第13話 国王はこのくらい愚かです
②国王の怒り
どうしてそうなった?こんなことがあり得るのか?
私は今、家来の報告を聞いている。
「・・・というわけで、クロード様は、家族もろとも完全に姿を消しました。」
「見張りは何をやっていたのだ!!あいつをこの国に縛りつけておくためにわざわざ雇ったのだぞ?今すぐ見張り達を全員よんでこい!そしていち早く家族を攫った犯人を見つけろ!残らず捕らえるのだ!」
「見張りはもう呼んであります。隣の部屋で待機中です。尋問を行ったのですが、誰ひとりとして犯人の顔を覚えていないそうです。」
私は完全にぶち切れた。
「全員牢屋にぶち込んどけ!!
なんか情報は無いのか?犯人の手がかりになるものは?」
「手がかり・・・とまでは言えないかもしれませんが、クロード様が居なくなった日に、ある冒険者と会っていた事が分かっています。」
「ほう、それはどいつだ?」
「リュウという冒険者です。」
聞いたことがあるぞ。たしか美女を連れ回していると噂の、碌でもないやつだ。
そんな奴にしてやられたと思うと、余計に腹が立った。
「今すぐそのリュウとやらを殺せ!そして、一緒にいる女は生かして連れてこい。傷はつけるなよ?」
クックック。残念だったなリュウよ。おとなしくしていれば良いものを。私を敵に回すからこうなるのだ。これで噂の美女は私の、おっと何でも無い。美女をとらえていろいろ聞き出さないとな。いろんな尋問をする必要があるだろう。家来にばかり仕事をさせるのは国王としてだらしがない。尋問という仕事は私が担当してやろう。仕方なく、だけどな。グヘへ。
「し、しかし陛下。まだリュウという冒険者が犯人と決まった訳では・・・。」
「ほう、おぬし、私の命令が聞けないというのか。」
「す、すみません。分かりました。仰せのままに致します。」
「分かればよい。」
リュウとやら、覚悟していろ。目に物をみせてやる。私に逆らうとどうなるのかということを、存分に教えてやろう。そんなことを考えていると、
「陛下。報告したいことがございます。」
やってきたのは、先ほどとは別の家来である。情報収集を担当している者だ。
「リュウという冒険者の暗殺を命令なされたと伺っておりますが、それは難しいと存じます。クロード様がいなくなられたその日から、その冒険者達も姿を消したからです。」
「何!?どこを探してもみつからないのか?普段泊まっているという宿屋は?」
「どこにも居ません。完全に姿をくらましています。」
俺は歯ぎしりした。こんなにいらいらしたのは久しぶりかもしれない。
「とにかく探せ!みつけるまでずっとだ。探し出して殺せ!女ももういい!二人とも殺せ!生首を必ず俺の元に持ってくるのだ!当然だが、その二人は犯罪者として大々的に知らせて回れ。手配所も作れ、今すぐに!」
先ほどから叫んでいてのどが痛い。私は絶対に許さない。
「失礼ながら申し上げます。その冒険者達は強いといっても、所詮はBランクでございます。」
「・・・何が言いたい?」
「協力者がいると考えます。殺すのは、その情報を引き出してからの方が良いかとおもわ」「分かった。そこら辺は任せる。だが確実に殺せ。ぬかるんじゃ無いぞ。」
私は話を遮って命令した。ごちゃごちゃとうるさい。どうでもいいから早くこのイライラを消し去りたい。私は、騎士団や有名な冒険者たちにも協力を要請するように命令し、自室に戻った。
ふざけるな!全てはあの冒険者のせいだ。クロードが居なくなったことで、国民の管理や貴族達の歯止めが全く機能しなくなった。多くの問題が発生し、現在手が追いつかない状態である。そのことが余計に私をイライラさせた。
おいてあった高級なグラスを床にたたきつけて粉々に砕き、そのままベッドに潜り、私は目を閉じた。