第四十五話 金が無いから稼ぐぞ!
【三日後、ルークス東の荒野】
「キットそっち行ったわよー!!」
「任せろ、『疾風斬り』!」
「ブヒー!!」
俺はルフレの空からの指示に従って巨大な豚の魔獣、『岩豚』を仕留めた。
コイツは普段は岩のフリをして身を隠すんだがルフレの固有スキル『鳥目』だと動いてるのが丸見えらしい。
「レンド、次はその隣の岩よ。違う、逆の岩よ!」
「これだねー、『正拳突き』!」
「ブヒァー!!」
レンドも一匹仕留めたか。
大量大量。
何故俺達が岩豚刈りをしてるかと言うと、
【三日前、夜】
「さて、仲間が増えたのは良いが一つ問題がある」
夕食を食べ終わり薪の前で課題をこなしてた女性陣に俺は言う。
仲間達は一斉に俺の方を向いた。
「問題? 魔界騎士にも宿題があるの?」
「違う、その問題じゃない」
ミキは問題集を片手に持ちながら言った。
つか宿題する魔界騎士とか格好悪すぎるわ!
ちなみにレンドと俺は交代しながら見張りをしてる。
今はレンドが見張りをする番だ。
レンドも見張りをしながらこっちに意識を向けてくれてる。
「ある。それは……金が無い」
「はぁ?」
「ん?」
「ふぇ?」
三人娘はキョトンとした表情をしてる。
レンドは予想してたのか特にリアクションは無い。
「もう一度言う。俺達は金が無い」
「ちょっと、アンタ魔界騎士でしょ! 何でお金が無いの!?」
ルフレは半ギレ気味に言う。
気持ちは分かるが無いものは無いんだよ。
「魔界騎士だからだ。魔界騎士って言っても所詮国家公務員だから給料は高くないんだよ」
魔界の公務員は給料が低い。
魔界騎士も例外じゃないんだよ。
「ほら、そこは経費を余分に貰ったりとかは……」
「無理! つか給料に経費込みだからな」
ミキの言葉を途中で切って言い切る。
仮に経費別ならルークスで防具を買うときに悩む必要なかったし。
「あ、あの。カナのお小遣いをキットくんに上げてもダメかな〜?」
「気持ちは嬉しいけど五人もの大所帯だと焼け石に水だよ」
カナは本当にいい娘だな。
癒やしだわ。
「だから明日から積極的に魔獣狩りをして次の町で換金して旅費に当てるぞ!」
ルフレはしかめっ面してるが仕方ないだろ。
金が無いと飯も食えないんだから。
……給料増えないかな。
【冒頭の場面】
てな訳。
だが、いざ狩りを始めるとウチの女性陣は凄いのなんの。
まずルフレは空から的確な指示を出し、時には魔法で援護してくれる。
これが腹立つほど指示が的確でムカつくが素直に従ってる。
カナは固有スキル『心話』で草花から魔獣の大体の位置を聞き出し、俺達がケガをしたら即座に『回復呪文』してくれる。
レンドと二人だけの時はケガをすると復活するまで待っていたから、かなり助かってるよ。
ミキは魔獣の解体を担当してもらってる。
あと、魔獣が群れで出た時は魔道具で援護に入ってもらってる。
ルフレやカナと比べると地味だけど助かってるよ。
……あとミキの自作のポーチ型魔法袋が俺のより容量あるからそれも地味にありがたい。
これでかなりの量の魔獣を運べる。
「キット! サボってないで解体作業進めなさいよ!」
いけね、考え事してたら手が止まってた。
「……ふぇ、そうなの? みんな〜、お花さんが何か来るって言ってるよ〜!」
何かってなんだよ?
……だが確かに俺も嫌な予感がする。
「ルフレ!」
「分かってるわよミキ。『鳥目』!」
ルフレは空から周りを注意深く見てるな。
俺達もそれぞれの作業を中断して警戒態勢に入る。
「っ! みんな向こうからピックホーン・レックスがこっちに向かって走ってくるわ!」
マジかよ!
なんでコッチに……ってコレか!
俺達はさっきまで倒した岩豚の解体作業をしてた。
当然だが周りには岩豚の血の匂いがする。
そしてルフレが言う向こうは風下。
多分血の匂いに誘われたのか。
「よーし、頑張って倒すよー!」
ってレンド!
ルークスに来る前にボロボロにやられたの忘れたんか!?
「そうね、豚の相手するのも飽きてたし。アンタ達、気合入れるわよ!」
ルフレお前もかよ!
「こ、怖いけどカナも頑張るよ〜!」
カナも怖いなら無理するなよ。
てか普通に逃げようよな。
「あーあ、キット諦めなよ。ルフレはスイッチ入ると止められないよ。まぁ危険になったら逃げればいっしょ?」
俺の味方はミキだけかよ。
はぁ、仕方ない。
ミキの言う通りヤバくなったら逃げるか。
頭を切り替えた俺はピックホーン・レックスを迎え撃つ為に相棒を構えた。
まぁ今回は五人だし何とかなる……かな?
オマケ
『岩豚』
背中が岩にそっくりな体長一メートルほどの豚。
岩に擬態して肉食の魔獣に襲われない様にして本物の岩に生えた苔や草を主食としてる。
肉が焼いても煮ても旨いため結構良い値段で売れる。




