第三十二話 自己紹介からの情報収集。
【メイジザード学園、応接室】
「えーっと、二人は知り合いなの?」
そうレンドは俺に聞いてきた。
「……ちょっと知ってるだけだよ」
俺はぶっきらぼうに答える。
なにせ俺の気分は最低最悪だからな。
「まあまあ、とりあえず自己紹介でもしましょう。僕の事はみんな知ってるから僕の紹介はいらないか。ではミキさんから」
「はい、先生。私はゾンビのミキ。魔道具科の一年四組。趣味はショッピング、音楽鑑賞、食べ歩き。好きな食べ物はクレープ、ケーキ、アップルパイ。あと好きなアイドルはMrバンパイア、好きな科目は……」
「ストップストップ、ミキさんそこまででいいよ」
リョウが止めてくれて助かった。
あのままだとずっと喋り続けそうだったし。
ミキさんって喋りだしたら止まらないタイプなんだな。
セイラー服のスカートからスパッツが見えてるから活発な子なのか?
……おい、レンド。
横で必死にさっきミキさんが言ったことをメモるな。
ミキが赤い目を死んだ魚みたいにしてレンドを見てるぞ。
「はーいミキちゃん、魔道具科ってなんですかー?」
レンドが唐突に質問する。
レンドよ、ミキさんに引かれてるの分かってないのか?
あと、ミキさんの胸見すぎ。
てかミキさんがこの部屋に入ってから胸しか見てないだろ。
「えっ、えっと魔道具科はつまり魔道具、魔法効果がある道具を開発したり改良する為の知識を勉強するクラスで、す。ほっ、ほらゾンビって魔法は使えないけど魔道具なら使えるから、ゾンビの私でも魔道士になれるかなって思って……」
「分かるよーミキちゃん、オイラもゾンビだからね。今度オイラに詳しく教えてよー」
レンドよ、明らかに逆効果だぞ。
ミキさんがレンドの好みなのは分かるが少しは自重しろよ。
ミキさん怯えてるじゃん。
「次はオイラが自己紹介するよー。オイラはミノタウロスゾンビのレンドだよー。キットの仲間でモンクだよー。よろしくねー」
だからレンド、ミキさんの胸をガン見しながら自己紹介するなって。
ミキさんだけでなくチビガキやリョウさんまで呆れた目でこっち見てるぞ。
「はぁ、次はアタシがするわ」
次はムカつくチビガキか。
つか本当にコイツ十六才かよ。
見えねぇ。
「いい、よく聞きなさい。アタシはハーピーのルフレ。総合魔道科一年一組。成績は学年トップ、家柄も超エリート魔道士の家系よ。将来は魔界帝国の歴史に名を残す大魔道士になるエリート中のエリート、それがア・タ・シ。どお、恐れ入ったかしら?」
チビガキめ、真っ平らな胸を張ってドヤ顔しやがって。
……ムカつく。
「……最後は俺か」
チビガキめ、吠えづらかきやがれ。
「俺は魔王の息子でスケルトンのキット。魔界騎士だ」
「ほぇー魔王様の」
「ほぉ、これはこれは」
「なっ! ア、アンタが魔王様の!?」
上か順にミキさん、リョウさん、そしてチビガキのリアクションだ。
ミキさんとリョウさんは感心してる。
そしてチビガキは口開けたまま固まってるな。
ざまあみろ。
「さて、自己紹介も終わったし本題に入りますか」
「リョウさん、まずは行方不明の子について教えて貰っていいですか?」
まずはそっから聞かないとな。
「そうですね、では。行方不明になったのはフェアリーのカナさん。ルフレさんと同じ総合魔道科の生徒です。行方不明になった日は、ここに居るルフレさんとミキさんと待ち合わせしてたそうです」
「あの日、三人で買い物する約束してたんです。私とルフレは寮生だから一緒に寮から出たんですけど、カナはこの町の実家から通学してるので町の広場で会おうって」
リョウさんの説明にミキさんが補足してくれた。
なるぼとな、カナさんだけ別行動だったから誘拐されたのか。
「……カナはよく町の外に出てたわ、趣味の花の採集の為に。だから兵士たちはカナが勝手に外に出て魔獣に襲われたんだろって」
今度はチビガキが話しだした。
それは俺も昨日聞いたな。
「でもその日はアタシ達と約束してたんだよカナは! そんな日に町の外に出るわけないじゃん!」
チビガキは今にも泣きそうになりながら訴える。
……コイツ性格は最悪だけど友達思いなんだな。
「レンド、どう思う?」
「んー、家から待ち合わせ場所までの何処かで人間に誘拐されたって事になるんだよねー、多分」
レンドは腕を組んで唸りながらそう答えた。
……流石に今はレンドも真面目にやってるな、偶にミキさんをチラチラ見てるけど。
「人間ですか?」
ミキさんが首を傾けながら俺達に聞いてきた。
そいやチビガキとミキさんは知らなかったな。
「最近ねー、この町の周辺に人間の目撃されたって話があるんよー」
「俺達の任務は人間退治です。この町に寄ったらカナさんの話を聞いて、それで学園にお話を伺いに来ました。おそらくだが人間がカナさんを誘拐したんだろうと俺達は考えてます」
ミキさんはイマイチ分からなったのか首を傾けたままだ。
チビガキは……
「ぬァンですってー! なら、カナは人間に捕まってるの!?」
「だー、うるせぇチビガキ! そんな大声出さなくても聞こえとるわ!」
マジで煩いぞ、鼓膜がやぶれるかと思ったわ。
スケルトンだから俺に鼓膜無いが。
「まだ確定ではないんだよー、ルフレちゃん。でも可能性は高いと思うんだよ」
チビガキはリョウさんとミキさんに宥められて少し落ち着いたか。
それから俺達はカナさんの事やこの町の事を幾つか聞いた。
だが余り有益な情報は無いな。
精々カナさんは攻撃魔法が苦手で回復魔法が得意ってくらいか。
「リョウさん、情報ありがとうございます。レンド行こうか」
「そうだねーキット。後は直接探すしか無いからね。じゃあミキちゃん、またねー」
さて、行くか。
「待ちなさいよ」
ん? 何だチビガキ。
いきなり呼び止めるなよ。
「アンタ達、アタシも連れてきなさいよ」
「「ハァ?」」
俺とレンドは声を揃え聞き返した。
何言ってるんだチビガキ?
「カナを探すのをこのアタシが手伝ってあげるって言ってるのよ。まぁアタシはこの学園の優等生だし、実力もあるからアタシが手伝えば人間なんてチョチョイの……」
「ダメに決まってるだろ!!!」
「キッ、キット。キットが何か怖いよー」
ダメだ。
絶対にダメだ。
そんなのは絶対ダメだ!
「これは遊びじゃねぇ。ただの学生でしかないガキを連れていけるか!」
「なっ! アタシはエリートよ! アンタみたいなアホ……」
「人間退治は魔界騎士である俺の任務だ!! 素人に手伝ってもらう必要はねぇ!!!」
俺は大声で叫んだ。
チビガキは黙り込んでる。
リョウさんとカナさんは驚いて目をパチパチさせてる。
よく見ると部屋の外から他の学生も覗いてるな。
「……レンド行くよ」
「キット、待ってよー」
俺達は驚愕してるチビガキ達を置いて応接室を出た。
部屋の外にいた学生達は俺が扉を開けると散っていった。
……俺はもう二度ラピスさんの時みたいな失敗はしない。
俺は二度と後悔することはしないからな。
オマケ
メイジザード学園には総合魔道科、魔道具科、魔法科の三つがあります。
総合魔道科は魔法そのものを主に教えます。
魔道具科は魔道具の改良開発を主に教えます。
魔法科は魔法の歴史と新しい魔法を開発する為の勉強を主にします。
なお、学年が進むと更にクラスは分岐しそれぞれ専門的な勉強をします。




