表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/51

第三話 相棒は剣だよな?

【魔王城正門】


 ……さてユートピアを目指すかな。

 と、言っても目の前にある橋を渡ってすぐだけど。


「いってらっしゃい、ご武運を」


「ありがとうございます」


 俺は正門にいた顔見知りの門番さんに軽く挨拶した。

 いよいよ俺の旅が始まったんだ。

 

 ……やっぱメンドイな。

 布団でゴロゴロダラダラしたいな。

 ……今、戻ったら確実にお仕置きだから戻らんけど。


 ……フゥー、気持ち良い風が俺の頬に当たる。

 今日はいい天気だな。

 青い太陽が暖かい。

 前世の黄色い太陽は眩すぎるぐらいだったから魔界の太陽の優しい明るさが俺には心地良い。

 久々に魔王城の外に出たから太陽でさえ懐かしく感じるな。


 ポチャッ!


 ……おっ! 橋の下の湖で何か跳ねたな。

 魚か?

 見たかったな。


 ……あれ? 湖の向こうに何かいるな?

 遠いからハッキリとは見えないが鳥なのか?

 あっ!

 炎が上がった!

 てことはあそこには『兵士』が『冒険者』がいて炎魔法を使ったな。

 だとするとあの鳥は『魔獣』か?

 魔獣退治ご苦労様です。


 ……そっか俺、一人で外に出るのは生まれて十八年で初めてだった。

 いつもエルが一緒だったからな。

 ごく稀に親父だったけど。


 エルが一緒の時は喋りながらこの橋を渡ってたから周りをゆっくり見たこと無かったな。


 ……頭上には青い太陽と青い空と白い雲。

 前にはユートピアの高い建物と大きな門。

 後ろに巨大な魔王城。

 右には広い平原。

 左も平原と遠くにはうっすら火山が見える。


 ……魔界って広いな。

 前世の俺が住んでた世界は人混みと車とビルで狭かったな。

 ……おっと、考え事しなが歩いてたらユートピアに着いた。


【ユートピア兵士宿舎】


「えっ? いないんですか? 」


「申し訳ございません」


 俺は宿舎の兵士さんに聞いてみた。

 そしたら兵士長さんが会って話してくれる筈だったが、兵士長さんはユートピアの近くに現れた『ガルーダ』を退治する為に部下と一緒に出かけたそうだ。


 ……橋で見た鳥はガルーダで炎は兵士長さんか部下の人が放った魔法だったのか。

 まあ仕方ないか。


「では明日もう一度来ます」


「はい、お願いします」


 少し早いが宿でも取って明日また来ればいいさ。


 ……何気なく腰の俺の剣を見た。

 なんか剣がウズいてる気がする。

 そうだな、時間あるし試し斬りをしてくるか。

 行くぞ俺の剣、いや『相棒』。


【ユートピア前の平原】


 見渡す限りの大草原、草が俺の背よりも高いところがあるな。

 草の青臭さが鼻につく。

 さて、何か斬るに良さそうなものはあるか?


 ……何かいるな。

 草をかき分ける音がする。

 音は何処から聞こえたんだ?


「グルル!」


 草むらからデカイ狼が!?

 確かコイツは『サーベルウルフ』。

 逃げるか?


 ……相棒が戦えって言ってる気がする。

 分かった。

 メンドイけどやってやるよ。


 サーベルウルフは距離を取って俺を牽制してるな。

 ……ならこっちから仕掛けるか。


「『炎呪文フレイム』! 」


 俺は右手の平から火炎放射を放った。

 エル直伝の魔法だ、エルには遠く及ばないけど結構効くぞ?

 覚悟しろサーベルウルフ!


「ガウ!」


 チッ、俺よりデカい癖にアッサリ避けやがった。

 うわっ! 突っ込んで来た!

 だがな、俺も素早さには自信があるんだよ。


 俺は横に避けた。

 そのデカイ牙に噛みつかれたら痛そうだしな。


「グーッ! ガウ!」


 左腕に牙がかすった!?

 痛い、けど『不死身』の俺なら数秒で復活出来る程度だ。

 お返しだ!


「うりゃっ!」


「ガア!?」


 奴の脇腹を斬り裂いてやったぜ。

 すげーな相棒。

 軽いのによく斬れる。


「ガウガーァッ!」


 ヤケになったのか?

 だがそんな見え見えの噛みつき攻撃だったら………


 俺は復活した左腕の盾で奴の牙を受け止めた。

 ……このまま力比べしても負けるよな、なら。

 俺は相棒を一度鞘に戻して右手をサーベルウルフに向ける。

 今度は避けられないぞ?


「『炎呪文フレイム』」


「ガッ!!! 」


 サーベルウルフの体が燃え上がった。

 体毛の焦げる嫌な臭いがする。

 サーベルウルフは慌てて地面を転げ回り火を消そうとしてるな。

 熱そうだな。


 でも俺が、いつもエルから食らってた『極大火炎呪文テラブレイズ』の方が百倍は強力だったぞ?

 今のお前よりずっと熱かったぞ?

 

 追い打ちのチャンスだな。


「『炎呪文フレイム』! 『炎呪文フレイム』! オマケの『炎呪文フレイム』!」


 トドメだ!

 俺は相棒を鞘から抜いて構える。

 いくぞ相棒!


 俺は弱ってるサーベルウルフの首に渾身の力で相棒を突き刺した。


「ガッ! ガゥ……」


 よし! 死んだかな。

 ふぅっ、疲れた。


 ……分かってるさ。

 相棒、ありがとう。

 ……相棒が喜んでる気がする。

 今更だが相棒って剣だよな?

 生物じゃないよな?

 まぁ細かい事は気にしないが。

 とにかくこれからもよろしく相棒。


 ……親父に少し習った剣術が役に立った。

 エルと親父にも感謝しないとな。

 ……ありがとうエル……親父。


「「「グルルッ!」」」


 ……げっ!!

 サーベルウルフがもう三匹!


 そいやサーベルウルフは群れで行動する魔獣だった。

 さっきの奴の敵討ちに来たか?


 ……ヤバイな。

 今度こそ逃げるか?


「ガァァッ!」


 痛っ!!!

 後ろにもう一匹居たのか。

 クソ、右足をやられた。


「「「「ガァァァー!」」」」


 さっきの『炎呪文フレイム』の撃ちすぎで魔力が残ってない!

 足をやられたから動けないし。

 コンチクショーめ、復活したら覚えてろよ。


 ……やっぱ忘れてくれ、次も負ける気がするから。

 あー、あの時大人しく宿屋に行けば良かったな。

 やっぱメンドイ事はするもんじゃないな。


「ガウガウッ!」


 ヤバい!  顔に噛みつく気か!?

 頭部を破壊されると気絶……。


オマケ


『サーベルウルフ』


 体長二メートル程で大きな牙を持った狼の魔獣。単体での強さはそれ程でもないがその本領発揮するのは集団戦。


群れ生活彼らは集団で狩りを行う為、非常に連携をとるのが旨い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ