宝石探し。
ふわりふわりと、灰色に染まる空から舞うは、小さな白き粉雪。
地には降り積もった雪が、白銀の世界を描いている。
時刻は午後、雪のせいで陽は出ていないが、それでも世界は白く輝いていた。
白に染まった、常緑針葉樹が並ぶ森。
その中を、ニット帽にマフラー、コート、手袋、そしてブーツと、防寒対策を万全にした少女が歩いている。
手には、首から下げている一眼レフカメラが収まっていた。
さく、さく。
雪で覆われた山道に、彼女の足跡が残る。
ふと、彼女は途中で足を止め、木々の上部を見上げた。
その瞳は、真剣に何かを探しているようである。
バサバサ……
どこからともなく聴こえる羽音。
それを聴いた彼女の瞳が、そちらへ動く。
その視線の先には、一羽のシロフクロウがいた。
針葉樹に留まる、もふもふした白い鳥。
シロフクロウを瞳に収めた彼女の表情は、嬉しそうに輝いている。
そして、手にしていたカメラを構えた。
カシャッ
一枚の写真に収められたシロフクロウ。
しっかりと撮れているかを確認している彼女の顔は、僅かに綻んでいた。
「ふふっ、可愛い」
そのシロフクロウを撮るまでにも、数多くの写真を撮っていたらしい。
カメラに映し出される写真は、彼女がボタンを操作する度に、次から次へと変わっていく。
様々な角度から映されているシロフクロウ。
毛玉のようにまるまっている小さな鳥、シマエナガ。
それらの鳥が羽ばたく姿。
鳥だけでなく、雪の上を歩くキタキツネの姿や、植物の様子も映されていた。
割合は圧倒的にシロフクロウが多い。
彼女はフクロウが一番好きなのだろうか。
それらの写真を幸せそうに眺めている彼女が、何かの気配を察知する。
刹那、真剣な表情で、気配がした方向をじっと見つめた。
木の陰から姿を表したのは、一匹のキツネ。
ふわふわとした毛並みは雪のように白く、景色に溶け込んでいる。
くりくりとした黒い瞳が何とも可愛らしい。
シャッターチャンスを逃すまいと、素早くカメラを構えてシャッターを切る。
満足のいく写真が撮れたのか、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
静寂に包まれた白の世界。
耳を澄ませば、聴こえてくるのは自然の音色と、様々な野生動物が奏でる生活の音色。
さく、さく。
彼女は再び歩き出す。
のびのびと暮らす動物や植物の姿を、記憶に刻むために。
そして彼女は記録していく。
自分が見たもの、好きだと思ったもの、感動したものの記憶を、何時でも呼び起こせるように。
良くも悪くも、平凡な日々が続くのが日常だ。
しかし、その中にこそ、平凡な日々を「素敵な日々」に変えるものがある。
──あなたは、素敵な毎日を過ごせていますか?
彼女の心の中で響くのは、ある人からの問いかけの言葉。
彼女はその問いに、自信を持って、はっきりと一言。
「はい、とっても素敵な毎日です!」
きらりきらりと、灰色に染まる空から覗くは、暖かな橙色の陽光。
地には降り積もった雪が、陽光を反射して、宝石のように虹色に輝いている。
その輝きに、気付く者と気付かない者。
彼女はもちろん前者だ。
カシャッ
また一つ、彼女の日常の記憶が追加された。