第三十七話 五人のヤル気は充分だ!
【人間達がいた場所】
俺達は人間達と戦った場所に戻ってきた。
もっとも人間達は既に移動した後だが。
「やっぱりもう居ないか」
「そうだねー、手分けして探す?」
レンドはいつもの温厚なレンドに戻ってる。
あの後レンドは俺を殴ったことを、俺は一人で戦おうとしたことをお互いに謝った。
レンドには大きな借りが出来たな。
レンド本人は気にしてないだろうけど、いつかレンドに何かあった時には今度は俺が助けないとな。
「ふふふ、早速アタシ達の出番みたいね」
「なんかアイディアがあるのか、チビガキ?」
「チビガキ言うなって言ってるでしょ! アホ骸骨!」
「お前こそ骸骨言うな! 俺はスケルトンだ!」
俺とチビガキが罵りあってるとレンドとミキさんが俺達の間に割って入ってきた。
「やめなよーキット」
「ルフレもそこまで。今から人間を探すんでしょ?」
「「だってコイツが!」」
俺とチビガキの声が重なる。
「テメェ、俺とハモってるんじゃねぇ!」
「アンタがアタシに被せたんでしょうか!」
「ふ、ふぇ〜、仲良くしようよ、二人とも〜」
また言い合いになった俺達を今度はカナさんが止める。
涙を目に浮かべて上目遣いとか反則だろ。
チビガキも勢いを削がれたからバツの悪そうな表情をしてるし。
「まったくー。お互いに呼び方を直しなよーキット」
「そうね、ルフレもそうしなさい。ちゃんと謝罪しなよ?」
俺とチビガキはお互いに顔を合わせる。
仕方ないか、ケンカしてる場合じゃないしな。
「……わかったよレンド、ミキさん。チビガキって言って悪かったな、ルフレ」
「……仕方ないから許すわよ、アタシも悪かったキット。これでいいんでしょ?」
チビガキ……いやルフレは顔を赤くしてそっぽ向いた。
コイツ、素直にしてたら結構可愛いじゃん。
「あとキットさん、レンドさん、私も呼び捨てで呼んで下さい。なんか違和感あって気持ち悪いです。あと敬語もやめていいです?」
「カ、カナも、呼び捨て、でいいでしす。キットさん」
今度はミキさんとカナさんから。
……正直俺も年下の子に「さん」付けはキツかったから呼び方を変えるのはありがたいかな。
「ならこれからはミキ、カナって呼ぶよ。その代わりに俺も呼び捨てしてね。敬語は俺もやめる」
「じゃあーオイラもルフレ、ミキ、カナって呼ぶよー」
「オーケー、キットとレンドって呼ぶわ。あースッキリした。敬語って固っ苦しくて苦手だから疲れるのよね」
ミキは本当にサッパリしたって顔してるな。
「カ、カナは〜、あ、あの〜、人を呼び捨てで呼ぶのは苦手で、キットくん、レンドくんって呼んで良いでいいかな?」
モジモジしながら上目遣いでカナが言う。
可愛いぃ! 何この子、めっちゃ可愛いんですけど!
「カナって初心よねぇ、うりゃうりゃ」
「ミ、ミキちゃん、胸を触らないで〜!」
ミキがカナにセクハラする。
分かるぞミキ、カナはつい苛めたくなるタイプだよな!
「ホラホラ、ミキもカナもそこまで! キットとレンド、アンタ達も見てないで止めなさいよ!」
「悪い悪い。で、どうやって人間達を探すんだ?」
「まずはカナ、アンタの出番よ」
「ふぇ!? よ、よし、カナ頑張るよ〜」
そう言うとカナは地面に生えた花に近づく。
何をする気だ?
カナは目を瞑り額を花弁に当てる。
「……お花さん、カナに人間がどこに行ったか教えて」
小さな声でつぶやくカナ。
「ねぇミキー、カナは何やってるのー?」
「レンド、静かに。あれはフェアリーの固有スキル『心話』よ。カナは今、あの花と会話してるのよ」
レンドとミキは小声でそんなことを話してた。
マジか!?
フェアリーってそんな凄い固有スキル持ってたんか。
「……うん、ありがとうお花さん。みんな〜、お花さんがね〜、あっちに行ったって~」
アバウトすぎるぞ!
あっちってどっちだよ!
思わずコケそうになったぞ!
「キット落ち着きなさいよ。カナの『心話』は植物の感情やイメージを読み取るけど具体的な意思疎通が出来ないのよ。だからこんな感じになるのよ」
ルフレが説明してくれた。
所詮、植物は植物ってことか。
「でも、大体の方向が分かれば充分よ!」
そう言うとルフレは翼を羽ばたかせ勢い良く飛び上がる。
ルフレはある程度の高さまで飛ぶと空中で止まった。
「キットくん、あれね〜ルフレちゃんの固有スキル『鳥目』を使ってるんだよ〜。あれでかなり遠くまで視えるんたよ〜」
「なるほどな」
カナの説明聞いてるうちにルフレは降りてきた。
「みんな、人間達を見つけたわ」
「よっしゃ、ルフレもやるわね。ご褒美にミキちゃんのスペシャル豊胸マッサージして、あ、げ、る」
「断固拒否するわ!」
「ルフレー、カナー、ご苦労様だよー」
これで人間達を追える。
今度は、今度こそは倒すんだ。
この五人の力で!
【一時間後】
見つけた!
人間達は警戒しながら休憩してる。
「さて、どうやって戦う?」
俺はみんなに質問する。
みんなで戦うんだから意見を聞いときたいからな。
「キット、あの魔道士の爺さんと女はアタシ達三人に任せてくれない?」
ルフレが応える。
「ルフレ、大丈夫なのか?」
「平気よ! アタシ達はエリート魔道士の卵、これ位チョチョイのちょいよ!」
平たい胸を突き出し言い切るルフレ。
少し頼もしく感じるな。
「ふぇ〜、怖いよ。で、でも頑張るから、キットくん頑張るからね」
少し不安そうにしながもカナもヤル気を出してる。
……カナって意外と強いんだな。
自分を誘拐した相手に戦いを挑むってのにちゃんと戦う意志を固めてる。
「二人ともヤル気だねぇ! こりゃあ私も頑張らないわけにイカンでしょ!」
ミキはそう言った後に腰のポーチから黄色のヘルメットを出して被る。
……どうでも良いがセーラー服にヘルメットってダサいぞ。
あと、あのポーチは魔法袋なのか?
「ならオイラは戦士と戦うよ。今度は絶対勝つからねー」
レンドは笑いながらも目に闘志を宿らしてる。
レンドもヤル気充分か。
俺もヤル気満々だ!
「俺の相手は剣士の男か、上等だ! みんな危なくなったら無理するな、逃げろよ」
「ハン、誰に言ってるのよキット!」
「はい。でもカナも、精一杯頑張るよ〜キットくん!」
「心配しなさんなってキット。このミキちゃんにまっかせなさい!」
「キットこそ無理しないでよー」
ルフレ、カナ、ミキ、レンド。
……みんな無事でいてくれよ。
「みんな、いくぞ!!」
この五人で今度こそ人間を倒すぞ!
オマケ
『フェアリー』
体長三十センチに満たない魔族。背中に生えた羽で自由に宙を飛べる。
魔力が他の魔族に比べて高く、身体能力は低め。
固有スキル『心話』を持ち植物や動物、人によっては魔獣と心を通わす。
カナは草花とのみだが、その植物が感じた感情、イメージを読み取り、自分の感情やイメージを植物に伝えることが出来る。




