11-漆黒の覇王-
黒龍バハムートとの戦い、始まります。かなりの激戦です。私の戦闘描写の表現力不足だったらスミマセン…。
今までに俺たちは神の力を持つ獣たちである【神霊獣】たちと何度か戦った。その度に彼らの圧倒的な力に感服し、感謝するときもあった。事実、俺は刀神スサノオと剣術の修行をし、数多の技と極意を身に着けている。
俺たちと神霊獣の繋がりは深い。元の世界にいた頃はこんなことになるとは思ってもみなかった。今までにプレイしたどんなRPGゲームよりも凄いかもしれない。
だが俺たちは今、その神霊獣たちを凌駕し、全ての頂点に立つという存在と対峙していた。これが確かに今までで最大の試練にして最強の相手。竜王族の王でもあり、神霊獣王でもある【黒龍バハムート】。そんな最強の存在が初めて口を開いた。
「我は全てを統べる者【黒龍バハムート】…。【十二神】の一角にして、神霊獣王。世界の始まりを告げ、終わりを見届ける存在…。巫女よ、汝は我に何を求める…?」
「…私たちは力を求めます。」
ソフィがそう言うとバハムートは翼を広げて言った。
「ならば我、神霊獣王にその力を示し、打ち勝ってみるがいい!」
そしてバハムートは天をも揺るがすような咆哮を上げた。俺は微笑して言う。
「ソフィ…敵は全てを統べる王…でも俺たち二人なら勝てる。」
「うん…私もそう思うよ。」
「…じゃあ…行くぜ…!」
俺とソフィは、黒龍に向かって二人同時に駆けた。俺が先陣を切り、先制攻撃として【剣創】によって創造した四本の剣を黒龍に向けて放つ。それと同時に俺も黒龍の方に大きく飛翔。
四本の剣は、黒龍によって簡単に弾かれた。俺は相手の眼前から双剣を振り下ろす。ソフィも俺の隣で突きを放った。だがその剣技は、黒龍の腕に簡単に弾き返された。
俺とソフィは、一度体勢を立て直すべく着地し、大きく後退した。恐らく相手は俺たちの二人での簡単な剣技など軽々と弾いてしまうだろう。
俺たちが相手に勝っているもの、それは数だ。それをどうにか活かして黒龍に対抗する。それこそが勝機だ。
俺とソフィは一瞬のアイコンタクトで意思疎通すると、俺、ソフィの順番で一気に走り出した。黒龍はそれを余裕に満ちた目で見る。
「セアアアアッ!」
俺は大きく跳躍して、今度は片手で剣戟を放った。やはり、黒龍はそれを腕でガードしに来た。狙い通り。
俺は二本目の剣も振り下ろした。黒龍はもう一方の腕でそれを受け止める。
俺は双剣で、その二本の腕を全力で弾いた。バハムートも少しだけ体勢を崩す。そんな一瞬の隙に、後ろから飛び込んできたソフィが神速の三連突きを喰らわせた。
さらに、俺はソフィの突きでひるんだ黒龍に、空中で【クロスブレイク】を放った。その俺を追撃するようにソフィが【ザ・アルタイル】を喰らわせる。
またさらにそのソフィの剣戟を追撃するように、俺は六本の剣を創造して放った。その内三本は体勢を立て直した黒龍に弾かれるも、他の三本は相手の腕の甲殻を少し斬り裂いた。
俺たちの相手に攻撃する暇さえ与えない追撃に追撃を重ねまくる連携攻撃。黒龍ともどうにか張り合うことが出来る。
「ほう…これが現代の巫女とその相棒たる剣士か…。」
黒龍は、依然腕を組んだまま余裕に満ちた表情で俺たちを見ていた。そして今度は黒龍自ら攻撃を仕掛ける。俺とソフィはその攻撃に備えるべく戦闘態勢へ移行した。
「ソフィ、腕を回避!」
「了解!」
俺たちは左右に別れて跳躍し、振り下ろされた相手の右腕での鉄槌を回避した。そして今度はバハムートの長い尾が俺たちに襲い掛かる。
俺は双剣を交差してそれを全力で受け止めた。そして真後ろに向かって叫んだ。
「ソフィ!頼んだ!」
「任せて!」
俺が尻尾を受け止めると信じて魔法を詠唱していたソフィは、その氷魔法を放った。氷神の魔力も混ぜて発動した魔法だ。無数の氷の刃が黒龍に襲い掛かる。
バハムートは腕をかざしてそれをガードしようとしたが、ソフィが放った氷の刃の内、半分ぐらいが相手の甲殻を斬り裂いた。
「さすがだな巫女よ…そして新たなる剣士よ…中々に面白い。」
そう言うと黒龍は、強大な魔力を精製し始めた。ソフィの放つ聖属性魔法と同じ要領で、光と闇という背反する二つの属性の光球を無数に出現させる。
そして黒龍は大きく咆哮した。すると、その無数の光球から、光と闇の筋のような光線が放たれた。
「防いで!」
「任せろ…!」
俺はソフィの指示に反応し、周囲に10近くの数の剣を出現させた。俺はそれを一斉掃射した。俺の剣たちが光線を斬り裂くが、圧倒的に数が足りない。ソフィも同じような魔法で対抗するも、相手の魔法の威力と数がケタ違いだ。
最初に放たれた光線の内、半分ほどは相殺できたのだが、それ以外が俺たちに降り注ぐ。俺もソフィも魔法障壁を張って対応するが、障壁を貫通して俺たちの体を斬り裂いたものもあり、改めて黒龍の魔力の高さを思い知る。
「ソフィ、大きめの頼む!」
「じゃあ時間稼ぎお願い!」
俺はソフィをその場に残し、黒龍の方へ全力で駆けた。そして大きく跳躍、相手に向けて、創造した四本の剣を放つ。そして一度ワープして相手の眼前に行く。
「刀神・一ノ太刀…!」
俺は刀神に教わった剣技を放つ。二本の剣を重ねるようにして、同時に相手の脳天めがけて振り下ろした。刀神の剣技の威力は凄まじく、黒龍でさえひるむ。
「撃て!」
俺は大きくワープして黒龍から後退すると、ソフィの氷と炎の双属性魔法が黒龍を襲った。脳天への攻撃でひるんでいた黒龍はその魔法をモロに喰らう。
「ここまでたぎるのは神冥大戦以来か…。我も全力を出そう…。」
そう言って、黒龍は大きく息を、周囲の魔力を吸い込んだ。それと同時に体内に膨大な魔力を溜める。このモーションは恐らく…。
「ブレスが来るぞ!」
「解った!」
ソフィはすぐさま魔力をつぎ込んで氷属性の魔法障壁を展開した。そして直後、バハムートの口から光と闇、そして体内で精製したのであろう炎の属性までもが混じったブレスを放った。
ソフィの障壁と黒龍のブレスがぶつかった時、凄まじい衝撃が走る。流石は十二神の魔力で創られた盾。黒龍のブレス相手に持ちこたえていた。数秒間だが。
ソフィのありったけの魔力をつぎ込んだ障壁さえも簡単に突き破ったブレスは、俺たちを襲った。凄まじい威力のブレスを喰らう。
「…がっ!」
「…きゃあっ!」
俺たちはそのまま地面に叩きつけられる。だが、追撃に備えてボロボロの体をすぐさま起こす。
周囲を見ると、もう元々あった城は崩れ去り、床も俺たちが今立っている直径5m程の場所以外は全て崩れ去り、周囲に岩石となって浮遊している。
壁も天井も全て崩れ去り、あるのは上も下も横にも広がる、漆黒の宇宙のような空間。そして先程の崩壊でできた無数の岩石の足場。そして翼を羽ばたかせて滞空するバハムート。
だが、そのバハムートにも変化が見られた。俺が黒龍の方を見た瞬間、相手は俺が【別次元格納】から剣を取り出すときの様にして、漆黒の剣を両手に出現させた。バハムートサイズの流麗で神々しい片手剣。
そして、次に出現したのは、黒龍の体にところどころ装着された漆黒の装甲。まるで騎士の鎧のような装甲が、頭や前腕、肩、膝などに装着されていく。
黒龍と騎士を掛け合わせたような姿になった黒龍は、今まで以上の威圧感と神々しさを放っていた。
「さあ来い、時代を背負う者たちよ…!」
「まさか…もともと強かったってのに今から第二フェーズかよ…。」
俺は呆れ、そう言いながらも再び剣を構えた。獰猛に笑い、自ら闘争心を掻き立てながら。
「剣の戦いなら俺の独壇場だぜ…!」
次回も黒龍戦、というか黒龍フェーズ2戦、続きます。