表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第2話:なるほど、そういう設定か


 魔法使いは言った。

「ご主人様、このときをお待ち申し上げておりました。すでに媒体は完成いたしております。まもなく儀式を行います。」



ん?いきなりでよく分からないな。

媒体?儀式?なんのことだろうか。


俺が疑問に思っていると、後ろにあった入り口から、大きな黒い羽を生やし、全身が真っ黒な鱗に覆われたドラゴンが姿を現した。

 ドラゴンの背中には、なにやら頑丈そうな鎧が乗せられていた。



魔法使いが再度口を開いた。

「こちらが媒体となります。ご主人様にふさわしい、様々な装飾と効果を兼ね備えております。」そう言って、魔法使いはドラゴンが持ってきた鎧を指した。


 この魔法使いの発言を皮切りに、残り五体の守護者も次々と姿を現した。


銀のしっぽを生やし、赤黒い角と鮮やかな青色の胴体を持つ悪魔。


金色に輝く光輪と純白の翼を持つ、絵に描いたような天使。


黒に近い灰色のボディに、いくつかの金色のラインが描かれた、しずく型のスライム。


黒と緑を織り交ぜたような体表で、全長50メートルほどの大蛇。


狐の特徴とオオカミの特徴を併せ持った、灰色の獣、フェンリル。




みるからに全員強そうだ。こうしてそろったところを見ていると実に圧巻である。

そんなことを思っているうちに、いつの間にか例の“儀式”とやらが始まっていた。七体の守護者がダンジョンコアの周りを取り囲み、なにやら呪文を唱えている。


 そして急に、魂が浮くような感覚がした。



・・・俺は、ゆっくりと起き上がった。ダンジョンコアは、丸い水晶のようなものであり、起き上がる、などという行動はできない。そもそも生き物ではないし。


 ではなぜ俺は起き上がることができたのか。それは、俺が鎧になったからである。先ほどドラゴンが運んできたあの鎧。俺はそれに乗り移ったらしいのである。


 

 どういうわけか、声を出すこともできた。


そういえば、言語もなぜか完全に理解できた。神様が自動翻訳でもつけてくれたのだろうか。



 まあそんなことより、現状の把握が先だ。俺はおもむろに口を開いた。鎧だから実際に開いた訳では無いが。


「守護者たちよ、現在の状況を教えてくれ。」


我ながら、迫力のある声だと思った。鎧から出る声は、少し機械チックで、そして低く、よく響き渡るのである。


この問いに答えたのは魔法使いだ。


「はい。我々は、ご主人様の命令に従い、このダンジョン内で過ごしておりました。一ヶ月したら媒体に移してくれ、とおっしゃったので、儀式を実行させていただきました。」


ふむふむ。そういう設定になっているわけか。



「みたところ食料などはないようだが、大丈夫だったのか?」



「食料なら十分でしたよ。ご主人様が毎日、食事を出してくれたではありませんか。それだけで無く、たくさんの力を与えてくださいました。我々は、心から感謝いたしております。」


なるほど。ゲームで食料を与え続けたことや、魔物を倒してレベルを上げた事は、こういう設定につながっているわけか。“力”というのが、あのゲームで言う経験値のことだろう。


「それならいい。ところで、俺は少々記憶を喪失している部分があるようだ。このダンジョンや外の世界についておしえてくれないか。」


前から俺はこの世界に存在していたことになっているようだが、実際にはなにも知らないので、こうして情報を得ておく必要があるだろう。



「わかりました。それでは説明させていただくことにいたします。」


魔法使いの説明で分かったことをまとめてみる。



7体の守護者達は、一ヶ月前に生み出された。ご主人様(俺)の命令により、決してこのダンジョンの外には出るなと言われたので、その言いつけを守っていた。また、このダンジョンの存在を、この世界から隠蔽していた。といっても、存在を分かり辛くする程度だが。

 ダンジョンは地下に広がっていて、全部で8つの階層から出来ている。階層一つごとに階層主がいて、1~7階層までを7体の守護者達がそれぞれ担当している。そして現在いるのが第8階層である。

 

 

 「・・・というわけなので、我々も外の世界については詳しく知らないのです。」


「だいたい理解した。ご苦労だった。」


「いえ、もったいなきお言葉。」



 そういって、魔法使いとその他の守護者も一斉に頭を下げてくる。なんなんだろう、この絶対的な忠誠は。嫌々従っているようにも見えない。むしろ、俺に仕えることを最上の喜びとしているようにさえ見える。俺はそんなに慕われるようなことをしたのだろうか。

気になって聞いてみた。


 「私たちは、ご主人様のくださった力のおかげで、最上位種まで進化を遂げる事が出来ました。我々を生み、育ててくださった。全てはご主人様のおかげです。ご主人様に心からお仕えすることに、これ以上の理由は必要ございません。」


 ・・・うん。なんというか、あのゲームを頑張って良かったよ。これならこの異世界でも十分やっていけそうだ。ただ、警戒すべきなのは他の転生者だな。もしかしたら俺と同じように、あのゲームをやりこんだ奴がいるかもしれない。油断すれば痛い目に合う、これはどこの世界でも共通なはずだ。



どんなに強くても調子に乗らず、楽しい異世界ライフをおくるのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ