12-黒き剣-
不定期投稿と最初に言っておきながらの毎日投稿です…。ある程度落ち着いたらペースダウンしようかなと考えております。
両手に神々しい黒い剣を携え、騎士のような漆黒の鎧を所々に見に纏った第二フェーズの黒龍バハムート。ドラゴンでありながら鎧と剣を装備するとは。まさに【竜騎士】だ。
だが俺は、双剣を携えた黒龍の姿を見た時、獰猛にニヤリと笑った。「剣での戦いならこっちのもんだ」と。
純粋に剣技で戦っても勝てる相手ではないのだろう。だが、そうと理解していながらも、自分の得意な土台に移動できたというのが俺を無性に安心させた。
黒龍から、漆黒の竜騎士へと変貌を遂げたバハムート。俺はそんな圧倒的な存在と戦えることに、少しだけ、いや、かなり興奮し、高揚していた。
俺は隣にいるソフィに向けて言った。
「ソフィ、悪い。ここからは俺一人でやらせてくれないか?」
「え?…何で?」
「どうしても勝ちたい。俺自身の力で。難攻不落の無理ゲーかもしれないけど、それをクリアすることが前から好きだったんだ…。」
「…分かった。…でもちゃんと勝ってよね?これで負けたらまたやり直しだよ?」
「心配するなって…任せときな…。」
俺はそう言うと、ソフィに背中を向けて、再び浮遊する黒き竜騎士と対峙した。俺と同じように双剣を携えている。俺は、相手の迫力と威圧感にも慣れつつあった。
「行くぜ…!」
俺は【刀神・踏み込みの型】を発動させて、黒龍の眼前に一瞬で移動した。そして双剣を同時に振り下ろす。
俺の双剣は、予想通り黒龍がかざした神剣に受け止められた。相手はもう一方の剣を俺に向けて振り下ろした。ガードすることも考えたが、ここはワープで回避する。それと同時に、闘争心によってか今までで一番の高まりを見せる魔力を一気に開放する。
「剣創…!」
俺は10本の剣を一気に出現させると、全て同時に黒龍に向けて発射した。黒龍が弾いたのは横一列に並んでいた5本。他の5本は黒龍の体を勢いよく穿った。
「喰らえ…ッ!」
俺が放ったのは、刀神に習った剣技【刀神・零ノ太刀】だ。腕を交差させた状態から一気に斬り裂く。
俺が一瞬で放った剣戟は、黒龍の腕の鎧に傷を付けた。防御力も第一フェーズとはケタ違いか。生半可な攻撃ではダメージすら通りそうにない。
今のところ最も効果的なのは【剣創】による射出攻撃だろう。数を多く、それも分散して放てば、さすがのバハムートでも全て弾くことは出来ないだろう。もしくはアレか。
俺がそう考えていると、黒龍はワープによって滞空する俺に向かって剣戟を放ってきた。俺はガードではなく、軌道をずらして受け流すようにして、連続で繰り出される黒龍の剣技をどうにか凌ぐ。
俺が10連続にも及ぶ攻撃を全て凌ぐと、黒龍が真横からの斬り払いを放とうとする。俺はそこで、微笑を浮かべて呟いた。
「甘いね…!」
俺は相手の斬り払いが命中する直前、ワープを使って相手の眼前、顔のド真ん前に移動した。そして全力を込めた斬り落としを、再び脳天に放つ。
だが、先程とは違って鎧があるからか、ダメージはあるもののひるみはしなかった。黒龍の真上にいる俺に向けて突き上げが飛んでくる。俺は今度は真下にワープし、それを回避した。
「うおおおぉぉ!」
俺は相手の胸殻に、勢いよく連続剣技を放った。今放てる最大連撃数のAAである【無限の猛撃】。相手の胸殻に、次々と傷が入り、黒龍にもダメージが通る。
俺は後方にワープし、バハムートと距離を取った。戦闘態勢を解かずに、相手の様子を伺う。
「こんな相手は最近ではそうそういなかったな…これほどの剣士がいるとは…。我と互角に戦う剣士よ、名を何と言う?」
「黒羽夜瑛斗だ。アンタみたいな強者に名乗れて光栄だよ。」
「エイトか…普通ならば我とここまで戦っただけで試練には合格なのだが…少し我のわがままに付き合ってくれ。…我を倒し、力を示せ…!」
「…望むところだ…!」
そして、再び俺と黒龍は同時に動いた。真上から振り下ろされるバハムートの剣を、双剣をクロスさせてどうにか受け止める。そして相手の次の攻撃が来る前にワープして、剣戟を放つ。
黒龍はその剣を受け止め、再びもう一方の剣で攻撃してきた。俺は再びその剣を受け流した。そして、剣創によって10近い数の剣を創造して放つ。
「この技をここまで使いこなすとはな…。これも一つの運命か。」
黒龍はそう呟いた。そして双剣を使って全ての剣を斬り落とす。だがそこへ、間髪入れずに放たれた俺の剣戟が命中する。そして俺の攻撃を追撃するように、再び創造しておいた10の剣が黒龍に襲い掛かる。
俺は再び後退した。すると、黒龍が魔力を溜めているのが分かった。俺はもう一度あの光線が来ると予測し、回避体勢へ移行した。だが…、
「何…!?その技は…。」
「これを編み出したのは…我だ。」
黒龍は、周囲に無数の剣を出現させた。そう、俺と同じように、だがその技のスペックが違いすぎる。剣の強さは神具クラス、それが30はある。
そして黒龍は、その剣たちを次々に放った。俺はワープを駆使してその剣たちから逃げ回る。だが、何本かの剣が俺の体を斬り裂いた。まさかこの技【剣創】を編み出したのが黒龍だとは。
このままではあの攻撃を回避できない。あれが飛来してくるのでは相手に近づけそうにもない。どうにかして相手のあの技を避ける、もしくは防がねば。
「…仕方ない。…アレを使ってみるか。」
「…この魔力…刀神のものか…。」
俺は魔力を、そして刀神スサノオの力を集中させた。スサノオに教わった極意中の極意。これがあれば何もせずともあの技を無力化できるかもしれない。
そして俺は、刀神に教わった極意の名を解放した。
「【刀神・幻ノ型】…!」
俺はその極意を発動させた。その瞬間、俺自身がスサノオと同じような青っぽい妖気を纏う。これが真の極意だ。
黒龍は、俺に向けて双剣を振り下ろした。確かにその剣は俺の姿のある場所に命中した。だが俺は無傷、今はもう相手の眼前にいる。
なんせ黒龍が攻撃した俺は残像。俺の姿をして、俺ではないのだから。
「何を…!?」
「セアアアッ!」
俺は六本の剣と同時に、黒龍に向けて連撃を放った。俺が剣戟を一発放つ度、六本の剣が自在に飛び回って黒龍を攻撃する。黒龍にも確実にダメージが通る。
再び着地した俺に向けて、あの無数の光球から放たれる光線が発射された。その光線は、俺、そして俺の周囲を広範囲に(魔法障壁で守られているソフィは無事だったようだ)屠った。
だがやはり、それは俺ではないのだ。
「こっちだぜ…!」
一瞬の内に黒龍の背後にワープしていた俺は、10の剣を一斉に放った。黒龍もダメージで再びひるむ。そして背後にいるであろう俺の方を見る。
だがその時にはもう、俺は彼の視界の外にいた。そしてAA【ザ・アルタイル】で攻撃する。
俺は再び相手との距離をとり、剣を構えて低い姿勢となった。
「決着をつける…!」
「…来い…!」
そして俺は、今度は残像を使わずに、黒龍に向けて全力で駆けた。剣創によって創られ、飛来する黒龍の剣を斬り落とす。
「うおおおおおぉぉぉ!」
俺は黒龍へと、全力の剣技を放った。双剣と周囲の10本の剣で、総勢12本で攻撃する。黒龍も双剣で俺の剣戟を受け止めていく。
そして、俺の放った斬り下ろしと、それを受け止めるべく黒龍がクロスさせてかざした剣がぶつかり合い、鍔迫り合いとなる。俺は黒龍の神剣に、双剣だけでなく剣創で創り出した剣をもぶつけた。
ついに俺の剣たちは黒龍の剣を弾き、黒龍の双剣はついに砕け散る。俺は相手の胸殻目掛けて10の剣を飛翔させた。相手の甲殻ももうボロボロだ。
「終わりだ…黒龍…!」
「…お前の覚悟、確と見た…!」
そして俺は、双剣で全力の【クロスブレイク】を繰り出した。今までで最大威力のクロスブレイク。黒龍はそれを防ごうとせず、誇らしいような、慈悲深い目で俺を見ていた。
俺の剣戟が相手に命中し、黒龍の胸の甲殻にも大きな十字の傷ができている。俺はワープで後退して、魔法障壁から出て来たソフィの真横まで移動する。
「エイト!」
「ただいま、ソフィ。」
「…凄い…黒龍に勝つなんて…。」
「まああいつは本気の一割程度しか出してなかったけどな。」
俺は剣を消滅させると、浮遊する黒龍の方を向いた。もう全ての鎧も無くなっている。驚くべきことに傷までもが回復してしまっている。
そして黒龍は再び腕を組んで滞空すると、俺に向けて語り掛けた。
「我が認めし剣士…エイトよ…お前に我が剣を託す。」
黒龍はそう言うと、右腕をかざした。すると、俺の目の前に先程黒龍が使っていたような、漆黒の剣が二本出現する。もちろん俺サイズだが。見ただけで最強クラスの神剣だと分かる。
そして俺が着用していたジャケットと腰巻も光に包まれる。その光が消えた時、俺が纏っていたのは、漆黒の騎士服だった。高貴な印象のコートと騎士服が合わさったような衣装。裾の長さはコートだが、上半身は騎士服だ。色合いは依然と同じ漆黒だが、やはり雰囲気と性能が段違いだ。
「エイトよ…お前に我に変わってミッドガルズを守るという使命を与える。その為にも巫女を守り抜くのだ。」
「ああ、任せな。」
「…そうか。…では我は行こう。汝らに栄光あれ…。」
そう言うと、黒龍は翼を広げ、ジェット機のようなスピードで漆黒の天空へと消えていった。そして黒龍がいなくなった直後、世界も元通りの場所に戻る。
俺は真後ろにいるソフィに言った。
「さあ行こう、ソフィ、俺たちの旅はまだ長そうだぜ?」
「そうね…さ、旅を続けましょ?」
「ああ…任せとけ…。」
俺は黒龍、そして隣にいるソフィに向けてそう言い、旅を再開させた。
次回からは第一章 第二部です。また新キャラが登場!?
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