第九話 やっと休みだ!
【二週間後、レーニング兵士宿舎】
チクタク、チクタク。
「ハッ!」
マズい!
寝坊した……って今日は訓練休みだったな。
今日はクーゴさん達三人揃って任務だから俺は訓練休みだった。
……で、今の時間は?
ゲッ! まだ朝の5時じゃん。
仕方ない、二度寝するか。
………………寝れないな。
完全に目が覚めたから二度寝出来ない。
仕方ないから少し散歩でもするか。
【レーニング商店街】
……朝から散歩か、魔王城にいた頃の俺だったら絶対しなかったよな。
と、言うよりエルに起こされるまで絶対起きなかったもんな俺。
そんな俺が最近は毎日自分で起きてるとは。
寝坊するとその後の訓練が厳しくなるからな、特にサージョさんの時は。
サージョさんは真面目ってか融通が効かない。
前に一度サージョさんの訓練の日に寝坊したら
「今日のノルマ終わるまで帰しません!」
って言われて日付が変わるまで訓練が続いたもんな。
まあ、厳しい訓練のおかけで俺は成長出来たけど。
クーゴさんとの訓練ではクーゴさんと斬り合いが出来るぐらいにはなった。
最後は絶対負けるけど初日みたいに一方的にやられる事は無くなったぜ。
クーゴさん負けず嫌いだから絶対負けてくれないんだよな。
大人げない人だ。
『疾風斬り』も一応出来るようになった。
ただし威力はまだ大したことはないけど。
それでもスキが少ないこのスキルは使い勝手が非常に良い。
自分で使ってみて分かったがこのスキルは牽制、連続攻撃の初撃と繋ぎ、トドメと使える場面が多い。
パッと見は普通の横払いなのに便利過ぎるスキルだ。
チョーハさんとの訓練は盾を的確に使えるようになってきた。
盾ってナナメに構えて相手の攻撃を受け流す方が効率良いんだな。
斜めなら倍近い身長のチョーハさんの槍も受け流せる。
体捌きは元々避けるのは得意だったから割りと早く習得出来た。
片足を軸にして円の動きで避けると最小限で動けるんだよな。
これに関してはチョーハさんに、
「……驚いた……」
って言わしたぐらいだぜ。
あの無口なチョーハさんを驚かしたんだから自慢してもいいよね?
サージョさんとの訓練は……ぶっちゃけ一番進んでない。
まだ『速度強化呪文』は習得出来てないしな。
それでも『炎呪文』の威力は初日よりは上がってきた。
あと魔力も少しづつ総量は増えてきたし。
才能無いなりには頑張ってるよな俺。
……って頑張るとか俺らしく無いな。
よし、今日は久し振りにグータラするぞ。
やっぱグータラいい加減が俺の個性だよな!
【二時間後】
迷ったー!
ここ何処だー!
……落ち着け俺。
まずは深呼吸だ。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。
……何か違う気がするが取り敢えず落ち着いた。
よく考えれば俺はレーニングに着いた日に少し町を見て周っただけで次の日からは訓練、疲れてすぐ寝る、訓練、疲れてすぐ寝るを二週間繰り返してた。
レーニングの地理なんぞ殆ど知らんかったな。
……過ぎた事は取り敢えず忘れよう。
取り敢えず周りを確認するか。
右、ずっと上の方まである壁。
左、同じく高い壁。
前、なんか入り組んだ細い道。
後、同じく入り組んだ細い道。
……なぜこんな所に来た俺よ?
自問しても仕方ないか。
さて、どうするか?
周りに人が居ないから人には聞けない。
持ってる地図も町の地図じゃないから使えない。
……あぁこんな時に前世のスマホがあれば。
グー○ルマップが無性に欲しい。
無いものねだりしても仕方ないか。
取り敢えず前に進むか。
それで人がいる所に出れたら人に聞こう、うん。
【一時間後】
……また行き止まり。
本当ここ何処だよ?
さっきから全く人の気配が無いし。
何なんだよこの迷路は!
家があっても誰も居ないし!
【さらに一時間後】
行けども行けども壁と道と空き家ばかり。
本当何なんだよ!
……あれは?
やった!
出口だ!
やっと出られるぞ!
……えっ?
目の前に広がるのは最近見慣れた平原。
ここって街の外?
……なんか聞いた事ある音が……メッチャ嫌な予感が。
「ガアーッ! 」
やっぱ出たよサーベルウルフ!
しかもいきなり襲ってきた!
「ッ! 『疾風斬り』!」
「ガア゛!?」
とっさに相棒を抜き、『疾風斬り』でサーベルウルフの右前足を切り落とした。
「ガゥガアー゛!」
まだヤル気か!
だがな、
俺は盾でサーベルウルフの牙による攻撃を受け流しつつ、左足を軸にして噛み付いてきたサーベルウルフの後ろに回り込んだ。
「『炎呪文』! 」
「ッッッッッッガア! 」
剣先から放った炎でサーベルウルフは火達磨だ。
剣が杖の代わりになるってサージョさんに教わって良かった。
これだと両手塞がっても魔法が使えるもんな。
さぁトドメだ。
相棒頼むぞ!
「『疾風斬り』!」
炎に燃やされてのたうち回ってたサーベルウルフの首を俺は相棒で切り落とした。
サーベルウルフは断末魔も無く死んだか。
……勝った!
因縁深いサーベルウルフに完勝した。
俺も強くなったんだな。
……って余韻に浸ってる場合じゃない!
他のサーベルウルフが来る前に町に戻らないと!
あー、またあの迷路に戻るのか。
クッソメンドイよ。
【その日の夜、レーニング兵士宿舎】
「ブァハッハッハッハ! 」
「クーゴさん、そんなに笑わんで下さい! 」
あれから俺は何とか宿舎に戻って来れた。
……宿舎に着いたの夜だけど。
んで、今日あった事を任務が終わって宿舎で飲み会してたクーゴさん達に話したらメッチャ笑われた。
「……プッフフ、そうですよ。キットさんに失礼ですよ、フフッ! 」
「サージョさんも笑ってるし! 」
「……プッ……」
「チョーハさんまで! 」
普段無口なチョーハさんにまで笑われたのは結構ショックだぞ!
「ヘイヘイ、だってキットよ。お前が迷い込んだのは再開発が決まって今は誰も居ない旧住宅地区だぜ。あそこは来月から解体工事するから立ち入り禁止になってるぜ。入り口に『立ち入り禁止』って書いてある看板があっただろう?」
「……多分見てないです」
そんなもん見た記憶ないですよ!
「町の子供達がイタズラで外したのかしら? 明日にでも確認してみますね」
イタズラだとしたら質が悪いぜ。
おかけで俺は一日中迷子だったんだからな。
犯人見つけたら『疾風斬り』を全力でブチかましてやる。
……でも楽しいな。
こうやってみんなで雑談するのも。
なんて言うか心がウキウキするな。
「さあそろそろ寝ますよ、明日も任務ですからね。キットさんも明日は訓練ですよ」
「……」
「ヘイヘイ、仕方ないぜ」
ってもう寝る時間!?
……俺結局今日はグータラしてないし。
せっかくの休日にずっと迷子になってただけ?
そして明日からまた厳しい訓練が……
はぁー、とにかく寝よ。
寝ないと明日がキツイからな。
チクショー看板はずした犯人め恨んでやるからな!
オマケ
『スキル』
スキルとは簡単に言えば技や技能の総称。
スキルは本で勉強する、人に教わる、自力で開発、習得する等々色んな方法で使えるようになる。
スキルには戦闘で使えないものも多くある。
スキルには本来スキルじゃないものがスキルになるケースもある。
スキルは使い手の技量で威力、効果が変わる。
スキルは何らかの理由で変化するケースもある。
スキルは名前が違っても似た効果のスキルもある。また、同じ名前のスキルが違う効果になるケースもある。
スキルにはブレスなどもある。
スキルには魔力を使い魔法に良く似たスキルもある。また魔法とスキルと両方に属するスキルもある。(魔法剣など)
スキルは何らかの理由(老化など)により使用できなくなることがある。人間界のスキルも魔界と基本一緒。
スキルには明確な区分はない。
ある種族が好んで使うスキル(ドラゴンのブレスなど)、ある職業が好んで使うスキル(モンクの正拳突き)がある。また一個人しか使えないスキルもある。