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第三十話 新たな事件を見つけたら。

【ルークス兵士署】


「キット君、君は魔界騎士なんだから軽率な行動は慎まないと」


「はい、スンマセン……」


 俺は今、チビガキのせいでオークの兵士さんにお説教されてる。

 事情を説明して今回は厳重注意で済んだのは助かった。

 が、身分証した為に俺が魔界騎士だとバレてお説教がさらに長引いたが。


 あのチビガキめ、絶対許さんからな。


「次からは気をつけてねキット君」


「はい、キモに命じときます」


 長いお説教がやっと終った。


「……それで話は変わるのだが」


 ん? なんだ?


 兵士さんはゆっくり息を吐いてから話し出した。


「君の任務は人間を捕まえる……で、間違いないよね?」


「はい、そうですが?」


 裏切り者の事は言えないので、俺は表向きは人間退治が任務ってことになってる。

 当然、このオークの兵士さんはその事を知らない。


「実は先日、メイジザード学園の生徒が一人行方不明になってね」


 行方不明か、気の毒に。

 だが普通の行方不明事件なら俺にいう必要はないよな。


「調べてる内に、その子は前々から町の外に勝手に出て花や種子を収集するのが趣味だった事が分かった」


 それなら自業自得ってことになるな。

 何せ町の外に勝手に出るのは魔界帝国の法では違法行為だからな。


「今回行方不明になったのも勝手に町の外に出て魔獣に襲われたんだろうと、上の連中は判断した。当然捜査は打ち切り。この事件は事故として処理された」


 だが、本当にそれだけなら俺に言う必要が無い。


「……兵士さんは事故じゃないと思ってると?」


「……そう。その日、行方不明になった子は友達と待ち合わせしてたそうだ。その友達が証言してる。友達が言うには、行方不明の子は待ち合わせのある日は外には行かない、と」


「だが、それだけでは外に出てない理由にならない」


 所詮、学生の言うことだと判断されたんだな。


「上の連中は今のキット君と同じ事言ったよ。行方不明の子は『フェアリー』、飛行能力もあった。フェアリーは身長三十センチにも満たない魔族だから誰にも見られず外に出れるだろうってな」


「……だが兵士さんは違うと考えてると?」


 すると兵士さんはゆっくりでも、静かな怒りを言葉にふくませながら続きを話す。


「……そうだよ、行方不明事件があった日に町の外に人間を見た者が複数居る。魔獣狩りしてた冒険者と見回りしてた兵士の両方が見てるから、ほぼ間違いないだろう」


 だんだん兵士さんの言いたい事が分かってきた。


「その人間が誘拐したと考えてるんですね?」


「……君は頭が回るね。だが人間がやった証拠が無いってだけで上の連中は打ち切りを決定したよ。私は兵士、気に入らない命令でも上の命令は聞かなければならない。だから一度打ち切られた事件を勝手には捜査出来ない。悔しい限りだよ」


 兵士さんは自分の唇を軽く噛んでる……本当に悔しそうだ。


「だが魔界騎士の俺は違う。人間退治が任務だから自由に捜査出来ます。当然人間が目撃されたなら、この事件も捜査出来る」


 魔界騎士は魔王と魔界議会の直属扱い。

 当然、兵士のお偉いさんの命令も関係ないからな。


「だからキット君に頼みたい、行方不明の子を助けてはくれないか?」


 元々俺は人間の事を聞くために兵士署に来るつもりだった。

 そして、魔界騎士キットの任務は人間退治。

 なら断る理由は無いな。


「勿論です。俺は魔界騎士、悪い人間と戦い魔族を助けるのが仕事です」


「ありがとうキット君。心から感謝するよ」


 ……俺は二度とラピスさんみたいな不幸を作らせない。

 人間よ、覚悟しとけ。


【商店街、武具屋】


 もう夕方だ、青い太陽が沈みかけてる。

 この時間なら防具の種類も終わってるだろう。

 俺は武具屋の扉をゆっくり開ける。


「遅いよーキットー、待ってたんだよー」


 レンドは先に店で待ってた。

 既に新しい青い道着に着替えてる。


「悪いレンド、ちょっと時間掛かった。学園の方はどうだった?」


「それがー、今日学園は休校日で学生の女の子は居なかったよー。休日出勤の先生がいるだけだった」


 ザマー!……じゃなかった、そっちじゃなくて人間の情報は!?


「人間の事を聞きに行ったんだろ、レンドは!」


「そっちはねー、情報無し。ただ先日、生徒が一人行方不明になったって言ったよー」


 それは俺の情報と一致するな。

 とりあえずは、


「レンド、防具受け取ったら俺の方の情報を話すよ」


 とりあえず防具一式受け取るのが先だ。


【十分後】


 俺は防具を装備した。

 修理した鎧には何も不具合は無いみたい。

 新しい盾にも問題ないな。

 鎧あった傷や凹みは綺麗に無くなってる。


「……凄い、修理したと思えないよ。まるで新品みたい」


「満足して貰えました、お客さん?」


「はい、本当凄いですね。あんなにボロボロだったのに綺麗に直ってます」


 本当、直した痕跡が分からないぐらい綺麗に直ってる。


「それは良かった、また何かあったら当店をご利用お願いします」


「こちらこそ、ありがとうございました」


「じゃあキット行こうっかー」


【宿屋】


 宿屋に着くまでに、お互いの情報を確認した。

 レンドの方は行方不明の子の事以外に特に情報無し。


「じゃあ、学園の先生がいってた行方不明の原因が人間かもしれないのー?」


「多分だけどな、だから明日もう一度学園に話を聞きに行こうと思うんだ」


 行方不明になった子の友達から、直接話を聞きたいからな。


「分かったよー、なら明日はメイジザード学園に行こー」


 よし、今後の予定は決まった。

 さて明日に備えて今日は寝るぞ!


 ……だが何か嫌な予感がする、気のせいだと良いんだが。


 オマケ


 『ルークス』

 

 メイジザード学園を中心に作られた学園都市。

 学園都市に恥じない綺麗で秩序ある町。

 その代わりにルークスの方針で、酒場や大人の店などは全くに近いほど無いため兵士や冒険者には不評。

 

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