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第15話:レプタ-登場。眷属でもこの強さ

ガーメルが私の戦いをみて、つぶやいた。

「やはりシャーレは強いな。上位のSランク冒険者は、ひと味違うということか。」

そうだ、ガーメル。私をよく見て、そして学べ。お前はもっと強くなれる。



私は容赦なく切りつけ続けた。それでも削れたのは相手の体力の半分にも満たないだろう。さらなる追い打ちをかけるべく、剣を振りかぶったそのとき。

 アキリスは大きな咆哮をあげた。

その瞬間、アキリスの体表に、青色の電気がまとった。

その姿は恐ろしくもあるが、どこか神聖な雰囲気を漂わせていた。


切りつけた私の剣が、電気によって阻まれ、そして固定された。それだけでなく、青い電撃が私の方をめがけて飛来した。


 仕方なく青龍剣を手放し、素早く回避する。

想像以上の相手だ。おそらくこの個体は、中位のSランクに到達しているだろう。今ここで、確実に仕留める必要がある。

 やはりあれを・・・使うしか無いようだな。


私は振り返り、後ろの二人に視線を送る。



少しは焦ったように見えるラムと、走れる程度には回復したガーメルがそれぞれ言った。

「まさかですう。あれを使うんですか、ですう。」

「マジかよ、それほどの相手なのか。」



私でさえも一分間の詠唱を必要とするシルバー級魔法。そこに、マジックアイテム【天変地異】のサポートを乗せて放たれるその威力は壮絶なものである。ただし、この魔法は一日に二回しか使用できない。



使うことになるだろうと判断したときから、ずっと詠唱を唱え続けていた。そして今、準備は整った。アキリスの方向に、両手を伸ばす。

「グレーターフレーム!!!」


 

その瞬間、紅色の炎があたり一面に広がり、それがだんだんと中央に引き寄せられて集まっていく。その炎の中心に居るのは当然、アキリスである。アキリスはうめき声を上げる。暴れて、のたうち回って、まとっていた電気も消え去った。


 グレーターフレームの炎が収まった頃には、アキリスは虫の息だった。

だが私は驚きを隠せなかった。余りにも大量の魔力を1度に消費し、この私でさえ息切れするような魔法に直撃しながら、なぜまだ生きているのか。


 私は潜在的な恐れを抱いた。休んでいる暇は無い。万が一にも逃げられることがないように、早くとどめを刺さなければ。私は落ちている青龍剣を拾うべく、走り出した。




そのときだった。私は足をとめ、その場に凍りついた。何かを見たわけでは無い。感じたのは気配だけだ。それは私の目線の少し上空。そこに確実に居る。アキリスと比べものにならないほどの、真の化け物が。そちらを見ることも出来ずにその場に立ちすくんだ。


 その存在は、音もなく、アキリスのところに降り立った。

「ずいぶんと、派手にやられてしまったようですね・・・。ポーション、持ってくれば良かったです・・・。まあ、少しの間待っていてください・・・。」

その存在は、無機質なしゃべり方でそうつぶやいていた。そしてこちらを振り返って言った。


「お初にお目にかかります・・・。レプタ-と申します・・・。これから、あなた方を殺します・・・。短い間ですが、よろしくお願いします・・・。」



私は心の底からおびえていた。こんな感情を持ったのは、いつ以来だろうか。本能が、全力で逃げたがっている。だが、仲間のためにも私が時間を稼ぐ必要がある。



「なんだお嬢ちゃん?俺たちはシルバーウルフのメンバーだ。そのでっかい蛇を、仕留めなきゃなんねえんだよ。今なら何もしないから、早くおうちに帰りな。」


「何を言っているガーメル!!ラムと一緒に早く逃げろ!!決して振り返るな、さあ行け。そして逃げ延びて、隊長に、いや、国王に伝えてくれ。人類の危機であると。」


それだけ言うと、私はレプターと名乗る真の化け物の方へと全力で走った。心の中の恐怖をかき消すように、全力で叫びながら。


 途中で青龍剣を拾い、そのままの勢いでレプタ-に斬りかかった。レプターは微塵も行動しない。なぜだ?速い動きは苦手なのか・・・?


 いや、そうではなかった。認識されていなかったのだ。今の私の全力の一撃が、攻撃であるということを。


「すみません・・・。攻撃だったのですね・・・。次からちゃんとよけます・・・。」

挑発している訳ではなく、本気で言っているということが理解出来た。

それが恐怖をさらに増大させた。


「私も真似します・・・。」

その言葉以降、私が次に認識したものは、両手両足が地面に並べておいてある光景だった。妙に、目の位置と地面の位置が近い。なぜだろうと思って体を動かそうとするが、実際に動いたのは首だけだった。なぜなら、私の手足は無くなっていたから。


だが私は動揺しなかった。むしろ、生きていた事に感謝した。レプターという相手にとって、私という存在は、それこそ一匹の蟻よりもはかないものである。故に、これだけの時間、生存することが出来たことは、奇跡に等しい。


その奇跡のおかげで、私は一矢報いることが出来そうだ。全てをこの時のためだけに賭けていた。あの魔法はすでに1度使ったが、まだもう一度は使えるのだ。人生最後にして最大の一撃を、プレゼントしてやろう。



「グレーターフレーム。」




この至近距離からの、自分自身をも巻き込んだ、渾身の魔法。

私を舐めていたこと、それを少しでも後悔させてやりたかった。願いは今、叶った。

・・・そのはずだった。



「あつい・・・。やけどしそうです・・・。」

レプターは、紅色の炎の渦の中から平然と歩いて出てきたのだ。



もう私には、悔しいという気持ちも、悲しいという気持ちも無かった。あるのはただ、圧倒的弱者としての自覚と蹂躙される恐怖だけ。今まで生きてきた様々な思い出や、抱いた感情も、この恐怖一つで全て塗り替えられるほどに。



「どれを切ればいいのか分からないです・・・。あ、思い出しました・・・。首、でしたね・・・。」

私は最後にレプタ-のその言葉を聞き、人生を終えた。 




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