第四十二話 一見落着。
……頬があたたかい。
でも何でだ?
俺は意識を取り戻すと目の前に泣きながら『回復呪文』をかけてるカナがいた。
「ふぇ!? 起きた、キット君が起きたよ〜!」
「本当カナ! 本当にアホ骸骨が起きたの!?」
「ルフレ落ち着きなって。でも本当に死んでなくて良かったわ」
「だから言ったでしょー、キットは復活するよーって」
ルフレ、ミキ、レンドも居るのか。
でもレンド以外は涙目だな。
本当になんでだ?
「……みんな、無事で良かった」
「アンタが一番無事じゃないでしょうが!」
そうルフレに怒られた。
だがらなんでだよ?
「よかった〜。キット君が生きてて良かったよ〜」
カナは涙ボロボロと落として号泣してる。
いや俺は死なないし。
「キットの顔が半分潰れて丸焦げだから心配したのよ」
ミキが涙を指で拭いながら説明してくれた。
いや本当になんでそれで俺を心配する?
「キットー気付いてないの? キットの固有スキル『不死身』の説明を三人にはして無かったよね?」
あっ、確かに言ってないや。
レンドに言われてやっと気付いた。
そうだよな、普通のアンデッドの『不死』だと頭部を破壊されると死ぬ。
確かに死んだように見えるか。
「ごめん、ちゃんと言っておけば良かったな」
「本当にそうゆう大事なことは言いなさいよ!」
また怒鳴るルフレ。
こいつ本当に怒りっぽいな。
「ふぇぇぇぇぇ!」
カナは大声で泣いているし。
カナはカナで泣き虫だな。
「二人共落ち着きなってば。それにしても『不死身』かぁ、そんな凄い固有スキルが本当にあるんだねぇ」
ミキはルフレとカナを宥めながら変に納得してる。
……三人とも同い年な筈だがミキが一番大人っぽいな、性格もスタイルも。
「レンド、みんな居るって事は……」
「当然、みんな人間に勝ったんだよー。みんな凄いんだよー、オイラが駆けつけた時にはもう人間を倒し終わってたんだよー」
マジかて。
それは凄いな。
てっきりレンドが速攻でロヘロ倒して助けに行ったと思ったぞ。
三人とも俺が思ってたよりも強いんだな。
「あったりまえよ、アタシ達はエリート魔道士の卵よ!」
ルフレはツルペタな胸を張って誇らしげに言う。
「そいや人間達は全員死んでるのか?」
「あっちだよーキット」
レンドが指をさした先には紐にグルグル巻にされた人間達がいた。
全員生きてるのか。
デロールは丸焦げにしたのによく生きてたな。
「全員生きてるし、怪我はある程度はルフレが治したから大丈夫よ」
ミキが教えてくれた。
「みんな甘いのよ、人間なんか殺しちゃえばいいじゃん」
ルフレが物騒な事をいうが人間達は貴重な情報源だぞ?
「だ、ダメ〜! 殺すのは可哀想だよ~」
「ルフレー、無益な殺生はダメだよー」
カナとレンドに言われてムスッと黙り込むルフレ。
でも何だかんだ人間達を治療してくれたからコイツも本当は優しい奴なのかもな。
「ありがとうカナ、もう大丈夫だ」
カナの『回復呪文』で俺は完全に復活した。
「そう、ならアレ運んでねキット」
「アレ?」
ルフレが指す先には人間達がいる。
ひょっとしなくても俺が人間達を運ぶんか!?
「すまんねキット。私達は非力な女の子だからさ、レンドと二人で町まで運んでね」
ミキは手を合わせながらウインクして言う。
……ちょっと可愛いと思ってしまった。
が、結局俺達に押し付ける気なのはルフレと変わらんな。
「ご、ごめんね〜キット君。カナにも力があれば手伝えるんだけど。代わりに『攻撃強化呪文』かけるからね〜」
カナ、君は本当に良い娘だ。
君だけは純粋に俺を労ってくれる。
そしてさっさと先行きやがったルフレ、テメェはカナを見習えや。
「ハハハ、さて頑張って運ぼうねキットー」
レンド言われて俺はしぶしぶ行動する。
めんどくせー。
【ルークス】
「お父さん、お母さん!」
「「カナ!」」
カナは今、泣きながら両親と抱き合ってる。
……この光景を見ると苦労したけど頑張って良かった、心からそう思うよ。
「キットさん、レンドさん。生徒を助けて頂きありがとうございます」
リョウさんが俺達にお礼を言う。
「私からも礼を言わしてくれキット君。本当にありがとう。捕まえた人間達は我々兵士が責任持って檻に入れて監視するよ」
オークの兵士さんにもお礼を言われる。
ふと横を見るとレンドが照れて頭をかいてる。
……気持ちは分かるよレンド。
俺も照れ臭いからな。
「ねぇねぇリョウ先生。アタシ達にもお礼は? アタシ達も頑張ったんですよ」
「そうだよ先生。私達もキットに協力したんだから何かご褒美貰ってもいいよね?」
ルフレとミキがリョウさんに迫りながら言う。
「なるほど、確かにそうだな。では特別にこの問題集を明日までに全部終わらしたら、今回勝手に町の外に出た事は不問にしよう」
「「えーー!!」」
そらそうだな。
ルフレとミキは勝手に俺達の後を付けてきたんだからな。
寧ろこの程度で済んでよかったんじゃね?
「それと君達二人はあとで兵士署に来てね。友達を助ける為とはいえ法律を破ったんだからちゃんと罰は受けてもらうよ。まぁ事情が事情だし少しお説教するだけで済む筈だから安心して」
兵士さんにトドメ刺されて二人とも固まってるな。
まぁ何にしても、これにて一見落着。
「そういえばキットー。オイラ達の装備が又ボロボロになったけど、どうする?」
……落着しなかった、金ないのにどうしよ……




