第23話 開戦
「リャン!そいつらを任せた。」
ゴブリン精鋭部隊は、セブンス入り口の北西方面に配置された。
最初の相手となるのは4人組の冒険者パーティ。今、相手の剣士がこちらに斬りかかってきたので、リャンに指示を出したところだ。
「了解っすよ!」
そういって、リャンは軽々しく相手の剣を受け止める。相手は目を見開き、驚いていた。
まだ驚くのは早いってば。
「サー。あいつが司教だ。定石通り、回復役から潰そう。」
「ん。」
サーは普段から無口なやつだ。必要最低限のことしか喋らない。しかし、仕事はきっちりこなす奴だ。
ほら、今だって、弓を準備してから放つまでに1秒、相手の頭に矢が突き刺さるまでに0.5秒。合計1.5秒で俺の指示を完了した。
優秀な部下っていいね。
それをみた相手の魔法使いは取り乱し、せっかく唱え始めていたブロンズ級の大魔法の詠唱を中断してしまった。
いや、それより相手の魔法使いの詠唱の遅いこと遅いこと。よくそれで今まで戦力になってきたなぁ。
いや、相手がダメなのではなく、ウーがすごすぎるのか。範囲攻撃のシルバー魔法をぶっ放す準備がすでに完了して、こっちを見てるもんなぁ。ワクワクした目で。早く撃ちたくて仕方ないって顔だ。焦らすのも楽しいけど、、、。
「リャン!下がっていいぞ!ウー、やっちゃおうか!!!」
「「りょーかい!」」
リャンがその大きな体に見合わない素早い動きで前線から離れると、その瞬間、相手の剣士と、真ん中で指揮を取っていたリーダーらしき人にウーの魔法が直撃する。
倒した、なんて表現は生ぬるい。粉砕、ですらない。もはや、処理だ。死体も残らずに消えてしまった。オーバーキルも甚だしい。
ウー自身も、ちょっと驚いていた。訓練で魔法を使うことはあっても、実際に相手に使用するのは初めてだったから当然の反応かもしれない。
こうして、俺たち精鋭部隊の最初の戦いは、危なげなく勝利に終わった。
続いて、今度は3人組のパーティとの戦闘になった。個人の力は先ほどのパーティより強かったが、大した連携もしてこないので、苦労なく勝たせてもらった。
しかし!それが油断だったのだ。3人だと思っていたパーティは、実は4人組だった。最後の1人はアサシン。
そっと気配を消し、透明化を使用して俺たちに気付かれないようにしていたのだ。
完全なる不意打ちを喉元に食らう。俺の人生もここまでか、、、。となっていただろう、もし、リュウさまにもらった防具が無かったら。
最強の防具の素材。それは、メタルスライムである。リュウさまにしか作れない、最高級の防具。相手が全身全霊を込めて放った捨て身覚悟の一撃。それを、傷1つつけずに弾いて見せた。
相手は驚きすぎて身を隠すのも忘れて立ち尽くし、しばらくすると何やら大声を上げて喚きながら逃げ出した。
しかしそこを逃すような俺たちではない。
「サー。頼んだ。」
「ん。」
サーの射程内は、500メートルを超えている。逃げ切れるはずも無いのだ。
こうして本当に戦いは終わった。俺としてはまだまだ戦いたかったのだが、どうやら他の冒険者たちも撃退したらしい。
セブンスの完全勝利である。
今回、俺は反省点も多い。今後はもっと訓練に励もう。だが、今日はとりあえず、俺たちの力が十分すぎるほど通用することが分かって本当に良かった。
これからも頑張ろう。すべては、リュウさまのために。