第三十九話 油断大敵!
【ミキ視点】
うーん、作戦通り爺さんと一対一に持ち込めたけどこの後どうすっかな?
今ポーチに入ってる魔道具も攻撃用のはほとんど無いしなー。
あー、こんな事ならこの前ケーキを食べずにそのお金でアレとかアレを完成させとけば良かったわ!
「こりゃ化物! もっと年寄りは労らんかい!」
人間って初めて話したけど魔族とあんまり変わんないかも?
昔近所に住んでたケンタウロスの爺さんもあんな感じだったなぁ。
「労ったらなんかくれるの、爺さん?」
「そうじゃのぉ。ならコレをやるわい! 『下位爆発呪文』!」
そんなこったろうと思ったわ!
私は『ハートブレイクシールド(仮)』で爺さんの魔法を防ぐ。
……今回は防げたけど『ハートブレイクシールド』はあと何回持つかしら?
コレってルフレとカナを驚かす為だけに作ったから耐久力が不安だなぁ。
一応、ルフレの『炎弾呪文』なら数回は耐えられる計算で作ったけど。
「いつまで耐えられるかな? 『下位爆発呪文』! 『下位爆発呪文』 ! 『下位爆発呪文』!」
本当、いつまで持つか不安だわ。
だから守ってるだけじゃダメよね?
「『呪文砲』よ!」
私は『呪文砲』をポーチから出して引き金を引き、『炎弾呪文』を放つ!
……普通に外しちゃった、私。
まっずいなぁ、コレって一発しか魔法をチャージ出来ないんだよね。
ルフレにチャージしてもらった『炎弾呪文』も今使ったから再チャージしないと。
よし、この戦い終わったら最低三発は撃てるように改良案考えよ。
「なんじゃ、魔法を放つ道具じゃと!?」
おっ! ラッキー。
なんか爺さんが驚いて攻撃やめてるし。
……つっても私の不利には違いないけど。
『呪文砲』はこれ一つだけだしなぁ。
後はこの『ハートブレイクシールド』に仕込んだギミックが頼りかな?
コレも一発しか使えないから外したらガチで詰むわね。
「ええい、珍妙な道具を使う魔物め!」
「魔物ってなによ! 私はゾンビの魔族よ」
強がってるけど私は今、大大大ピンチ。
あー早く来てよルフレ、カナ。
「黙れ! 『下位閃光呪文』!」
やっば! 他所ごと考える隙に!?
「いったーっ!!」
反応が遅れて私の太ももを光線が貫いた。
あーもー、すんごい早い魔法ね。
素直に認めるわよ、あの爺さんは強いわ。
「そんなヒラヒラと足を出した服着てるからじゃ」
「んぁ!? この制服はお気に入りなのよ! ケチつけないでよ」
そりゃちょっとスカートを短くしすぎたかなって私も思うけど。
でもスパッツ履いてるからいいでしょ!
「ほう、ならその服装でコレを受けれるか? 『中位爆発呪文』!」
ヤッバ!?
私は慌て『ハートブレイクシールド』を構えようとした。
「いった!!」
太ももの傷が!?
その痛みで私はよろけた。
当然爺さんの魔法は直撃。
私は爆風に吹き飛ばされて宙を舞う。
「いたたたた……」
思いっきり地面に叩きつけし。
何とか無事だけどコリャ参ったわ。
校則違反だけど制服に対魔法処理しといて正解だった。
あとヘルメットで頭は無事だったし。
……ルフレとカナは大丈夫かしら?
あの二人の制服も私が改造してあるけど心配だよ。
「なんと、本当に受けよった!?」
「へへへ、このミキちゃん特製対魔法処理済みセーラー服を舐めんなってことよ!」
強がってみせたが、ぶっちゃけ限界よ。
立ち上がるのは無理だわコレ。
「じゃがそこまでじゃ。今トドメをさすからのぉ」
爺さんはゆっくり片方しか無い腕をこっちに向ける。
……勘違いしてるみたいだけど立ち上がる力は無いだけなんだからね!
「油断大敵ってね! 『ハートブレイクシールド』!」
私は最後の力を振り絞って『ハートブレイクシールド』のギミックを使う。
盾の中央が割れて無数のロープが飛び出しまるで蛇のように爺さんに絡みついた。
「な、なんじゃ! なんじゃコレは!?」
「……へへ、やったわ」
元々はこれでルフレ達を捕まえてセクハラする為のギミック。
まさか戦闘で使う事になるとわね。
人生って何が起こるか分からんわ。
「こ、こんなもの時間稼ぎにしかならんぞ!」
「時間稼ぎで充分よ。でしょ?」
「な、に……まさか!?」
爺さんが気付いたか、けど遅いわよ。
爺さんの後ろにはルフレとカナが既に居るんだから!
「ご苦労様ミキ、後は任せなさいよ」
「ふぇ〜、ミキちゃん。いま『回復呪文』するからね〜!」
カナが私に近づいて『回復呪文』をかけてくれる。
カナの泣いてる顔も可愛いぞコンヤロー!
「……残念、体が動いたら思いっきりカナにセクハラするのにな」
「……アンタね、まぁセクハラ発言出来る元気があるなら大丈夫ね」
「クソっ! ワシを誰だと思ってるか化物ども!」
あーあ、ルフレのコメカミがピクピクしてる。
こりゃ完全にブチ切れたわね。
「……アンタが何物かなんて知った事じゃないわよ。それよりよくもアタシの友達をボロボロにしてくれたわね!」
うわー、怖。
ルフレが物凄い形相になってるし。
「百回死んどけーーっっ!! 『炎弾呪文』ーー!!!」
ルフレのペンダントから放たれた特大の『炎弾呪文』は爺さんにモロ直撃した。
爺さんは回転しながら火達磨になって吹き飛んだ。
ひぇー、私が今まで見た中で最高威力だわコレ。
でも私の為に怒ってくれたと思うと嬉しいかな。
「よし、終ったわ!」
「うん、ルフレちゃんかっこよかったよ〜」
「それに比べて私はボロボロでかっこ悪いけどね」
まったく、セーラー服がボロボロで情けないなぁ。
よく見るとルフレのセーラー服の背中も破けてる。
白い裸が見えてセクシーだぞルフレ!
「何言ってるのよ。ミキが頑張って時間稼ぎしてくれたらから勝てたんじゃん!」
「そうだよ〜、ミキちゃんもかっこよかったよ〜」
「そう? そっか、アタシもカッコイイか!」
まっ、何にしも勝てたし良しとしましょう。
よし、決めたわ。
戦勝祝に町に帰ったら三人でケーキ食べに行こう。
……いや違った、キットとレンドも誘って五人で行こう!
うん、お祝いはみんなでしたほうが楽しいからね!
勿論、キット達の奢りだけどね。




