第14話:冒険者グループ、シルバーウルフの活動
③シャーレットの恐れと絶望
私はシルバーウルフのメンバーのひとりだ。メンバーの中で、リーダーの次に強い。その理由は、身体能力の高さにある。私は、スターラビットという魔物の特徴を体の構造に含んでいる。俗に言う亜人というやつである。
だが亜人である私を、シルバーウルフのみんなは快く受け入れてくれた。今ではメンバーのことを家族のように思っている。
「シャーレ、聞いたか?あの噂の冒険者、重大犯罪をやらかしたらしいぜ?」
問いかけてきたのは、メンバーのひとり、《豪腕のガーメル》である。ちなみにシャーレというのはメンバーが私につけたあだ名だ。けっこう気に入っている。
「リュウという冒険者だろ?異例の速さでBランクになったという。」
「ああ。だがよ、にわかには信じられねえな。周りからの評価も高かったらしいぜ。とても重大犯罪など起こすような人ではなかったと、みなが口を揃えていうくらいには。」
「私も疑ってはいる。だが、王の命令に逆らうことができないのもまた事実だ。私には家族がいるしな。あ、お前もだったか、ガーメル。」
「ああ、そうだな。しかし適当に探し回っていて見つかるとも思えな・・・お、おい。あれはなんだ?」
ガーメルがしゃべり途中で切り替えるほどの存在か。素早くガーメルの指す方向を見る。
そこに居たのは、全長20メートルはあろう、巨大な蛇だった。
「これはまさかですう。大きすぎるのですう。どうしてこんな場所にいるのですう。」
変な語尾のこの女は、《疾風のラム》という、シルバーウルフの3番手である。
これはまさか・・・ジャイアントスネークなのか?ここは人の家もちらほら建っているような、町の少し外れのあたりだ。そんな場所に現れた話など、聞いたことも無い。まだ遠目なので詳細は分からないが、一刻もはやく討伐する必要がある。
今いるのは、私たち3人だけだ。気配をけしながら対象に近づいていく。
そして、《豪腕のガーメル》が勢いよく奇襲をしかける。ガーメルはモンク職なので、腕に取り付けたナックルアローで攻撃を行う。
ガーメルはAランク冒険者である。Aランク以上の冒険者の割合は、0.5%未満といわれている。シルバーウルフは、そんなAランク以上の冒険者のみで構成されたパーティーであり、パーティーとしてのランクはSSランク相当と認定されている。
故に、身につけた装備も高性能なものばかりである。ガーメルが装着しているナックルアローは、ミスリル合金で作られた一級品だ。そこにモンクとして熟練された技術が組み合わさればどうなるか。ジャイアントスネークを大きく切り裂き、先制で大ダメージを与えるだろう。私たちはそう信じて疑わなかった。ジャイアントスネークの鱗によって、いとも簡単に弾かれるまでは。
「なん・・・だと!?」
ガーメルがそう言うのも無理は無い。ミスリルは大変貴重であり、しかしその分、絶大な強度と使いやすさを誇る金属である。それを素材に作られたナックルアローの、熟練された一撃が、造作も無くはじかれたのだから。
ガーメルの攻撃を受け、その魔物は素早く回転した。その回転にもろに直撃したガーメルは、10メートルほど吹き飛ばされた。
私は警戒レベルを5段階引き上げる。そして今、理解した。これは、この化け物は、
アークジャイアントキリングスネークである。名前が長すぎて不便だとかそういう事を言う人は存在しない。そもそも、人生においてこの魔物の名を呼ぶことが有るという方が珍しいからだ。間違い無く災害級の魔物であり、下位のSランクと認定されている。
出会ったのが私たちで良かった。Bランク以下の冒険者では、10秒もしないうちに殺されてしまうだろう。この魔物を倒し、いち早くこのことをギルドに報告して、警戒レベルを上げる必要がある。
さてと戦闘は・・・私がやるしかないよな。場合によっては、あの魔法を使うことになるかもしれない。
「ラム!ガーメルの回復を頼む。巻き込まれないところまで離れていてくれ。」
「ダメですう。シャーレさんが大変ですう。私も戦いますう。」
「相手はSランクに匹敵する魔物だ。お前達を死なせたくない。ここは私に任せてくれ。」
「その言い方はずるいですう。でも、了解ですう。無理しないで、ですう。」
わたしは苦笑してしまった。こんな状況でもラムはぶれないなぁ、と。
だがそのおかげでリラックスすることが出来た。緊張感が無くなってしまったというわけではなく、戦いやすくなったという意味である。
勝負開始といこうか。
私は、【アテンションプリーズ】を発動する。攻撃対象を自分に向けさせる効果がある。こちらにやってきたアークジャイアントキリングスネーク(略してアキリス)を、青龍剣で切りつける。重たい振動が腕を伝わる。だが少しの手応えがあった、数枚の鱗に傷をつけたのである。そのまま連続技につなげ、回し切りから縦切りなどのコンボを決めていった。