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黒白の王と闇夜の剣  作者: 獅猫
第一章 ー真夜中の幻想ー
18/91

18-世界樹の都-

一日空いてしまいましたが18話です。

ジークフリードとの決闘に勝利し、王都への船を出してもらった俺たちは、長い船旅を続けていた。現在午前1時。ソフィは完全に就寝している。先程覗いたら、波やモンスターの襲撃では絶対に起きない程熟睡していた。


俺は夜風に当たりたくなって船の甲板に出ていた。もう数日間船の上なので少し飽きて来た。もういっそ水棲モンスターに襲撃されたほうがいい。そう思う程だった。


だがそこで、後ろから階段を上がってくる音がしたので後ろを向いた。予想通り、就寝スペースである船の内部からフェリアが上がって来ていた。


「どうしたフェリア、船酔いか?」

「ううん。違う。聞いてみたいことがあっただけ。」


そう告げるフェリアに向かって、俺は首を傾げて聞いた。

「聞いてみたいこと?」

「…君の今までの旅。」


そう言われ、俺は少し真面目ムードになった。なんせ俺たちの旅は壮大で深刻だ。敵が大きすぎる。ソフィも巫女だという事情を抱えている。


だが俺は、いつの間にか彼女に今までの旅のことを話して聞かせていた。

「俺は半年以上前にソフィと旅に出てさ。自分たちの国を侵略しようとする帝国と戦い、抗ってた。そんな面ではフェリアたちと似てるかもな。最初は楽しいから、ってだけの理由で旅をしてたんだ。でもな…、」


俺は旅の途中で芽生えた意志について考えた。確かに最初は退屈だった今までを捨て、新しい人生を歩むべくこの旅をしていた。でもその目的も変わり…、


「俺のこの旅の目的は、いつの間にかソフィを守ることになってたんだ。…なんで…だろうな。理由は分からない。でもただ守りたい、一緒にいたい。それだけだ。」


俺がそう聞かせると、フェリアは微笑んでから言った。


「その気持ちを感じたことはないけどね…わかるよ。好きなんでしょ?」

「おぶっ!」


丁度のどが渇いて飲み物を飲んでいた俺だったが、フェリアに唐突にそんなことを言われて全て吐き出してしまった。改めて水を飲んでから言う。


「…さあな。わからない。感じたことがないから。でも…多分な。」

「…多分じゃなくてそうだよ。きっと。」


俺は少し黙り込んだ。そういう目線で彼女を見たことはあまりなかった。だが…俺は単なる旅の相棒としてでなく…。


「そういえば…なんでこの世界に来たの?」

「ん?ああ…神霊獣がいるかもって思った。そんだけだ。」


そんな適当そうな答えを聞いたフェリアは再び俺に聞く。

「なんで力が欲しいの?」

「…さっき言った目的のためだ。俺が強くなれば守れるかもしれないからな。それにホラ、行けば分かる。」


そう言って俺は船の進行方向側を指さした。ワケが分からないという顔をしていたフェリアだったが、俺の指さした先にある物を見て納得する。空に浮かぶ月の明かりがそれを明るく照らした。


「見えてきた…世界樹ユグドラシル…。」

「…あれが…!」


二人の向く先には、天を貫く様にそびえる世界樹が彼らを待ち構えていた。ここでそれぞれのとりあえずの目的は果たされる。そうなれば瑛斗たちとエルフェリアは旅ができなくなる。だが元々分かっていたことだ。


少々寂しく思いながらも自分に言い聞かせ、再び世界樹の方を見る。一方、こっそり隠れて二人の話を聞いていたソフィリアは、急いで船室に戻った。



ー♢♦♢【世界樹の加護を受けし都】♢♦♢ー



「うわぁ…!ここが世界樹の都【王都エスタナル】…!」

エルフェリアは到着した大きな町【世界樹の都エスタナル】を見回してしみじみと言った。今までの町とは全然違うような、幻想的な雰囲気の町だ。


現在時刻は午前3時になったところだ。ソフィはしっかり眠れた…かと思いきや少しだけ眠そうである。


「あの世界樹を目指すんだっけ?」

「うん。軍神の宮殿があるからね。でも今日はもう宿屋に行こ。ソフィリアも眠そうだしね。」

「おう、了解。」


俺たちは船酔いと謎の寝不足でまだ眠たそうなソフィを連れて町を歩いた。時間が時間なので町を歩いている人はほとんど誰もいない。


ところどころに設置された地図付きの看板を頼りに、俺たちはゆっくり休めそうな宿屋を探した。まだ船が揺れている感覚が残っている。このままでは戦闘し辛そうなことこの上ない。


「あ、あったぞ。あの宿屋だ。」


俺たちは地図の中で見つけた良さそうな宿屋を見つけ、中に入った。一泊1000円ほどとこの世界の宿屋にしては少し高価だ。だが部屋が良ければそんなちょっと高い金は関係ないのだ。


宿屋にチェックインすると、女子と男子で別々の部屋に入った。やはり中々に綺麗で広い部屋だ。俺は外套付きの騎士服である【エーデル・ノワール】を脱いで壁に掛けると、大きめのベッドに座った。


俺は自分のステータスカードを取り出し、そして眺めた。新たなスキル【双黒剣】。バハムートの力を得た後、ふとステータスカードを見るとこのスキルが突然現れていたのだ。


俺の双剣に光と闇の属性を宿して剣技を放つことのできるスキルで、その威力は尋常ではない。現在熟練度は240。まだまだ低いがその力は既によくわかる。


ちなみにソフィも十二神のチカラを得たからか、【星閃剣】というスキルを手に入れた。俺の双黒剣よりも早さと正確さに優れるスキルだ。手に入れた神霊獣の魔力や力を剣技に宿せる。


この二本の双剣と、この黒いジャケットと腰巻もバハムートの神具。俺の現在のジョブクラス【NightSaberナイトセイバー】も恐らく黒龍のジョブだ。


このジョブは、片手剣、大剣、二刀流、ダガーの武器適性がS、弓、銃の武器適性がA+。遠隔攻撃にも優れる。いつか弓や銃、大剣なども入手してみたい。


「あの黒龍ったら固有の物が多いよなぁ…。」


俺は、感謝しつつも黒龍サマに向かってそう愚痴った。そろそろスキルポイントも貯まって来た。何か新しいスキルでも入手してみようと思い、再びステータスカードを眺める。


俺がスキルを獲得する場合は、俺の独特なスタイルにマッチするスキルでないといけないのだが、中々そういうスキルに巡り合えないのが現状だ。


もうすぐ双黒剣の熟練度も250となるので、そこで手に入れられる新たなAAを獲得したほうが良いだろう。このペースだと戦闘中に250に達しそうだ。俺はステータスカードのある場所を【ON】にした。


これは【AA自動習得】という機能で、武器熟練度が上がり、入手できるAAが増えると自動でそれを獲得するというものだ。スキルポイントを大量消費するものまで問答無用で獲得してしまうので普通は【ON】にはしない。


俺はステータスカードを収納した。昔のゲームでもよく考えていたスキル構成でも考えてみよう。そう思い、ベッドで横になったまま色々考えていたのだが、それも長くは持たず、眠気に襲われた俺はほんの数分で眠りについてしまった。



♢♦♢♦



窓の間からアースガルズの朝日が差し込む。俺は大きなあくびをしてから布団を出て、顔を洗い、準備を済ませてから壁に掛けておいた騎士服を装備した。


そして部屋を出て向かいの部屋のドアをノックしてから呼びかける。

「二人共、起きてるか?」


俺がそう聞いても反応はなかった。数秒経過し、俺がもう一度ノックしようとした時、中から眠たそうな声が聞こえた。

「ん…エイト君?…もうそんな時間?」

「ああ。もう朝。ソフィも起こしてくれ。一度寝たらなかなか起きないぞ。」


その後はフェリアがソフィを起こすべく必死に呼びかけているのが聴こえた。正直ソフィを起こすためには体を触ったりするのが一番効果的なのだが、それをすると布団に引きずり込まれる可能性がある。


一分ほどの格闘の後、ソフィもやっと目覚めたらしく、二人は朝の準備を始めた。俺も外で壁にもたれかかって待っていると、もう完全に起床しているフェリアと、大あくびをしているソフィが二人同時に出て来た。



俺たちは眠そうなソフィを引っ張って町中を歩いた。エルフ、ドワーフなど人間以外の妖精などの種族がたくさん歩いている。


店の武器や防具もかなり高レベルだ。そんなものに目が行ってしまうのはやはりRPGをしていた者としての習慣だ。まあ俺の武器や防具を超える装備はないのだが。


このエスタナルには、見るからに強そうな冒険者がたくさんいる。ランクAやB程の防具を見に付けた剣士や高い魔力を感じられる魔導士だ。


先程からソフィが最奥にある世界樹を見つめている。その理由は俺にも分かるし、それが感じられる。その世界樹からは、とある属性の強大な魔力が感じられる。間違いなく【神霊獣】の魔力。やはり何かがいる。


その魔力は氷神コキュートスを凌駕するほどだ。バハムートには及ばないが間違いなく最強クラスの神霊獣、【十二神】なのは間違いない。


「(軍神って奴が平和主義な奴だったら良いんだけどな…。)」


俺は、これ以上死にそうになるような激戦をしたくないという一心で世界樹へ向けて歩き続けた。




「…予想以上に大きいな…世界樹。」

「雲の上まで行ってるね…。」

「ミッドガルズにはこんな木絶対無いと思うなぁ…。」


それぞれがその大きさと凄さ、神々しさに圧倒され、感じたことを口に出す。【世界樹ユグドラシル】といえばファンタジーな世界観のゲームではもう定番だが、実際に見てみるとやはり凄い。今まで見ていたのはたかがゲームだった。そう改めて感じた。


近づくにつれてその魔力は大きくなる。神具である二本の剣もその魔力に反応するかのように魔力を解放しているのを感じる。


家の間や街道、広場を通り抜け、俺たちは世界樹を目指した。どんどん建物も密集しており世界樹の在り処も少しわからなくなる。


「フェリアはどこに世界樹があるか分かるのか?」

「世界樹の巫女には世界樹と干渉する力があるみたいだしね。わかるよ。…それにほら…。」


俺はフェリアが指さした方向を見ながら道を歩いた。今は建物に隠れて世界樹が見えない。俺は少し早足になって道を抜けた。そしてフェリアが指さしている方向を見る。


「…!でけぇ…!」

「世界樹…だね。」


俺たちは広い噴水広場へと出て来た。そしてその広場のさらに奥には世界樹がそびえ立つ。その大きさは山をも越えてしまいそうだ。だが疑問に思ったことが一つ。


「軍神の宮殿ってのが見当たらない気がするんだが…、」

とそこまで言っておきながら俺はあることに気付き、ある予想を立てる。その予想は、世界樹についている大きな二枚扉を見て考え付いたものだ。


「そう。多分思ってる通り。軍神の宮殿は世界樹の内部だよ。」


そろそろ後書きと前書きに書くことが無くなってきたんですが…。

とりあえず、この第二部が終了すれば、そこからはクライマックス。第一章の本編とも言える部分です。戦闘も激化し、相手も強く、大規模になります。期待してもいいと思います!

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