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黒白の王と闇夜の剣  作者: 獅猫
第一章 ー真夜中の幻想ー
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1-異世界召喚-

初投稿です。温かい目で見て下さると嬉しいです。

それと、正直言って少し長ったるいかもしれません。そこらへん含めてよろしくです。


2018年7月。

今日も俺は毎日繰り返される退屈な学校生活を終えて、自室のベッドに入った。家に帰っても特にやることはなく、稀にゲームをするぐらい。昔は今の数倍はゲームをしていたのだが最近はあまりしなくなった。


そうやってどうにか退屈を紛らわそうとするのだが、すぐ飽きる性格が災いして退屈しのぎにはならない。毎日が退屈で平凡な楽しくない日々の繰り返し。


日本は平和だ。だが俺は思う。もっと刺激があっても良いのではないのかと。そして俺はよく見るのだ。自分が異世界に行き、凶悪な魔獣やドラゴンと戦うファンタジーな夢を。


そしてよく考える。もしも自分が異世界に行けたらどんなに楽しいだろうかと。俺はそんな泡沫(うたかた)の夢に酔いながら眠りに落ちた。



♢♦♢♦


        第一章 真夜中の幻想 編

          第一節 新たなる世界



不意に目が覚めた。いや、本当にそうなのだろうか。確かに目は覚めている。だが場所は俺の部屋ではないし見たことすらない。現実世界ではないような場所。何もないただの闇の中。だが夢にしては意識がしっかりしている。


そして、どこからともなく俺を呼ぶ声がした。

ー今の人生に飽きているのですか?-

「ああ。飽き飽きしている」


ー貴方は新しい刺激や楽しみを求めているのですか?-

「…そうかもしれない」


ー貴方は新たな世界を望みますか?-

「もし…本当に俺の望みが叶う世界があるのなら…俺はそれを望むと思う」


ー今の人生を捨ててまでですか?-

「確かにまだできることは多いだろうけど…俺は新たな可能性が欲しい」


ー貴方には覚悟がありますか?-

「…ああ。それが俺の望んでいたことなんだ」


ーでは行きなさい。幻想げんそうの異世界へ。たどり着いた世界が、貴方の願望をかなえられる場所であらんことを…ー


その時、今までは漆黒しっこくに染まっていた空間の上層部から一筋の光が差し込んだ。その光はまるで俺を新たなる世界へと誘っているかのようだった。俺は無意識にその光へと手を伸ばし…、


その光は俺を包み込んだ。



ー♢♦♢【剣と魔法、そして冒険の異世界へ】♢♦♢ー



俺はゆっくりと目を開けた。まだ状況が呑み込めないし、自分がどこにいて、どんな状況に置かれているのかが全然わからない。


目の前に広がるのはまるで中世の北欧ほくおうのような…いわゆるファンタジーな世界の街並みが広がっていた。道行く人々の服装も今とは全く違う。俺はやっと自分が置かれている状況を理解した。


「俺…本当に異世界に来たのか…!?」


そこでそういえばと昨日の夜の出来事を思い出す。記憶がぼんやりとしてはいるが、俺は何者かに呼ばれて謎の白い光に包まれて…そこからの記憶がない。記憶がそこから今まで飛んでいるのだ。


そして恐らくではあるが俺はその何者かによってこの世界に召喚されたのだ。間違いなく日本ではない。そして来ている服装などから考えても現代ヨーロッパなどでもない。それは道行く騎士や剣士たちを見ても分かる。それに、こんな街並みと向こうにそびえる巨大な城。見たことのない街だ。


「これってもしかして…異世界召喚いせかいしょうかんか!?」


そうとしか考えられない。よくラノベで読んでいた異世界召喚のジャンルものとしか思えないような状況だ。俺は今の状況を完全に理解し、気持ちが弾むのを感じた。


「(せっかくこんな異世界に来たんだ。まずは街を観光しよう)」


そうは言っても、俺はこの街に何があるのかなどは全然知らない。

初期装備も日本で着用していた黒いシャツとズボン、そしていつも外に出る時履いているスニーカーだけ。所持品はなし。簡単に言えば単なるホームレスとなんら変わらない。


俺は街を歩いていた屈強くっきょうな戦士に話しかけた。

「すみません。この街の名所とかについていろいろ教えてほしいんだが」


そこで俺はある根本的こんぽんてきな問題に気付いた。

「(そういえばここって日本語通じるのか?)」


俺がそんなことを考えていると、屈強で厳つい戦士は人のよさそうな笑みを浮かべて言った。

「さてはアンタも冒険者としての仕事を探しにここに来た新人だな?ならまずは東区にあるギルドに行きな。名所ならやっぱりあの城とかだな。じゃあな、少年」

「ああ。ありがとう」


俺は特に問題なく日本語が通じたことに少々驚きながらも、去っていく戦士のたくましい背中を見送った。


俺は戦士が言った【ギルド】というものに興味がわいた。ギルドに行けば恐らくこの街の戦士や騎士の様にまさにファンタジーな生活ができるのだろう。それこそ俺が望んでいた新しい生活だ。


俺は期待に胸を膨らませ、彼が言った東区へと歩き始めた。



♢♦♢♦



「見るからにここだよな…」

俺は一際巨大で他の建物とは違う雰囲気の建物へと辿り着いた。その建物からは騎士や剣士、魔術師のような装いの人々が出て来たり、逆に入って行ったりしている。


建物のドアの上あたりの看板をよく見てみると今度は英語のような言語で何か文字が書いている。見たことはない文字ではあったが、俺は難なくそれを読むことができた。


そこには【エルゼンダルク冒険者ギルド】と書いてある。どうやら俺はこちらの世界の言葉や文字が分かるようになっているらしい。


俺は深呼吸してからギルドの扉を開けた。それと同時に中の騒ぎの喧騒けんそうが耳に飛び込んでくる。冒険者たちが仲間たちと共に酒を飲み、大いに笑っている。俺はその光景を見て、元の世界でプレイしていたファンタジーゲームのギルドを思い出した。


「…そう。これだよ。これこそ俺が求めていたものだ…!」


俺は思わずそう呟くと、ギルドの中を見回し、【冒険者登録受付】と書いてあるカウンターへ向かった。すると受付のお姉さんが俺に声を掛けてくる。


「こんにちは!新人の方ですか?」

「ああ。新しく登録をしたいんだけどここでできるか?」

「はい!できますよ!それではこのステータスカードに名前や生年月日を入力してください」


俺は言われるがままに名前を書こうとした。こちらの世界でだけの新たな名前を考えようかとも思ったが、前の世界で親に与えられた名前をそのまま入力する。


生年月日などの個人情報を全て入力し終えると、下の【ステータス】の欄に俺のステータスと見られる色々な情報が出現した。受付のお姉さんにカードを返すと、彼女は少々驚いた顔をして言った。


「非常に高いステータスですね。筋力B+、耐久性C+、敏捷性A、器用さB、魔力は…S!?規格外の魔力です!こんなの見たことありません!」

「俺の魔力がS!?それって凄い魔法とか撃てるってことか?」

「そうなりますね。この国でも有名な魔術師になれる可能性があります!」


俺はその時、この世界に俺を招待した何者かに全力で感謝したものだ。これなら前の世界など比べ物にならないほど充実した毎日が送れるかもしれない。俺は思わず口元が緩んだ。


その時、後ろのほうからギャラリーが集まって来た。みんな、【魔力S】というところに驚いたようだ。


「おい受付の姉ちゃん。そこの少年はそんなに凄いのかい?」

「ガルデブラントさん!ええ、とてつもない魔力値です!それに剣士でもないのに片手剣の武器適性がS。それに二刀流までSです!」

「武器適性までもか。どれどれ…」


ガルデブラントという屈強な大剣を背負った男は俺に向かって手をかざした。どうやら俺のステータスを読み取っているようだ。そして閉じていた目を空けたとき、彼は何故か困ったような顔をしていた。


「姉ちゃん。こいつは内臓魔力は異常に高いが魔術許容度まじゅつきょようどが限りなく低いぜ。これじゃあ宝の持ち腐れだ。恐らく攻撃魔法どころか、簡易魔法しか使えないぜ」

「それは…逆に珍しいですね。魔力が高い人は魔術許容度も高いはずなのですが」


俺は深刻な顔をして話す二人に向かって聞いた。

「なあ。さっきから言っている魔術許容度ってのは何なんだ?」

「まあ魔術許容度は自らが使える魔術のレベル上限だよ。これが低いといくら魔力が高くても強力な魔法は放てないんだ」

「は…!?何だよソレ…!?」

「まあ兄ちゃんが幸いなのは剣の適性が高いことだな。魔力の量を考えると勿体ねぇが、剣士になるのが最善だろうよ。珍しい二刀流適性Sの持ち主なんだからよ」


「…とのことですが、ジョブクラスはどうしますか?」

「えっと…剣士で」



♢♦♢♦



俺はギルドを出て、その日の宿を探しに再び街を出た。ギルドから初日の宿代と最低限の活動資金はもらった。俺は武器適性の高さに従って【剣士】というジョブになった。だが、俺は大きくため息をついた。

「どうせなら…ド派手な魔法撃ってみたかったなぁ…」


そう。俺には膨大な魔力が最初から備わっていた。だが俺のその魔力は完全に使用不可だったのだ。なんせ魔術許容度というものが絶望的なまでに低いらしく、簡単な魔法ぐらいしか使えないらしいのだ。


幸い、片手剣と二刀流の武器適性が高かったので剣士というジョブにつけたのだが、この魔力を行使する術が無いというのは実に悲しい。


事実俺が魔力許容度の低さを告白され、仕方なく剣士を選んだ際には、周りの冒険者たちが全員「かわいそうに」という目で俺を見てきた。


まあ元々剣を持って最前線で戦うのは前からかっこいいと思っていたし、十分に満足ではあるのだが、やはりあれほど高い魔力を持っているとなると巨大な魔法の一つや二つ撃ってみたくもなる。


先ほどから道行く人々のうち、騎士や剣士や魔術師などは俺の方を驚いたような目で見ている。

どうやら、ある程度の強さを持つものであれば俺の魔力を感じ取ることができるらしい。一般人はほとんど気付いていないことからもそれがわかる。


「でもその魔力も意味ないんだよなぁ…」

俺は再び大きなため息をついた。すると、街の路地から全員が同じような騎士服に身を包んだ集団が出現した。明らかに俺に向かって進んでくる。そして俺を取り逃がさないように包囲する。


「貴様が異常なほど高い魔力を持つ謎の男だな!?街の騎士や魔術師から目撃情報が相次いでいる!」

「…は?」


ワケが分からずそんな気の抜けた返事を返すと、先ほどから俺に槍の矛先を向けるリーダーらしき男はさらに強い口調で言った。

「その見たことのない服装と言い魔力と言い…貴様、さては帝国軍のスパイだな!?」

「おいおい、でたらめはよせって。俺は単なる新米剣士だぜ?」

「貴様のような者の言葉が信じられるか!さっさと降伏するがいい!」

「降伏するも何も俺はホントに無関係なんだけどな…」


全力で困った顔をしてそう言うと、リーダー格の男が槍を突き出して叫んだ。

「問答無用!かかれ!」


俺は突き出された槍をぎりぎりで回避した。その後も今までアクションゲームなどで見てきたでたらめなモーションでどうにか回避し続ける。だがこのままではいつか限界が来そうだ。


「ほう…闘い慣れているな。やはり敵国のスパイか」

「いや、勘違い…なんて言っても無駄か」


俺は再び敵の攻撃に身構えた。どうにか活路を見出さなければいけない。

「(どうする…)」


その時、家の上から一人の人影が飛び降りてきた。純白の髪をたなびかせており、見た感じ女の子だ。その人影は俺の横に着地すると俺の手を取って走る。

「こっち!」


俺は言われるがままに走り出す。彼女は騎士たちの隊列の隙を見逃さず、路地に滑り込む。俺も手を引かれながら懸命についていく。後ろからは騎士たちが俺たちを追って来ている。


俺を助けてくれた彼女は振り返りも立ち止まりもせずに慣れた足取りで路地の間を走り抜けた。敏捷性という機敏さ・速さを表すのであろうステータスがAの俺でもついていくのがやっとだ。

「頑張って!あと少しで広場だから!」


俺はそのまま走り続けた。そして路地も終わりが見えて広場から光が差し込む。俺たちは路地の残り数メートルを走り抜けた。


これで一安心か、と思ったのもつかの間、前を走っていた彼女が足を止めた。俺も足を止めて前を見ると、広場を先ほどよりもさらに多い数の騎士たちが取り囲んでいた。

「待ち伏せ…!」


彼女がそう呟くと、先ほどのリーダー格の騎士が前に出てきて言った。

「ソフィリア様!勝手なことをされては困ります!その者は帝国軍のスパイですよ!?」


騎士にそう言われたソフィリアと言う名前の美少女は、強い口調で言った。

「彼を見なさい!帝国軍のスパイに見える?少なくとも、私にはそう見えないけど?」

「間違いありません!この者の魔力、ただの旅人とは考えられません!」

「魔力が何?魔力が敵か味方か判別する材料になるの?こんなに魔力が高い人はそうそういない。もし味方ならば頼りになること間違いないでしょう?」


彼女がそう言うと、リーダー格の騎士は反論できずに歯ぎしりした。するとその様子を見たソフィリアが俺のほうに振り向いて先ほどとは違う態度で言う。


「巻き込んでしまってごめんなさい。見た感じ異国から来た人かしら?」

「あ、ああ、そうだ。助かった、サンキュな」

「それは良いの。あなたを疑ってるわけじゃないけど一応聞いておくわね?あなたは帝国とは何の関係もないのよね?」

「それについては大丈夫だ。帝国っていう国自体初めて聞いたし」


俺の答えを聞いた彼女は再び騎士の方向に向き直った。

「聞いたでしょう?彼は敵国のスパイではない。これでもまだ何か言いたいことが?」


彼女がそう言うと、リーダー格の騎士は歯ぎしりした。そしてため息をついて言う。

「わかりました…。あなたが言うのならば仕方がない。それで、あなたはこの者をどうするつもりですか?」


今度はソフィリアが歯ぎしりする番だった。その様子を見た騎士は言った。

「もしソフィリア様がどうにもできないのであれば、この者は地下牢に監禁されることになりますが?」

「(は?マジか!?)」


俺は異世界に来て初日に大騒動に巻き込まれたようだ。地下牢に監禁されるなどゲームでも最悪イベントだ。俺は内心でソフィリアに賭ける。


彼女は数秒間悩んだ末答えた。

「彼は…私が保護します」


彼女がそう言った時、騎士たちがざわめいた。リーダー格の騎士までもが動揺を隠せない中、ソフィリアだけは凛とした表情を保っている。俺はもう話についていけなくなっている。


「…いいでしょう。しかしソフィリア様。あなたは国にとっても大事な立場。そして儀式を控えていること、お忘れなく」

「…ええ…」

彼女がそう答えると騎士たちはリーダーに連れられてぞろぞろと退散していった。その様子を見てソフィリアが疲れ切った様子で胸を撫で下ろすようにため息をついた。そして俺の方を向く。


「ごめんね。こんな大事に巻き込んでしまって…保護するって言った以上君は私が面倒見ないといけないから…ひとまず私の家に来てくれる?」

「…ああ。分かった」



♢♦♢♦



俺はソフィリアに連れられて夕暮れに染まる街を歩いた。待ちゆく人々はソフィリアの方を見ている。先ほどの騎士たちの態度から見ても彼女はこの国ではかなり上の立場の者なのだろう。彼女が【ソフィリア様】と呼ばれていたのにもこれなら納得がいく。


「着いたよ。さ、どうぞ入って」

「お、お邪魔します」

俺はおどおどしながらも彼女の家に入った。異世界に来た初日から大騒動に巻き込まれて美少女に危機を救われてそのままその娘の家に上がらせてもらうなどなんという展開だろうか。


これはもはや異世界ラノベ展開と言っても良い。だが騎士たちにあそこまで狙われたあとだと素直に喜べない状況だった。


「簡単にご飯作るからちょっと待っててね」

そう言うと彼女はキッチンへと向かった。手際のいい料理の音が聞こえてくる。そして待つこと十分。いい匂いのする魚料理とサラダ、美味しそうなパンが運ばれてきた。これを見るだけでも腹が減る。


「遠慮せずに食べてね。疲れも溜まってるだろうし」

「ありがとう。でも良いのか?訴状も知らない俺にこんなことしてくれて」


そう言うとソフィリアは少し微笑んで言った。

「あのままじゃ君は牢獄行きだったよ。それは君も嫌でしょ?」

「まあ…もちろん」

「勢いで君を保護することになって…ゴメンね。君こそ誰かわからない私に保護なんかされて。君は旅人?街に着いたところだったの?」


俺はどう答えるべきか迷うが、異世界からここに召喚されたなどと言うとさらに騎士たちに疑われそうなのでここはソフィリアの問いを素直に肯定しておく。


「実はそうなんだ。ギルドに入ったけど特にアテもなくてさ」

「君はこの街に仕事を探しに来たの?」

「まあな。そういうソフィリアさんは?王国でも位の高い人っぽかったけど」


俺がそう言うと彼女は少し黙ったが、すぐに何かを理解して微笑した。


「あんなに騎士たちが名前読んで、様付けまでしてればすぐわかっちゃうよね。私はソフィリア・エルレイン。今はある理由から王国で【白の巫女】って呼ばれてるの。ソフィリアって呼んでくれれば良いよ。そういえば君は?」

「俺は黒羽夜瑛斗クレハヤエイト。よろしく」


俺がそう名乗ると、ソフィリアは難しそうに首を傾げた。


「クレハヤ…エイト?なんだか難しい名前ね。もしかして極東の出身?」


極東。従来のファンタジー作品ではこの言葉はだいたい日本を指す。この世界にもその概念はあるようだ。


「ああ。俺の出身は恐らく君の言う極東だ」


俺が言うとソフィリアは優しくも元気な笑みを浮かべて言った。


「初めて会うかも、極東の人なんて。じゃあこれからよろしくね、エイト!…って早くしないとご飯が冷めちゃう!」

「あ、そうだな。じゃあいただきます」


実に10時間ほども何も食べていなかった俺はソフィリアの作ったご飯をぺろりと平らげた。


「悪いな。家に上がらせてもらった上にこんな食事まで」

「そんなの別に良いよ。それでここからが本題でもありエイトが一番知りたいことなんだろうけど」


俺は再びソフィリアの方を向いた。確かにいろいろと聞きたいことがあった。


「私はある者たちと心を通わせる力を持つ【神霊の巫女】っていう特殊な人間でね。だから【白の巫女】って呼ばれてるの。それでその巫女は力をつけるために必ず長い旅に出るの。それが二日後」

「へぇ…やっぱりめちゃくちゃファンタジーじゃん」

「何か言った?」

「あ、いや、何も」


つい本音を漏らしてしまい慌てて訂正する。彼女は再び話を始めた。


「それで私が君を保護するって言った以上は私が君の責任を負わないといけない。だから王宮で監視付きの不自由な生活を送るか私の旅に同行するかって話なんだけど…」


王宮で監視付きの生活と聞いたときはぎくりとしたが、二つ目の選択肢を聞いたとき俺の決意はすでに固まっていた。


なんだかまさに異世界ファンタジーという感じだし、王宮で望んでもいなかった生活を送るよりかは多少危険でも元々の計画からずれても刺激と新しい可能性がある方を選びたい。


俺はすぐさま力強く答えた。


「行くよ。もちろん。君が良ければだけど」


ソフィリアは少々驚いてからいるようだったが真剣な顔で再び俺に聞いた。


「私は構わないんだけど…君はそれでもいいの?見ず知らずの私と儀式の旅に出るなんて…」


俺は彼女に微笑みかけながら言った。


「もう見ず知らずじゃないだろ?俺はもう決めたよ。足でまといにはならない。こう見えても俺は魔力と剣の適性だけは凄いらしい」


俺がそう言うとソフィリアは俺の方を向いて言った。


「…そうね。それが君の意志なんだもんね。じゃあこれからよろしく頼むわね」

「ああ。こちらこそ」


俺は再び彼女に微笑みかけた。彼女も微笑を浮かべる。俺は背伸びをしながら言った。


「あと二日か。そうとなればいろいろと準備しないとな。まだバリバリ初期装備だぜ」


俺が張り切ってそう言うとソフィリアも立ち上がっていった。


「まあまあ。旅に出るまでは私の家に泊まって?まだ二日もあるんだし」

「…そうだな。じゃあお言葉に甘えて短い間だけど居候いそうろうさせてもらおうかな」



俺は与えられた部屋に入ると何もせずにベッドに入った。思い返せば丁度一日前まではまだ日本、というか別の世界にいたのだ。異世界召喚初日でいろいろありすぎて体内時計もおかしくなっている。


よくよく考えてみれば、今の状況は元の世界にいた俺が思い描いていた完璧なシナリオなのだ。ファンタジー風の異世界に召喚され、魔法は使えないがかなり高いステータスを誇り、初日から純白の髪を持つ美少女と出会い、旅をすることになっている。


だがまだ実感がわかない。今日一日だけでいろんなことがあった。もしかしたらこれは単なる夢で、朝起きればまた元の世界に戻っているかもしれない。そんな考えが頭に浮かぶ。


だが俺は、いつの間にか眠りに落ちていたのであった。


この時の俺は知らなかった。この出会いが、俺の運命を変えることを。この出会いから、俺の人生は変わり、熾烈しれつなものとなる。


作者である私以外にも、キャラクター原案としてワタナベ氏が手助けをしてくれました。彼がアイデアしたキャラは後程登場しますのでご期待あれ。

投稿についてですが、あまり時間を決めずに行こうと思います。ある程度投稿してからは週1のペースにしようとは思っていますが。

これからも読む機会があればよろしくお願いいたします。

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