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第三十六話 仲間。

「なんとか逃げ切れたな。苦戦したけど」


「そうだねー、キット。人間って結構強いんだね」


 俺達は人間達から逃げ切り岩陰で休憩してる。

 で、俺とレンドは人間から受けたダメージの復活待ちしながら駄弁ってる。


 チビガキ達も女同士で集まって何か喋ってるな。


「あ、あの……」


 と、思ってたらカナさんが話かけてきた。


「助けてくれてありがとうございます!」


 茶色い瞳をウルウルさせながらお礼を言うカナさんは可愛らしく微笑ましいな。


「本当に無事で良かった」


 心底そう思う。

 本当に、本当に無事で良かった。


「はぅ〜、あ、あの〜。キットさんは魔界騎士ですよね?」


「えぇ。まだちゃんと自己紹介してなかったよね? 魔界騎士のキットです。こっちは仲間のレンド」


「カナちゃん、よろしくね〜」


 ついでにカナさんに俺達の自己紹介。


 カナさんはモジモジしながら下を向いてる。

 チビガキと違って引っ込み思案なのかな? チビガキはカナさんを見習え。


「ふぇ〜、じゃなかった。えっ、えっとフェアリーのカナです。えっ、えっと……」


「カナー、何顔を赤くしてるのかな?」


 モジモジしてるカナさんの後からミキさんが声をかける。


「ミ、ミキちゃん!?、カナは、か、顔を、あ、赤くして無いよ〜」


「ほー? 私にウソを言うのか? いい度胸じゃん。そんなウソつきにはこうだ!」


 そう言うとミキさんはカナさんを両手で掴む。

 人形サイズのカナさんでは逃げようがないか。


 そしてそのままカナさんの胸の位置にある自分の指を動かし始めた。


「ミキちゃ〜ん、や、やめて〜、それ、やめて〜」


「うりゃうりゃ、ここがええんか? ここがええんか?」


 グッジョブ! 心の中でミキさんに俺は親指を立てる。


 悶てるカナさんが何ともエロ可愛い。


 横でレンドも……いや、レンドはミキさんの胸を見てた。

 カナさんは胸は小さいからレンド的には無しなのか。

 本当、おっぱいには妥協がないな。


「ミキ! カナを離しなさい! カナもちゃんと嫌なら嫌なって言いなさいよ!」


 チビガキがミキさんを止め、ミキさんはカナさんを離した。


「ほー、では私はルフレの胸を揉めばええんか? そしたらルフレの胸が少し膨らむかもよ?」


「しばくぞコラ!」


 ……まあ、これがこの三人のコミュニケーションの取り方なんだろう。

 何だかんだ仲の良い友達同士じゃん。


 さて、俺とレンドの傷も復活したな。


「レンド、悪いけどカナさん達を町まで連れて行ってくれないか?」


「ん? それはいいけどキットはどうするの?」


「……俺は人間達を倒しにいく」


 まだ、人間達は遠くには移動してない筈。

 なら今、仕留めないと。

 絶対、人間を逃さいからな。


「ちょっとアホ骸骨! アンタ一人で戦う気?」


 チビガキ、何を当たり前なことを言ってる。


「そうだ。ただの学生を巻き込んでしまったのは俺の落ち度。レンドはそもそも魔界騎士じゃない。だから俺が、魔界騎士の俺が一人で人間を倒すんだ!」


 魔界騎士は俺なんだ。

 俺が人間を倒すんだ。

 俺が魔界を守るんだ。


「なっ! アンタ、アタシ達に助けられた分際で……」


「ルフレちゃん、少し黙っててくれる?」


 ギャーギャー喚くチビガキをレンドが止める。

 レンドがいつもと雰囲気が違う?

 チビガキもそれを感じたか黙って引き下がった。

 

 レンドは真剣な表情で俺に言う。


「……ねぇ、キット? オイラも戦いに参加させない気なの?」


「……そうだよ、レンドは魔界騎士じゃない。だからこれ以上危険に晒される必要は無いんだ」


「……それはオイラの力を信じてないって事?」


「違う! ただ魔界騎士じゃないレンドが人間と戦う必要が無いってだけだ!」


 ……!!


 ……痛い。

 俺は、レンドに顔を殴られたのか?

 顎の骨にヒビが入ったのか酷く痛む。

 普段温厚な……レンドに……殴られた。


「それが信じてないってことじゃないか!」


 レンドが怒鳴る。

 あの優しいレンドが怒鳴ってる。

 俺は呆然とただレンドを見てるしか出来なかった。


「キット、オイラ達は仲間だろ? 友達だろ? なのに何で!?」


 レンドが涙を浮かべながら俺に聞いてくる。


「……仲間だから、友達だから危険な目に合わしたくないんだ。レンドは『不死身』じゃない。もしも……」


「違うだろキット!」


 レンドが俺の言葉を遮る。


「本当に危険な時、困った時に助け合うのが仲間だろう! ただ一緒にいるだけなら友達じゃないだろう! ……キット、前に言ったよね? オイラはキットを助けたい、キットと一緒に魔界のみんなを守りたいって。なのに、なのに! 何でオイラに一緒に戦おうって言ってくれないんだ!

 仲間なら、友達なら、オイラをもっと頼ってよ!!!」


 レンド……友達だから、大好きな友達だから頼れないんだよ。

 レンドがラピスさんみたいに俺の前で死んで欲しくないからなんだよ。


 大切な友達、だから。


「キット、ちゃんと話してよ。オイラにキットが隠してることを。オイラ気づいてたんだよ? キットが隠し事をしてるって」


 かなわないなレンドには。


 チビガキ達は心配そうに俺達を見てる。


 ……話さない、訳にはいかない、か。


「わかった、レンド。ちゃんと話すよ」


 ラピスさんとの話を。

 俺の、馬鹿だった俺の話を。


 俺はゆっくりレンド達にラピスさんの話をした。

 四人とも黙って俺の話を聞いてくれた。


「……話は以上だよ」


 話が終わるとミキさんとカナさんは泣いていた。

 レンドはただ目を閉じて黙ってる。

 チビガキは……


「アンタって本当に馬鹿ね」


 俺にそう言う。


「そうだな、俺が馬鹿だったからラピスさんは死んだんだ」


 俺がしっかりしてれば、俺が弱かったから。


「それが馬鹿だって言ってるのよ! いい、ラピスって女は自分が後悔しない為にアンタを助けに来たんでしょ? だったら自己責任じゃない!」


 なっ! チビガキ自己責任だと!

 ラピスさんが死んだのは俺に責任がある、ラピスさん自身に責任なんか……


「……私もルフレと同意見かな、自己責任は言い過ぎだけど」


 ミキさんまで。


「危険なのはそのラピスって人も分かってたはず。ラピスって人、危険を承知の上でキットさんを助けようとしたんだと思うよ」


 だが、それでも。


「……良く分からないけど、ラピスさんって人、キットさんに悲しんで欲しくない、と思う」


 ……カナさん。


「だって、助けようとしたキットさん、が悲しんでたら、ラピスさんも悲しいと思うの」


 そうな……のか?


「オイラはラピスって人の気持ちがわかるよ」


 ……レンド。


「キット、仮にオイラがキットを助けるために死んでも『後悔しない』よ」


 !!!


「友達がピンチの時に助けにいかず『後悔する』ぐらいなら命の危険があっても『後悔しない』為に助けに行くよ。ラピスって人も同じ気持ちだった筈だよ」


 あっ、あっ。


「だから、オイラと一緒に戦ってよキット」


 ……レンド。


「はん、このアタシも力を貸して上げるわよ! 感謝しなさいアホ骸骨」


 ……チビガキ。


「カナも、カナもキットさんを助けたいです!」


 ……カナさん。


「あの泣き虫カナがこんなこと言うとはねぇ。キットさん、私も勿論協力するからね。仲間外れにしないでよ?」


 ……ミキさん。


「みんな、ちゃんと覚悟を決めてそれでもキットを助けたいんだよ」


 レンドのその言葉で俺は我慢しきれなくなる。


「う、う、ありが……とう。本当に、ありがとう」


 俺は目から大量の涙を流しながらみんなに、大切な仲間達に礼を言う。


 本当に、本当にありがとう。

 俺の心にあった傷がやっと癒えた気がする。


 ……!


 気のせいか、一瞬ラピスさんが見えた気がした。

 そのラピスの顔が笑ってた気がした。


 すいませんラピスさん。

 心配お掛けしました。

 俺はもう大丈夫です。


 俺は、俺には頼りになる仲間達が出来ました。

 だからもう大丈夫です。


 ラピスさん、俺はもう後悔しません。


 ラピスさん、ありがとうございます。


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