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黒白の王と闇夜の剣  作者: 獅猫
第一章 ー真夜中の幻想ー
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14-神々の住まう世界-

今回から第一章 第二部【神々の世界】のスタートです。


    第二節 神々の世界


俺たちは【天使族エンジェル】最凶と呼ばれ、圧倒的な破壊性能を誇る者、【絶雷の天使ゼルエル】と対峙した。俺と彼女の壮絶な一対一の戦いの末、俺はどうにか彼女に打ち勝ち、彼女は俺たちに力を貸してくれることとなった。


今まで通りの旅が再開したところで、俺の神具については話そう。右手の剣は【ミッドナイト・ノワール】。闇属性を纏う闇色の剣でランクはS。攻撃力は破格の910。左手の剣は【ザ・シュヴァルツ】。こちらも美しい漆黒の剣だが属性は光。ランクはSで攻撃力は890だ。両方とも手に馴染む。


ゼルエルから貰った【絶翼大剣フォールン・ヘヴン】だが、今の俺にはまだ扱えそうにない。なんせ重たいのだ。だが俺ですら持ち上げることが出来ないというのがこの武器の強さを物語っている。


ちなみにバハムートから貰った防具までもが神具クラス。防具では【霊装】というらしい。コートと騎士服が合わさったようなこの装備は【エーデル・ノワール】という名だ。闇属性と光属性を大幅に遮断してしまう優れモノだ。


そしてソフィの神具もかなり強い。Sランクのレイピア【アイシクル・シャムシール】。攻撃力は810だが、筋力ステータスの要求値はなんとC。軽いうえに強いという夢のような武器である。


相変わらず俺の謎の魔力とその形質については謎が多い。異常なまでに高い魔力。それに反比例するように低い魔力許容度。そして何故か使うことが出来る【剣創ソードクリエイション】。バハムートはその理由について何か知っているようだったが聞くことは出来なかった。



俺たちは今、次の町へ行くためにとある霊峰を上っている。山道はボロボロで少し怖いぐらいだ。今にも崩れそうな場所までや完全に崩れ落ちた橋もあるが、そこは跳躍でなんとか越える。


だがこの霊峰にはある噂がある。この山の山頂は別の世界へと繋がっており、神のチカラを持つ者が近づくと、満月の夜にだけそのゲートは現れるらしい。まあ信じているわけではないが。


「はぁ…やっと山頂まで着いたね。」

「そうだな。…もう夕暮れか。」

「今日はもうここで野宿かな。」


俺たちは日も暮れそうなのでここでキャンプすることにして、俺の【別次元格納ディメンションストレージ】から取り出したキャンプセットを組み立て始めた。



テントの組み立ても終わり、今は俺は薪を囲んで椅子を設置した簡易的な食事場の椅子に腰かけていた。俺の仕事は食材調達、ソフィの仕事は料理なので俺の仕事はすでに終わっている。


すでに日も暮れて月も出始めた。綺麗な満月だ。満月と言えばこの山頂は満月の夜に謎のゲートが開くらしい。


「(でもこのパーティには神のチカラを持つ者なんて…、)」


俺はそう言って料理をしているソフィの方を見た。「ふんふんふ~ん♪」などと言いながら料理を作っている。あれ?確か彼女は…、


「(いた!ソフィは【神威】スキルを持ってるんだ!)」


俺は恐る恐る後ろを向いた。何も起きないと信じている。というか俺は昔からそういうのを信じない人だったのだ。だがやはり見てしまう。そして俺が見る先には謎のゲートが…


「エイト、ご飯。」

「はいぃ!」

「?どうしたの?そんなに慌てて…。」


ソフィも気づいたようだ。俺の後ろ10mにある謎の魔法陣に。間違いない、ゲートだ。それ以外の何物でもない。


「…アレって。」

「…ゲートだよな。絶対。」

「でも…伝承が本当ならあの先は精霊界アースガルズのはず…。神々が住まう世界だね。」


アースガルズ。北欧神話における神々が住まうと言われる世界。確かこの世界の名前がミッドガルズ。神話では人間が住まう世界だ。もしかするとこの世界は北欧神話ベースの世界なのかもしれない。


「…行くだけ行くか?」

「…そうね。行ってみましょ。」


俺たちはゆっくりとゲートに近づいた。魔法陣のようだがソフィが近づくと中央の異次元空間のようなゲートが大きくなっていく。


「俺が先に行く。その後で来てくれ。」

「…うん。」


俺は後ろにいるソフィにそう言うと、頷くソフィから視線を前に移し、謎のゲートへと足を踏み入れた。



ー♢♦♢【世界樹に守られし神々の世界】♢♦♢ー


「…?」

俺は謎の風圧を感じて目を開けた。これはまさに落下している時の感覚。目を開けて見てみればやはり俺は高所から見たこともない場所に垂直落下している。…何故に?


「…え…?…うわああぁぁぁ!」


俺はやっと自分が置かれている状況を理解した。地面に衝突する直前にワープを使って衝突だけは回避する。ここが精霊界アースガルズなのだろうか。


「きゃああぁぁぁぁ!」


俺はふと上を見上げた。叫びながら何かが落下してきている…のだろうか。太陽がちょうど後ろにあって全然見えない。だがこの声は…


「…てかそこからだと…丁度俺に…。」

「きゃああああ!」


と次の瞬間。

太陽に遮られて見えなかった何かが俺に落下した。俺はその勢いで吹き飛ぶ…かと思いきやその何かの下敷きになる。


「あたた…。…あれ?エイト…って…、」

「…あいたた…ってえぇ!?」


俺がそう言っても俺の声は何か柔らかいものに遮られて言葉にならない。俺の上にいる誰かは悲鳴を上げてすぐさま飛び退いた。俺も顔を上げてそちらを見る。


「…ん?ソフィ…?」

「…ッ!」


ソフィは顔を赤らめている。どうやらソフィは俺の上に乗っていたようだ。そして先程の立ち上がり方からして俺の顔の上にあったのは彼女の下半身の…、


「何してんの!?」

「ちょ!ソフィ!俺は…!」


俺の言葉が終わる前にソフィの拳が俺の顔面に飛んできた。



♢♦♢♦



俺たちはアースガルズと思われるその世界を歩いていた。そこは神秘的な森の中で、ここがどこかは全然わからない。なんせ予備知識ゼロでここまで来たのだ。


「…痛いなぁ…。」

「…。」


ソフィは先程からなかなか口を利いてくれない。俺は何もしていないはずなんだが。彼女の機嫌が直るまでこうしておくしかあるまい。


その時、どこかから武器と武器がぶつかり合う音や木々が薙ぎ倒される音、モンスターの鳴き声などが聞こえた。武器と武器がぶつかり合うということは戦闘が起こっているのだろう。


「エイト!」

「ああ…!」


俺たちは音が聞こえる方向へと走り出した。もしもそれが人ならばこの世界について色々聞くことが出来ると考えたわけだ。


俺たちは木々が鬱蒼と生い茂る森の中を飛ぶように疾走した。どんどんその音は近くなり、なにやら人の声なども聞こえてくる。俺たちは走るスピードを更に速めた。



♢♦♢♦



危険だからと禁じられていた外へと、里から出てきていたエルフェリアは、今絶体絶命のピンチに陥っていた。


エルフェリアたちの種族と里をよく思わない奴らがいることは知っている。だがその中でも彼女らの種族を撲滅させようとする種族は彼女らの脅威となり、敵になっている。


今までは襲撃された時のために数人単位で行動するのが主だったが今エルフェリアはたった一人だ。相手は敵種族6人とサイクロプス3体。生きて帰れる保証はない。


「さあ!いくら貴様だろうとこの布陣を一人で倒すのは不可能だ!大人しく降伏すれば貴様の魔力を奪うだけに止めてやろう!」

「アンタらなんかに降伏して里の名に泥を塗るくらいならここで死んだほうがマシよ!」


エルフェリアがそう言うと敵種族は嘲笑し、サイクロプスは咆哮してこちらに向かって来た。大きな動作で振り下ろされた棍棒をサイドステップで回避する。


そして敵の背中に魔力を込めた一撃を見舞う。サイクロプスは大きく体勢を崩し、地面に膝をつく。今度は後ろから襲い掛かってくるサイクロプスの棍棒を回避する。


「愚かな奴め!」

「…!しまった!」


サイクロプスの攻撃に気をとられていたエルフェリアは迫ってくる敵種族の兵士に気が付かなかった。その兵士は鋭い刃がエルフェリアに襲い掛かる。


「…ッ…!」


エルフェリアは体を斬られる前に目を閉じた。だがいつまで経ってもその剣はエルフェリアにヒットすることはなかった。その代わり彼女の目の前で剣と剣がぶつかり合う音がした。


「…?この剣は?」

「なんだと…!?」


彼女の目の前で兵士の剣を受け止めていたのは、空中に浮遊する光輝く黒い剣だった。見ただけでも神器クラスの武器だとわかる。驚いていたエルフェリアの後方から一つの声が響いた。


「間に合ったかな。」

「そうみたいね。」


エルフェリアの後ろから現れたのは、黒い外套を装備した青年の剣士と、純白の装束を見に纏う少女だった。彼らの姿を見て敵種族の兵士が叫ぶ。


「貴様…何者だ!?」

「屈強そうな男6人がサイクロプスまで三体も連れて一人の女の子を襲うなんて…カッコ悪ぃ…正直言ってだいぶダサいぜ…?」

「…!」


そう言うと彼は一瞬で姿を消した。消えたかと思えば彼はサイクロプスの眼前に行き、顔面に斬り下ろしを放つ。巨体のサイクロプスもそのまま倒れる。


剣創ソードクリエイション…!」


彼は空中に滞空したまま周囲に先程の黒い剣と同じような形の白い剣を4本ずつ出現させてサイクロプスに向けて放った。その剣はそのままサイクロプスを穿ち、巨体を絶命させた


彼は華麗に着地し、再び周囲に剣を出現させて6人の兵士の方を向いて、不敵な笑みを浮かべた。


「…まだやるか?」


彼の強さとその威圧感に圧倒されたのか全員がじりじりと後退る。そして毒づくように去り際に吐き捨てる。

「誰だか知らねえが…次会った時は生かしておかねぇからな!」

「その言葉…そっくりそのまま返すよ。」


彼がそう言うと、6人は走って退散した。その6人が完全に消えたのを確認してからその剣士はエルフェリアの方を向いて言った。


「…無事だったか?」

「えっと…うん。私は大丈夫。ありがとう。」


彼女が言うと、先程の少女も青年の方に歩み寄る。彼女もかなり強そうだ。二人して魔力が異常なまで高い。人間とは格が違うエルフェリア達だが彼らには適いそうにない。


「俺は黒羽夜瑛斗クレハヤエイト。で、こっちが…、」

「私はソフィリア・エルレイン。よろしく。あなたは?」

「私?私はエルフェリア・セーデルフェルト。ハーフエルフ族。よろしくね。」

「ハーフエルフ!?」

「アースガルズ特有の種族…。やっぱりここがアースガルズで間違いないみたい。」


瑛斗と名乗る少年は、驚いた後エルフェリアの方を見る。ハーフエルフを見たのが初めてだったのだろうか。水色の長い髪、同色の瞳、服装などなど…と彼女の方をじっくり見てから「ホントだ!」と頷く。尖がった耳に気付いたのだろう。


「アースガルズで間違いない…ってことはこの世界の名前知らなかった?」

「ああ。俺たちミッドガルズの出身なんだ。(正確には違うけどな…。)」

「ミッドガルズ!?ホントにあったの!?」


エルフェリアは伝承にしか聞いたことがなかった世界の名前を聞いて本気で驚いた。まあ瑛斗は一度存在すら知らなかった世界に転生しているのであまり驚かなかったわけだが。


「…ってことは旅人状態か。私たちの里に来なよ。」

「あなたたちの里ってことは…ハーフエルフの里ってこと?」

「そう。とりあえずは族長にも紹介したいし。」


瑛斗とソフィリアは顔を見合わせてから再びエルフェリアの方を向いた。瑛斗はエルフェリアに向かって微笑しながら言う。


「そうさせてもらおうかな。案内頼むよ、エルフェリア。」



♢♦♢♦



そうして俺たちはハーフエルフの族長から直々にお礼を言われ、色々な話を聞いた。


エルフェリアもこのハーフエルフ族の中で特別な能力を持っており、ソフィの【神霊の巫女】と同じように【世界樹の巫女】と呼ばれているらしい。


そして彼女はもうすぐ【世界樹の試練】というものを受ける予定らしく、敵対種族【ダークエルフ族】に対抗するために力を付けなければいけないらしい。


その試練はこの里からかなり遠いところにある【世界樹の都エスタナル】の最奥にある巨大な木【世界樹ユグドラシル】と、軍神の住まう宮殿【軍神の宮殿ヴァルハラ】に行き、軍神から試練を受けなければいけないらしい。


俺たちはその話が終わった後、二人でそのことについて話した

「なあソフィ…軍神って…。」

「うん…多分十二神、第三の神…軍神オーディン。」

「まさか偶然来た異世界でこんな強大な神に出会えるとはな。」


俺たちはエルフェリアに招かれて彼女の家に行った。異世界に来た初日にも見たような光景だ。ソフィとエルフェリアが一緒に料理を作り差し出してくる。料理文化は大して変わらないらしい。


「いただきます…。悪いな、料理まで。」

「良いの良いの。助けてもらったんだし。」


俺は料理を食べながら、昼間気になったことについて聞いてみる。

「その…【世界樹の巫女】ってのは何ができるんだ?」

「あぁそれね。巫女は世界樹の魔力と力を得て吸収することが出来る。他の人には出来ないんだ。」

「それって軍神とも関係あったりするの?」


エルフェリアは軍神と巫女の関係について考えていたが、すぐさま思い出したように言った。

「遥か昔に闇の軍勢からアースガルズを守るために軍神はエルフ族に世界樹の魔力を与えた。で、その力の末裔みたいなのが巫女って聞いた気がする。」


もしも本当に軍神と関係があるならば俺たちとも関係があるということになるだろう。俺とソフィは顔を見合わせて意思疎通する。


「えっと…エルフェリアさんはこれから旅にでるのよね。」

「二人共フェリアで良いよ。…まあそう。ダークエルフとの抗争を早く終わらせるために力を得にね。明日には旅立つつもり。」

「そっか…その旅なんだけどさ…俺たち二人もついて行っていいかな?」

「…え?二人も?何か理由が?」


俺とソフィは、俺たちが旅をしている理由と神霊獣や十二神との関係を話した。その軍神の力を得たいということも。


その話を聞いて信じられないという風な顔をしていたフェリアだったが、俺たちの真面目な表情と現実的な話でだんだんと彼女も真剣な表情になる。


「…それで…どうかな?」

「…もしそれで帰れないようなことになったらどうするの?」


恐らく軍神の元に行った俺たちがここまで戻れなくなることを恐れたのだろう。だが俺とソフィは心配そうな顔で言うフェリアに向けて言う。


「さっきも言った通り俺たちは信じられないようなことを何度も潜り抜けて来たんだ。そんなにヤワじゃないぜ?」

「軍神に会えれば色々解決すると思うの。どう?」


「その色々解決する」とは元の世界に帰る道も見つかるということだろう。今の俺は元の世界が二つもあってややこしくなってきてしまっている。


そんな俺たちの話を聞いたフェリアは悩むような素振りを見せたが、決断したように顔を上げて言った。


「まあ君たちもかなり強そうだし…よろしくお願いしようかな。」

「それはこっちのセリフだよ。これからよろしくな。」

「よろしくね、フェリア。」


翌日、俺たちにとっては二度目の旅立ちを迎え、世界樹と軍神の元を目指して旅をすることになった。


第二部の一話。どうだったでしょうか。これからは当分この世界での話が続きます。

第二部の後は第一章の中でも最後の部となる第三部です!それまではこの幻想的な世界での物語をお楽しみください。


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