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第10話:アインの成長

③アインの成長

私はアインいいます。この名前は偉大なるご主人様からいただいたものです。私はマジョール様の眷属のひとりで、魔法使いと呼ばれる存在です。

 私は、生命であって生命で無いといえます。魔法使いとはそういうものなのです。


まず、魔法使いというのは、魔力の集合体のことをさします。長い時間をかけて、魔力が偏り、それらが集合し、意思を持つようになったもの。それを総称して魔法使いと呼ぶのです。

 魔法使いは、もしも十分に成長できたなら、最強と呼ぶのにふさわしい力を得るでしょう。ただし、そこまでいくことは難しいです。というより、ほとんど不可能に近いかもしれません。

 まず、魔法使いが発生した瞬間から、魔物に狙われてしまいます。魔力が多い獲物が魅力的なのは当然のことですよね。それに加えて、人間達の中には、魔女狩りを行う団体がいくつかあります。魔女を忌むべきものとして排除するという宗教的な団体ですが、その存在の真の理由は、強大な魔物になる前に殺し尽くす必要があるから、であると私は考えています。

 

 そんな中、安全な環境で、最適な食事と高度な力を与え続けられたマジョール様は、最強といって差し支えないでしょう。マジョール様の眷属である私も、十分に強力ではあるのですが、もっとリュウ様のお役に立ちたいというのが私の願いなのです。マジョール様と同じくらい頼られて、同じくらい活躍して、同じくらい褒められたい!あ、別に嫉妬とかとは違いますよ。マジョール様のことは尊敬してますから。


 でも、わたしにも、マジョール様みたいな強力な力がほしいなぁ、なんて、リュウ様に上目使いでおねだりしてみちゃいました。


リュウ様は、少しあきれたような顔をしていましたが、少しだけ笑いながらおっしゃいました。

「あざといの、嫌いじゃない。」


ああ、なんてかわいいのでしょう。いえ、偉大なるご主人様に対してそのようなことを思ってはいけないのでしょうけど・・・。でも、私にとってはかわいいというのはすごい褒め言葉なんです。だって、こんなにもかっこよくて、頭脳明晰で、みんなから絶対の忠誠と信頼を寄せられている圧倒的支配者が、かわいいんですよ?そのギャップ、反則じゃないですか!

 はっきりいって、わたしメロメロです。わたし、自分であざとい自覚あります。きっと私を構成している魔力成分は、元はあざとい女の物だったのかもしれません。まあそこら辺の基準はよく分かりませんが。

 でもとにかく、リュウ様は、あざとい女もまんざらではないようです。これ、脈ありじゃないですか?


ですが結局、私に力を与えてはくれませんでした。もう与える力は残っていないのだそうです。とても残念です。


でも、私は諦めませんよ?すっごく強くなって、リュウ様の右腕のような存在になって、常に近くにいたいからです。

 だから私、実は猛特訓してます。仕事の合間を縫って、魔力の濃い場所、例えば山脈などに出向いて、魔力をかき集めているんです。もちろん、他の人に見つからないように気をつけてます。

 この成果が出てきたのか、前よりも強くなっている自覚があります。これからも毎日続けていくつもりです。


 つい先日、すごくうれしいことがありました。リュウ様に褒められたんです。

「アイン、強くなったな。といっても、俺は元から勝てなかったけどな。」


私は思わず涙を流しそうになってしまいました。しかし、ひねくれ者の私は、ここはあえて泣くのを我慢しました。代わりに、

「ほんとですか!ありがとうございます~」と、

いつもの軽い口調で答えておきました。


それにしてもリュウ様は謙虚ですよね。ご自身が強くないということを気にしているようなのですが、そんなことでリュウ様への尊敬が減るほど私たちの忠誠は甘くありません。そもそも、リュウ様ありきの私たちなのですから。


 そんなことを考えていたら、完全な不意打ちをくらってしまいました。

「アイン、俺の前でくらい、気を抜いたらどうだ?それともそんなに信用がないのか、俺は?」


私が、明るくてお調子者な女の子のキャラを作っていること、リュウ様にはお見通しだったみたいです。私はついに我慢できず、泣いてしまいました。それも、リュウ様に抱きつきながら。今考えても、あれは幸せでしたね。



 それにしても、リュウ様ってこんなキャラでしたっけ?他の人の前ではもっと堅苦しいイメージのはずなのですが・・・。ふとそう思ってリュウ様を見つめていると、私が言いたいことを察したのか、

「アインの前だとついね・・・。お互い、秘密な。」


私は、リュウ様に抱きついたことよりもさらに、このことがうれしかったのです。全てをまとめる最高責任者ということで、リュウ様もまた、威厳のあるキャラを頑張っていたということが。それも、私の前では口調を崩して、素に近い口調で話してくれることが。



 あ、話がだいぶそれました。強くなったと褒められたあと、リュウ様は私にあることを命じたのです。それは、セブンスの入り口周囲を結界で覆うということでした。いくら私が強くなったとはいえ、そんなに巨大な結界を、常時張り続けておくことは厳しいです。

それは難しいかもしれません、と答えようとしたそのとき、私はひらめきました。あるじゃないですか、大量の魔力が。


私はまず、セブンスの第2層を覆うある種類の結界を発動しました。この結界の役割はただ一つ。空気中に漂う余分な魔力を吸収し、収集すること。弱い魔物であればあるほど、体内のエネルギーから生成される魔力を、体外に流出させやすいです。つまり、魔力が垂れ流しの状態になっているということです。強者になると、魔力を体内にとどめて、自らの力にするのですが・・・。

セブンスの守護者や眷属には強者しかいなかったので今までは気付きませんでした。でも今はいるじゃないですか、第2層に。ゴブリンを主とした、大量の魔物達。垂れ流しになっている魔力を集め、それを利用して強力な結界を張るのです。


我ながらナイスアイディアだと思いました。


それをリュウ様に伝えたら、リュウ様は普段よりも一回り大きな声で、

「それだ!!」と言いました。


ですがすぐに冷静になったようで、

「アイン。そのアイディア、すぐに採用させてもらおう。ご苦労だった。」

と、いつもの人前モードに戻ってました。


 そしてマジョール様は少し悔しそうにしています。

私が先に思いついたからでしょうか?


・・・ということは私は、初めてマジョール様に勝ったということです!

ついにやりました私!


考えてみれば、結構活躍できているのかもしれません。この調子でこれからも頑張っちゃいますよ。全てはリュウ様のために!!



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