第四十六話 倒すぞビックホーン・レックス!
「カナはキットとレンドに強化呪文をかけて。その間にミキはアタシと奴の足止めするわよ!」
「よし!」
「分かったよー」
「まっかせなさいって!」
「ふぇ!? が、がんばるよ〜」
ルフレが俺達に早口で指示を飛ばし俺達は返事をした。
「ミキいくわよ、『氷結呪文』!」
「よっしゃ、呪文砲『氷結呪文』!」
二人が放った冷気の塊がビックホーン・レックスの片足を凍らせて動けなくした。
「今のうちよカナ!」
「うん! 『攻撃強化呪文』『速度強化呪文』」
「サンキュー、カナ」
「よーし、やるよーキット!」
俺とレンドはビックホーン・レックスに向かって走る。
カナの魔法で強化された走りで一気に詰め寄る俺達。
……カナの『速度強化呪文』が俺のより強力なのが地味にショックだ。
「キット危ない!」
「アホ骸骨よそ見すんじゃないわよ!」
えっ!?
気が付くと目の前に丸太みたいなビックホーン・レックスの尾が!!
「ガッ!!!」
モロに直撃した俺は思いっきりふっ飛ばされた。
「ドジッ! もーカナはそのアホ骸骨の治療を。ミキは代わりに前衛に入って。レンドはアホ骸骨が復活するまで踏ん張りなさいよ!」
イテテ……。
……今回は戦闘中に余計な事考えてた俺が悪いな。
ルフレのアホ骸骨呼ばわりに文句は言えんな。
「キットくん今すぐに治してあげるからね〜、『回復呪文』!」
カナに治療されながら俺は自分の状態を確認する。
……見事に全身バキバキに折れてるな。
こりゃカナに回復して貰っても時間掛かりそうだ。
「『炎弾呪文』! 『炎弾呪文』!」
ふと見るとルフレは空から魔法を放ってた。
「ガァァァ!!」
「させないよ!」
また尻尾で攻撃しようとするビックホーン・レックスの尾を掴みソレを止めるレンド。
これでビックホーン・レックスの片足と尾の二つを封じたか。
「そのまま抑えといてレンド! いっけーミキちゃん特製『爆裂球』!」
ミキが大きく振りかぶって投げた手の平サイズの玉が轟音を鳴らし爆発した。
「ガァァィァゥゥゥ!?」
だがその爆発の熱で足を覆ってた氷は溶けてビックホーン・レックスは開放されてしまった。
「うわーー!?」
レンドも尾を振り回されて手を離してしまいふっ飛ばされたか。
「ミキ下がって!」
「ホイサッサ、では任せたわよ」
「キットくん〜、治療終わったよ〜」
よっしゃ。
「カナありがとう」
さっきの名誉返上したるぞ!
……あれ、汚名挽回だっけ?
「アホ骸骨、『炎呪文』で攻撃するわよ!」
「了解」
いつもならアホ骸骨呼ばわりにツッコミ入れるが今は無しだ。
「「『炎呪文』!」」
俺が剣先から、ルフレがペンダントから炎を放った。
二つの炎がビックホーン・レックスを包み燃やす。
「ハァ、ハァ」
「ルフレ大丈夫か!?」
ルフレは空から降りて肩で息をしてる。
かなり疲労してるな。
「ガゥゥゥ!」
げっ!
ビックホーン・レックスが頭の巨大な角で突っ込んできた!?
「みんなオイラの後ろに下がって! 『受けの構え』!」
振り落とされたレンドが急いでこっちに来てくれた。
でも幾らレンドでも防げるのか?
「うおおおお!!!」
「ガァァァァ!!!」
止めた!
レンドがビックホーン・レックスの巨大な角を掴み止めたぞ。
「まだまだー!」
マジかよ。
レンドは角を掴んだまま一本背負であの巨体を投げ飛ばした!
「今だよ、みんなー!」
レンドの合図で俺達は一斉に攻撃する。
「おう! 『炎呪文』!」
「ありがとレンド、『爆裂球』!」
「百回死んどけ! 『炎弾呪文』!」
俺達が放った炎と爆炎に包まれたビックホーン・レックスは火を消そうと地面を転げ回ってる。
「レンド、トドメよ!」
「うっし、『突進』だー!!」
ミキの合図でレンドが土煙を上げながらビックホーン・レックスに向かって進む。
それは前世の列車ようにも見える、それぐらいの勢いがある。
「うおおお!!!」
雄叫びを上げながらレンドはビックホーン・レックスの腹に炸裂音を出しながらブチかました!
「ガァァァァ!!」
ビックホーン・レックスは断末魔を上げそのまま動かなくなった。
「やったわ! アタシ達の勝ちよ!」
「みんなー、お疲れ様だよー」
「ふぇ〜、みんな怪我してない〜?」
「何とか勝てたわね。私達って結構強いじゃん」
よっしゃー!
前の時のリベンジしたぞ。
……あれ?
俺ってひょっとしてあまり活躍してない?
俺が今回したのって……『炎呪文』を二回打っただけ……。
我ながら情けない、情けなさすぎるぞ。
俺って本当かっこ悪いな。




