。