第三十八話 勇気!
【ルフレ視点】
やってやるわよ。
アタシはエリート、人間如きに負けないんだから!
「ミキ、カナ。キットに貰った翻訳クリスタルを使うわよ!」
「オーケー、ルフレ」
「ル、ルフレちゃん、貰ったんじゃなくて借りたんだよ〜」
カナは相変わらずね。
こんな便利なもの黙って貰っておけばいいのよ。
まっ、それがカナの良いところなんだけど。
アタシ達は翻訳クリスタルに魔力を込める。
不思議な感じね、耳に膜があってその膜を通して音を聞いてるって感じ。
「いくわよ! 『雷呪文』!」
アタシの魔法が人間を襲う。
やったわ、上手いこと魔道士達を他の二人と分断できた。
さっすがアタシ!
キットとレンドは素早く剣士と戦士に向かって行った。
……アンタ達、ムチャしないでよ。
「な、雷じゃと!?」
「また魔物!? もう勘弁してよー!」
確かキットがゾマとルポンって名前って言ってたわね、こいつら。
「ミキ、ごめんだけど……」
「分かってるって。私が爺さんの相手すればいいんでしょ?」
ミキごめんね。
一人でゾマの相手を任すことになって。
でも確実に人間を倒すには一人ずつ倒してくのが確実。
アタシとカナでルポンを倒すまで頑張って。
悔しいけど、アタシ達二人とも体育の成績はかなり悪い。
だから運動神経が良いミキの方がまだ一人で戦える。
それにミキはゾンビだから頭部以外のダメージなら修復出来るし。
本当ごめんミキ。
ミキの負担を減らす為にルポンを早く倒すからね。
「まっかせなさいって! その為にマイヘルメット出したんだし」
……いつも思うけどミキのセンスってどうしてこんなに変なのかしら。
でも今回だけはミキが正解か。
ヘルメットで『不死』の弱点の頭部がガードされてるからね。
「カナ、ミキに強化呪文をお願い」
「分かった〜、『防御強化呪文』!」
本当カナの強化呪文は凄いわ。
アタシも強化呪文は使えるけどカナには負けるな。
この子って強化呪文と回復呪文は学年ぶっちぎりの腕前だからね。
……だが何故か攻撃呪文は学年ぶっちぎりのビリだけど。
「ありがとうカナ。さて本日の魔道具は、ジャジャーン!」
「……アンタ、それホントに使う気?」
「ふぇ〜」
ミキがウエストポーチ型魔法袋からだしたのはハート型の大きな盾。
「ミキちゃん特製の『ハートブレイクシールド(仮)』よ!」
……ミキのセンスを理解するのはアタシは無理だわ。
「んじゃ、いってくるね!」
そう言いながらミキは人間達に向かって走り出す。
……ミキ、信じてるからね。
「ゾマ、逃げようよー」
「うっさいルポン! あいつ等全員捕まえて大儲けするんじゃ! 『下位氷呪文』!」
ゾマが氷の塊をミキに向かって放つ。
人間の魔法って貧弱ね、アタシの『氷結呪文』の足元にも及ばないじゃない。
「うりゃー!」
ミキは盾を構えたまま、魔法も気にせずゾマに体当たりする。
「そっちの女を頼んだからねルフレ、カナ!」
「分かったわ! カナいくわよ」
「ふぇ! よ、よし頑張る」
カナ、まだ震えてるわね。
でも頑張んなさいよ。
アンタは本当は強いってことアタシ達は知ってるんだからね。
アタシ達は空に飛び上がりルポンの頭上に位置取る。
「もー、嫌って言ってるのに! 『下位風呪文』!」
「カナ避けなさい!」
「ふぇ〜! なんかきた〜!」
アタシ達は風の刃を避ける。
カナ、ビビってちゃダメよ!
「お返しよ! 『炎弾呪文』!」
アタシの得意魔法がルポンを襲う。
……でも避けられたわね。
だけどこの魔法は威力はソコソコだけど魔力の消費は低いのよ?
だから、
「 『炎弾呪文』! 『炎弾呪文』! 『炎弾呪文』! 」
連発しても魔力は余り減らないのよ!
「ひぇー! ちょっとマジー!?」
もー、すばしっこいわね。
ちっとも当たらないじゃない。
「ルフレちゃん、ミキちゃんが!?」
「カナ何よ…………ミキ!」
まずい! ゾマの魔法がミキの太ももを!
急ぐしかないか、早くルポンを倒……
「なんかチャンス来たみたい!? 『中位風呪文』!」
しまった!
せめてカナだけは!
アタシは咄嗟にカナを庇う!
「キャーッ!」
アタシの背中が切り裂かれた!
アタシ達はそのまま落ちていき地面に叩きつけられた。
「……カナ、大丈夫?」
「ルフレちゃん、ごめん、ごめんね」
カナは泣きながら謝る。
良かった無事みたいね。
にしても、かっこ悪いわねアタシ。
キットにあんなに大見得切ったのにこのザマだもんね、
「ルフレちゃん、『回復呪文』!」
やっぱカナの『回復呪文』は効くわね。
これだけバッサリ斬られたアタシの背中がもう痛みが引いていく。
「もー、魔力残り少ないんだから早く死んでよね」
ルポンが杖に魔力を!
「……ルフレちゃん、後は自分で『回復呪文』してね」
「カナ?」
そう言うとカナがルポンに向かって飛んでゆく。
カナ、アンタ何を!?
「カナの、カナのお友達を傷つけるな〜!!」
カナが泣きながらそれでも勇敢にルポンに向かってく。
……カナがアタシの為に。
やっぱアンタは強いわよ。
いけない、見惚れてる場合じゃなかったわ。
アタシは自分自身に『回復呪文』をかける。
「!! 『下位風呪文』!」
「ふぇ〜!! 『幻影呪文』!」
上手い! あの魔法は自分自身の幻を沢山作り相手を撹乱するわ。
ルポンの魔法は幻影の一つにあたって消えた。
「いっ!? どれ、どれが本物なのよ!? えーい、『下位風呪文』! 『下位風呪文』 ! 『下位風呪文』!」
あんなに魔力浪費して、魔道士が魔力を無駄に使ったらダメよ?
「 『下位風呪文』………げっ!?、魔力が」
ほら言わんこっちゃない。
カナのおかげでアタシの傷はほぼ完治したわ。
まったく、カナにばかり良いカッコさせてられるかっての。
アタシはエリート魔道士、ルフレなんだからね!
「カナ、ありがとう。後はアタシに任せて!」
「ルフレちゃん! うん、お願い!」
さて、さっきのお返しよ!
「百回死んどけ人間! 『炎弾呪文』!!」
「い、いやー!!」
今度こそアタシの魔法が直撃した!
ルポンはそのまま倒れて動かなくなる。
「よっしゃ! アタシ達の勝ちよ!」
「ふぇ〜、怖かったよ〜」
カナったらまた泣いてるわ。
でもありがとう。
アンタの勇気でアタシは助かったわ。
「カナ、泣いてる場合じゃないわよ。ミキを助けに行くんだからね」
「ふぇ!? そ、そうだった。ミキちゃ〜ん!」
ミキ、カナは頑張ったよ。
だからアンタもアタシ達が行くまで頑張んなさいよ!




