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黒白の王と闇夜の剣  作者: 獅猫
第一章 ー真夜中の幻想ー
15/91

15-白氷の竜-

そういえば、改題した【黒白の王と闇夜の剣】ですが、闇夜の剣はそのままです。

【黒白の王】は…まあ第一章が終結し、第二章の序盤にはもう分かると思います。

俺が宿屋の部屋でステータスカードを眺めていると、階段を上がってくる二つの足音が聞こえた。それらの足音は俺がいる部屋の前で止まり、同時にドアノブが回ってドアが開く。


「どうだ?何か情報は入ったか?」

俺が問いかけると、情報を仕入れに行っていた二人の内の一人であるハーフエルフの少女、エルフェリア改めフェリアは小さく頷いた。


「王都エスタナルに行くにはこの先にあるベルガナの港町から船に乗る必要があるんだって。」

「そうか。じゃあそこを目指さないとな。」

「ただ…。」


そこでフェリアの顔が突然暗くなる。それを見たもう一人の少女ーソフィーはフェリアに代わって答えた。

「最近この近くに狂暴な竜が出現するようになってたくさん人が襲われてるらしいの。」


俯いたままのフェリアを見て俺はつい微笑し、彼女の考えを読み取って言った。

「で、それを倒してやりたいんだろ?全くお前らは似た者同士だな。」

「え?私とソフィリアが?」

「そうかな…?」


やはりこうして同じように照れている二人の姿を見ると髪の色や目の色は違えど、こういった優しいところや困っている人を放ってはいられないところなどは実に似ている。それに身長はほとんど同じなのでまるで姉妹のようだ。


俺の考えでは、やはり二人共「巫女」という同じような境遇に立たされているもの同士で親近感を感じているのだろう。こういうのを見ると実に微笑ましい。


「それでその竜はどこに?」

「ここから少し離れた雪山。そこには今まで食べられた人たちの骨なんかが散乱してるらしいよ。」

「へぇ…かなり危険なドラゴンなんだな。」


俺は少しばかり恐怖を覚えた。なんせ最近戦った神霊獣は敵対心はほぼないのだ。だがその竜は敵対心どころか殺そうとして襲い掛かってくる。平和な日本にいた高校生として実に怖い。


「昔ハイエルフ族が封印したフロストウィルムっていう竜なんだけどね。世界に氷結をもたらすって言われてて凄く強いらしいの。」

「…そんなにか。まあ行くだけ行ってみようぜ。俺たちも一緒だ。」

「…そうね。エイト君のお手並み拝見ってことで。」

「おいおい、ソフィはしなくていいのかよ?」


俺がそう言うと、フェリアは俺に背を向けて部屋から出て行きながら答えた。

「ソフィリアは十分強そうだし。」

「俺もそう見てくれればなぁ…。」




俺たちはそのフロストウィルムが生息すると言われる雪山へと向かっていた。だが先程の町を出てからというもの、雪っぽいものはない。普通の森が広がっている。


そして俺たちは、山の手前にある洞窟に入った。この中にも雪っぽいものはない。少し寒いような気もするが、恐らくはただ洞窟が寒いだけだろう。


俺は少し心配になって道を聞いてきたらしいソフィに聞いてみる。

「…なあ、本当にこっちで合ってるのか」

「ちょ、合ってるわよ…多分!私だってこれぐらいは!」

「…確かソフィってめちゃくちゃ方向音痴だったはずじゃ…。」

「そ、そんなこと…!あるかも…。」


俺は内心で心配になりながらも先へ進んだ。薄暗い洞窟の中はやはり不気味で、何かが出てこないことだけを祈る。どこかに続いていると良いのだが。


「…!あ、あれって!」

「…出口!」


俺たちは前方に外の光を見つけて駆けだした。やっと外に出られる。ここがそのフロストウィルムの生息地に行ける場所なのかはわからないが。


外の様子は白い光で見えない。というか外は真っ白だ。外は眩しいのだろうか。

だが俺は、外に出る直前に洞窟の中に白い粒がたくさん入ってきているのが見えた。これは…

「…雪?」


俺はそう思いながらも構わず外に出た。そしてその瞬間絶句する。なんせ洞窟に入る前と出た後では景色が違いすぎるのだ。入る前は普通の森。そして出た後は…


「雪山…なのか?」


そう。一面銀世界。吹雪が吹き荒れる雪山だった。まさか本当にたどり着くことが出来るとは。ソフィの方向音痴もだいぶ改善されたのかもしれない。


俺は少しだけソフィのことを見直し、視線をソフィから正面に広がる銀世界へと移した。今のところドラゴンらしきものは見えない。


俺たちは警戒しながらも雪山を進み続けた。だが吹雪のせいで前が見えにくい。


だが次の瞬間、俺たちの上空を何かが覆い、俺たちがいる場所が陰った。何かの影。それは旋回するように動いている。俺たちは上を見上げた。


「…!白竜!」

「来たか…!」


その白竜【フロストウィルム】は俺たちを見下ろし、そして急降下して来た。俺たちは左右に跳んでそれを回避する。


着地したフロストウィルムは俺たちを睨みつけた。まさに【ダイアモンド】というような二つの眼からは威圧感が感じられる。その白い体と氷のような甲殻は高貴さを感じさせる。こいつも【竜王族ドラグロード】なのだろうか?


「…ッ…!」

俺はフロストウィルムに向かってダッシュした。そして奴の前腕振り下ろし攻撃を回避して眼前までワープ。そして顔面に剣戟を放った。


俺の攻撃を喰らってターゲットが俺に移り、噛みつき攻撃を行う。俺は相手の噛みつきを剣で弾いて後ろにいる二人に向かって叫んだ。


「ソフィ!フェリア!」

「うん!」「わかった!」


二人は右と左から白竜に向かい、同時に連続剣技を放った。その二人に気を取られた奴の胸元に潜り込み、斬り上げを喰らわせる。


俺はドラゴンの反撃を回避すべく後ろに跳んで距離をとった。だが白竜は予想に反した行動をとる。白竜の周囲には古代文字のようなスペルが浮かんでいる。


「【魔法】を使うのか!?」


俺は本当に驚いて声をあげた。なんせ魔法を使うモンスターと言えば神霊獣とごく一部の超危険モンスターぐらいなのだ。なんせ魔法と言うのは人間や妖精、そして神族と魔族にしか伝わっていない。


すなわちモンスターが使うとすればそういった種族の者と何らかの繋がりがあるということになる。神霊獣は神との繋がりがある。だが、こういった普通のモンスターで魔法を使う奴は初めてかもしれない。


そしてドラゴンは魔法を発動させた。氷属性を現す淡い水色の魔法陣が俺たちの足元やその近辺に無数に出現する。俺はとっさにそこから離れた。


次の瞬間、その魔法陣から大きな氷の棘が現れた。あの上にいれば貫かれていただろう。他の二人の方を見ると無事回避したようだ。


「…!まずい…!」

俺がそう言った理由は、再び視線を移した先のドラゴンが大きく息を吸い込んでいたからだ。魔法を回避していたので気が付かなかった。


回避は間に合わない。そう判断した俺は他の二人に指示した。

「二人共!ここは防御に徹しろ!」


俺の言葉に頷き、二人は防御魔法の詠唱を始めた。残念ながら俺は防御魔法を持っていない。俺は二本の剣をクロスさせて防御態勢をとった。


そして次の瞬間、白竜の口からブレスが放たれる。俺の剣にブレスが衝突するその直前、俺の双剣から闇と光が展開されてブレスを軽減した。完全には防ぎきれなかったがかなりの効果だ。


「…!そういえば…。」

俺は宿屋でステータスカードを見ていた時のことを思い出してみた。バハムートの力を手にした瞬間現れた謎のスキル【双黒剣】。闇と光の魔力を宿して攻撃することが出来るらしい。


俺はこのスキルのAAを一つとSAを一つ獲得してみたのだが、AAの方はともかくSAの方の使い方がいまいちわからなかったのだ。名称が【デュアルブロック】。こうして双剣で効果を発揮するものだろう。


そういえばバハムートの力と神具を入手してからいつの間にか出現していたスキルやジョブがある。神霊獣というものはこれほどの影響力を持つものらしい。俺の推測では他の十二神の力でも専用のスキルがある。


ソフィはドラゴンに向かって駆けた。振り下ろされるドラゴンの腕や魔法の氷塊を再度ステップで回避し、軽々と高くジャンプする。そして相手の背中に向けて連続の突きと斬り払いを放つ。


フェリアもそれに続いて雷属性の魔法を放った。ドラゴンもだいぶダメージを受けているらしく苦しそうな咆哮を上げる。ここでもう一つのスキルを試すとしよう。


ドラゴンは再びブレスを放つべく、数メートル飛んで滞空した。あの高さなら届くはずだ。


俺は相手の眼前に向かって、大きくジャンプした。そして相手の胸付近に向けて、強力なAAを放つ。双黒剣AA【リベリオン】。背反する二つの属性を纏う剣で同時に斬り裂く。


双黒剣の中では初期から獲得できる技ではあるのだが、前の片手剣スキルや二刀流スキルでは上位の中でも強い部類に入るAAと同格の威力を誇る。その先のスキルの威力は想像するだけで恐ろしい。


俺の剣に斬り裂かれ、胸に大きな切り傷を負ったフロストウィルムは、空中から落下してもがいた後、動かなくなり、完全に絶命した。俺たちは奴が動かないのを確認して立ち去ろうとする。


「…!あれは!?」

フェリアが倒れたフロストウィルムを指差す。そこには奴の体内で光る何かがあった。俺がそれに近づいて手をかざすと、それは俺の手に出現した。


「…水晶にも見えるな…。」

「多分フロストウィルムの魔力の結晶ね。凄く貴重なものだろうし持ってたら?」

「…レアドロップアイテムか…。そうだな、持っておこう。」


俺は水晶を別次元に格納し、剣も全て武装解除すると、今度こそソフィ、フェリアと共に再びあの洞窟に入り、帰路に就いた。



♢♦♢♦



俺たちは町に帰り、この町でも有名だという鍛冶屋の元へ来ていた。その目的とは、先程入手したフロストウィルムの水晶を加工してもらうためだ。


俺が待っていると、鍛冶屋の男が手に何かを持ってこちらへ歩いてきた。彼は右手に持った物を俺に向けて差し出しながら言う。

「持っていけ。かなりの逸品だ。」

「おぉ…!」


俺が受け取ったそれは、水晶の頃の透明さはそのままに、美しいネックレスになった。鍛冶屋の親父さん曰く、魔力と敏捷性にプラス補正がかかるらしい。


俺は親父さんに礼を言うと、そのネックレスを格納した。そして店を出て行こうとした時、丁度ソフィとフェリアも戻ってくる。


「二人共用は済んだのか?」

「うん。もう準備できたよ。」

「そうか。じゃあ行こうぜ。次はベルガナの港町だ。」


この先もアースガルズ編続きます。

激化する戦闘ですが、次の話は完全な日常回です。

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